2012年9月15日(土) ロンドンパラリンピック その2
ロンドンパラリンピックについては、当ブログの、下記記事
ロンドンパラリンピック その1 (2012/9/13)
で、シンボルマークについて触れた所だ。
今回は、具体的な競技の中の、ゴールボールについて記すこととしたい。
今回のパラリンピックで、日本チームが、金メダルを獲得した事で、すっかり注目を浴び、知名度が上がった、ゴールボール(Goalball)である。
日本女子チームが、決勝で中国を1-0で破り、優勝が決まって金メダルを獲得した8日夜のEテレで、チームの6人(レギュラー3人 ベンチ3人)が、NHKのロンドンのスタジオに招かれ、インタビューがあった。 自分はこれまで、このような種目があることも知らなかったし、放送の中で流された試合の様子を、TVで見るのも初めてであった。
この競技、見ていても、そんなにエキサイトする訳ではなく、比較的静かな競技だが、結構、味があるようだ。
◎ゴールボールとは?
[概要] このゴールボールは、視覚障害選手が行う対戦型スポーツで、1チーム3名の選手が鈴の入ったボールを投球して攻撃したり、鈴の音を頼りに身体全体を使ってセービングをするなどの攻防を行い得点を競い合う。視力の程度に関わらず、アイシェードと呼ぶ目隠しを装着してプレーする。試合は、前後半各12分、ハーフタイム3分で行われる。
[主なルール]
(ゴールボールとは | 【JGBA】日本ゴールボール協会 オフィシャルサイト)
○選手 ・各チーム3人づつ
・全員、完全な目隠しをする
目にテープを貼った上にアイシェード(アイマスクとも)を装着
視力の違いが無いよう条件を揃え、公平を期す
・全神経を耳からの音と、身体の触れ合いに集中
声かけによる選手間のコミュニケーション
○コート
・バレーボールと同じコートの広さ(幅9m、長さ18m)
・ゴールラインの両エンドに、高さ1.3m、幅9mのゴール
・ゴールラインから手前3mまでがチームエリア、更に3mの幅がランディン
グエリア、中央部がニュートラルエリア
○ボールと投球
・ボールは、バスケットボール位の大きさ
・ボールの中に音を出す鈴が入っているのが特徴
ボールが床を転がると、コロコロ音が出るので、その音を頼りにプレーする
ボールが床にぶつかる音も重要
・投げたボールが、相手ゴールの手前で、2度、床に触れること
相手のチームエリア、ランディングエリアの、どちらにも触れずに、相手のゴールに行ったボールは、ハイボールの反則:どちらか のエリアで、必ず床に触れること(空中を飛ぶボールは、音がしないので分らないため)
・投球されたボールが、ニュートラルエリアを飛び越した場合は、ロングボールの反則:ニュートラルエリアで必ず床に触れること
投球動作
(ハンドボールのようなオーバースローは禁止で、アンダースローのみ?)
○ 守備
・3人で、横になってゴールを守る(立って守るのもOK?)
ボールを受けた味方の後ろに素早く回ってセーブする敏捷さも重要
身長が大きい方が有利か?
・ボールがゴールラインを越えたら得点
上手にセーブ
○ 競技時間
・正規時間 12分ハーフ 前半・後半
・同点の場合は、ゴールデンゴール方式の延長戦 3分×2
・それでも決着がつかない時は、1対1での、エクストラスロー(サッカーのPK戦相当)
[起源] この競技は、第二次世界大戦で、目を損傷した傷痍軍人の、リハビリのために始められたものが最初と言われ、ヨーロッパで盛んに行われているという。
◎日本チームの戦績
今大会では、先ず、予選リーグがあり、日本は、3位で予選を通過したようだ。
決勝トーナメントに進んで、
準々決勝 対ブラジル 2-0
準決勝 対スエーデン 4-3
3-3の同点で後半を終了し、延長戦に入っても決着が付かない。PK戦になり、8人目にして、漸く勝ったという、死闘があったようだ。
決勝 対中国 1-0
今大会での、両チームの、予選から準決勝戦までに獲得した総得点を見ると、
中国チーム 37点
日本チーム 11点
のようで、両者に極めて大きな開きがあり、前回の北京大会で金メダルだった中国チームの攻撃力の凄さは、驚くべきものだ。
この中国の攻撃を交わしながら、日本は前半間もなく、安達選手のシュートで、狙い通りに得点したが、前半終了近くに、ピンチが訪 れた。守りで、浦田選手が、チームエリアの境界線を越えてしまい、イリーガルディフェンスの反則を取られてしまったのだ。(ラインは、手で触ると判るようになっている)
1対1で対向する、緊迫したペナルティスローの場面だったが、浦田選手は、相手の投球を綺麗に止めて、得点を防いだのである。
このようにして、最少得点差で、強豪中国を破って、チーム競技初の金メダルに輝いたのである。
日本女子チームは、これまで、3大会連続で出場したが、アテネでは、3位 銅だったものの、前回の北京では、7位と振るわず、今回、晴れて、悲願達成となったようだ。
最終成績は、1位 日本、2位 中国、3位 スエーデンである。スエーデンとは、予選で引き分けているようだ。
金メダルを喜ぶ6人組
◎ 終わりに
日常生活では、目から入って来る情報量は、全体の70%程と言われるが、運動競技では、さらに比重は増すだろうか。 従って、視覚障害者にとって、1人で運動するというのは、かなり困難なことになるだろう。
アイシェードを付けることで、敢えて視覚情報を断って、競技をするゴールボールは、いわば、逆転の発想の面白さ、と言えるかも知れない。
夏場の海水浴の砂浜で、目隠しをして、スイカ割りを行うのは楽しいものだが、ゴールボールでは、それに似た、スリルが味わえるかも知れない。
パラリンピックでの視覚障害者向けの種目として、ゴールボールの他には、伴走者と一緒に走る陸上の種目(100m、5000mなど)がある。 この競技、二人の意気が合うと、とんでもないスピードが出る様子が、テレビに写し出され驚かされた。
又、水泳で、種目は忘れたが、視覚障害者が参加するクラスで、目が利かないことから、プールの底のラインや天井がよく見えない為、コースロープに、ぶつかりぶつかりしながら進んでいく姿が、強く印象に残っている。
障害者でも、車いすを使い、義足を付けることで、健常者と同じような種目をカバーしているケースが多いのだが、この場合は、視覚は正常であることが前提となる。
これらに比べ、視覚障害者が参加できる種目やクラスは、未調査ながら、かなり限られてくるように思われる。
ゴールボールで金メダルを獲得した快挙が讃えられて、チームの小宮主将が、閉会式の行進での旗手に選ばれるという、嬉しいニュースだ。 彼女、一人で大丈夫かな、と気になったのだが、隣で江黒監督が、ちゃんとエスコートしてくれたことで、無事、大役を果たす事が出来た。
小宮旗手とサポート役の江黒監督
昨14日朝の、NHKおはよう日本の、スポーツコーナーで、女子ゴールボールチームで大活躍した、3人組(小宮、浦田、安達 各選手)が出演し、日本全国に、金メダルの報告とともに、爽やかな笑顔を届けてくれたところだ。
今回のゴールボールの躍進が、日本での、今後の障害者スポーツの一層の発展に、そして、視覚障害者の福祉向上に、少しでも繋がってくれれば、と願っている。