多摩川雑学事典 by元林徹(文と写真)

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●本当は大人のお話?イナバの白ウサギ 元林徹の多摩川から一言

2011-01-25 | Weblog
今年は兎年。日本人なら誰でも知っているイナバの白ウサギの話ですが、幼児向けの童話のイメージが強いですがオリジナルはタイトルみたいな話なのでは

ストーリーは説明するまでもありませんが、兄弟にいじめられていた大国主が、これまた大国主の兄弟にひどい目にあわされた白兎を助けるという話です

ただこれだけでは、人のいい大国主がお調子者のウサギを何の脈絡もなしに助けただけでは。教訓もなければ感動もない平板な話

『古事記』を読めば分かりますが、大国主の兄弟たちは別にヒマつぶしに出かけたのでなくヤガミヒメに求婚に向かっていたところでした。兄弟の間のこの争いにおされて大国主は脇に追いやられていた

ウサギは兄弟たちに傷に塩を刷り込む目にあわされましたが、兄弟たちに自分の毛が抜かれた理由は説明していない。しかし大国主にはワニをだましたからこんな目にあったと打ち明けています。ウサギはこの大国主こそはと信頼したわけ

そしてウサギは体がもとに戻ると、ヤガミヒメと結婚するのはあなたの兄弟たちでなくあなたこそがヤガミヒメと結ばれるのだと、別れ際に大国主にカッコいいセリフで告げている。さらに古事記はウサギは実は神だった、ともしている

こう見るとこのウサギ、NHKの朝の子供番組にでてくるようなウサギでなく、劇画的な陰影のある予言者的ウサギです

そして事実その予言の通りになって、怒った兄弟たちは今度は大国主を殺そうとするわけです。そして話はまだまだ続く

だからイナバの白ウサギの物語、単なる幼児向けのお話ではなくてストーリーの起伏も立体性もある古代のドラマでは。太安万侶さんや稗田阿礼さん、ちゃんとその辺、考えていたんですね

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