大根のおいしい季節になりましたな。
図書館に寄って歯医者に行き、そのあとコーヒーを飲みながら三笠宮崇仁著『文明のあけぼの』を読む。レンタルビデオ屋でエロビデオを借り、「『バーバーハーバーNG』(漫画、小石田マヤ著)が出ているはずだが…」と本屋に入る。小池田マヤはなかったが、そのかわりすばらしいものがあった! 花輪和一著『刑務所の前 第3集』である! うおおおお、ついに!!
『刑務所の前』は、21世紀の最高傑作である。まだ第3集は1ページも読んでいないのだが。ああ、わくわくするぞ。この表紙は…不動明王か?
古墳壁画から始まって、岡本一平、杉浦茂、手塚治虫、吉田戦車と流れてきた日本漫画の河は、こんな妙ちくりんな場所に流れ着いたというわけである(笑)。 オイオイ、未来は、あるのかい?
明治43年8月8日から降り続いた大雨は多摩川を洪水にした。その記事を新聞で読んだ岡本一平は、玉川電車に飛び乗った。終点の多摩川べりで降りてみると、多摩川は赤茶色の濁流が逆巻いていた。
「おれはどうあっても、この濁流を渡って娘の家に行く」
娘とは一平の恋人大貫かの子。出会って2年、二人のつきあいは順調にすすんだ。すすみ過ぎて、かの子、妊娠してしまった。さあどうするか。24歳の一平は決心した。「結婚しよう。」 かの子21歳。
この時代、結婚は親の承諾を絶対的に必要とする。かの子は、二子玉川の大和屋の長女であり、大和屋は沢山の蔵をもつ大地主であった。
一平は渡し守を見つけ、言った。
「大将! 五円はずむから渡してくれないか」
「冥土へなら渡してやんべえ」
「冥土でもいい」
だが、この大水ではとても無理であった。渡し守は行ってしまう。
一平は、ずぶずぶと水のあふれる川べりの道を歩いて、やっと鉄橋を見つけた。しかし通行止めになっている。それでも一平が渡ろうとすると、巡査が「コラコラコラーッ、貴様、言うことを聞かんか」と止めにきた。
しばらく考えて一平は突然行動を起こした。
「オーイ、田越君! 田越君!」
と、一平は怒鳴りながら鉄橋めがけて走り出した。
「田越君! 田越君! 田越君! 田越君! 田越君!」
息の続く限り一平は叫び続け、疑いの余地を与えぬ速さで鉄橋を駆け渡った。奇襲は成功した…。
大和屋にたどり着いたころには日が暮れていた。一平を、大貫家では好奇の目と同情の念で出迎えた。一平は風呂に入り、酒がふるまわれた。
昼間の多摩川での冒険などの話をしたあと、一平はきりだした。
「じつは、お娘御をいただきに来たのですが、私に下さいませんか」
かの子の父・寅吉は、娘はやれない、と断った。しかし一平は引き下がらない。「娘さんを下さい」と繰り返す。
なにしろ大和屋大貫家は大資産家である。寅吉にすれば、こんな将来の見通しのつかない画家青年などに大事な娘をやりたくはない。そしてそれ以上に心配なのは、娘「かの子」のキャラであった。
まったく変わった娘だった。大貫家では、この変わりものの娘が将来結婚して家庭がもてるとはとても思えず、それだから一生、かの子を大貫家に置いておく覚悟であったようなのである。
多摩川の水は簡単には引かない。3日間一平は大貫家に宿泊した。
3日目、どうあってもかの子を連れて行きたいと、一平はまた頭を下げた。
「岡本さん、この子をお貰いになってどうする気です。取り出せばいいところのある子ですが、普通の考えだとずいぶん双方で苦労をしますよ」
と言ったのは、かの子の母アイである。しかしアイは、すでにかの子の妊娠を知っていたようで、結局は二人の結婚を後押しした。
やがて寅吉は決断した。一平の熱意にしびれを切らせ、「かの子を決して粗末にしない」という一札を血判入りで一平に書かせ、二人の結婚を認めることとなったのである。
さあ、こう書くと、いったいかの子とはどういう女だったのか、と知りたくなったでしょう? よしよしよし、オモウツボです。では、それはまた、別稿で。
図書館に寄って歯医者に行き、そのあとコーヒーを飲みながら三笠宮崇仁著『文明のあけぼの』を読む。レンタルビデオ屋でエロビデオを借り、「『バーバーハーバーNG』(漫画、小石田マヤ著)が出ているはずだが…」と本屋に入る。小池田マヤはなかったが、そのかわりすばらしいものがあった! 花輪和一著『刑務所の前 第3集』である! うおおおお、ついに!!
『刑務所の前』は、21世紀の最高傑作である。まだ第3集は1ページも読んでいないのだが。ああ、わくわくするぞ。この表紙は…不動明王か?
古墳壁画から始まって、岡本一平、杉浦茂、手塚治虫、吉田戦車と流れてきた日本漫画の河は、こんな妙ちくりんな場所に流れ着いたというわけである(笑)。 オイオイ、未来は、あるのかい?
明治43年8月8日から降り続いた大雨は多摩川を洪水にした。その記事を新聞で読んだ岡本一平は、玉川電車に飛び乗った。終点の多摩川べりで降りてみると、多摩川は赤茶色の濁流が逆巻いていた。
「おれはどうあっても、この濁流を渡って娘の家に行く」
娘とは一平の恋人大貫かの子。出会って2年、二人のつきあいは順調にすすんだ。すすみ過ぎて、かの子、妊娠してしまった。さあどうするか。24歳の一平は決心した。「結婚しよう。」 かの子21歳。
この時代、結婚は親の承諾を絶対的に必要とする。かの子は、二子玉川の大和屋の長女であり、大和屋は沢山の蔵をもつ大地主であった。
一平は渡し守を見つけ、言った。
「大将! 五円はずむから渡してくれないか」
「冥土へなら渡してやんべえ」
「冥土でもいい」
だが、この大水ではとても無理であった。渡し守は行ってしまう。
一平は、ずぶずぶと水のあふれる川べりの道を歩いて、やっと鉄橋を見つけた。しかし通行止めになっている。それでも一平が渡ろうとすると、巡査が「コラコラコラーッ、貴様、言うことを聞かんか」と止めにきた。
しばらく考えて一平は突然行動を起こした。
「オーイ、田越君! 田越君!」
と、一平は怒鳴りながら鉄橋めがけて走り出した。
「田越君! 田越君! 田越君! 田越君! 田越君!」
息の続く限り一平は叫び続け、疑いの余地を与えぬ速さで鉄橋を駆け渡った。奇襲は成功した…。
大和屋にたどり着いたころには日が暮れていた。一平を、大貫家では好奇の目と同情の念で出迎えた。一平は風呂に入り、酒がふるまわれた。
昼間の多摩川での冒険などの話をしたあと、一平はきりだした。
「じつは、お娘御をいただきに来たのですが、私に下さいませんか」
かの子の父・寅吉は、娘はやれない、と断った。しかし一平は引き下がらない。「娘さんを下さい」と繰り返す。
なにしろ大和屋大貫家は大資産家である。寅吉にすれば、こんな将来の見通しのつかない画家青年などに大事な娘をやりたくはない。そしてそれ以上に心配なのは、娘「かの子」のキャラであった。
まったく変わった娘だった。大貫家では、この変わりものの娘が将来結婚して家庭がもてるとはとても思えず、それだから一生、かの子を大貫家に置いておく覚悟であったようなのである。
多摩川の水は簡単には引かない。3日間一平は大貫家に宿泊した。
3日目、どうあってもかの子を連れて行きたいと、一平はまた頭を下げた。
「岡本さん、この子をお貰いになってどうする気です。取り出せばいいところのある子ですが、普通の考えだとずいぶん双方で苦労をしますよ」
と言ったのは、かの子の母アイである。しかしアイは、すでにかの子の妊娠を知っていたようで、結局は二人の結婚を後押しした。
やがて寅吉は決断した。一平の熱意にしびれを切らせ、「かの子を決して粗末にしない」という一札を血判入りで一平に書かせ、二人の結婚を認めることとなったのである。
さあ、こう書くと、いったいかの子とはどういう女だったのか、と知りたくなったでしょう? よしよしよし、オモウツボです。では、それはまた、別稿で。
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