blogギター小僧の径

ギター小僧の私生活

中国印刷事情3

2005年03月04日 | 仕事
【2005.3.3】

ティエンさんの計らいで、華北という北京から高速道路を北上すること1時間ほどの印刷所の見学をさせてもらうことになった。ティエンさんの弟のゼネラルマネージャーが使ったことがある印刷所らしく、彼に案内してもらうことになったのだが、午後2時過ぎしか時間が取れないということだったので、午前中観光をしようということにした。そんなに早起きする必要もないので、10時にロビー集合ということで、★氏と待ち合わせた。

しかし────!

8時30分にベットメイクの女の子に起こされてしまった。訳がわからず英語で質問していたが、彼女は中国語しかできないようで、お互いに困り果てた。筆談だと思い、部屋の紙とペンを渡すと「退」と書かれた。まあ、部屋の掃除をしたいんだろうことはわかっていたのだが、なにせ8時30分である。「起こさないでください」と書いてあるドアノブのカードを見せても全く納得するふうでもないので、しかたなく部屋を出ることにした。★氏にも電話して、その旨を伝えると、彼も降りてきた。取りあえず、地下鉄で「天安門」行くことにした。

まずは「西単」まで行き、戻ってくる感じで「天安門」を目指した。「西単」もなかなかキレイな街だ。途中で書店に寄った。

●日本と中国の書籍の違い●
ここで日本と中国の書籍の違いを列挙してみる。

(1)ヨコ組文化
先にも書いたが、中国の書籍はヨコ組がほとんどだ。漢字圏なため日本と同じくタテ組だとばかり思っていたが、今ではそうじゃないようだ。

(2)カバーなし
日本の書籍のようにカバーがない。逆に言えば、書籍にカバーが巻いてある日本の方が異常なのだ。欧米でもカバーなどあまり見かけない。日本は返品されてきた書籍を再出荷する場合、天地小口の3方をすべて研磨し、新しいカバーを巻き直す。そこまで潔癖な日本はやはりヘンな国なのだろう。ついでに言うと、見返しもないのがほとんどだった。

(3)豪華な装幀
装幀は凝ったものが多い。目を引くのが箔押し本の多さだ。しかも、レインボー箔など高いものが平然と使われている。P.P.加工が普通の日本だが、大雑把に言うと9割ぐらいが、マットP.P.加工の本が占めている。また、バーコ印刷なんかも当たり前のように多用されていて、文化の違いを思い知らされた。

(4)逆目本
これほど違いを思い知らされた文化の違いはない。すべての本が逆目なのだ。出版界にいない人に説明すると、紙を抄造(漉く・抄く・紙を作ること)する際、原液が流れる方向にどうしても目が出来てしまう。紙を手で切る時に切りやすい方向とそうでない方向があるはずだ。切りやすい方に紙の目が流れている。日本では、書籍の天から地に向かい目が流れているのが普通だ。それは、本文用紙に限らず、表紙もカバーも見返しもそうだ。そういう取り都合を考える。中とじの雑誌等はボリュームを出すためにあえて逆目にすることがあるが、それは極めて稀なケースだ。

(5)粗悪な紙
韓国から辞典を輸入したりしているので、だいたい想像はできていたのだが、紙はホントヒドい。表裏の手触りが違ったり、色味もまばらだ。何でも白ければいいみたいな感じで、日本のようなクリームの書籍用紙はないようだ。上質紙にしても白というよりは青白い感じだ。微塗工紙も薄用紙も見ることはなかった。恐らくないのかもしれない。見返しに使うようなファンシーペーパーは数がない。コート紙やマットコート紙などは比較的マシだと思う。

書店で、外国語学習コーナーを覗いてみたが、英語が大半を占めている。日本語なんかは片隅に追いやられている。外国語のフロアにはCDやビデオのコーナーがあった。Guns N' Rosesの「Use Your Illusion IとII」を売っていたので買ってしまった。一枚10元。1元=約12円。なんと120円だよ! ついでに女子十二楽坊のDVD付きのアルバムを買った。60元(720円)。日本に戻ってDVDを観ようとしたが、DVDの形式が違ったために観られなかった(残念!)。

そのまま、「西単」から東に30分ほどだらだら歩いて行くと、やがて天安門に辿り着く。この辺りは、中国人にとっても観光地のようで多くの中国人が記念写真を撮っていた。彼ら(ほとんどがオッチャンたち)の服装はダークな色合いばかりで、日本でもよく見かけるが、頭髪は寝癖ばかり。ホント揃いも揃ってそんな姿の中国人ばかり。かと思ったら、横をアタマ真っ赤で派手な服装の女の子が通り過ぎて行ったりする。中国は社会主義かと見まがうほど、貧富の差が激しい。一億総中流階級の日本の方が余程社会主義っぽい。

そのまま東に向かい、途中でかの有名な「北京飯店」を通り過ぎ、昨夜呑んだ王府井に辿り着いた。ここで朝食兼昼食。連日中華だったため、ちょっと胃がもたれてきたので、日本では喰うことの出来ない「吉野家」の牛丼を食べた。単品でよかったのだが、頼みかたがわからず、サラダとスープの付いたセットメニューをお願いした。23元=約276円。久しぶりのヨシギューは最高に旨かった。付いてきたスープに思いっきりエビが入っていた。

午後にティエンさんにお世話になるので、差し入れでもと思い、小粋なお菓子でも買おうと二人で歩き回ったが、それらしきものが全くない! 北京飯店の中にも踏み入れたが、ない。北京飯店は歴史的にも有名なホテルだが、その荘厳さは途轍もなく重い感じだった。疲れきって、Starbucks Coffeeでコーヒーを飲む。8元=約96円。実はコーヒーには苦労した。毎朝コーヒーを飲むのを日課にしているぼくにとっては、なかなか飲めずノイローゼになりかけていた。煙草も簡単には吸えない中国。お茶は頻繁に飲めるが、コーヒーはなかなか飲めない。結局ティエンさんにはワインを買って(彼女は下戸なのだが)、一度ホテルに帰還。タクシーで14元。タクシーにもボロいのとそこそこの2種類がある。今回はいい方で帰った。シートのふかふか感が全く違う。値段にしても24円くらいの違いの贅沢!

30分ぐらいホテルで一服して、ティエンさんの会社に向かう。勿論、いいタクシーでだ。早速初日に打ち合わせたOCRの試作をしてくれていた。ほぼ90%の読み込み率。十分である。逆に元の方の誤植が多かった。

さてさて、ティエンさんの弟のぼくと同い年の、マイルドセブンを愛煙するゼネラルマネージャーと、通訳として天津から来ている大学生と四人で、ゼネラルマネージャーの運転するホンダのアコードで、華北にあるという印刷会社に向かった。北京から高速を使っておよそ1時間。しかし、平均160km出している。

通訳の学生さんが面白かった(名前失念)。普段、中国語を喋っている時は、堂々と話しているのに、日本語になる途端に「すみません、すみません」「えっと、えっと」となり、態度も急変。腰が低くなる。そんなところも日本人の真似しなくても! と何度も思ったが、言えなかった。最後にウチが出版している中国会話本をあげた。その値段にたじろいていた。
  

印刷所について、閉口したのは、最初に通された偉いさんの部屋での事。名刺交換をした後、煙草を渡されたのだ。しかも銘柄の違う煙草2本。それで吸えというのだ。天津の学生さんも普通にふかしていた。吸い終わると次がくる。もちろんお茶も出たが、ナントモ日本の戦前の風景ではないか!? 煙草は嗜好品。恐らく昔の日本でもこんな風景があったのではないかと思う。しかし、しかし。禁煙ブームで、どこへ行っても吸えない昨今、こんな風習が残っているのは、やはり中国だからか?

前日の印刷所とは、対照的な田舎の工場だ。しかし、設備はそれほど悪いわけでもなかった。4色機も2台あり、製本機もP.P.加工機もあり、すべてが揃っている(日本の印刷所ではここまで揃っているのは大企業しかない)。プリプレスの部屋も覗かせてもらったが、G4のタワー型が3台とeMacが2台あるだけのお粗末な環境だった。所詮田舎の人達向けの印刷工場といった感じだった。しかしながら、ここで会ったオッサンたちは、イメージ通りの中国人でかなり好感が持てた。

帰路は背筋の凍る思いだった。たぶん、運転するゼネラルマネージャーは仕事が忙しくて早く帰りたかったんだと思うが、一般道、片側1車線の狭い道路を130kmで飛ばすのだ。当然のように、横には歩行者や自転車に乗った人達がいる。そして、道路を横断しようとしている小学生十数人の群れにめがけて、クラクションを鳴らしつつ、100kmぐらいには減速したものの、行き過ぎてしまったのだ。また、トロトロ走っているトラックを抜かそうと、反対車線に出たが、向こうからも猛スピードで走ってくる。正面衝突と思った瞬間かわしたが、ホント死ぬかと思った。運転の荒いぼくがいうのだから、これはホントだ。田舎に来ると、貧民窟のような住まいがたくさんある。夕日がキレイだった。

最後の晩餐をどうするかと悩んだが、★氏もぼくもお互いもうすぐ37歳。中国料理にホントに飽きてしまったので、ベタだが、日本料理の店に入った。たいして旨くもない刺身で乾杯。もう一件、バーにより、ホテルに帰った。そうとう疲れていて、ベットに入ると、ドアをノックされた。不審に思いつつも、ドアを開けると、まだ十代の体格のいい女の子が立っていた。例によって中国語で捲し立てられたが、全く何言っているのかわからない。業を煮やした女の子は、部屋に入ってきて、マッサージの案内を掲げた。出張マッサージかと納得したが、死ぬほど疲れていたので、丁重な仕草で断った。今となっては、お願いしてもよかったかなと少々後悔している。

【2005.3.4】

北京空港発08:30の便で、成田に向かう。ホテルを出て、いいタクシーを拾って「Airport Please」と伝えたところ、その運ちゃんが理解出来ない。いくら中国語しかできないとしてもタクシーの運転手ならエアポートの単語ぐらい知ってると思うじゃないか! 前日、天津の学生さんに会話本を渡してしまったので、筆談しかない。「空港」と書いたが、中国語では正式には「空港」と書かない。理解したふうだった運ちゃんだが、ぼくらは、飛行機を目の当たりにするまで不安だった。

機内放送で、成田周辺は雪のため、関西空港か中部空港に着陸する可能性もあると伝えられたが、予定通り成田空港に辿り着いた。その足で会社に戻った。疲れた。

総括 中国での印刷は、技術的にも設備的にも問題がなく、料金面を考えても、ありうるとは思う。しかし、紙と流通に問題があるといえる。通訳の問題もあり、詳細に質問できなかったが、薄用紙や微塗工紙もないようだ。コート紙も上質紙についても、白ければ良いようで、すべて青白い。クリーム書籍紙に関しても、日本のような暖かみのある色はなく、クリームというよりは白に近い感じである。
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