弁護士任官どどいつ集

弁護士から裁判官になった竹内浩史のどどいつ集

「長期未済」が 一掃されて「平成くん、さようなら」

2024年06月30日 14時19分08秒 | 裁判
先週木曜日に「十年裁判」の判決を言い渡した。
平成26年7月提訴事件を初めとする住民訴訟3件の併合事件。
今年2月に判決を言い渡した生活保護引下げ集団訴訟よりも前から係属していた裁判である。
一審としては何とか10年以内に終局することができたが、この事件になぜこれほどの審理期間を要したのかは、私の前の数代にわたる裁判長たち共々、大いに反省を要するだろう。

これで当部の最も古い年号の事件は、一挙に6年も若返り、令和2年新受の3件(係属期間4年以内)となった。

(写真)私の著書からの抜粋
裁判長としての「長期未済処理」の手腕についても、適正に評価していただけるのかどうか。
ちなみに、明日は毎年定例の昇給日である。

転出した両陪席につき3か月間の職務代行発令を得てまで完成した大判決なのに、全く報道されなかったので、傍聴してくれた方のブログを引用。
判決言渡しの際に右眼に眼帯をしていたため、心配して下さった。

http://blog.livedoor.jp/mieken1876418/archives/52029922.html

ご心配ありがとうございます。
決して「右目やってしもた」わけではなくて、20年前に白内障で入れた眼内レンズが外れたので、新しいレンズに入れ替える手術をしただけです。
まだ白眼が少し血走っているので眼帯をしていましたが、よく考えてみると、遠くの傍聴席から分かるほどではないので、しない方が良かったかも知れません。
今後とも傍聴人によく分かる法廷を心掛けたいと思います。

7月初めに いきなり2手も 進めば形勢 どうなるか?

2024年06月29日 22時46分07秒 | 将棋
失冠した岡口前名人のリベンジ戦。
6月末までの自戦解説と7月以降の展開予想。
▲先手 挑戦者
△後手 新名人

(これまでの棋譜)
4月15〜16日
▲催告通知・提訴予告記者会見
5月27日まで
△小林仙台高裁部総括らの後任指名
5月29日
▲『裁判官の良心』とはなにか出版
6月13日
△空席の名古屋高裁部総括を指名
6月25日まで
▲弁護士JP・共同通信・毎日記事

これまでのところ、後手は先手の厳しい攻めを全く相手にせず「ノーコメント」を繰り返している。

(今後の手番の予定)
7月1日
△定例昇給日
7月2日
▲訴状提出
7月〜8月頃
△答弁書提出
7月27日
▲日本裁判官ネットワーク記念講演

8月頃
人事院勧告(地域手当見直し?)
8月〜9月頃
第1回口頭弁論期日
8月下旬
裁判官人事評価書開示

鈴鹿簡裁>四日市支部>津・桑名>伊賀で あとは0

2024年06月28日 21時38分57秒 | 講演
来週の提訴を目前に控え、この機会に、三重県内の国家公務員地域手当の格差を、裁判所名別に整理しておこう。

高い順に、
鈴鹿簡裁 12%
四日市支部10%
津地裁本庁 6%
桑名簡裁  6%
伊賀支部  3%
松阪支部  0%
伊勢支部  0%
熊野支部  0%
他に、
亀山市   6%
名張市   3%
であるが、裁判所は存在しない。

したがって「津地裁あるある」を。
書記官をはじめとする裁判所職員は、津地裁本庁から鈴鹿簡裁への転勤を希望しがち。

また、四日市支部長が私と同じ判事3号であるとすれば、私よりも月給が4%高い計算になる。

角川さんにも 真似されたかも? 出版・提訴の 記者会見

2024年06月27日 19時04分44秒 | 講演
「残りの人生を賭けて闘う」
KADOKAWA・角川歴彦元会長が
「人質司法」で6月27日に国を提訴へ
「週刊文春」に明かした
"前代未聞の公共訴訟”を起こす理由とは
(文春オンライン)
https://news.yahoo.co.jp/articles/70c0bf4d4ab62dd3fec78de0622d1b8afeca8b9b
(写真)提訴と同時に著書も出版された。
どこかで聞いたような話だ。
それにしても、タイトル「人間の証明」は上手い。

ちなみに、私の提訴は出版の延長上にある。
著書の中で地域手当の問題を指摘した以上は、それによる差別という被害を受けている本人として、裁判を提起して世に問う事により、言行一致させたいという思いからだ。
決して本を売るために裁判を起こす訳ではない。
誰も提起しない訴えは、原告適格がある限り自ら提起しようというのが、弁護士時代からの「市民オンブズマン魂」である。

「泥棒」改め「準強姦魔 捕えてみれば 検事正」

2024年06月26日 00時17分47秒 | 新ことわざ
(写真)このような人物が指揮した捜査(不起訴処分)は、言わば検察捜査の「再審」を開始して「再捜査」をするべきではないのだろうか。 https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20240625/2000085441.html

推薦市民への「報告書」兼 後輩たちへの「遺言書」

2024年06月25日 21時10分55秒 | 講演

今夜は、著書「『裁判官の良心』とはなにか」の出版をきっかけに、百名近くに及ぶ弁護士・司法修習生・記者らにzoomで講演させてもらった。

便利な世の中になったものだ。


私の本は、弁護士任官適格者として推薦して下さった中部弁護士会連合会の関係委員会の皆さんを初めとする市民への「報告書」のつもりで書いた。
同時に、遠からず退官する私からの後輩裁判官(まだ裁判官になっていない人や生まれていない人も含む)に対する「遺言書」のつもりでもある。
名著とされる三宅正太郎「裁判の書」に続く類書と位置付けていただけるようになれば、私も生まれて来た甲斐があったと思う。


(写真)名著は復刻版も出ている。
私も買い求めたが、とても難解で、正直なところ中途までで積ん読になっている。


「公社法」には「借地借家法を 適用しない」と 書いてない

2024年06月24日 18時25分08秒 | 「喝!」判決

今日の最高裁判決から。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=93108

破棄された原審の東京高裁判決に「喝!」だ。
公は間違った事はしないはずだから勝たさなければならないなどというバイアスが働くと、こういう誤りを犯す。
特に多くの東京高裁部総括に顕著に見られる傾向のように思われる。


戦後の「不足」の 対処のはずが「特例判事補」三四半

2024年06月24日 08時09分53秒 | テレビ

今日の朝ドラ「虎に翼」から。

ヒロインが新設された東京家裁の特例判事補となった。これは、裁判官不足に対処するためだった。

(参考)Wikipediaより
判事補の職権の特例等に関する法律により、1948年7月12日以降において、法律専門家経験が5年以上の判事補の中から、最高裁判所が指名することによって、判事と同等の権限を有する判事補を特例判事補と呼ぶ。
 
ところが、その特例も既に三四半世紀(75年)を超えた。
今やその特例判事補となるべき未特例判事補(新任判事補)の定員すら充足できていない。
こんな裁判所に誰がした?

支持が低けれゃ 事務総局も「解散」あるいは「総辞職」?

2024年06月23日 09時06分02秒 | 講演

内閣不信任案が衆議院で否決され、国会が閉幕した。

(参照条文)日本国憲法
第六十九条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。

(写真)三淵忠彦初代最高裁長官のWikipedia記事から抜粋。

結局、事務総長は、裁判官の身分を離れながら、裁判官である局長・課長・局付を配下に「俗的な人事行政」等に従事することになってしまった。


事務総局とは 対照的に 奮闘「教官」「調査官」

2024年06月22日 13時27分54秒 | 裁判

私の著書からの連載第5回が掲載された。

“裁判官の会議”は「見られたら、とても恥ずかしい」… 現職の敏腕判事の“勇気ある発言”を待ち受けていた「運命」とは(弁護士JPニュース)

https://www.ben54.jp/news/1258

私の著書の中では珍しく司法研修所だけは褒めた。実際に最高裁の下の「裁判をしない裁判官」の中で、最もよく働いているのは、研修所教官(司法修習生を指導する教官だけではなく、裁判官・書記官・調査官の研修を担当する教官もいる)と、最高裁調査官だと思う。
したがって、高裁長官→最高裁判事→最高裁長官と出世するのに適任な高官は、事務総長(在任中は裁判官ですらない)などよりも、まずは司法研修所長・裁判所職員総合研修所長及び最高裁首席調査官であろう。特に後者は、調査官として最高裁判決に関与して来たのだから、最高裁判事になってからも論客が多い。
しかし、現実の人事は必ずしもそうなっていない。事務総長(戸倉・今崎)・人事局長(安浪)及び法務省民事局長(深山)等の経験者が裁判官出身の最高裁判事6名の過半数を占めている。


「男」しか認知 できないなどと 民法典には 書いてない

2024年06月21日 19時25分44秒 | 「喝!」判決

今日の最高裁判決から。
破棄された東京高裁判決(木納敏和裁判長)に「喝!」だ。

(写真)尾島明裁判官の補足意見から抜粋


自身の精子で子らを産ませた父が、男だった当時に生まれた長子は認知ができるのに、女に性別変更した後に生まれた次子は認知できないなどという「行き別れ」の結論は、いかにもおかしいと思わなかったのだろうか。これでは、父を長子は相続できるのに、次子は相続できないことになる。新たな「非嫡出子」差別を生むようなものだ。
法律論以前に、非常識極まりないと思う。

女性カップルの子に「父子関係」、最高裁が認める 性別変更後に出生(朝日新聞デジタル)
https://www.asahi.com/articles/ASS6N26F1S6NUTIL00BM.html


「弁護士任官」増やせぬならば「判検交流」同数に

2024年06月20日 08時48分58秒 | 講演

前者が増えないことを逆手に取った新提案を思い付いた。
前年度の弁護士任官の採用人数を、当年度の訟務検事への派遣人数の上限とするのだ。
根拠は最高裁が標榜して来た裁判所の「公平らしさ」。
必死で弁護士任官者を増やそうとする事は請け合いだ。


「ブラック官庁」ではないという 記述も訂正「ホテル代」

2024年06月19日 18時55分23秒 | 講演

私の著書は、出版が当初の予定よりも数か月遅れたため、執筆当時と認識が変わった点も少なくない。

特に、名古屋地裁豊橋支部をはじめとして、令状当番の際のホテル代を自己負担させられている地方の裁判官がおり、そのような理不尽な待遇に憤って依願退官した弁護士任官者さえ現れたと知ったことは、私にも衝撃的だった。不明を詫びたい。

(写真)あとがきの中で、裁判所は決して「ブラック官庁」ではないと断じてしまった点は、次の版では訂正しなければならないだろう。このような惨状は、知っていれば本文にも加筆すべきであった。
宿直の際のホテル代を自己負担させる官庁や民間企業が、他にあるとは到底思えない。非常識極まりないと思う。
権限さえあれば、人事院や労働基準監督署から厳しい指導を受けるのは必至であろう。


宿直費用も 特急券も“自腹”の地方の 裁判官

2024年06月18日 12時16分37秒 | 講演

弁護士JPニュース連載4回目が掲載された。

https://www.ben54.jp/news/1239

このような地方の裁判官の待遇の惨状に、なぜ中央の「司法官僚」(最高裁事務総局)たちは全く対処しないのだろうか。
「裁判をする裁判官」(地家裁所長を除く)として地方に勤務した経験がほとんど無い人たちだから、このような酷い不払を知らなかった可能性もあるが、もしも知っていながら何とかしようとして来なかったのなら、司法行政官としても失格である。
裁判官の身分を持ちながら司法行政に専従している以上は「職務を甚だしく怠った」ものと言われても仕方がないだろう。


「判決要旨」は 裁判官が 作っているとは 知らなんだ

2024年06月17日 18時31分37秒 | 裁判

私が二十年余り前に弁護士任官してから認識を改めたのは、当時はよく新聞に掲載されていた「判決要旨」は、新聞記者ではなく、裁判官自身が作成しているということだった。
公害裁判のような長文の判決の場合は、原告弁護団員として裁判所から判決要旨を受け取った経験もあるので、そうであろうと知っていたが、それほど長いわけではないが報道対象になる判決についてもそうだとは思っていなかった。てっきり、記事を執筆する各紙の記者が掲載までのごく短時間で要約しているものと思い込んでいたのだ。冷静に考えてみれば、記者にそんな芸当ができる訳が無いのだが。

(写真)任官して最初に「判決要旨」を作成したのは、東京高裁で判決した、旧日本軍の爆雷が廃棄物処理中に爆発して工場ごと吹っ飛んだという裁判だったと記憶している。この事案で国家賠償を認める場合に、時効と除斥期間の起算点はいつになるのか。私たちは当然に爆発時であるとして請求を認容した。実は同様の事案が中国で起きた場合に熾烈に争われていたこともあって、報道された。
かなりの分量の判決書を完成させた後に短期間で「判決要旨」を作成するのは大変だった。そもそも、判決理由は多かれ少なかれ裁判官3名の妥協の産物なので、どの部分を要旨として抜粋するかで、意外に議論が紛糾するのだ。

最近は、裁判官にとって余計な仕事を増やすだけだと事務方が忖度しているのか、判決要旨の求めをなるべく記者にさせなくなったという。確かに、法律上の位置付けの無い文書を裁判所が「便宜供与」として出す事には、批判もあり得るところだ。
そこで、私は、判決文の中に「判決要旨」に当たる部分を取り込んではどうかと考えている。
その実践例が、遅まきながら、裁判所ホームページに掲載された。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=93020

この判決の21〜29頁当たりも、そのつもりで書いたもので、言渡しの際はその前後を全部読み上げた。
聞いていても分かりやすかったと、傍聴者の評判は上々だったと感じている。