はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part141 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第40譜

2019年12月29日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第40譜 指始図≫


    [赤の王さま]

 近くの森でなにやら蒸気機関車のしゅっしゅっぽっぽみたいな音がきこえたんだ。ただそれがなんだか野獣の声みたいに思われてね。「ライオンか虎でもここにいるのかしら」アリスはおそるおそるきいてみた。
「赤の王さまがいびきをかいているだけさ」とソックリディー。
「まあ見に行こうや」兄弟はそういうと両側からアリスの手をとって、王さまの寝ているところへ案内していった。
「なかなかかわいいだろ?」ソックリダムがいう。
 アリスは正直な話、そうは思えなかったね。王さまは赤い房のついたとんがりナイトキャップをかぶって、ぼろの山みたいに体をまるめて、高いびきをかいている――ソックリダムにいわせれば「頭もいびきとばさんばかりの」いきおいだ。

     (『鏡の国のアリス』ルイス・キャロル著 矢川澄子訳 新潮文庫 より)



 「4マスめ」で、アリスはソックリダムとソックリディーの兄弟に会う。
 そしてそこには、大いびきをかいて眠っている「赤の王さま」も。



<第40譜 深化する研究調査>


≪最終一番勝負 第40譜 指始図≫ 9七玉まで

 ≪亜空間戦争 最終一番勝負≫は、この図まで進んでいる。
 そして今、我々(終盤探検隊)は、この図を一手戻した図――次の「6七と図」を目下研究調査中である。


6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 後手良し
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行
  〔桐〕9八玉

 今回は、まず〔梅〕2五香についての、最新研究内容を発表する。
 そして、続いて新手〔桃〕2六香の研究を。



[調査研究:2五香] 

2五香基本図
 〔梅〕2五香(図)については、すでに、第34譜 と、第36譜 において二度にわたり、その研究内容を発表済みである。
 この「2五香基本図」から、7五桂、9七玉、7七と、9八金と進め―――(次の図)

研究2五香図01
 そこで、「6二金」と進んでこの図になる。
 7五桂と打って後手は先手に9八金と受けさせた。しかし桂を使ってしまったので、次に先手に2六飛と打たれるともぅ「2三」の地点の受けが利かない。
 だから、「6二金」(図)である。ここで2六飛は、3一玉、2三香成、4一玉と角を取られ、次に後手からの7九角が厳しい。これは先手負ける。
 なので、ここで2三香成、同玉、2五飛と攻めることになる。以下、2四歩、5五飛と進み、これは「やや先手良しか」という形勢となる。その先は変化が広くてはっきりしないし、具体的な先手の勝ち筋も見つからなかった。よって、現実的には「互角」である。
 「一番勝負」の戦闘中はそういう“読み”だった。(第34譜

研究2五香図02
 しかし、“戦後”の調査研究によって、「後手良し」の結論に変わった。(第36譜
 「6二金」ではなく、「2四歩」(図)がある。 金は5二金のままで香車を取って9五歩と後手から端攻めをするのが、すぐれた組み立てとなると判明したのだ。
 「2四歩」以下、同香、2三歩、同香成、同玉、2五飛、2四歩、5五飛、4四銀(次の図)

研究2五香図03
 4四銀(図)として、5九飛と引かせてから、9五歩と攻める(このときに6二金型より5二金型がよい)
 これで後手優勢になる。

研究2五香図04(7八歩図)
 ということであれば、「2四歩」、同香、2三歩、同香成、同玉と進んだ時に、2五飛と打ち手に代えて、7八歩と工夫したのがこの図である。
 これも、第36譜で調査したが、その結果は「後手良し」となっていた。

 図の「7八歩」に対しては、〈a〉同とおよび〈b〉7六歩は、先手良しになる。
 しかし、〈c〉7六と、2五飛、2四歩、5五飛、9五歩、同歩、同金以下「後手勝ち」―――というのが、そのときの調査研究であった。

 ところが、我々は、この手順に“再々調査”が必要なのではないか―――と、気づいたのであった(次の図)

研究2五香図05
 いまの手順の後手9五歩(図)まで進んだところ。
 ここで前の研究では “9五同歩” だったが、その手に代えて、“5二角成” があるのではないか―――というのが、今回の新テーマだ。

研究2五香図06(5二角成図)
 この手である。 5二同歩なら、2一竜で後手玉詰みだ。
 問題は、9六歩でどうなるかだ。 9六同馬なら9五歩、6三馬、9六香と進み、これは後手優勢。
 よって、9六歩に、8八玉だが、後手は7七歩と追撃する(次の図)

研究2五香図07
 先手玉はかなり追い詰められた。ただし7七歩はまだ“詰めろ”にはなっていない。
 ここで3三歩成を利かす。 後手は同玉と取る(代えて3三同桂は3四歩が詰めろになる)
 そこで8四馬(金を入手)で勝負する。
 以下、8七香、7九玉、7八歩成、同玉、6七桂成、7九玉(次の図)

研究2五香図08
 後手7八歩は打てない(打ち歩詰めの禁じ手)。 7七歩で “詰めろ” になるが―――

研究2五香図09
 4二馬(図)。 銀を一枚補充して、金銀が四枚になった。
 同銀に、3四銀、同玉、3五歩(次の図)

研究2五香図10
 後手玉は“詰み”である(この詰みは8四馬が盤上から消えても成立する)

 つまり、〈c〉7六とは「先手良し」 になった。 結論がひっくり返った のである!!

研究2五香図11
 「7八歩」に、〈a〉7八同と、〈b〉7六歩、〈c〉7六とはすべて「先手良し」になるとわかった。
 では、〈d〉9五歩(図)はどうか。
 これに対して、7七歩があるが、以下9六歩、8八玉、9七香、8七金、9九香成の進行は、きわどいが「後手良し」になるようだ。

研究2五香図12
 なので、9五同歩(図)と先手は応じる。
 ここで攻めを続けるなら、9六歩 または 9五同金 だろう。
 9六歩 は、同玉、9四歩だが、そこで2五飛がある(次の図)

研究2五香図13
 後手は歩切れである。2四香は5五飛で、後手の攻めが続かない。
 だから3四玉と応じるが、そこで先手は8四馬がある。同銀なら、3五金、3三玉、5二角成で、先手玉は詰まず、先手勝ち。
 したがって、8四馬に2五玉と飛車を取るが、7三馬と銀を取れば、これは先手有望の図になっている。

研究2五香図14
 9五同金(図)の変化。
 これは 9六歩 と受けるが、8七桂成、同金、同と、同玉、7六金と攻めが続く。
 以下 8八玉、8六金右に、5七馬(次の図)

研究2五香図15
 5七馬(図)で、攻守が切り替わった。
 2二玉に、2五飛、2三香、2四桂、3一銀、5二角成(次の図)

研究2五香図16
 5二角成(図)のこの瞬間は、1二桂成、同玉、2三飛成以下の“詰めろ”になっている。
 5二同歩なら詰みはない。 しかし3三歩成、同玉、3五飛、3四角、4五金として、先手勝勢である。
 この変化も、先手良しになった。

研究2五香図17(3四玉図)
 だから、〈d〉9五歩、同歩のところでは、3四玉(図)とするのが後手最善手だろう。
 この局面は手が広く、実戦的には「互角」。 しかしそこで終わらず、もうすこしがんばって、この図の形勢を見極めたい。

研究2五香図18(3七桂図)
 我々(終盤探検隊)の“調査”では、どうやら「3七桂」(図)で「先手良し」だ。
 先手には5二角成と8四馬の二枚の「金の質駒」があるのが心強い。
 具体的に、調べた主な変化を示しておこう。
 まず(1)3五玉。 この手には5二角成、同歩、4五飛、3六玉、4七金(次の図)

研究2五香図19
 2七玉に、2一竜以下、先手良し。

研究2五香図20
 「3七桂図」に、(2)5六銀なら、7七歩、3五玉に、5七歩(図)で先手が良くなる。
 以下、たとえば4七銀成なら、5二角成、同歩、4五飛、3六玉、2一竜で、また5七同銀成には2六飛が絶好の手になり、いずれも先手良し。
 3六玉なら、5六歩、3七玉、8五銀(次の図)

研究2五香図21
 この8五銀は、次に8四銀、同歩、8三馬と、馬を活用する狙い。
 勝負的にはまだ紛れがあるが、大駒四枚を有している先手が優位なのは間違いないところ。

研究2五香図22
 「3七桂」に、(3)3三桂(図)の変化。
 これには3六歩。 続いて、4六銀に、4七歩、4四玉、4六歩、5五玉、7七歩、9六歩、同玉、9四歩、5七銀(次の図)

研究2五香図23
 9五歩、9七玉、9六歩、8八玉、6七桂成、3五飛(次の図)

研究2五香図24
 4五香、同桂、5七成桂、5三桂成、6六玉、5二成桂、6七成桂、7五銀、5七玉、5五飛(次の図)

研究2五香図25
 4八玉、8四銀、同銀、8三馬、7七成桂、同玉、7六銀、8八玉、7七銀打、8九玉(次の図)

研究2五香図26
 先手勝ちになった。

研究2五香図17(再掲3四玉図)
 以上のように、3四玉 と出た図はどうやら「先手良し」―――というのが、我々の調査結果である。


2五香基本図(再掲)
 さてもう一度この2五香基本図に戻って、再整理しよう。
 ここで7六歩のような攻めだと、2六飛と打って、3一桂と受けても、2三香成、同桂、2四金で、先手勝ち。
 だから後手は7五桂と打っていく攻めがベストの順になる。 以下、9七玉、7七と、9八金と進んで―――(次の図)

研究2五香図27(9八金図)
 そして、この「9八金図」で後手、後手「2四歩」以下、同香、2三歩、同香成、同玉、7八歩で、「先手良し」 ということになった。
 これまでは後手良しだったのが、評価が逆転したのである。

 そうなると、後手としては、今度はここで「6二金」を選ぶのが、“正解手”になる。

研究2五香図01(再掲6二金図)
 こちらの変化を“再調査”する必要が出てきたようだ。
 「6二金」(図)には、2三香成、同玉、2五飛しかない(3一玉とされると後手優勢になる)
 以下、2四歩、5五飛と進む(次の図)

研究2五香図28
 ここから変化はいろいろあるが、最善と思われる手順が、以下の手順である。
 6九金、3三歩成、同玉、5七飛、6七歩、7八歩、7六と、3七飛、4四玉(次の図)

研究2五香図29
 ここで3二飛成として―――
 3三桂、7七歩、同と、4六銀、5四銀、7八歩、5五銀(次の図)

研究2五香図30
 「6二金」以下、ここまでの手順の意味は、第34譜で解説している。 形勢は「やや先手良し」と見ていたが、先手が勝てるという自信もなかった。

 そしていま、この後を改めて調べてみても、「互角」としか言えないような判断の難しい局面だということが再認識されることとなった。
 変化の一例を示しておく。
 5七銀、8七と、同金、同桂成、同玉、7六金、9八玉、8六金(次の図)

研究2五香図31
 9七桂、5六香、4八銀、5八香成、8七歩、9七金、同玉、4八成香、9八玉、5二金(次の図)

研究2五香図32
 形勢不明である。
 3二飛成と飛車を成ったのなら、4二竜と銀を取れなければおもしろくないが、結局その余裕が得られなかった。

研究2五香図33
 ということで、これは、4四玉に、(3二飛成の手に代えて)6五歩とした変化。
 この手はどうだろうか。
 9五歩、同歩、同金、9六角成(次の図)

研究2五香図34
 9六角成(図)で、受かっているかどうか。
 以下、9四歩、同馬、同金、同竜、8四銀(次の図)

研究2五香図35
 これも、形勢不明。
 どこまでいっても、「先手の勝ち筋」は見えてこない。といって、逆に先手がはっきり悪くなる筋が出てきたわけでもないので、これはもう「互角」と結論するしかないようだ。
 
 この道(〔梅〕2五香)の調査は、ここで打ちきりとする。


2五香基本図(再掲)
 〔梅〕2五香は、「互角」。 これを、結論とする。




[調査研究:2六香]

 そして、新たに有力手として浮上してきたのが〔桃〕2六香である。

2六香基本図
 〔桃〕2六香 と打った。 2三の地点を狙う場合は、2五飛と打っていくことになる。
 この場合は、後手は2つの有力な指し方がある。
 1つは、先手〔梅〕2五香の場合と同じように、すぐに【P】7五桂(王手) と打っていく手。
 もう一つの手は、【Q】7六歩(7八歩に6六銀)とする指し方である。 これは桂馬を温存して攻めるという意味である。

 まず、【P】7五桂 から。 以下、9七玉、7七と、9八金と進む(次の図)

研究2六香図01(9八金図)
 【P】7五桂とすぐに攻めたのは、7七とで先に先手玉に“詰めろ”で迫り、「先手に金を使わせた」ということである。その分だけ、先手の攻めが細くなる。
 しかし、もう持駒は歩しかない。 すると、次に2五飛と打たれると2筋は受からないので、後手は困ったように見えるが、「6二金」がある(次の図)

研究2六香図02
 「6二金」(図)として、先手の2五飛に備えた。これで2五飛には、3一玉と応じ、2三飛成、4一玉、2一竜、5二玉で、次の後手7九角が厳しく、後手良しである。
 〔梅〕2五香のケースでは、6二金に、以下2三香成~2五飛と進み、形勢不明(互角)となった。ここでも2三香成とすれば、その変化に合流する。
 しかしこの場合、“3三歩成” というはっきり先手良しに導く好手がある

研究2六香図03
 ここで “3三歩成”(図)があるのが、「2五香型」との違い。「2五香」と打っている場合には、3三歩成を同桂とされて、その桂が2五香を取れる形になっているので、後手良しになる。ところが、この場合は「2六香」と一つ下に打っているため、同桂が香取りにならず、だから 3四歩と打って先手有利に働くのだ。
 なお、“3三歩成” に、同玉は8四馬、同歩、3五飛、3四角、4五金だし、3三歩成に同銀は、5一竜で先手良し。
 なので、結局、“3三歩成” は、同桂になるが、以下3四歩。

 ここで(ア)4五桂 と(イ)5四銀 を見ていこう。
 (ア)4五桂には、5二歩と指す(次の図)

研究2六香図04
 後手はここで攻めたいが、7六桂や9五歩としても、2五飛と打つ手が“詰めろ”になり、受けもないので、先手勝ち。
 なので後手は6一歩と受ける。先手は5一歩成(5一同銀なら、8四馬、同銀に、3三金で、後手玉詰み)
 後手6六銀(次に7六歩と打てば先手玉に詰めろがかかる)には、2五飛(次の図)

研究2六香図05
 2五飛(図)と打って、後手玉に先に“詰めろ”がかかり、受けもなし。先手勝ち。

研究2六香図06(6三歩図)
 (イ)5四銀(先手の3三歩成、同玉、8四馬、同歩、3五飛を先受けした手)には、6三歩(図)
 そこで後手がどう指すか。
 5三金6三同銀、それから 6五銀7六桂 が考えられる(同金7二金 は5二角成がある)
 まず 5三金 には、3三歩成、同玉、3六飛、4四玉、8四馬(次の図)

研究2六香図07
 これで先手勝ち。

研究2六香図08
 6三同銀(図)の変化。
 この場合は先に8四馬と金を取り、同銀に、3三歩成とする。これを同玉なら、3五飛、4四玉、4五金、5三玉、6五桂でぴったり詰みになる。
 なので3三歩成は同銀だが、5一竜で―――(次の図)

研究2六香図09
 先手勝勢である。

研究2六香図06(再掲6三歩図)
 「6三歩図」まで戻って、後手がここで攻めの手を指すなら、6五銀7六桂 になる。 しかし 6五銀 は、3三歩成、同玉、6二歩成で、後手玉が3五飛以下の“詰めろ”になっているので、次の後手の狙いの7六銀が間に合わず、先手勝ち。
 よって、後手は 7六桂 に期待を賭ける(次の図)

研究2六香図10
 7六桂(図)、3三歩成、同玉、6二歩成、8八桂成、3六飛(次の図)

研究2六香図11
 4四玉、3四金、5三玉、8八金、同と、6五桂(次の図)

研究2六香図12
 6四玉に、6三と、同銀、同角成、同玉、7三桂成以下、後手玉が詰んでいる。

研究2六香図13(2四歩図)
 後手7七とに先手9八金のところまで戻って、そこで、「6二金」に代えて、「2四歩」(図)という手もある。 2六香に対しての2四歩は緩い感じだが、しかしそれでも先手の2五飛打ちの攻めは消している。
 この「2四歩」には、同香、2三歩、同香成、同玉に、7八歩とすれば、上の[調査研究:2五香]で調べた変化に入り、それの研究結果は、「先手良し」だった。
 だから先手はその順を選んでもよいが、ここはもっと有力な指し方がある(次の図)

研究2六香図14
 3七桂(図)と跳ねるのが良い。 そうして、次に、5二角成(または8四馬)から金を入手すれば、2四香以下の“詰めろ”になる。
 それを先に受ける6二金があるが、その手には3三歩成、同桂、3四歩と指す(次の図)

研究2六香図15
 これで先手良し。
 3三桂と跳ねさせたので、後手の3一玉には1一飛と打てる(以下2二玉に、8四馬)
 図の3四歩に2五桂なら、4五桂として、次に3三歩成をねらえばよい。

 これで、【P】7五桂 は先手良しがはっきりした。

2六香基本図(再掲)
 「2六香基本図」に戻ろう。
 【Q】7六歩 が、後手のもう一つの有力手である。
 (〔梅〕2五香の場合にはこの7六歩はなかった。2六飛と打てば3一桂に2三香成、同桂、2四金であっさり先手勝ちが決まるから)

研究2六香図16(7六歩図)
 【Q】7六歩(図)は、桂馬を使わず攻めようという意図がある。桂馬を持っておいて、この桂を攻めと受けの両方に使う可能性を残しておく。
 7八歩に、6六銀とする。 そこで、9七玉とする(次の図)

研究2六香図17(9七玉図)
 9七玉(図)として、後手がどう攻めるか様子をみる。
 7五桂のように桂を使ってくるなら、2五飛と打って、後手に受けがないので、先手勝ちになる。
 よって、後手は桂を使わず先手玉に迫る手を指したい。すると「7八と」か、「7七歩成、同歩、同銀成」、あるいは、「7七歩成、同歩、同と」の3通りの手が考えられる。
 “正解”を先に言っておくと、「7七歩成、同歩、同銀成」が最善である。
 「7八と」は、3七桂、7七銀不成、5二角成で、先手良し。
 「7七歩成、同歩、同と」なら、 7八歩と打つのが良い(次の図)

研究2六香図18
 7八同となら、2三香成、同玉に、2六飛、2五歩、6六飛と銀を取って、先手良し。
 そして7六とは、5二角成で、先手良し(5二同歩に2三香成、同玉、2一竜)

 なので7八歩に、7六歩が有力手となる。
 先手は2五飛と打つ。 3一桂の受けに、3七桂(次の図)

研究2六香図19
 こうなって、先手優勢。
 8四馬で金を取れば、2三飛成以下の“詰めろ”になる。5二角成もある。

研究2六香図20
 先手の2五飛に、2四桂と受けた場合には、8五歩(図)がある。 7四金なら6六馬がある。
 よって後手7五金だが、同馬、同銀、同飛で、“二枚替え”。
 この時に、「7八歩、7六歩」の手交換の効果で、もしこの手交換がなかったら、ここで7九角、8六玉に、“7六と”があって、後手良しになっていた。 この場合は後手に7六歩と打たせてあるため、その“7六と”がない。
 この変化は、先手良し。
 以下、6二金に、2四香、7九角、8六玉、2四角成、3五銀(次の図)

研究2六香図21
 以下、3一玉、5二角成、同金、2四銀、同歩、7三飛成が予想されるが、先手優勢である。

研究2六香図22(7七同銀成図)
 そういうわけで、「研究2六香図17(9七玉図)」から、「7七歩成、同歩、同銀成」(図)が後手の “正解手順” となるのである。
 ここで、先手の有力手は、2五飛 である。

研究2六香図23(2五飛図)
 さて、2五飛(図)と打ったこの図は、どちらが良いのだろうか。(最新ソフト評価値は -7 を示している)
 後手は2三飛成以下の“詰めろ”を受けなければならない。 こういう時のために、温存していた「桂」がある。
 受けは3種類である。
 〔1〕3一桂、〔2〕1一桂、〔3〕2四桂 の3つ。
 (これについて調べ始めた時には先手たぶん勝ちだろうと思っていたが‥‥意外にも苦戦するのである)

研究2六香図24
 〔1〕3一桂(図)は、先手が勝てる。 先手は3七桂と桂をはねる。
 そこでたとえば後手7六桂なら、8四馬、同銀、2三飛成、同桂、同香成、同玉、3五桂(次の図)

研究2六香図25
 後手玉が、“詰み”。

研究2六香図26
 戻って、今の詰み筋を消して5四銀には、5二角成(図)がある。こちらの詰み筋もあったのだ。 
 〔1〕3一桂、3七桂 と進んだ局面では、もう後手によい手がなく、先手良しになっているようだ。

研究2六香図27
 〔2〕1一桂(図)。
 これは上の〔1〕3一桂と同じように見えるが、そうではなかった。 〔2〕1一桂は「3一」が空いているのが大きい違いとなる。
 上と同じように、3七桂とするが、そこで6二金がある(次の図)

研究2六香図28
 今度は8四馬(金を取る)には、3一玉と応じ、後手優勢になる(1一に桂を打ったので3一玉の手が可能となる)
 なので、6二金には、5二歩としてどうか。以下6一歩に、6三歩がある。以下、3一玉(次の図)

研究2六香図29
 6三歩には後手受けがないので3一玉(図)で勝負。
 以下6二歩成、同銀右、5一歩成、同銀右、6一竜(次の図)

研究2六香図30
 これは先手良しになった。

研究2六香図31
 しかしまだ、後手には “別案” がある。 先手の3七桂に、3一銀(図)という手がある。
 この手は、「4二」に空間ができたことで、後手玉が広くなっている。なので8四馬で金を入手しても、同銀で(後手玉が詰まず)後手優勢になる。
 だからここで先手は4五桂と跳ねたいところ。以下、4四銀に、そこで8四馬(後手玉は3三金以下詰めろ)とする。
 以下、4二金、7三馬、4一金と進んで、これは形勢不明(どちらかといえば後手寄り)
 4五桂で勝ちきれないなら、先手はもうだめかとも思ったが、6一竜が発見できた(次の図)

研究2六香図32
 3一銀に、6一竜(図)とする。
 「6一竜」と竜を近づけることで、8四馬、同歩に、2三飛成、同桂、同香成、同玉、3五桂、3四玉、4五金、3三玉、2三金、4二玉、5二角成、同歩、4一金までの“詰み”となる。この最後の5二角成を同玉と取らせないための、「6一竜」なのであった。
 この詰み筋を受けるには、後手5四銀(4五に利かせ5三の空間をつくった)がある。
 しかし、8四馬、同歩、3三金(次の図)

研究2六香図33
 それでも、後手玉に“詰み”があった。 3三同歩、同歩成、同玉、3四歩、4二玉、3三金以下。これは長手数になるのでその先の手順は省くが、どうやら「6一竜で先手勝ち」として良さそうである。
 後手〔2〕1一桂の受けは、苦労はしたが、なんとか撃破できた。

研究2六香図34(2四桂図)
 第3の手として、〔3〕2四桂(図)がある。
 こう桂を打って受けられてみると、先手は攻め手がわからない。
 飛車を渡す攻め(2四飛)も角を渡す攻め(5二角成や8四馬)も、先手玉がすぐ詰まされてしまうので、できない。
 8五歩がありそうだが、同金、同飛、8四銀で、後手良しになる。この筋がうまくいかないのが痛かった。
 ここは「7八歩、同と、8五歩」が最善手順のようだ。これで先手も闘える。 今度8五同金には、6六馬という活用があって、先手優勢になるという仕組みだ。
 「7八歩、同と、8五歩」に、8八と、8六金と進むことになる(次の図)

研究2六香図35
 以下は(複雑すぎて大変なので)解説抜きで、有力手順のみ示す。
 6二金、8四歩、3一玉、8五角成、8四銀、4一金、2二玉、7八歩、8五銀、同飛、9九と、6六馬、4四角(次の図)

研究2六香図36
 7七馬、8四香、5五飛、9八と、同玉、8六香、8八歩、7六桂(次の図)

研究2六香図37
 盤上の桂を活用する7六桂(図)という味のある技が飛び出した。以下、9七銀、8八桂成、同銀、同香成、同馬、8六銀と進みそうだ。こう進むと、やや後手ペースの戦いという感触。 先手はなかなか2四香という攻めの余裕がつくれない(「dolphin1/orqha1018」評価値は-258)
 途中、お互いに変化する手はあるし、形勢は「互角」とするしかないが、“感じ”としては、先手はおもしろくない戦いになっている。


2六香基本図(再掲)
  〔桃〕2六香 は 7六歩以下 形勢不明(後手寄り)



 そして、「6七歩図」の調査研究のまとめは、こうなった。

6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 後手良し → 互角
  〔栗〕8九香 → 先手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 → 先手良し
  〔柏〕2六飛 → 先手良し
  〔橘〕3三香 → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行
  〔桐〕9八玉
  〔桃〕2六香 → 形勢不明(後手寄り)


第41譜につづく
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