はんどろやノート

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10・19詰将棋の解答

2012年10月27日 | つめしょうぎ
  8三飛成

 1週間前に出題した自作詰将棋の解答編です。
 出題のタイトルに「あの銀が、最後に…」とヒントを掲げました。 「あの銀」とは9一の銀です。この銀が最後に動いて詰みとなります。

 では初手から詰手順を考えていきましょう。


 初手、可能な「王手」は6通りしかありません。この詰将棋には持駒がありませんので、盤上の駒を使って「王手」をする以外になく、そうなるとこの図では、6つの候補の中から初手の「正解」を選ぶことになります。
 さて、その6つをしらみつぶしに検討してみましょうか。
 (1)8一飛成  8五歩合で続かず
 (2)3二馬  6五香などの応手ならば同馬、同銀、8一飛成で詰む。しかし3二馬には9六玉で続かない。9六玉には3六飛成としたいところなのだが、この時、飛車(3一)の背中に馬(3二)が張り付いているのでそれができない。
 (3)6九馬  以下9八玉、3八飛成、9七玉。この後、どうにもならない。
 (4)7六銀  同玉ならば7四飛成で詰みそうだが、7六銀には9八玉で不詰。
 (5)7八銀  同玉でも、9八玉でも不詰。
ということで、
 (6)8三飛成  これしかない。これが正解。

 
 この図で、「初手8三飛成」というのはなかなかインパクトのあるオープニングではないかと思います。



 8三同銀  3二馬  9六玉

 初手「8三飛成」には、「同銀」が正解手です。飛車をいきなり捨てるわけですが、なんのために捨てるのかについては、後で。

 その前に2手目の他の‘変化’を片付けます。
 「8三飛成」に、(ア)7七玉と逃げる手は、8六竜、6七玉、5八馬、7八玉、8八竜まで。
 あとは「8三飛成」に8五に合駒をする変化。(この詰将棋は総手数が長めですが、ややこしい変化は少ないです。ただこの2手目合駒の変化のみは手が広くちょっと煩雑です。)
 答えから言いますと次のようにして詰みになります。
2手目(イ)8五金合 → 同飛成、同銀、6九馬  
   (ウ)8五歩合 → 6九馬 (香合、桂合も同じです) 
   (エ)8五銀合 → 3二馬、9六玉、8五飛成

 それぞれより詳しく見ていきますと、次のようになります。
 (ア)8五金合には、同飛成、同銀、6九馬、9八玉、3八飛成、9七玉、8七金まで。

 (イ)8五歩合には、6九馬、9八玉、3八飛成、9七玉、9四竜

 8六玉、3六竜、7五玉、6六竜まで。
 この途中、3八飛成に6八香合と中合いの手があるが、これも6八同竜でよい。以下9七玉、9四竜、8六玉、8七馬、同玉、8八香まで詰み。
 9四竜という手がポイントです。この竜の活用があるので、6九馬が有効手になりました。

 (ウ)8五銀合 → 3二馬、9六玉、8五飛成、同銀、8七銀、9五玉、8六銀、同銀、同角

以下(a)8六同玉なら、7六馬、9六玉、9七銀、9五玉、8五馬。
(b)9四玉には、7六馬、9三玉、9四銀、8四玉、8一飛成、7四玉、8三竜まで。
(c)8四玉には、8一飛成、7四玉、7五銀、6三玉、6四銀、7四玉、8五飛成まで詰み。(8一飛成に8三合駒なら8五銀、7三玉、6五桂、6三玉、5三角成。)
という感じで。
 3二馬に、7七玉の変化もありますね。これには、7四竜と銀を取る手があり、以下6七玉、5八銀、5六玉、6五馬、4六玉、4四竜、4五合、4七馬まで。


 これで2手目の変化はやっつけました。 




 4一馬

 8三で飛車を捨て、「6二馬 9六玉」となったところ。
 9六玉に対しては‘3六飛成’としたいのだが、上でも述べたように、馬が3二に居るためにそれができない。「じゃあ、その馬を「王手」で4一に移動すれば次に‘3六飛成’ができるじゃないか」――ということで、5手目「4一馬」。 これでつぎの3六飛成がいつでも可能になった。ここだけでみると5手目「4一馬」の発見は容易と感じると思いますが、この5手目の「王手」を実現するためには、初手から「8三飛成、同銀」の2手が必要だったわけです。 これが初手「8三飛成」の意味。



 7四歩合

 「4一馬」には「7四歩」が正解手ですが、他の手も考慮する必要のあるところ。

 (A)8七玉 これには9六馬があります。強引に9六へ玉を呼び戻すのです。

9六同玉、3六飛成、9五玉、8六竜、9四玉、8五竜、9三玉、7五角、8四歩合、9五竜、9四香合、8五桂まで。

 この詰みを初めは“作意”として考えていたのですが。

 「4一馬」に
 (B)7四桂合と合駒すれば、これも上の変化と同様に3六飛成、9五玉、8六竜以下詰み。(この際、8六竜に同桂は、8五馬で詰み。)

 (C)7四に、金、銀、香のいづれかの合駒なら、同馬と取って、同銀、3六飛成から簡単。



 3六飛成  9五玉  8六竜  9四玉  8五竜  9三玉

 図は「7四歩合」としたところ。 以下、「3六飛成」からはあまり迷う所はありませんが、立ち止まるとすれば「9三玉」の次の手、13手目。



 7五角

 ここで「7五角」。 角を捨てる。
 このタイミングでの7五角が正しく、うっかり先に9五竜、9四銀の後に7五角だと、8三玉から逃げられてしまいます。ここが注意点。(これを将棋用語でむつかしく言えば、「13手目と15手目の手順前後は成立しない」となります。)

 


 7五同歩  9五竜  9四銀  8五桂  8三玉  7三桂成

 角を捌いて、桂馬を跳ねて、すぐ成り捨てる―― このあたり、かっこいいでしょう!



 7三同玉  7五竜  8三玉  8四歩  9三玉  7三竜  8三(歩)合  8二銀不成
  まで27手詰


 「8三玉」に、7四馬としたくなりますが、7二玉で詰みません。
 7五で取った歩を「8四歩」と使うのが正解です。
 そして(予告通りに)最後に9一の銀がナラズで動いて詰み。 27手詰め。



詰上がり図


 問題図面の7七桂や9七角が最後に捌けて消えて、9一の銀まで使えるなんて、ヘボ作者にとって夢のような収束です。(あの馬も盤上から消えてくれると最高なのだが。)
 初手の飛車捨てと後半の収束とで、けっこうお気に入りの作品となりました。




 ところで、王座戦(渡辺明VS羽生善治)は楽しかったですねえ! あんな将棋がもっと見たい。
 羽生さんは名人は取れなかったけれど、絶好調です。以前も、深浦さんに王位戦で負けた後ほとんど負けなしで走っていたとか、タイトル戦の番勝負で敗れた後の羽生善治は一段と強くなる印象があります。棋聖、王位、王座とタイトル戦3連勝ですもんね。
 でもって今季の注目はNHK杯戦。何しろ(トーナメント戦なのに)羽生善治4連覇中で、今期も勝ち続けて5連覇するかってところ。 あっ、明日、羽生さん登場じゃないですか。相手は橋本崇載八段か。

 これが今年の勝率上位者の勝率と勝敗
 1  八代 弥  .875  21-3  ←新人 9連勝中
 2  佐藤康光  .818  18-4  ←1冠
 3  行方尚史  .810  17-4  ←5連勝中
 4  佐々木慎  .800  16-4  ←6連勝中
 5  永瀬拓矢  .794  27-7  ←青流戦と新人王戦の決勝進出
 6  羽生善治  .791  34-9  ←3冠
 7  村山慈明  .783  18-5  ←特記事項なし
 7  澤田真吾  .783  18-5  ←8連勝中
 9  斎藤慎太郎 .762  16-5  ←新人

 そんな好調の羽生さんよりも高勝率の棋士が5人も。
 千日手大好き振り飛車王子・永瀬拓矢にも注目。まあ注目しなくても目立っていますね。勝数では1位羽生に続く2位で、現在新人王戦と青流戦の2つの決勝三番勝負を戦っている。青流戦三番勝負は今日(土)と明日、ネット中継もありますよ~。
 そして八代弥の勝率は今後どうなるのか。

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2 コメント

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Unknown (やまかん)
2012-10-28 03:03:54
歩頭に出る角がいい詰将棋でした。
ただ最後収束ですが考え方として自分が実践してるのですが41の馬が残る収束は捨てるということです。馬がなくなるまで粘ることが必要だと思います。そうすると恐らくよいのが出来ます。
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Unknown (handoroya)
2012-10-28 14:04:16
>やまかんさん

そうですか。あの馬を消して当然と。
「粘る」ですか。
私の場合は、どこか「これくらいで上出来上出来」という甘い感覚があるのは確かです。
楽しみながらも、さらに「粘る」というのを心に刻んでおくことにします。

実益にならないことに粘る、日本人ぽいなあ~。
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