経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

不動産ファンドと携帯コンテンツ

2008-01-13 | 新聞・雑誌記事を読む
 10日の日経金融新聞の一面トップで「不動産ファンド異変」という記事が掲載されていたところ、アセット・マネージャーズの下方修正をきっかけに、11日のマーケットでは不動産ファンド関連の株価がちょっと半端じゃないレベルで急落しました。このビジネスは、不動産という高額な物件を安く仕入れて高く売るというシンプルなモデルですから、仕入か販売かのどちらかが変調をきたすと、収益状況はあっという間に一変してしまうと思われます。
 このビジネスは近年急成長していて、ここ数年の新規上場会社に占める比率も高く、素人目には区別のつかないような会社があっという間に乱立し、前期まではどの会社も殆ど例外なく急成長してきました。これをみて、何となく似ているなぁと思ったのが、そのさらに数年前にいくつもの会社が上場した携帯コンテンツビジネスです。
 この2つのビジネスは全く関連性のない分野で、ビジネスモデルも大きく異なりますが、共通すると思われるのは、
①時代の変節点で急速にニーズが発生した。⇒新興企業が急成長した。
②比較的参入障壁が低い。⇒似たような会社がたくさん登場した。
という点です。
 不動産ファンドの場合は不良債権処理で大量の不動産が安価に供給されたという時代背景があり、不良債権処理の進展、地価の上昇とともに市場は急速に萎んでいくことが予想されます。携帯コンテンツの場合は、携帯電話がインターネットにつながるようになったので「とりあえず何かコンテンツが欲しい」というニーズに乗っかったものの、多くが過当競争の中で利益を失っていったという構図になると思います。要は、そのニーズが「限られた期間ものであるか」という見極めが重要であるということを痛感します。
 一方で、携帯関連で高成長を継続しているDeNAは、様々なニーズの中から「オークション」や「SNS」など固定したニーズに応えられるモデルを構築し、そこで顧客を囲い込んだことが、②の中で参入障壁として効いてきているように思います。急拡大するニーズに乗っていくとしても、そこで得た資金からより寿命の長いニーズに応え、何らかの参入障壁が築けるような新たなモデルを生み出すことができるかが、持続的に成長する企業となれるかどうかを左右するのでしょう。不動産ファンド関連はこれからが正念場でしょうが、以前に読んだ雑誌の記事では、この業界で差別化された地位にあるのは、資金力のダヴィンチ、中小規模ビル運用のノウハウがあるクリードとありましたが(今となってみると資金力の差別化、というのは少々虚しく響くように感じられますが)、どうなっていくのでしょうか。