ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

負傷者16人(ネタバレ)

2012年08月13日 | ミュージカル・演劇
井上芳雄さん主演のストレートプレイ・・・というだけではそうそう観に行かないのですが、面白そうな予感がして観に行きました。題材も興味がある感じだったし・・・
パレスチナ出身の青年とユダヤ人の物語、というとありがちというか嘘くさい和解の物語になりがちかなと思ったのですが、さすがブロードウェイで評価が高かったというだけあって、よくできた話だなと思いました。
上手いな、と思ったのは、ユダヤ人であるハンスが、ユダヤ人であることを捨てようとしていて、信仰も持っていない、という点でした。お互いに信仰が固ければなかなか解りあうのは難しいですよね・・・一方のマフムードも、民族の誇りは持っているものの、彼の怒りは信仰に拠るものというよりは、家族の幸せを奪われたことに対して、という感じだったので、説得力はあったかなと思いました。
メチャクチャ態度の悪いマフムードを、なぜか修行僧のように受け入れるハンス。博愛主義者なのかと思えば、他の場所の悲劇に対しては「聞きたくない」という不可解な態度を見せる、その理由が後で明かされると、なるほど、と思わせました。
ユダヤ人と来ればやはりホロコーストの話を絡ませたくなると思いますが、そのあたりも上手く絡めていたと思います。
ホロコーストで被害者だったユダヤ人が、立場が変わればパレスチナ人に対して加害者になっているという、皮肉な事実を出すことで、誰もが立場が違えば被害者にも加害者にもなり得るという、普遍的な事実を表していると思いました。
時がたち、一見赦し合って仲良くやっているかのように見えた二人が、実はお互いに民族の違いによるわだかまりを抱えていたことが終盤噴出しますが、最後にそれを超えて人間同士としてお互いを信頼し愛していたことに気付くのは感動的でした・・・それが最後になってしまうのが切なくも悲しかったですが。
マフムードの選択は、見ていて自分があの立場だったらやはりああするしかなかったな、と思うものでしたが・・・結局のところ、過去に犯した罪を消して幸せになることはできない、ということだったのでしょうか。
井上芳雄さんのマフムードは、最初の頃の自暴自棄で自意識過剰で態度の悪い若者よりも、数年経ってある程度素直になった頃の方が似合ってましたね。まあ、もともと育ちが良いので、本来はこういう性格だったんだ、と思えば・・・
そして、あんまり顔が濃くないのでアラブ人役どうなんだろうと(汗)升毅さんの方が顔濃かったんですけど(汗)まあ日本の演劇で外国人やる場合は仕方ないですけどね・・・
そんな訳で、なかなか良い作品を見たなあという感じでした。

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