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東京医科大は、医師の活躍の場を狭めている?

2018-08-03 19:36:26 | アラカルト

東京医科大で、合格者の男女比を7対3に維持するために行われていた、女子受験者に対する「一律減点」が、問題になっている。
毎日新聞:東京医科大学 女子の合格抑制 一律減点、男子に加点も

この男子優位の合格システムの思考には、以前から指摘をされている「パターナリズム(=父権主義)的思考」が根底にあるのでは?という気がしている。
そして今でも患者側に、女性医師よりも男性医師のほうが信頼されている、という部分もあるのでは?という、見方ができるかもしれない。
ただし、それは臨床(=直接患者さんを診察する)医師の一部ではないだろうか?
例えば婦人科などは、「女性医師でないと嫌!」という患者さんは多い。
外科でも、乳腺科のように女性患者が多い分野では、女性医師のほうが圧倒的に多い。
それは、女性特有の悩みや心配を相談しやすいからだ。
何より忘れてはならないのは、医師の活躍の場は臨床だけではない、という点だ。
手術などでお世話になる麻酔専門医や、手術で切除した生検から病気や進行状態を判断する病理医、亡くなった方を解剖し死因を特定する法医学医など、直接患者と接しない(あるいは、ほとんど接する機会が無い)専門医も数多くいる。
実際、レントゲンやCTの画像で病気などの状態を診断する「画像診断医」は、数多くの女性医師が活躍していると言われている。

それだけではなく、細胞や遺伝子などの基礎研究をする医師もいる。
iPS細胞の山中先生も、整形外科を諦め基礎研究へ進み、成果を上げられた医師だ。
もしかしたら、近い将来そのような基礎研究から、「ゲノム(=遺伝子情報)分析専門」の医師が、登場するかもしれない。
というのも、がん等は個々の患者さんの遺伝子情報に基づいて、治療する薬や薬の量などを決めていくのでは?ということも、言われているからだ。
もちろん、遺伝子情報による「予防医学」という分野が、登場する可能性もある。

このような分野であれば、継続的研究ができる人材で無くてはならないとは思うが、だからといって出産や子育てがハンディになるとは思えない。
東京医科大学が考える「女性は出産、子育てがある為、離職する」というようなことが、少ない分野かもしれないのだ。

そしてもう一つ考えなくてはならないのは、東京医科大学が「医師の働く環境整備をどう考えているのか?」という点ではないだろうか?
視点を変えると、大学の附属病院には、数多くの看護師さんが働いている。
そして女性医師よりも看護師さんの方が、離職率は高いのではないだろうか?
看護師さんが子育て期間中安心して働ける環境=女性医師が安心して働ける環境、ということにもなるからだ。
そうなれば、解決策は見えてくるはずだ。
病院内に「保育所」などを設置することで、この問題のほとんどは解消されるのでは?

「臨床医以外の医師」の活躍は、医療の発展には必要不可欠なことだ。
「女性は出産・育児で離職してしまうから、入試で減点」という発想は、いかにも「昭和的」で「パターナリズム的思考」のような気がするし、医師の活躍の場を狭めてしまうことにもなるのでは?
何より「どのような医師になるのか?」ということを決める前に、足切りをしてしまうことは、有能な医師の卵をヒナに孵らせる前に、潰してしまうような気がするのだ。