経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

クセをつける

2007-04-15 | 知財発想法
 「中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006」の記事で紹介させていただいた地域中小企業知的財産戦略支援事業の統括委員会最終回が先月の9日に開かれたのですが、その席で各委員が述べたこの事業に携わった感想のメモを一昨日にいただきました。改めて自分の発言を読んでみると、知財戦略の実践、知財コンサルティングに関する今の自分の考え方がうまくまとまっていましたので、以下に紹介させていただきたいと思います。

**************************************************************************

 この前マニュアルをお送りいただいて、ぱらぱらと見ていて思ったんですけれども、今、普通の世の中にある知的財産戦略とか、そういうものとちょっと違うんです。何が違うのかなといろいろ考えていたんですけれども、今、世の中で言われている知的財産戦略の本などを読むと、理想的な絵が描いてあるんです。こういうふうにあるべきですという絵がいろいろ描いてあって、そこから先がないんです。逆に実務の本などを取ると、実務のやり方がワーッと書いてあるんです。
 そことここの間が全然埋まっていなくて、これで埋まったとはとてもまだ言えるものではないと思うんですけれども、すごく埋めようとしているのが表れているんです。それが多分ここの全然違うところで、そういう意味で、世の中で出ている知的財産戦略の本とこれは、やろうとしていることとか、アプローチが大分違うなということを感じています。
 最近、私も実務の方をやりながら、ちょっと特殊な仕事先を受けるようになってきているんですけれども、それをやりながら感じているのは、一番大切なことはここなんです。何をやるかといったら、理想像を意識して、今、やっていることを比較して、その差違点を見つけて、その差違点が何で差違になってしまっているのか。それを改善するためには、どうしたらいいのか。その方法をいろいろ一緒に考えて、改善するための方法を導入してやってみる。これがコンサルティングの一番基本的な仕事だと思います。
 実はそれが一番大切なことで、でき上がった後はどうなるか、会社がどちらの方向に向かうかといったら、最初に描いた絵のとおりには多分ならないんです。世の中は変わっていきますし、会社は生き物なので、描いたとおりにはならないんですけれども、そのときに、導入した仕組みや直したクセは、多分役に立つんです。一番大切なものは、そこで身につけた何らかのやり方とかクセとかみたいな、そこが本質で、その本質的な部分がこの中には結構散りばめられている。
 ただ、ずばりまで書いてないんです。私もずばりはよくわからない。これなんだ、こういうものなんだというのは、個別に違うので、ずばりはまだよくわかっていないんですけれども、そんなようなヒントをぱらぱら書いてあって、見れば見るほど、結構渋いんです。すごいいいことが書いてある。
 ただ、これは汗をかいた方でないと、なかなかそこの部分の意味は伝わらないと思うので、これを配るだけだと、その辺のよさというのがわかってもらえないと思いますから、シンポジウムとか、そういうところを通じて広げていったほうがいい。とにかくそれぞれの企業が1個1個課題をつぶしていって、いいクセをつけていくことです。戦略といっても、書いたシナリオのとおりに物事をやるのが戦略ではないんです。何か理想的なものに向かうのに必要なクセを会社が身に付けていって、後は機動的に動いていくのが経営の実態だという気はします。
 そういう意味では、意識してやってきたわけではないんですけれども、最後、成果を見てみたら、非常に面白い。そんなものを見ながら感じていて、なかなかよかったな思いました。
 これも、ひとえに皆様方が一つ一つの現場へ行って、汗をかいたおかげだと思います。現場に行って、汗をかいて、報告してという委員会は、なかなかないと思うんですけれども、逆にこの辺でプレゼンとか何かをみんなやりながら、パワーポイントでいろいろ議論するみたいなことはほとんどなくて、現場での実行とその報告の繰り返しだったんですけれども、だからこその成果だなという気がしております。