人生も終盤に差しかかると冒険はしんどい。
ほんのささやかな冒険でも気が重い。
結局マンネリズムが一番ラクだ。
昨日と同じ、一昨日と同じ、習慣化したことを習慣どおりにやるのが一番ラクだ。
冒険しなくなった日常が、日常的でないものを排除しはじめている。
話は変わるが、こんなことってよくあると思う。
ラジオから流れてきた曲に合わせ「恋人よ 僕は旅立つ 東へと向かう列車で~♪」、と何となく口ずさんで、えぇと、この唄歌った人、アノ、ホラ、エート、何て名前だっけ…
と、遠い昔を思い出しつつ、人生も半ばを過ぎると記憶力が減退し、固有名詞、特に人名が出てこなくなる。
すなわち老化。
脳がもう老化の準備を始めているのです。
そしてその行く手には、ボケ、徘徊、垂れ流し…。
そういうワケで、冒険しなくなった日常はこわい。
いずれ徘徊関係の方になって、去っていく公算が大きい。
では、とりあえず何をすればいいのか。
アタクシは「スタバでコーヒー」というのにトライした。
シャミネ松江店
スタバへひとりで行って、自分ひとりで注文し、道行く人を見ながらコーヒーを飲んでみたくなった。
通りがかった娘さんの二人連れが「アラ、あそこ見て見て、ステキなおじさまが小粋にコーヒーを飲んでるわ」と、ささやきあう。
是非そうなりたい、などと胸をときめかしたいのだ。
これまで同居人(妻ともいうが)や遼太くんとは一緒に、都会のターミナル駅や地下街にあるスタバへは行ったことはあるのだが、ひとりで行ったことは一度もない。
ひとりで行くには、いささか勇気がいる(しょーもないけど小さな冒険なのだ)。
「スターバックスは難しい」、というのがオジさんたちの間では通説だ。
この難しいは、相当な難関である。
「ラサール高校の受験は難関である」「国家公務員一種試験は難関である」などの難関と同じ意味なのだ。
普通喫茶店へコーヒーを飲みに行った場合、ツカツカと店内に入って適当なテーブルに座り、やってきた店員に「コーヒー」と一言伝えればいい。
スタバではこれが通用しない。
スタバでは、飲み物申込所で飲み物を申請しなければならない。
申込所の申請が大仕事
予備知識なしではまず無理。
予備知識なしの人は介添人同伴、もしくは弁護人立会いが必要。
ないしは前もって入店合格必勝スタバ塾で仮免を取ってからでないといけない。
選ぶべきコーヒーだって15種類はある。
エスプレッソ、カフェラテ、カプチーノ、エスプレッソコンパナ、キャラメルマキアート、カフェアメリカーノ…。
カタカナ文字だらけでどんな飲み物か、サッパリわからないのがオジさんは悲しい。
店に入ろうか、やめようか、と迷っていると、自分の娘のような年頃の店員さんが近寄ってきて「どうされました?、どうぞお入りください」と声をかけてきた。
店に入るのを躊躇していたオジさんは、店員さんにその心を見破られたのだ
店員さんは毎日この仕事をしてるので、入店するのを迷ってるオジさんを見慣れているはずだ。
いわば救いの手を差し伸べてきたのである。
不覚にもその心を簡単に見抜かれたオジさんは、店のボードに掲げられている定番メニューと思われる、一番左上に書かれているドリップコーヒーショートを注文。
申込所で様々な訊問を受けなければならないと覚悟していたが、なんとかコーヒーを注文することができたオジさん。
海外旅行に行って、外国の税関でいろいろ訊かれるのと同様、行列に並んで白線の前まで進み、いよいよ次は自分の番、というあのときの心境と同じでドキドキした。
もうすでにトッピングを申請する気力は失っているので、適当に空いている席に座って熱いコーヒーを飲むのであった。
スタバひとりデビュー前に、スタバ通の遼太くんから一通りのレクチャーを受けるべきだったかなぁ…と深く反省するオジさんだったが、少しでも新しいことにチャレンジしたことに、ささやかながら小さな喜びを味わうことができたのであった(^^♪
まだまだやれば頑張れるぞぉ~、オジさん