つれづれの記

日々の生活での印象

環状交差点(RAB)

2014年09月03日 17時53分21秒 | 日記

2014年9月3日(水)  環状交差点(RAB)

 

 

  昨年の6月に公布された改正道路交通法の中で、自転車の車道右側走行が禁止となり、同年12月より施行されたが、そのことについては、当ブログに

       自転車の安全走行ルール (2013/12/23)

として載せている。

 

 同じく、同法の改正で実施が決まっていた環状交差点については、先日の9月1日から施行となり、日本でも、正式にスタートしたようだ。

環状交差点は、英語では、環状に廻る意で、Round About(RAB)、Circle、と言うようで、日本語でも、RAB、RAB交差点、円形交差点、まわる交差点等とも言われる。

 日本の交通標識は以下のようで、欧米とは逆方向の時計廻りである。 

           

○ 日本での円形交差点の先駆け 

 我が国では馴染の薄い円形交差点だが、ネット情報によれば、旭川市内の目抜き通りにある常磐町ロータリーは、何と、終戦前の1936年からある円形交差点のようだ。6差路になっていて、信号機は歩行者用だけだが、国道40号線の出入りが最優先となっているようだ。 下図にあるように、入口には、黄色のロータリー警戒標識と、左方向の一方通行の標識があり、ロータリーでは、5方向いずれにも進める表示となっている。(常盤公園 常盤ロータリーより)

   

 又、規模は小さいようだが、兵庫県豊岡市内の寿ロータリーは、それよりも古く、1924年に作られた円形交差点のようだ。(環状交差点(ラウンドアバウト=RAB) : 六方たんぼのコウノトリ便り

 

 

○先行した社会実験

  上記の法改正の流れの中で、幾つかの地方都市で、先行して、社会実験が行われて来ているようだ。

この中で、長野県飯田市内の、東和町交差点は、日本初の本格環状交差点(RAB)として整備され、既設の信号機を撤去して、2013/3以降運用しているという。(「まわる交差点」広がるか 海外で普及、事故減を期待:朝日新聞デジタル

    

         飯田市 東和町環状交差点 

  同市 建設部のネット情報(「安全で環境にやさしい交差点をめざして」)によれば、飯田市の信号には歴史があるようだ。東和町に近接する吾妻町交差点だが、ここには、戦後間もない昭和22年から、ロータリー式交差点が導入されたようだ。 そして、平成22年には、RABに手直しされている。この長い間の運用経験が、今回の東和町に生かされているという。

 下図のYahoo地図では、右の○印が古くからある吾妻町ロータリーで、地図上もその様に表示されている。 左の○印が、今回新しくRABとなった、東和町交差点である。 地図上の表示も、その内に、RABを意味する表示に変わる事だろう。

 これまでも、ロータリー式交差点は、全国で100か所ほどあったようだが、円い環状路の走行車が優先されなかったり、内部に信号がある等が多く、RABと言えるのは、この吾妻町を含め、数箇所だったという。

    

      JR飯田駅                         東和町                         吾妻町 

この9月1日以降、飯田市内では、2か所の環状交差点が、正式にスタートした訳だ。

 

 この他、静岡県焼津市、岐阜県守山市、茨城県日立市など、RABが先行して試行され、9月1日から正式に運用されるのが、全国で、34箇所と言われる。我が都内では、多摩市にもRAB交差点ができたようだ。

今年度内に、全国で、さらに15か所増える見込みという。 

  

 

○環状交差点

 環状交差点(RAB)は、中央に環状になった車道(環状路 環道とも)があり、車が、一方向だけに進む(日本の場合は左廻り(時計廻り))、信号機が無い不思議な交差点だ。

環道内は、減速・徐行が原則だ。

環道に入って廻っている車が優先で、枝道からの進入車は譲らなければならない。

 下図は、4つの枝道への進み方を、概念的に示したもので、環道の4車線を意味するものではない。  

   

               環状交差点の概念図(ネット画像より)

 左折の場合は、ほぼ従来通りで、直進や右折したい場合は、やや、大廻りになり、転回したい車は、内側に入って、最後に、外側に出て来ることになる。

 

 円形の環状路の巾は、原理的には、1車線あればいいが、危険を避けながら、環道内の流れを良くするため、少なくとも、2台の車が並走出来る余裕は必要だろうか。 進入後、早く出る車は外側を、遅く出る車は、内側を走行するのが、全体としては合理的だが、でも、途中での車線変更には、やや危険性があり、渋滞の原因ともなろう。

 

 環状交差点は、安全でエコと言われるが、当然の事だが、利点と欠点がある。

利点としては:

・  直交する交通が無く、環道内は徐行義務があるため、安全で、事故が少ない。やや非効率だが、その分、右折車の大事故などが、大幅に減るようだ。

・  信号が無いため、信号の維持費がかからない。

・  停電の影響を受けないため、大規模災害時でも交通が混乱しにくく、人的制御が不要。

・  堂々と転回(Uターン)ができる。

欠点としては:

・  信号型交差点に比べ交通容量が小さいため、交通量の大きい交差点では渋滞が発生する可能性がある。

・  環状路に接続している枝路が詰まると、全体が渋滞を起こす事もある。

・  一般に必要とされる面積が広く、用地の確保が困難な市街地では実現し難い。

・  自車両がどの方向に進むのか把握しづらく、交差点に慣れていないと道に迷う可能性が高い。

  RABの適用範囲だが、環道の車線数によって容量は変わる訳で、大雑把にいって、1日当たりの交通量は、

 1車線の場合

     ミニ     15000台程度 (大型車の扱い)

     標準    25000台程度

 2車線の場合   45000台程度

と言われ、米国には、高トラフィックの幹線道路向きで大型の、後者の例もあるようだが、問題も多いようだ。(国交省サイト 「ラウンドアバウトの現状」を参照)

 RABは、トラフィックが比較的少なく、スペースが確保しやすい地方都市向き、と言えるかも知れない。 先述の旭川市の常盤ロータリーだが、建設当時は、小都市の旭川には不要という意見もあった、というのは面白い。

 

 筆者には、RABでの運転経験はないが、机上でのシュミレーションでは、以下の様な点も、気になるところだ。

・運転上のルールとして、枝道からRAB交差点に進入する場合、徐行しウインカー表示は不要というが、一時停止や、徐行の標識はどうなっているのだろうか?

日本では現在、優先道路に入る時の「止まれ」標識や、必要により徐行する場合の「徐行」標識があり、先方に優先道路がある場合の補助標識もあるが、RABの近辺では、これらは、どんな表示になるのだろうか。

         

 欧米の場合は、RABに進入する場合は、明確な、「譲れ」の標識があるようだ。

              譲れの標識(独、仏等)

・又、環状道路に入る、それぞれの枝道では、平面交差の場合、歩行者用の横断歩道は必須だが、この信号はどうなるのだろうか。

 進入しようとする車は、横断する歩行者のために、まあ、止まってくれるだろう。一方、出ようとする車を、枝道の横断歩道の信号で止めてしまうと、環道内の車の流れを妨げてしまう恐れがある。このため、どうしても、車優先で歩行者が譲ることなり、横断歩道の信号は付けないこととなるのだろうか。 実際、飯田市では、横断歩道の信号は、完全に撤去しているようだ。 

 一般の交差点でも、車両と横断歩行者との関係は、悩ましいテーマではあるが、時間差を設ける等の工夫があるがーー。

 

・従来型のロータリー式交差点と、正式なRABとを区別するために、欧米では、Modern RAB(現代的RAB)という言い方があるようだが、ここでは、触れないこととする。

 

 

○様々な交差点

 今回の環状交差点の話題で思い浮かぶのは、あちこちで見かける、所謂、ロータリーである。よく知る所では、JR東京駅丸の内口や、三鷹駅北口、近隣のJR北千住駅西口などだ。

これらは、片側が駅で、バスやタクシーの乗り場もあり、信号が付いているところが多い。

 又、JR西日暮里駅から程近いところに、明治通りと尾竹橋通りが交わる、宮地交差点がある。現在は、立体交差になっているが、以前は、ロータリー式の交差点だったようで、宮地ロータリーという呼称は、今も残っているようだ。

 

 通常の道路の交差点は、平面的に、2本の道路がほぼ直角に交差していて、4方向に分れている場合が多く、5方向のケースもある。

 中には、3本の道路が交差していて、6方向に分れているものもあり、近隣の、足立区内の四家交差点がこれで、要注意の場所だ。この交差点は、どの道から入っても、どの道へも行ける訳ではなく、各道路の巾や角度等から、進入路によって進める方向の規制が種々で、2方向にしか進めない場合もある。こんな場合は、やむを得ず、迂回することとなる。

この交差点などは、空間的なゆとりがあれば(実際は不可だが)、RABにすればいいのだろうか。 

 

 近隣で、さらに複雑な例は、荒川に架かる千住新橋の袂にあって、国道4号線と一般道が立体交差している、梅田交差点だ。分岐数は数えていないが、トラヒックの量や分布からみて、待ち時間が長くても、現状の信号式にならざるを得ないだろうか。

 

 高速道路にも、環状路の例として、首都高速 箱崎ロータリーがあるが、下図のように、環道内に信号があったり、出入がセットになっていない枝道が多い。

   (ネット画像より) 

 又、ネットには、高速道のロータリーの他の例として、東海環状自動車道の、下図の標識がでている。(ロータリー交差点 - Wikipedia) 

   

 この図を見た当初は、この標識の意味が良くわからず、高速道の中にロータリーがあるのかな、とも思った。

 でも色々調べてみると、下の地図にあるように、一旦、豊田藤岡ICから高速を出て県道13号線に入り、国道419号線方面に行くか、或いは、ロータリー(地図中 ◎印)を経由して、県道13号線を通って、名古屋方面への高速 猿投グリーンロードの猿投東ICから入って乗り換える、と言う事を意味しているようだ。

Uターンも出来る表示なので、一層、分り難いかもしれない。

  

 ここの県道13号線は、地図上で見る限り、乗換えを重視した立派な道路と思われる。両高速道の運営主体や料金体系の関係から、ICの出入りが必要なのだろうが、ETCを使えば、料金の支払い時でも、流れは止めずに徐行出来ることから、全体として、謂わば、環状交差点を構成している、と見る事も出来ようか。 

 

  猿投東IC           ロータリー 豊田藤岡IC                              R419

 

 インターチェンジやジャンクションには、蛸の足のように、分岐路がからみあった構造物が多く、近隣では、

    首都高速6号線と環状7号線とが交わる             ⇒加平インター

    常磐自動車道と、外環自動車道と、首都高6号線が交わる ⇒三郷ジャンクション

があるが、これらは、RABには出来ないのだろうか。

 

 

○ 交差点とともに

 交差点については、効率とともに、安全とエコを重視しながら、トラフィックや土地の状況に応じて、

     ・信号付きで平面交差する通常交差点

     ・信号の無い平面環状交差点

     ・3次元で交差する立体交差点  

など、交差点の方式を使い分け、状況に応じて変えていく、という事が大事だろうか。

 今般の環状交差点の登場で、安全でエコ志向で、更に、マナー向上にも資する、有力な選択肢が一つ増えた、と言えるだろう。

 2020年の東京オリンピックの頃には、国内にRABが定着し導入が進んでいて、この点でも、欧米の人達に親近感を持って貰えるかもしれない。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 障子の張り替え | トップ | 高速道のRAB-補足 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

日記」カテゴリの最新記事