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2021詰将棋その7 答えと解説

2021年11月20日 | つめしょうぎ
LPSA (日本女子プロ将棋協会)『2013年日めくり詰将棋カレンダー』へ、私が応募した詰将棋問題は3つ。そのうち2つが採用されました。
この詰将棋はボツになることを想定して “第三候補” として送ったのですが、意外にもこれが採用されました。もとは11手詰だったものですが、『日めくり詰将棋カレンダー』はこのときは「7手以下」が条件だったので、7手詰に調整したものがこれです。(原案の11手詰問題は最後に紹介)


さて、答えと解説です。     (答えを見ないで考えたい方はこちらへ)


問題図(再掲)
答え: 3八飛  同玉  2八飛  同玉  2九金  3七玉  4七金  まで7手詰


解説:

初手、迷わせます。
候補として、「4七金」、「4七飛」、「4七飛打」、「3八飛打」、「2八飛」などがある。
しかしそれらはすべて “紛れ筋” であり、玉方に “5九玉” と対応されて詰まない(そのように作った)

一例として、「4七金」以下を見ておこう。
4七金、5九玉、2九飛、4九銀(次の図)

紛れ図01
実は「飛と金は “品切れ”」である。なので下段の飛車のヨコ王手に対する合駒は「銀か角」しかない。この図の場合「銀合」にしたが、「角合」でも同じく、この玉は詰まない。
4九銀合に対し王手で迫るなら4九同飛、同桂成、6八銀しかないが、5八玉、5七金引、6九玉と進んで、次の図となる。

紛れ図02
こうなって、「詰まない」とはっきりした。
(攻方7九歩がなかったら金が打てて詰むのだが、これが詰んでは困るので作者は7九歩を置いた)


さて、「問題図」に戻って、初手の正解は、「3八飛」である(次の図)

途中図1(1手目3八飛まで)
「3八飛打」ではない。持駒の「飛」を手元に温存して、「3八飛」とするのが正解手になる。
3八同玉、2八飛以下、簡単に詰みとなる。それが正解手順である。

難しいかもしれない変化は、ここで「“5九玉” とした場合」である。
“5九玉” には、2九飛と打つ(次の図)

変化図01
前回の問題(2021詰将棋その6)で学んだ通り、最下段の飛車の横王手に対しての合駒は「飛、角、金、銀の4通り」だけを考えればよい。
そしてこの問題の場合、「飛、金は品切れ」である。これに気づくことが重要なポイントとなる。
もしも4九金と合駒に金が打てたら、この玉は詰まないのである。しかし金と飛は “品切れ” なので、2九飛に対する受けは、4九銀合または4九角合しかない―――ということになる。どちらであっても、4九同飛と取って、同桂成に、取った銀(角)を、6八銀(角)と打てば―――(次の図)

変化図02
詰みである。
こういうしくみで、2手目 “5九玉” は、2九飛があるので詰ますことができるとわかった。
なお、これは「7手」で詰んだが、持駒の金を使わずに残っている。つまり「7手駒余り」である(駒余りは正解手順として採用しないのが詰将棋の基本ルール)


途中図2(2手目3八同玉まで)
ということで、2手目、玉方は「3八同玉」(図)と応じる。こちらが正解手順となる。


途中図2(3手目2八飛まで)
2手目「3八同玉」には、「2八飛」(図)と打つのが継続手(ここに飛車を打てば、玉は4八~5九と逃げられない)
以下は簡単な詰みとなる。
「2八同玉」(3手目)に、「2九金」と打ち、玉方は「3七玉」の一手。
これには―――(次の図)


詰め上がり図(7手目4七金まで)
「4七金」(図)まで。

「7手」で「駒が余らない」、こちらが正解手順となる。



以上が本問題の答えの解説となります。
作図の段階で「飛、金を品切れ」にする必要があったことがいまの解説でわかったと思います。「玉方2六金配置」が歩ではなく金なのは、そういう意味があるのでした。


この詰将棋は、“一部の人” にとっては大変に難しかったかもしれないと思っています。
“一部の人” というのは、実戦のための詰将棋にしか興味のない人、あるいは、詰将棋の「合駒を考えるのが嫌」というタイプの人です。
そういう人は、苦手な「合駒を考える筋」を無意識に避けてしまうクセがあり、本問題の変化「2九飛に対する合駒は何?」というような思考に慣れていないのです。また、実戦では相手の玉が最下段にまで来ることは稀ですしね。
逆に「趣味としての詰将棋が好き」というタイプの人は、「入玉形」にも「合駒」にも慣れているので、「2九飛に4九銀(または角)」のような変化はすぐに読めてきます。
ましてや、「詰将棋をつくる」という人は、「合駒は何か」、「何の駒が残っているか(品切れなのか)」などは常に考えています。盤上に何の駒を何枚使ってあり、相手の持駒にある駒は〇〇だから‥‥というようなことを反射的に考えるクセがついているのです。
今回の問題が「7手詰めなのに難しい」と思われたとしたら、その人はたぶん「実戦タイプ」の人でしょう。
つまり言い方を変えると、この詰将棋は、「実戦タイプの人をちょっと困らせてやろう」というようなつくりの7手詰め問題ということです。



この詰将棋、上にすでに述べた通り、もとは「11手詰め」の問題でした。

原型図00(問題図)
これが「原型」の問題図です。
内容的には、こちらのほうがよりおもしろいと思っています。
「2六金」の向きが逆になって、「攻方1七歩」が配置されている。

同じように、初手3八飛と飛車を引いて、同玉に―――(次の図)

原型図01(途中図)
ここでこの図の場合は、4九金と打つ “紛れ筋” がある。4九金を同桂成なら、4七角以下この玉は詰んでしまう(以下2八玉には2七金がある)
しかし、4九金に、2八玉なら大丈夫。

やはり正解手順は「7手詰め」の場合と同じで、2八飛、同玉、2九金、3七玉と進む(次の図)

原型図02(途中図)
ここで2七金もあるけれどそれは4八玉と入られてダメなので、やはりここは4七金とすることになる。
以下2六玉、3六金、1五玉、2五金、まで11手詰め。

原型図03(詰め上がり図)
4七金~3六金~2五金という金の活用でのフィニッシュがおもしろいので、作者のなかではこちらの11手詰めが本来の “決定版” となっているのでした。




『日めくり詰将棋カレンダー』は、LPSA (日本女子プロ将棋協会)のヒット製品でしたね。
私のようなレベル(『将棋世界』の「詰将棋サロン」等の雑誌入選レベルには届いていない)の詰め将棋作家の作品も拾っていただける場として、ありがたかったです。
『2013年日めくり詰将棋カレンダー』を最後に、この企画は終わったようです。
もともと、これは中井広恵さん(女流棋士)がLPSA の代表をしておられたときに企画されたもので、彼女がこの『詰将棋カレンダー』の発行 にこだわっていたようです。
その中井広恵さんはLPSAを2014年に脱退されているので、『日めくり詰将棋カレンダー』もそのままなくなり、そして復活することはなさそうですね。もともと採算が取れていない企画だったのかもしれません(しらんけど)

       『ヒロエ、現る
       『鏡花水月 ひろべえの闘い
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