ネギは日本人の食生活に独特の位置を占めている。
主役になることは滅多にないが、陰に日向にあちらこちらに驚くほどの頻度で出没している。
ネギが無くなるとどんなふうに困るか。
「わたしは毎日ネギをお腹いっぱい食べているので、とても困ります」
という人は少ないだろう(ヌタ好きの人は除いてですが)。
味噌汁にネギは欠かせないから、具が寂しくなる。
蕎麦はどうか。
ちゃんとした老舗の蕎麦屋のちゃんとした蕎麦なら「ネギが無いなら無いでいいや」と思うが、立ち食い蕎麦屋の蕎麦にはネギが絶対にいる。
納豆はどうか。
ネギあってこその納豆こそ派にとってはかなり困る。
チャーハンはどうか。
チャーハンはネギが無いと成立しない。
チャーシューが入っていても、卵が入っていても、ネギが入っていないとただの炒めご飯だ。
じゃあチャーハンを食べながら、ネギを味わい分けているかというと、そういうことはない。
いるのにいない、というのがチャーハンに於けるネギの立場だ。
ラーメンはどうか。
ラーメンも刻みネギの果たす役割は大きい。
ネギの入っていないスープと、入っているスープを飲み比べると明らかだ。
風味が違う。
焼き鳥はどうか。
焼き鳥もネギが無いと寂しい。
ねぎまはトリ、ネギ、トリ、ネギと交互に刺してある。
まず先端のトリを歯で引き抜いて食べる。
次にネギが口の中に広がるが、心は次のトリに向けられて、実際にいま噛んでいるのに味わっていない。
ネギはいつもこういう位置にある。
日本人は、こうしてネギを愛しているような気がする。