2012年3月24日(土) 春の南伊豆の旅-千人風呂で
2月末に、仲間と、1泊2日のドライブ旅行に出かけた時の様子について、これまで、当ブログで、以下のように取り上げたが、
春の南伊豆の旅―雛のつるし飾り (2012/3/8)
春の南伊豆の旅―河津桜 (2012/3/21)
今回は、その続編で、温泉の話題である。
伊豆と言えば、温泉が多い土地柄だが、この旅行でも、宿泊した稲取温泉の旅館の風呂だけでなく、日中の道すがら、川端康成が、伊豆の踊子を執筆したと言われる旅館の風呂など、日帰り入浴を楽しんだ。
その一つが、下田蓮台寺近くの、河内温泉金谷旅館ご自慢の、千人風呂である。 千人とは、かなりオーバーな中国流のネーミングだが、でも、かなり大きな、味わいのある総檜造りの浴槽で、15mプール位はあるだろうか。
千人風呂(ネットより借用)
浴槽は、深めで、胸のあたりまでだが、客が少ない時間帯だったので、平泳ぎなどを一寸やってみたりした。自分ながら大喜びしたのは、この浴槽の中で、左足の爪先で立ちながら、片足だけで、ピョンピョンと、跳びながら、進めたことである。
実は、ここ数年、脊椎・腰椎の不具合から、左腰や左足に痛みや痺れがあり、まあまあ、歩く事は出来るのだが、通常の速さでの歩行は出来ないのだ。また、走ることは出来ない状態で、これらは、左足でのつま先立ちが、出来なくなっているのが原因である。 ここ数年、整形外科のリハビリに通っているが、中々、良くはなっておらず、つま先立ちの訓練をするように、と言われている。電車に乗った時には、吊皮や手すりに掴まり、立って体重を支えながら、左足のつま先立ちのトレーニングを行ったりしている。
こんな状況なのだが、風呂の中とは言え、左足だけのつま先立ちで、ピョンピョンと跳びながら進めたのは、大変な事件であり、数年ぶりに味わう感激であった。
帰京後、行きつけの整形外科の、リハビリセンターの理学療法士の先生に、この「事件」の報告をしたら、水中トレーニング療法は、リハビリの重要な分野の一つのようで、浮力の作用で、見かけの体重は大きく減るが、その減る割合は
首 まで浸かった時 △90%
胸 〃 〃 △60~70
ヘソ 〃 〃 △50
位だろう、と教えてもらった。
件(くだん)の温泉の浴槽は、胸位までの深さで、これだと、掛かる重量は、全体重の、約6割減になっていた、ということだから、片足のつま先立ちでの、ジャンプ歩行が出来た、という訳であろう。遠い昔に習った、アルキメデスの原理を、体感した次第である。
この、アルキメデスの原理について、ネットで、調べていたら、往時の、王冠の逸話が出て来た。
ある王が、職人に、金塊を渡して、純金製の王冠を作らせたのだが、ごまかしているのでは、という疑惑が生じ、王は、アルキメデスに、出来上がった王冠を壊すことなく(非破壊検査!)、真偽を確かめよ、と、命じたと言う。
アルキメデスは、散々、考え抜いた末に、王冠を作る時に職人に渡したと同じ重量の金塊を用意し、それを水に沈めた時と、実際の王冠を水に沈めた時の、溢れる水の量の違いから、王冠に、紛いものが混じっている事を明らかにした、と言う。
これが、アルキメデスの原理の発見につながったと言われるが、このエピソードは、浮力の話ではなく、金属の密度(比重)の違いの話のようだが、やや、出来過ぎの感もある。
帰宅後、自宅の風呂で、自分の身体の体積を図り、どの位軽くなるのかを実際に調べて見たいと思った。
予め、湯船の縦、横のサイズを計り、水位の変化を見るため、湯船の壁に、物差しを貼り付けた。 そして、
身体を入れない時、へそ・胸・首まで入れた時 (頭まで、は後日に)
それぞれの目盛りを記録することとした。 これらの数値から、身体の部位が変化した分を、直方体の体積として求めるのだが、湯船の形状が、長方形でなく中央部が幅広であり、上に行くほど広くなっていること、物差しの水位がかなり動くことなどで、計測が上手く行かず、面倒になって、結局、体積の計算は断念した。
ところが、ネットには、湯船の中に、何と、頭まで浸かって、自分の身体の体積(正に体!積)を計り、密度を計算した、という、ある研究熱心な御仁の記録も、載っていたのには驚かされた。(人間が水に浮く話 死海体験はできるか)
有り難い事に、他のネット情報には、平均的な人体の、各部位の容積の構成比が出ている。(水治療のまとめ)
それによれば、全体を、100%とすると
頭 7 % 首も含むと解釈
片腕 6.5% 両腕はこの2倍
胴(体幹)43 % 胸より上(体幹の上1/3)
ヘソ位 (体幹の下1/3)
片脚 18.5% 両脚はこの2倍
位になるようだ。
これを使えば、身体各部位の、首まで、胸まで、へそまで、が水に浸かった時の、容積構成の変化は、以下のようになる。
水に浸す位置 水に浸す部位 水に浸す部位の容積構成
首まで 頭・首以外 93%
胸まで 両腕は水の上
体幹の2/3 28.7%(43*2/3)
両脚 37% 計 65.7%
へそまで 体幹の1/3 14.3%(43/3)
両脚 37% 計51.3%
人体の密度は、部位に依らず同じとすれば、このような比率で、体重が減少(免荷というようだ)することとなるが、上述の、センターの先生から教えてもらった数値と、ほぼ、一致している。
自分の、実際の体積は計れなかったのだが、ネット情報によれば、平均的な人体の密度は、
985kg/m3=0.985kg/l(リットル)
とあり、これを使って、体重65kgの自分の身体の体積を、逆算で求めると
体積=体重/密度=65/0.985l=65.989l≒66l
となる。湯船全体の容量だが、湯量は、240lに設定してあり、人体の体積は、湯量の1/4強となる。
アルキメデスの原理では、液体の中に入った物体は、その物体が排除した液体の重量分だけの浮力を受ける、とある。
頭も含めて、身体全体を湯船に沈めた時の重量は、どうなるのだろうか。上記の計算で、自分の体積は、66lとし、湯の密度が、仮に、1kg/l なら、66kgの浮力を受けることとなり、丁度、体重と釣り合い、浮くこととなる。
でも、水の密度は、温度が4℃の時は、0.99972kg/l(1kg/l ではない!)だが、温度が高くなると軽くなり、例えば、湯温40℃での密度は、0.99222kg/l とあるので、その時に、実際に受ける浮力は、64.98kgと小さくなり、風呂の中では、身体は、約20g、僅かに、重くなり沈む、という計算になる。
プールに比べて、海(塩分濃度約3%)の方が浮くので、泳ぎやすいのは、よく、経験することだ。 又、イスラエル国境にある、有名な死海では、塩分濃度が極めて高い(約30%)ので、受ける浮力も大きくなり、何もしなくても浮いていて、新聞が読める、ようだ。 機会があったら、是非、行ってみたい場所の一つである。
死海上で新聞を読む風景(死海 - Wikipedia)
所が、先に引用した、或る御仁の記事には、何と、自宅の風呂で、死海の状況を作ろうとした話が載っている。 湯量240lの家の湯船の塩水濃度を、自ら計測した身体の密度(1.11kg/l)より重い、1.16kg/l にし、浮くようにするには、80kgもの塩が必要になると分り、経済的理由だけでなく、排水の環境への悪影響等から、家人の猛反対に遭い、試行を断念した、と言う笑い話が出ている。