はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

終盤探検隊 part125 ≪亜空間最終戦争一番勝負≫ 第24譜

2019年07月05日 | しょうぎ
≪亜空間最終一番勝負 第24譜 指始図≫ 5六とまで



    [妖怪・雲外鏡]
照魔鏡と言へるハ、もろもろの怪しき物の形をうつすよしなれハ、その影のうつれるにやとおもひしに、動出るまゝに、此かゞみの妖怪なりと夢の中におもひぬ
    (鳥山石燕著『百器徒然袋』(1784年)より)

ねずみ男「おいしそうなもちだなあ」
鬼太郎「おいしいにきまってるよ。妖怪もちだもの」
ねずみ男「どうだいこの鏡ととりかえんかい?」
   (中略)
女の子「そのころわたしの家にどろぼうが入り、鏡を盗んでどこかへいってしまったのです」
砂かけ婆「おまえのしわざだな」
子哭き爺「こんなやつがいるから妖怪の信用がなくなるんだ」
ねずみ男「とんでもない! ぼかあ女の子をたすけようとおもって、鏡を鬼太郎のところに運んだにすぎないのだ。どろぼうのふりしてよいおこないをしたのだ」
   (中略)
女の子「鬼太郎さえいなければこれからはしたいことができるのよ。おほほほほ。ねずみ男、川へ洗濯にいってくるから、鏡を穴に埋めといて」
    (水木しげる作『ゲゲゲの鬼太郎 鏡合戦』(1968年)より)


 中国から伝わるという「照魔鏡(しょうまきょう)」という鏡は、魔物の正体を明らかにするといわれている。
 「鏡」に妖怪の姿がうつっているので、この「鏡」はそのうわさに聞く「照魔鏡」なのかと思いきや、この「鏡」そのものが妖怪だったでござる――――というのが、鳥山石燕による「妖怪・雲外鏡(うんがいきょう)」の説明。
 鳥山石燕(とりやませきえん)は江戸中期の人物で、妖怪画をたくさん描いた。「妖怪・雲外鏡」は石燕の創作といわれている。

 この鳥山石燕の妖怪画集をタネ本として、昭和時代にたくさんの妖怪漫画を描いたのが水木しげる。
 『ゲゲゲの鬼太郎 鏡合戦』の中に登場する「妖怪・雲外鏡」は、ねずみ男を手下にして使い、「鏡の中に捕らえられた女の子(学校の制服姿)」のふりをして鬼太郎たちに近づいて、同情を誘い罠にかけて、「鏡」の中に逆に鬼太郎を閉じ込めてしまう。
 しかし、「ねずみ男、川へ洗濯にいってくるから、鏡を穴に埋めといて」という行動が油断であった。
 そのすきに目玉おやじが「照魔鏡」をもってきて、「鏡」の中の鬼太郎を救出。
 そして鬼太郎たちと「雲外鏡」の戦いが始まった。女の子に化けていた「雲外鏡」は、「照魔鏡」の光を当てられて本当の姿を現す。おそろしい顔の化け物だ(鳥山石燕が描いた通りの姿)
 鬼太郎は塩水をつかって、この妖怪を退治したのであった(古い鏡は銅でできているから塩水に弱いというリクツである)



<第24譜 予定は8七玉だった>

 「亜空間戦争最終一番勝負」が進行中。 いよいよ勝負所をむかえている。


≪最終一番勝負 第24譜 指始図≫ 5六とまで
 後手――≪亜空間の主(ぬし)≫――の指し手は △5六と(予想通り)

 さて、手番は先手の我々――終盤探検隊――だ。
 次のとおりの候補手がある。
  【子】3三歩成 
  【丑】2五香
  【寅】2六香
  【卯】4一角
  【辰】5四歩
  【巳】6七歩
  【午】8七玉
  【未】7三歩成

 以下に記す調査報告は、この図における“戦後調査”による結果である。一つ一つ解説していく。


3三歩成基本図
 【子】3三歩成(図)
 この手は、一手前、後手5六とに代えて7五銀~6六銀に対しては有効だった。 ところがこの場合はうまくいかない。
 3三同銀に、3九香と打つのが先手の継続手だが―――(次の図)

3三歩成図01
 そこで6六と(図)。 以下8七玉に、3四歩と受ける。
 そこで4一飛がこの場合の先手の期待の攻めなのだが、7五桂、9七玉、7七ととされて―――(次の図)

3三歩成図02
 先手玉に“詰めろ”がかかった。それが大きい。(もし詰めろでなかったら、3一角、1一玉、3二金で先手が勝てたところだったが)
 “詰めろ”を受けるために先手は持駒の金か角を使うしかない。しかしそれでは先手が勝てない。(たとえば9八角には4二銀右で先手は困っている。次に後手3二玉から飛車を取りにいく手がある)
 後手勝勢。


2五香基本図
 【丑】2五香(図)
 この香打ちの狙いは、「2六飛」と打つ手と、「2三香成、同玉、4五角」という寄せである。
 【丑】2五香 には、6六と、8七玉と進む(先手に6七歩などの受けの余地をつくらないために6六とを決めておく)
 そこで後手が何を指すのが正解か(次の図)

2五香図01
 候補手は、次の5つ。
 (1)7五銀、(2)7五金、(3)3一桂(1一桂)、(4)7五桂、(5)3一銀 

2五香図02
 (1)7五銀に、「2六飛」(図)でどうなるか。
 3一桂、2三香成、同桂、4一角、3二歩、2四金、3一桂、2三金(次の図)

2五香図03
 2三同桂に、1五桂で、後手はもう受けがない。
 なので、8六銀から反撃するが、9八玉と逃げる(次の図)

2五香図04
 この図の先手玉は、詰まない。
 「金香」を後手に渡しても先手玉は詰まない、ということで(1)7五銀には、2六飛以下の攻めで、先手が勝っているという結論となる。

2五香図05
 (1)7五銀には、「2三香成」(図)でも、先手が勝てる。
 2三同玉に、4五角と打つ。次に3三歩成、同玉、3四飛以下の“詰めろ”なので、後手はそれを2二桂と打って受けるが、そこで8四馬と金を取る手がある。
 8四同歩に、3三歩成、同玉、3二飛(次の図)

2五香図06
 鮮やかに寄せて、先手の勝ち。

2五香図07
 (2)7五金(図)。
 この手は、先手がここで「2三香成、同玉、4五角」の攻めを敢行してきたときに、いまの(1)7五銀の手との違いが出る。そこで7六金、9七玉(9八玉)となれば、先ほどは“質駒”だった金が7六まで移動してきている。だからそこで2二桂と受けると、難しい勝負となる。
 しかしこの(2)7五金は、「2六飛」に対しては対応できていない(次の図)

2五香図08
 「2六飛」(図)と打って、3一桂に、やはり2三香成、同桂、4一角、3二歩、2四金の攻め筋で、先手が勝てる。

2五香図09
 (3)3一桂(図)とあらかじめ受ける手はどうか。
 先手2六飛に、(7五銀や7五金では先ほどと同じなので)さらに1一桂と先受けする。
 そこで先手の手番になる。先手の次の手を見てから、後手はそれに対応しようということだ。
 2三香成、同桂、2四金と攻めていくと、7五香と打たれ、金を渡すと先手玉が詰まされるという状態になって、先手が悪い。
 ではどうするか(次の図)

2五香図10
 7三歩成(図)がよい。7五銀なら、6三とで先手良し(6三同金には4一角)
 7三同銀なら、後手の攻めが遅れるので、1五歩でも先手の攻めが間に合う(以下7四銀に、1四歩、同歩、1三歩、同香、4一角、3二歩、1二歩の要領)
 7五銀ではだめなので、後手は7五金とする。7五金に6三とは、同金、4一角、3二歩、6三角成、7六金、9七玉、7五銀で、これは先手金得して馬もつくったが、形勢不明、つまり「互角」の勝負となる。
 7五金には、9五歩が正着手(次の図)

2五香図11
 9五同歩、同香となって、「9六」に逃げる空間があれば、後手は7六金とは出てこれない。このままなら今度こそ6三とが間に合う。
 なので後手は7六と。以下、同飛、同金、同玉、7三銀、8五玉(次の図)

2五香図12
 先手優勢。 (図で後手8四飛には、同馬でも、9六玉でも、どちらでも先手が良い)

2五香図13
 (4)7五桂(図)。 これがおそらく後手の最善手であろう。我々の調査ではそう結論している。
 この手に対しては、8八玉と逃げる(9七玉だと7七とですぐ詰めろがかかるが8八玉なら詰めろが掛けにくい)
 以下、7六桂、9七玉、7七と、9八金(次の図)

2五香図14
 後手は桂馬を二枚投入して先手玉に“詰めろ”を掛け、先手はそれを9八金(図)と受けた。
 これで後手は攻め足が止まると、先手2六飛と打たれるだけで“受けなし”だ。
 だから8八桂成、とゆるまず攻める。同金、同と、同玉、8七金、8九玉、6七桂成、4五角(次の図)

2五香図15
 後手は“詰めろ”で先手玉に迫らなければいけないので、このあたりは“必然の応酬”である。
 後手の6七桂成に、先手受けがなければ後手勝ちになるところだが、4五角(図)があった。しかもこの4五角は、3三歩成、同玉、3四飛、2二玉、2三香成、同玉、3一飛成以下の、“詰めろ”にもなっている。
 したがって、後手はこの図では、7八成桂とするしかない。以下、同角、同金、同玉。
 そこで6九角(=王手香取り)があった。
 以下、8八玉、2五角成、4五桂、3四馬、3七桂(次の図)

2五香図16
 先手は3七桂(図)と桂をはねたところ(この手に代えて単純に5三桂成は同銀引で先手面白くないとみた)
 ここで後手6六銀なら、5三桂成、同銀引、4五銀、3三玉、2五桂と攻めて先手がやれそうというのが、3七桂の意味。
 しかし、後手4六銀が好手か(3七の桂馬を取るねらい)
 以下、4五金、3三馬、4四歩、3七銀不成(次の図)

2五香図17
 4一銀、3一歩、3四桂、1一玉、5二銀成、同歩(次の図)

2五香図18
 図以下、4二桂成は同銀で、3二歩には7六桂、7八玉、4四銀で、先手が攻め切れない。
 先手、少し苦しい形勢である。


2五香図19
 戻って、後手(5)3一銀(図)もある。
 これは受けに銀を使う用意をした手。ここで先手2六飛には、1一桂と受ける。
 図で3三歩成もありそうだが、同玉でその後がはっきりしない。
 ソフトの評価値による形勢判断は「互角」だが、先手のこの後の良い手順がみつからない。
 とすれば、後手としてはこれも有力な選択肢の一つとなりえる。

 以上の調査から、【丑】2五香 は、6六と、8七玉、7五桂以下、後手良しとする。


2六香基本図
 【寅】2六香(図)ならどう変わるか。
 (ここに香を打てば、今の6九角~2五角成という“王手香取り”の筋はなくなるわけだ)
 これには、6六と、8七玉の後、〔1〕7五金と、〔2〕7五桂を、有力候補手とみて調べていく。(7五銀は2三香成~4五角で先手良し)

2六香図01
 〔1〕7五金(図)には、2三香成と攻めていく。同玉に、4五角。
 これに対しては、7六金。(これで金を質駒として取られることがなくなった)

2六香図02
 7六金(図)には、9七玉と9八玉とどちらもありそう。
 ここでは9七玉を見ていく。
 後手は2二桂と受ける(これしか受けがない。3一桂は1一飛で先手勝勢)

2六香図03
 ここでの最新ソフトの評価値はほぼゼロの「互角」である。厳密にはどっちが勝ちなのか。
 ここで1一飛は、7五桂、1二飛成、2四玉以下、後手が良い。
 また2六飛、2四歩、3六飛は、3五歩、同飛、3二玉と対応され、これも後手良し。
 しかし、もう一つの有力手がある――――(次の図)

2六香図04
 3七桂(図)が好手となる。そして、どうやらこれで「先手良し」が確定のようだ。後手によい対応手順がない。
 この桂跳ねで、後手玉は次に、3三歩成、同玉、2四金、同玉、2五飛から、“詰めろ”になっている。
 3一桂と打つか、4四歩と空間をつくれば、その詰みはなくなるが、3三歩成、同玉、1二角成で、やはり先手がリードしている。

2六香図05
 〔2〕7五桂(図)。 この手は、【丑】2五香 のときには「後手良し」になったが、【寅】2六香 でどう変わるか。
 〔2〕7五桂には、先手玉が詰めろに簡単にならないようやはり8八玉と逃げる。
 そこで5六銀が後手の好手となる(次の図)

2六香図06
 【丑】2五香 のときには、8八玉に、7六桂と攻めていったが、この場合はここで、5六銀(図)と行くのが正解である。
 この5六銀は、先手の4五角を消している。そしてこの図は後手玉に“詰めろをかけにくい図”になっている(2五香型なら2六飛が打てた。そして3一桂に、2三香成、同桂、2四金で簡単に先手が勝てるところだった)
 どうやらこれで「後手有利」の図になっている。次は6七銀成が“受けにくい詰めろ”になる。それを6八歩と打って先に阻止しても、7六とから8七桂成の攻めを狙って、後手良しである。

 【寅】2六香 は、6六と、8七玉、7五桂以下、後手良し。

4一角基本図
 【卯】4一角(図)には、3二歩(次の図)

4一角図01
 そこで(あ)3三香、(い)3三歩成(同銀、5二角成)が有力な攻め筋で、他に(う)8七玉がある。

4一角図02
 (あ)3三香と攻めてみる。以下、6六と、8七玉、7五桂、9七玉まで決めて、3一銀と受ける(次の図)

4一角図03
 ここで先手に攻めがあるか。
 3七桂(次に4五桂)では間に合わない。
 5二角成 でどうなるか。5二同歩なら、4一飛で先手良し(4二銀引なら同飛成)

4一角図04
 しかし角成を放置して、7六と(図)が正着で、後手良しとなる。
 この7六とで、うっかり7七とは、先手4三馬という攻防の手があって、先手が有望な戦いとなる。(7六とに4三馬は8七桂成で一手詰め)
 7六とに、ここは金を使って受けるしかない。8八金。
 そこで5二歩と後手は角(馬)を取る。
 以下、4一飛、6九角、7八金打、4二銀引(次の図)

4一角図05
 先手に持駒の金二枚を使わされたのが痛く、先手が勝てない図になっている。
 ここで8四馬で金を補充しても、後手玉はまだ詰まないので、7八角成で、後手勝ちである。
 5二角成 は、その瞬間が甘く、先手勝てなかった。

4一角図06
 代えて、3六飛(図)。 この手は後手玉への“詰めろ”になっている。
 しかし4二金寄と強気に受けて後手が良い。
 6三角成では7七と、9八金、6五銀で先手勝てないのがはっきりするので、5一竜と勝負するが――
 以下、4一金、同竜に、8七桂成(次の図)

4一角図07
 8七同玉に、6九角の“王手飛車取り”がある。後手良し。

4一角図08
 3六に飛車を打つと王手飛車取りにかかってしまった。
 ということで、修正して 3七飛(図)ならどうか。
 これには、後手は4二銀引と受けるのが手堅い。
 先手は5三歩が“手筋”の一着(次の図)

4一角図09
 “5三同銀引”と後手が応じると、次の手があって、先手が勝ちになるのである(次の図)

4一角図10
 8四馬(図)と金を補充して、同歩なら、後手玉は詰んでしまうのだ。詰手順は、3二角成、同銀、同香成、同玉、3三銀、同桂、同歩成、同銀、3一金以下。(5三同銀で後手は玉の逃げ道を自ら塞いでしまった)
 そうかといって、詰めろを消す3三歩では、7五馬で攻めの要の桂馬を取られ、やはり先手勝ち。

4一角図11
 だから先手の5三歩に対しての後手の応手は、“同金”が正しい。
 以下、5四歩、同金(5二金は8四馬以下形勢不明)、8二竜、5二桂と進んで、この図になった。
 ここから先手後手どちらの攻めが早いのかという勝負になる(8四馬で金を取っても後手玉はまだ詰まない)
 予想手順の一例は、7三歩成、4六銀、3八飛、7六と、8八金、6七桂成、6三と、7五銀(次の図)

4一角図12
 5二とは、8六銀、9八玉、7七成桂で―――どうやら後手の攻めのほうが早い。
 したがって後手優勢である。

 以上の調査から、(あ)3三香 は後手良しが結論になる。

4一角図01(再掲)
 「4一角、3二歩」の場面まで戻る。(い)3三歩成(同銀、5二角成)ではどうだろうか。
 5二同歩に、3一飛。 3一に打ったのは、後手3四銀なら4一竜を用意した意味(その順は先手優勢)
 しかし、8一桂という返し技があった。(次の図)

4一角図13
 8一同竜に、5四角が“王手竜取り”。
 以下、7七玉、8一角、同飛成、5七飛、7八玉、6七飛成、8九玉、8七竜、7九玉、6七と(次の図)

4一角図14
 後手玉に詰みがないので、後手勝ちが確定した。
 (い)3三歩成(同銀、5二角成)も、先手勝ちがないとわかった。
 (なお先手5二角成を放置して7六ともあり、それでも後手優勢になる)

4一角図15
 しかしまだ、第3の手、(う)8七玉(図)がある。
 この手の狙いは、次に9七玉と“早逃げ”して、それから攻める狙いである。
 6六と、9七玉と進んで―――(次の図)

4一角図16
 ここで次に「3三歩成、同銀、5二角成」の攻めを狙いにしてどうだ、ということである。(これなら、後手8一桂~5四角の王手飛車の筋を未然に避けている)
 この図は、実は、後で解説する 【午】8七玉 の変化と合流する。よって、この図の検討と形勢判断は、そこで行うこととしたい。
 
 ということで、【卯】4一角 についての結論は、ひとまず「保留」としたい。


5四歩基本図
 【辰】5四歩(図)は、同銀と取らせて後手陣を弱体化する狙い。
 しかしこの手を相手にせず、6六と、8七玉、7五桂、9七玉、7六とと攻められて―――(次の図)

5四歩図01
 8八香(8九香は7七桂がある)、6六銀、5三歩成、7七銀成、9八金、5三銀引(次の図)

5四歩図02
 こう進んで、先手に速い攻めがなく、後手優勢の図になっている。
 ここで先手3七桂と力をためるくらいだが、以下、9五歩、同歩、8八成銀、同玉(同金なら9五金)、9六香(次の図)

5四歩図03
 後手の寄せが決まった。
 【辰】5四歩 は後手良し。


6七歩基本図
 【巳】6七歩(図)には、「6六歩」が本筋であるが、その前に「7五銀」の手について触れておく。

 ここで後手「7五銀」は、8七玉、6七歩成に、3三歩成、同銀、3九香となって―――(次の図)

6七歩図01
 これは、すでに調査済みの下の「参考図」(先手良し)と近い図になる。大きな違いは、後手が「歩」を一歩得している(つまり先手の持ち歩が一枚少ない)という点であるが、それによって形勢が変わるのかどうかが注目点となる。

 結論を言えば、「先手良し」で、変わらない。
 つまり、6六銀左なら3三香成、同桂、6一竜で、また3四歩には、4一飛、3一桂、6一角で、先手がリードできる(解説は省略)

参考図
 (後手5六とに代えて7五銀~6六銀左とした図。前譜で解説し「先手良し」と結論した)

6七歩図02
 後手「6六歩」(図)を本筋の手として、以下の変化を調査していく。
 この「6六歩」に対しては、やはり「3三歩成、同銀、3九香」が、先手期待の攻めとなる。(他の有力手では4一角があるが、届かない)

6七歩図03
 この「3三歩成~3九香」の攻めは、先手6七歩と後手6六歩の手の交換をする前だと、6六とで「後手良し」となった。(上の【子】3三歩成以下の解説を参照)
 しかし「6七歩、6六歩」の交換をしたこの瞬間は、6筋が渋滞し後手6六とが指せない状況になっている。だから「3三歩成~3九香」のほうが速い攻めとなりえるのである。
 「3九香」に、〔P〕3四歩が考えられる応手だが、他に有力なのは、〔Q〕7五銀、8七玉、4四銀引という指し方である。

 先に、〔Q〕7五銀、8七玉、4四銀引 から見ていこう(次の図)

6七歩図04
 後手は歩で受けずに、4四銀引と応じた。3三香成には、同銀と応じて、香車を持駒にして攻めに使えるという意味と、先手の4一飛には、3一歩と歩で受けられるという意味がある。
 実際、すぐに3三香成では先手攻め切れないようだ(調査研究では千日手が結論となった)
 先手ここは、8二飛と打つのが良い。

6七歩図05
 8二飛(図)と打ったところ。
 対して後手は6二桂と受けるしかない。(代えて3二歩は5二飛成、同歩、3一角以下詰んでしまうし、4二銀右と受けるのも、5二飛成で、同歩、8四馬で、後手玉に詰めろがかかって先手が良い)
 6二桂に、7三歩成。以下、6七歩成、6二と(次の図)

6七歩図06
 先手の攻めのほうが速いようだ。6二同銀なら、同竜、同金、3一銀(次の図)

6七歩図07
 後手玉は“詰み”。

 〔Q〕7五銀、8七玉、4四銀引 は、8二飛以下、先手が勝てそう、とわかった。

6七歩図08
 「3九香」に、〔P〕3四歩(図)。 これが本線となる。
 これには、4一飛と打つ。
 対して後手が 3一桂 なら、6一角(次の図)

6七歩図09
 これは前譜(第23譜)で解説した攻めと同じで、それに比べると後手の攻めが6六歩の形でむしろ遅くなっていて、この図は「先手良し」である。 4二銀右には3四香、4二銀左には3二歩で、先手が勝てる。

 しかし、結論はまだ早い。 このケースの場合、後手に“修正案”がある。

6七歩図10
 「4一飛」と打った手に対して、(3一桂 ではなく)4二銀引(図)がある。
 前譜(第23譜)のときには後手が「7五銀」と出た形だったので、この4二銀右に対してはここで先手5三歩があって後手がまずかった。しかしこの場合、銀が6四に居るので、5三歩は、“同銀引”と取れる。
 しかしそれでも、ここは5三歩と行くのが最善手と思われる。銀を引かせれば先手玉への圧力が減る。
 5三歩、同銀引、8五歩、7四金、6一角(次の図)

6七歩図11
 やはり6一角(図)と打つ。
 6二金、8三角成、8四歩、9四馬左、9三歩、同馬右、8四桂(次の図)

6七歩図12
 先手玉を“入玉”させたくない後手は技を駆使して阻止してくる。
 8四同馬引、6四桂、8七玉、8四金、同馬、3二角(次の図)

6七歩図13
 先手の飛車が捕まった。
 ここは、(1)4二飛成、(2)8五馬、2つの選択肢がある。(5一飛成は、同銀、同竜、4四歩で、後手勝勢)
 
 (1)4二飛成がより良い手のように思えるが、以下同銀右引、8五馬、8四歩、9四馬(8四同馬は7六飛で先手悪い)、8五飛(好手)、8六銀、4一角と進んでみると―――(次の図)

6七歩図14
 8五銀、同角、8六玉、9四角、9五玉とすれば“入玉”はできそうだ。しかし9三歩、同竜、6七角成、8四玉、7二金で、先手が悪い。

6七歩図15
 よって、「3二角」には、(2)8五馬(図)のほうが優るようだ。
 しかしそこで8四歩があり、9四馬に、4一角と、飛車をタダ取りされる。
 以下、8六玉に、7九飛(次の図)

6七歩図16
 ここで先手8五歩とし、以下8五同角、同馬、8九飛成、8七歩、8五歩、9五玉、9九飛成、8二金という進行が予想される。
 最新ソフトの評価値は「互角」。 そして、先手玉は“入玉”はできそう。すると負けはなさそうだ。
 しかし、先手にとって面白い進行とは思えない。「勝てるか?」といえば、それは疑問で、後手玉を攻略できる自信はない。
 そして、後手の“入玉”を阻止するのも難しそうにみえる。 4枚持っていた大駒のうち、2枚を後手に渡してしまったので、“相入玉”の持将棋に持ち込まれた場合、「引き分け」が濃厚と思われる。

 よって、結論はこうなる。
 【巳】6七歩 は、6六歩、3三歩成、同銀、3九香以下、「互角」。(持将棋の可能性あり)


8七玉基本図
 【午】8七玉(図)は、我々終盤探検隊が最有力と考えていた手である。しかし、読み切ってそう思っていたわけではなく、半分は「勘」である。
 実際のところ、どうなのだろうか。

 【午】8七玉 には、後手は6六とであろう。
 そこでさらに先手は、9七玉と玉を動かす。 “早逃げ”だ(次の図)

8七玉図01
 玉を9七まで逃げておけば、次に4一角、3二歩、3三歩成、同銀、5二角成、同歩、3一飛と攻めていくとき、後手8一桂と打って同竜に5四角で“王手竜取り”という筋がない―――というのが、9七玉の具体的なメリットだ。
 ただし5二角成を同歩と取らない可能性もあるし、そもそもこの局面、“手番は後手”だ。
 (なお、この図で「先手4一角と後手3二歩」の手を交換すれば、上の「4一角図16」と合流する)

 今回の調査報告はここまでとする。続きは次回に。


≪指始図≫5六とまで
 今回の調査の進捗状況は、この通り。
  【子】3三歩成 → 後手良し
  【丑】2五香  → (互角に近いが)後手良し
  【寅】2六香  → 後手良し
  【卯】4一角  → 結論保留(調査中)
  【辰】5四歩  → 後手良し
  【巳】6七歩  → 「互角」(持将棋の可能性あり)
  【午】8七玉  → これから調査
  【未】7三歩成


 すでに書いたが、我々終盤探検隊(=先手番)は、▲8七玉が予定だった。

 しかし結局、我々が選んで指したのは“他の手”であった。



第25譜につづく
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