はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part139 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第38譜

2019年12月15日 | しょうぎ
≪最終一番勝負 第38譜 指始図≫


    [アリスの不思議な省略]

「『鏡の国のアリス』はチェスの駒の話ではございませんでしたでしょうか?」
「そのとおり」アヴァロンは鷹揚に言った。権威に祭り上げられて彼はすっかり気を好くしていた。「赤と白のクイーンが芯の主役でね。白のキングも科白(せりふ)があるが、赤のキングと来たら、木の下で寝ているだけだ」
「騎士(ナイト)も出てまいりますですね?」
 アヴァロンはうなずいた。「白のナイトが赤のナイトと闘って、その後アリスを最後の目(ファイナル・スクウェア)まで連れていく。二冊を通じてこの白のナイトはもっとも好ましい正確に描かれているし、アリスに対してただ一人好意的なんだ。一般的には、この白のナイトはキャロル自身だと言われているね」
「わかった、わかった」トランブルがもどかしげに言った。「で、きみは何が言いたいんだ、ヘンリー?」

     (『黒後家蜘蛛の会1 』 アイザック・アシモフ著 池央耿訳 創元推理文庫 より)



 ある男が「黒後家蜘蛛の会」に招待され、そこで自身が直面しているある “謎” について、話すことになった。
 その男は65歳で、元土木技師、生涯独身。 男には25年来仲良くしている親友がいた。週末は二人でいつも室内ゲームを楽しむゲーム友達だった。 その “親友” は、いろいろなゲームについて考えることが大好きで、チェスやカードゲームやバックギャモン、モノポリー、囲碁などさまざまな室内ゲームに精通していた。 二人で対戦し、勝つのはほとんど “親友” のほうだった。 それでも、男は、彼とのこの付き合いが楽しかったという。
 その “親友” が死んで、その“親友”は生前からその財産の一部――1万ドル――を男のために残すと言っていたのだが、実際に弁護士のもつ遺言の中にそれはしっかりと書かれていた。 ただし、その「1万ドル」はある銀行の貸金庫に納められているというが、「貸金庫の鍵」は渡してもらえなかった。 一年以内にその銀行に行って「1万ドル」を取らないと、その遺産の贈与の条項は撤回されて、そのお金は別の処分がなされることになっていると、“親友”の弁護士は言う。 その弁護士も、「鍵」がどこにあるか、聞いていないのだった。
 そして弁護士は、男に「封筒」を渡した。 それを開けると、一枚の紙に『アリスの不思議な省略』とだけ、書かれていた。
 病院で、男は、“親友” の最期を看取ったのだったが、その彼の口から出た最期の言葉も、それ――『アリスの不思議な省略』だったのだ。
 これは、彼の残した “謎解きゲーム” なのだった。 この “謎” を解けるか、勝負だ、ということだ。

 「黒後家蜘蛛の会」は、弁護士や化学者、数学者、作家など別々の職業をもつメンバー(レギュラー6名)によって構成された、女人禁制の会である。 彼らはニューヨークのあるレストランに月に1回集まって飲み食いをしながらおしゃべりをする。 ただそれだけの会合であり、それ以上の目的はない。
 しかし、おしゃべりのための“燃料”は欲しい。 だから、誰かゲストを招待する。
 おしゃべり好き、議論好き、推理好きの彼らにとって、とくに“謎解き”は、大好物であった。

 第11話が、この『アリスの不思議な省略』の回である。
 この謎を一番先に自分が解こうと、彼らは、この『アリスの不思議な省略』というメッセージの謎について、意見を交わす。
 あれこれと、議論が進んだが、その内容はルイス・キャロルの小説『不思議の国のアリス』を中心にしたものだった。 議論は白熱するが、やがて行き詰まる。
 答え――――「鍵」の在処は、わからないまま。

 そして終盤、黙って食事の皿や飲み物を運んでいた初老の男――「給仕」のヘンリーが口を開く(これがこの小説のお決まりのパターン)
 彼は、アリスの物語は『不思議の国のアリス』だけではなく、『鏡の国のアリス』もあることを指摘する。
 そして、『鏡の国のアリス』の中には、チェスの「駒」の役割をしたいろいろなキャラクターが登場してくる。 ところが、なぜか、6種類あるチェスの駒のうちの「ある駒」だけは、『鏡の国のアリス』には登場していないのだという。
 それは「ビショップ(僧正)」だった。
 つまり、これが “不思議な省略” の答えだった。
 すると1万ドルの金庫の「鍵」は――――



<第38譜 鮮烈の3三香>


≪最終一番勝負 第38譜 指始図≫

 この図を一手戻した図、「6七と図」を、我々は目下、研究調査中である。


6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 後手良し
  〔栗〕8九香 → 後手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 先手良し
  〔柏〕2六飛 形勢不明
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行
  〔桐〕9八玉

 これが、ここまでの調査結果だが、今回調査する手は2つ。
 〔橘〕3三香 と、〔柏〕2六飛 を調査する。



[調査研究:3三香]

3三香基本図
 〔橘〕3三香 は、ここにきて初めて登場した手である。

 3一銀に、5二角成。
 以下、〈A〉5二同歩 には、4一飛(次の図)


研究3三香図01
 4一飛(図)と打ってみると、後手はもう受けが難しい。 4二銀引は、同飛成で無効。
 4二角の受けも先手が勝つ。 3一飛成、同角、3二香成、同玉、4一銀、2二玉、3二金(次の図)

研究3三香図02
 以下、1一玉に、2一金、同玉、3三桂、2二玉、2一金まで、後手玉“詰み”

研究3三香図03
 しかし、5四角(図)がある。 9七玉に、8一桂と打って、ここで後手の“二枚飛車”の攻めを止めるのだ。
 8一同竜、同角、同飛成、4二銀引(次の図)

研究3三香図04
 しかしここで 3二香成が好手。同玉には、2四桂があって、同歩なら4一角から、2二玉としても3二金以下詰んでしまう。
 よって、3二香成は、同銀。
 そこで5四桂(次の図)

研究3三香図05
 この 5四桂(図)が詰めろでなければ、7七と で後手有望の変化になっていたが、“5四桂は詰めろ”なのだ。 3一銀以下。
 よって、ここで後手は 7七飛 と勝負手を放つ。 8七金に、9五歩。
 以下、7七金、9六歩、9八玉(次の図)

研究3三香図06
 後手の攻めが続かない。先手勝ち。

研究3三香図07
 戻って、5四桂に、5一飛(図)と受けた場合。
 対して、7二竜でも先手が良いが、ここでは 3三歩成以下の攻め手順を紹介しておく。
 3三歩成、同桂、5一竜、同銀、6一飛(3一角以下詰めろ)、2一飛、3四歩、9五歩、3三歩成、同銀、3四歩、9六歩、9八玉、3四銀、3五歩(次の図)

研究3三香図08
 先手勝勢。 3五同銀には3四金。 4五銀なら、3七桂。

研究3三香図09
 というわけで、5二角成を、〈A〉5二同歩 では、後手の勝ちがないとわかった。
 その手に代えて、〈B〉7五桂(図)を以下、考えていく。
 〈B〉7五桂、9七玉、7七と。後手の“希望”としては、ここで9八金と先手に受けさせたい。 それなら5二歩と手を戻して、後手勝ちとなる。
 しかし、7七とに、そこで「4三馬」がある(次の図)

研究3三香図10
 「4三馬」(図)が、好手(この手は調査報告ではもう何度も出てきた筋)
 この場合、3三香が後手陣に刺さっているので、ここで7六歩などでは、3二香成、同銀、3三金以下後手玉が詰む。
 後手はここで 4二銀引が指したい手なのだが、それも、やはり 3二香成、同銀、3三金がある(次の図)

研究3三香図11
 やはりこれで後手玉が“詰み”

研究3三香図12
 というわけで、後手は先手4三馬に、8七桂成(図)からこの馬を消す手を選ぶしかない。
 以下、8七同馬、同と、同玉となる。
 そこで 4二銀引 が後手指したい手だが 4三歩があって後手悪い。 6二銀右も 5四歩、同銀、6一竜で後手悪い。
 攻めるなら 6六銀だ。 後手の持駒は「角歩三」。 角だけでは攻め切れないので、後手は盤上の駒を生かす攻めになる。
 6六銀に、先手は5一竜(次の図)

研究3三香図13
 この5一竜(図)は、3二香成、同銀、3三金、同銀、同歩成、同玉、5三竜以下の“詰めろ”になっている。
 後手は6五角。 攻防の手だ。 これで後手玉の詰みは消えた。
 以下、8八玉、7六歩に、4四桂(次の図)

研究3三香図14
 4四桂(図)が、“決め手”
 これを同銀なら、4一飛と打って、後手は受けがない(そして桂を渡しても先手玉に詰みなし)
 7七歩成、8九玉、4二銀引と受けたが、それでも詰みがある。 3二桂成、同銀、同香成、同角(同玉は2二飛、同玉、4二竜以下)、3三金(次の図) 

研究3三香図15
 3三同銀、同歩成、同玉に、4二銀以下、並べ詰め。


3三香基本図(再掲)
 結論。 〔橘〕3三香 は「先手良し」 である。

 この「勝ち筋」は、内容的にも不安なところがなく、「一番勝負」の実戦でこの手が見えていたなら、迷わずこの〔橘〕3三香 を選んだだろう。
 つまり実戦中は、この手はまったく見えていなかったのである。
 この「3三香」の筋は、調査研究ではもう何度も目にしているが、それは“戦後”の研究だからである。一度この攻め筋があるとわかれば調べるのだが゙‥‥。 実戦中にわれら終盤探検隊が使用していたソフト「激指」はこの「3三香」の筋を軽視していたようで、ほとんど候補手として示さなかったのであった。



[調査研究:2六飛]

2六飛基本図
 〔柏〕2六飛 を再調査する。
 
 対する後手の応手は、[1]7五桂 が最善手である。

 桂馬を温存してたとえば[2]7六歩(または[3]6六銀)は 2五香で先手良し。 3一桂と受けても2三香成、同桂、2四金で受けがなくなるし、2四桂と受けても2四同香、同歩、3五桂で先手勝勢。
 [4]1四桂 とここで打つのは 3六飛(次に3三香がきびしい攻め)、4四銀引、1五歩で、先手優勢。
 また[5]6二金 は、3三歩成が好手になる。 同銀なら、5一竜、4二銀右(4二銀左は3九香がある。3一桂にも3九香)、2五香、1一桂、5五竜で先手良し。 3三同玉なら、3七桂(3五香以下詰めろ)として、やはり先手優勢である。 3三同桂は、2一金、同玉、2三飛成、1一玉、8四馬で先手勝ち (この後手3三同桂に2一金からの寄せがあるのが2六飛打ちの効果の一つ)

 つまり、〔柏〕2六飛 には、[1]7五桂 が最善手で、以下9七玉、7七と と進むことになる(次の図)

研究2六飛図01
 ここで、9八金 と、8九香 とがある。
 後手としては、「7五桂、9七玉、7七と」と先に詰めろをかけることで、金か香を先手に使わせ、先手からの攻めを緩和する意味がある。
 戦闘中の検討では、次の結果となっていた。
  9八金 → 後手良し
  8九香 → 形勢不明(とくに掘り下げて調べてはいない)

 これを、「再検討」していく。 まずは 8九香 から。

研究2六飛図02(8九香図)
 8九香(図)と、香で受けた。
 2五香と打って攻めに使いたい香車を受けに使ったので、この後の方針がはっきりしない、と 第34譜 では書いている。
 しかし今なら、わかる。ここは「後手の桂馬を取って1五桂と打つ」という方針でいけばよい。
 ここで仮に先手の手番なら、7六歩か8五歩か6五金か、その3つの手が候補手となる。いずれも後手の7五桂を入手して、それを1五桂と打って攻めるという意味だ。
 実際には手番は後手にある。
 後手の有力な攻め手は、【紅】7八歩。 先手が打った8九香を取りに行く手だ。 7八歩以下、どうなるかを考えてみよう。
 【紅】7八歩 には、8五歩とこの歩を突く(次の図) 

研究2六飛図03
 8五同金ならどうなるかをまず見ておく。
 8五同金、7五馬、同金、1五桂、1四角、2五金(次の図)

研究2六飛図04
 これで、先手勝勢。 「桂馬を取って1五桂」が実現した。
 図以下、2五角、同飛、2四金は、同飛、同歩、2三金で寄り。
 図で6二金もあるが、1四金、3一玉に、6三角打で、先手の勝ちは動かない。

研究2六飛図05
 ということで、先手8五歩まで戻って、後手は7九歩成と攻め合うのが本筋の手になる。
 以下、8四歩、同銀、同馬、同歩、5二角成(次の図)

研究2六飛図06
 5二同歩なら、3三金、同歩、2一竜以下、“詰み”
 よって後手は7八角と攻めの手を指す。これは詰めろなので8六玉と逃げるが、7六とと追撃する。以下、同飛、同桂、4一馬、6四銀引、9四竜(次の図)

研究2六飛図07
 先手玉は捕まらなくなり、この図は、先手が少し良い形勢である。
 以上、見てきたように、7八歩なら、先手が良くなる。

 しかし―――――

研究2六飛図08(4四銀引図)
 8九香 に、【白】4四銀引(図)がある。 これがおそらく、8九香に対する後手の最善手と思われる。
 この手はどういう意味かというと、後手は次に3五銀を狙っているのである。先手が桂馬を入手すると1五桂が厳しい、だからその攻めが来る前に、先手の攻めの要の駒の2六飛を目標として攻めてくる、という意味の手である。
 先手は、それでもやはり 8五歩 が最善手と思われる。 8五同金ならやはり7五馬だが……、そうはならない。
 8五歩に、3五銀(次の図)

研究2六飛図09
 そして2五飛に、2四銀。 これで後手の2筋が手順に強化された。2六飛なら8五金で後手良し。
 なので先手は、5五飛と展開する。 それには後手7四金(次の図)

研究2六飛図10
 7四金(図)に代えて8五金は、7五馬があった。以下同金、同飛は先手が良い。
 7四金にも7五馬は考えられるが、同金、同飛、7九角のときに(歩で受けられないので)8八桂と受けさせられ、以下7六桂、7三飛成、8八桂成、同香、同角成、8六玉、6二金―――これはどうやら後手良し。
 ここは、調査の結果、“9四馬”がベストの手と思われる。(最新ソフトの推奨は2六歩だったがそれは後手良しになった)
 “9四馬”、9三歩、同馬、8四歩、8六玉(次の図)

研究2六飛図11
 8六玉は、9五玉からの"入玉"と、7七玉のと金取りの両狙い。
 (この8六玉を後手が未然に防ぐため、8四歩に代えて7六とが考えられるが、それは先手7七歩があって無効。 また8四歩に代えて8五金は7五馬で先手良し)
 "入玉"は許せないので、後手は8五金。
 以下、7七玉、4四銀、6五飛(代えて5九飛は7六金以下先手負けになる)、7六金、6八玉(次の図)

研究2六飛図12
 ここで5六桂も考えられるが、5九玉以下先手良し。
 よって、後手は4九金。 以下、5八玉、3九金、8三馬、6七桂成、4八玉、2九金、7三馬、6三歩、5三歩、同銀引、3三銀(次の図)

研究2六飛図13
 ここで攻めに転じる。 3三銀(図)
 3三同桂、同歩成、同銀引、3四歩(同銀なら2六桂)、4四銀左、5二角成、5七成桂、3八玉、1九金、3三桂(次の図)

研究2六飛図14
 3三同歩に、5一馬左で、先手優勢だ。
 これで、後手【白】4四銀引には、手順を尽くせば先手良しになるという結果となった。

研究2六飛図02(再掲8九香図)
 8九香(図)には、【紅】7八歩でも、【白】4四銀引でも、先手が良くなった。
 よって、8九香 で「先手良し」、を結論とする。


研究2六飛図15(9八金図)
 7七とに、9八金(図)の道も考えよう。
 この手は、実戦中の結論は「後手良し」だったが、最新ソフトを使った「再調査」ではどうなるだろうか。
 ここで「8七桂成(8七と)」で清算する手は有力だが、8七桂成、同金、同と、同玉、3五金となって―――(次の図)

研究2六飛図16
 先手の飛車が捕獲され、後手がしてやったりという感じだが、実はここで5二角成以下、先手良しになる(詳しくは 第34譜 で)
 
研究2六飛図17
 9八金 には、「6二金」(図)が後手最善手である。
 ここで先手の狙い筋の〈1〉2五香 は、3一玉で角を取りにこられて、先手不利になる。この3一玉が後手6二金のねらい。 また〈2〉3三歩成 は、同桂で難しい形勢(先手苦戦か)

 〈3〉3三香 は有力で、これは実戦中には見えなかった手(次の図)

研究2六飛図18
 〈3〉3三香(図)、同桂、同歩成、同玉、3七桂と進み―――(次の図)

研究2六飛図19
 これは形勢不明(互角)

研究2六飛図20
 戻って、「6二金」には、先手〈4〉6三歩(図)と打つのが最有力と目される手。
 対して、「7六桂」が後手の勝負手である(次の図)

研究2六飛図21
 ここで (a)「6二歩成」は、先手攻め合い負けする。 それを確認しておこう。
 (a)「6二歩成」、8八桂成、同金、同と、同玉、8七金、8九玉、7七歩、7九歩、6九金(次の図)

研究2六飛図22
 このとおり、先手負けになった。

 というわけで、後手の「7六桂」に先手は一旦受けなければいけない。

研究2六飛図23
 だから、(b)「8九香」(図)が考えられる。 しかしこれで先手は2五香を打てなくなった。
 後手は3一玉と角を取りにくる。以下、8五歩、4一玉、8四歩、7四銀(次の図)

研究2六飛図24
 こう進めてみると、どうやら「後手良し」である。 6二歩成に、7九角、8六玉、6八角成で、先手玉が逃げられない。
 この(b)「8九香」以下の変化が先手悪いとわかったので、 実戦中においては、この道は「後手良し」と判断したのだった(第34譜

 しかし、その結論を覆す、(b)「8九香」に変わる手が、“戦後調査”で、最新ソフトによって発見された!

研究2六飛図25(7九歩図)
 この(c)「7九歩」(図)が、 “新発見の手”である。
 8八桂成以下の攻めをこの歩で受けるのである。 具体的にどうなるかを見てみよう。
 〔カ〕8八桂成、同金、同と、同玉、8七金、8九玉、7七歩(先受けしてあるのでこの手が詰めろにならない)、1五桂、3一玉、6二歩成(同銀右なら5二角成)、4一玉(角を取る)、5二金、3一玉、4二金(次の図)

研究2六飛図26
 図以下、4二同銀に、2三桂不成、2二玉、1一銀で、後手玉“詰み”
 先手勝ちになった。

 というわけで、(カ)8八桂成、同金、同と、同玉、8七金 という攻めには、1五桂で先手が勝てるとわかった。

研究2六飛図27
 そこで、〔カ〕8八桂成、同金、同と、同玉に、3一玉(図)とするのはどうか。
 6二歩成、4一玉、5二金、3一玉、2三飛成(次の図)

研究2六飛図28
 こうなって、やはり先手が勝てる。
 8七金、8九玉、6七角には 7八香 と受けて先手良し(桂馬は攻めのために残しておく)
 6六角には、7七香と受ける。 以下8七金、8九玉、7七角成に、4二金、同銀、2二銀、4一玉、5三桂(次の図)

研究2六飛図29
 後手玉がピッタリ詰んだ。

研究2六飛図25(再掲7九歩図)
 〔カ〕8八桂成は、先手良しになった。
 単に〔キ〕3一玉とするのも、6二歩成、4一玉、2三飛成、6二銀右、6一竜で先手が勝ちになる。 以下5二角は、2一竜、3一銀、3三桂以下、後手玉は“詰み”である。

 他に、〔ク〕7二金、〔ケ〕7一歩、〔コ〕6六銀 が後手の候補手として考えられる。 これらの手を一つ一つ見ていこう。

研究2六飛図30
 〔ク〕7二金(図)には、2五香と打って、これも先手が良くなる(ここで香車が攻めに使えるのも7九歩で香を温存して受けたから)
 以下、3一玉に、5二角成(次の図)

研究2六飛図31
 すると、ここで後手7一歩がある。しかし後手は角を取っても、先手が7九歩を打ってあるので7九角の手がなく、その角をすぐに使う手がない。
 だからその前に8八桂成、同金、同と、同玉と先手玉を裸にして、それから7一歩と打ってどうか。
 以下、2三香成、2五歩、同飛、2四歩、同飛、5二歩、7一馬(次の図)

研究2六飛図32
 後手は角を入手できたが、7一馬(図)で、先手優勢。
 8七金、8九玉、6七角には、7八桂と受ける駒がある。 7九に打っておいた歩が有効に働いている。

研究2六飛図33
 (c)「7九歩」に、〔ケ〕7一歩(図)という手がある。
 これを 同竜 は先手おもしろくない結果になる。 すなわち、7一同竜、3一玉、6二歩成、8八桂成、同金、同と、同玉、6二銀右、6一竜、4一玉、2三飛成、5二角と進む可能性が高い(次の図)

研究2六飛図34
 ここで 9一竜、7四角、6一竜、5二角となって、千日手が濃厚の局面になる。 7二竜としても、6三角でやはり、千日手。なお、9一竜、7四角に、2一竜は、5二玉で、後手良し。

 なので、(ケ)7一歩には、6二歩成 とし、同銀右に、3三香と攻めるのが良い(次の図)

研究2六飛図35(3三香図)
 3三香(図)に、3三同桂は 8四馬、同歩に、2一金、同玉、2三飛成以下“詰み”
 よってこの図での後手の応手は、3一銀 と、3三同銀 とが考えられる。
 3一銀 には、7八歩 が好手になる(次の図)

研究2六飛図36
 7八と は、「桂馬が欲しい」という手である。 7八同と なら7六飛と桂馬を取れる(桂馬を入手して2六飛と戻り1五桂と打てば後手受けなし)
 よって後手は、8八桂成とする。 以下、同金、同と、同玉。
 しかしこれで先手には欲しかった「桂」が手に入った。 後手は、1五桂(3五桂)と先手に打たれる前に後手は攻め切りたい。
 8七金、8九玉、6七桂成、8八金(次の図)

研究2六飛図37
 これで先手玉は受かっている。
 しかし、8八金、同玉に、3五金という手がある。
 先手は 3二香成、同銀に、3三桂 と打ちこむ(次の図)

研究2六飛図38
 この手は 3二馬、同玉、4一銀以下の“詰めろ”なので、後手2六金の余裕はない。
 3三同桂に、2一金と打つ。 同銀なら2三角成、3一玉、8四馬で寄り。 同玉なら3三歩成である。
 よって後手は 3四金と応じ、2一桂成、3三玉と進む。
 そこで、4五桂が好手。 同金に、3四歩、4四玉、3二角成(次の図)

研究2六飛図39
 先手優勢。
 次に6五銀としばれば後手玉は受けなしになる。 5四玉なら3三歩成が効果的である。

研究2六飛図35(再掲3三香図)
 3三香(図)に、3三同銀 の場合はどうなるか。
 同歩成、同玉に、8二馬と馬の活用を図る(次の図)

研究2六飛図40
 これに対し、6四歩なら、8一馬と活用していく手が継続手になって、先手が良い。
 なので後手は 8二馬に、6四銀引と応じる(8一馬なら、今度は6三歩の受けがある)
 先手は3六飛。 以下3四香に、4六飛(次の図)

研究2六飛図41
 先手優勢である。
 次に3一金の寄せがある。 なので8八と、同金、同桂成、同玉、3一金が考えられるが、5五桂、4四歩、1一銀で寄っている。

研究2六飛図42
 (c)「7九歩」に、〔コ〕6六銀(図)が、意外性のある勝負手だ。
 後手の〔コ〕6六銀 のねらいは、同飛と取らせることで、先手の2筋の攻めを遅らせ、主導権を握って攻めようという意味である。
 対して先手は、2五香の攻め合いもあるかもしれないところだが、ここは 6六同飛と素直に銀を取る手を選んでみよう。
 〔コ〕6六銀、同飛、8八桂成、同金、同と、同玉、8七金、8九玉、7六歩(次の図)

研究2六飛図43
 先手の6二歩成や、2六飛~3五桂の攻めが来る前に、後手は攻め切ろうとしている。
 7六同飛、7八歩と進む。
 そこで 3三歩成(次の図)

研究2六飛図44
 3三同銀に、5一竜。 この手は詰めろではないが、「金」が入れば詰めろになる。
 後手6九金。 先手7八歩に、7七歩(次の図)

研究2六飛図45
 これには、7七同飛しかない。 以下、同金、同歩、7九飛、8八玉、1四歩。
 そこで3七香(次の図)

研究2六飛図46
 3七香(図)で、後手玉に 3二角成、同玉、3一金以下の“詰めろ”を掛けて、先手優勢。
 後手〔コ〕6六銀 の勝負手を、不発に終わらせることができた。


研究2六飛図15(再掲9八金図)
 これで、9八金 と受けた場合は、6二金、6三歩、7六桂に、(c)「7九歩」という好手があり―――

研究2六飛図25(再掲7九歩図)
 これで先手良しになるとわかった。 「香」を温存して受けることができ、その香を攻めに使うことができる。 角を渡しても7九角打ちがないし、「歩」一枚で後手のねらいを全て受けているというのが奇跡的なところだ。

 すなわち、9八金 以下「先手良し」、が明らかになった。 最初の調査から結果が逆になった.

 後手7七とに、9八金 でも、8九香 でも、先手勝ち筋があることがわかった。


2六飛基本図(再掲)
 以上の調査により、〔柏〕2六飛 は「先手良し」、と確定した。

 なお、この〔柏〕2六飛 と飛車を打ったは局面は、最新ソフト「dolphin1/orqha1018」の評価値は -328。 「激指14」の評価値は -662。 どちらのソフトも、「6七と図」での10個の候補手に、この〔柏〕2六飛 は挙げていない。
 それでも、調べていくと、「先手良し」になったわけである。
 これを我々(終盤探検隊)が調べはじめたのは、“直感”である。 〔柏〕2六飛は(勝ちの)可能性のある手だと、“感じた” からであった。



今回の調査結果を加えた「6七と図」のまとめ

6七と図
  〔松〕3三歩成 → 先手良し
  〔竹〕5二角成 → 先手良し
  〔梅〕2五香 → 後手良し
  〔栗〕8九香 → 後手良し
  〔柿〕7九香 → 後手良し
  〔杉〕5四歩 先手良し
  〔柏〕2六飛 形勢不明 → 先手良し
  〔桜〕9七玉 = 実戦の進行
  〔桐〕9八玉
  〔橘〕3三香 → 先手良し

 「6七と図」の調査結果は、このように書き替えられた。



第39譜につづく
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