はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

赤い蝋燭と人魚

2007年05月25日 | ほん
 先週のことです。本屋へ入りますと、気になる本が3冊あります。第1は『別冊太陽いわさきちひろ』、第2は角田光代『あしたはうんと遠くへいこう』、3番目は『小川未明童話集』。 どれも買わず、本屋を出ました。
 が、やっぱり気になるので、一昨日、図書館へ行ってみました。角田光代はなかったので他の図書館から取り寄せてもらうことにして、小川未明をその場で読んでみました。読んだのは「赤い蝋燭と人魚」「野ばら」「しいの実」どれも短編です。「赤い蝋燭と人魚」は悲しかったです。「野ばら」は戦争の悲しさと、それから老人と青年の交流がさわやかでした。(二人は将棋を指した。) 「しいの実」はあったかい家族のはなし。
 昨日は『あしたはうんと遠くへいこう』が届いたので読もうとしたが、感情移入できず、読むのをやめ。欲求不満になった僕は、衝動で本屋へ行き、『別冊太陽いわさきちひろ』を買ったのです。2000円。

 前置きが長くなりました。今日は小川未明のはなし。(さかもと未明ではないぞ!) 僕は小川未明を昨日はじめて読んだ、と思っていたが、「金の輪」だけは前に読んだことがあると今日気づいた。(これは、子供が、死んでゆく前に見たスゴイ夢のはなし。)


 「赤い蝋燭と人魚」 これ、未明の代表作のようですね。

 人間は、この世界の中で、いちばんやさしいものだと聞いている。そして、かわいそうなものや、頼りないものは、けっしていじめたり、苦しめたりすることはないと聞いている。
 そんなふうに思って、人魚のお母さんは、わが子を人間に育ててもらおうと思い、陸でこどもを出産します。海の中はさみしい、と人魚は思っていたからです。
 ろうそく屋のおじいさんとおばあさんがそれを見つけ、大切に育てます。人魚のこどもは女の子で、黒目で、美しく、おとなしい子となりました。ただし、人魚の娘ですから半分は魚です。
 娘は、自分の思いつきで、ろうそくに絵を描くようになりました。魚や、貝や、海草を。その絵には、不思議な力と、美しさがこもっていました。娘が絵を描いたろうそくは評判になり、売れました。不思議なことに、このろうそくを山のお宮にあげて、その燃えさしをもって船に乗ると、その船はけっして災難に会わない、とうわさされるようになりました。
 ところがある日、金もうけをたくらむ香具師がやってきて、おじいさんおばあさんに、人魚の娘を売ってくれといいます。二人は断りましたが、「人魚はむかしから不吉だといわれている」というような話で香具師に説得され、とうとう娘を売ってしまいます。
 というような流れで、悲しい結末となります。


 さて、昨日のこと。
 買ったばかりの『別冊太陽いわさきちひろ』をながめていた僕は、びっくり。いわさきちひろの最後の、未完で終わった作品が小川未明作「赤い蝋燭と人魚」の絵本の仕事だというのです。読んだことのない小川未明がなぜか気になったのは、こういうわけだったのか!(こういう偶然が、本と、音楽と、将棋に関しては、僕にはちょくちょくあるんだナ。)

 不思議です。
 そうしてこの物語をみると、「絵を描いて人々の生活をあったかく燈していた少女」は、いわさきちひろと重なって見えてくるではないか!
 未完の、「赤い蝋燭と人魚」のちひろの絵本を、いま、見ています。これは子供向けとしてではなく「若い人に」という考えで描かれた絵だそうです。

 小川未明は明治15年新潟県生まれ。せっかちな人で、将棋を指すのも超早指しだったと、弟子の坪田譲治が述べています。結局、僕は『小川未明童話集』も買っちまった。460円。

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