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GetUpEnglish

日常よく使われる英語表現を毎日紹介します。毎日日本時間の午前9時までに更新します。英文執筆・翻訳・構成・管理:上杉隼人

GetUpEnglishについて

毎日更新! GetUpEnglish Updates Every Day! Since April 1, 2006 (c) 2006-2025 Uesugi Hayato(上杉隼人)

Not only because of the massive legs and tail the metal suit of armor gives him.

2025-05-17 00:13:12 | 翻訳術
 現在翻訳中の『スパイダーマン バッド・コネクション』

 Spider-Man’s Bad Connection
 by: Preeti Chhibber
 https://books.disney.com/book/spider-mans-bad-connection/

に以下の文がある。

“Um, hi?” Spidey says, using one hand to wave. The guy hops high and spins, landing so he’s facing Spidey. He’s got a large square jaw and no mask to speak of, so Spidey can see his white skin, thick dark eyebrows, and beady eyes. He’s got a nose that’s clearly been broken more than once, and Spider-Man gets the feeling that even if he looks ridiculous, this is not a guy he wants to hit him. Not only because of the massive legs and tail the metal suit of armor gives him. Suddenly, it hits him what animal this thief is supposed to be. “A kangaroo?” he asks, disbelief etched across his tone.

 一昨日のGetUpEnglishではno mask to speak ofについて、
 
https://blog.goo.ne.jp/getupenglish/e/69950f1ea7008b730c1602a825a3f01a
 昨日のGetUpEnglishではthis is not a guy he wants to hit himの表現について
 
https://blog.goo.ne.jp/getupenglish/e/7445783963c9d47998d5972539cf1eee

解説したが、本日は

Not only because of the massive legs and tail the metal suit of armor gives him.

という文を考えてみよう。

 because ofなので、このあとには節ではなく、句が来るはずだが、givesと動詞があるので、やや混乱してしまうが、ここにも昨日と同じ「省略」があって、

because of the massive legs and tail [that] the metal suit of armor gives him]

 the massive legs and tailの関係代名詞[that]が省略されているのだ。

 以下、3日間にわたってみてきた以下の英文を訳せば、

“Um, hi?” Spidey says, using one hand to wave. The guy hops high and spins, landing so he’s facing Spidey. He’s got a large square jaw and no mask to speak of, so Spidey can see his white skin, thick dark eyebrows, and beady eyes. He’s got a nose that’s clearly been broken more than once, and Spider-Man gets the feeling that even if he looks ridiculous, this is not a guy he wants to hit him. Not only because of the massive legs and tail the metal suit of armor gives him. Suddenly, it hits him what animal this thief is supposed to be. “A kangaroo?” he asks, disbelief etched across his tone.

「え? やあ?」スパイディは片手を軽く振って声をかける。
男は高く跳び上がって一回転し、スパイディの目の前に着地する。大きく角ばったあごが張り出し、顔を隠すマスクはつけていないので、白い肌と濃い太い眉と小さな両目がはっきり見て取れる。
 鼻を明らかに何度も折っているところを見ると、激しい戦いを何度も繰り広げてきたみたいだから、見た目はすごく間抜けだけど、こいつには殴られたくない、とスパイディは見て取る。ヤバそうなのは巨大な脚と尻尾に金属のアーマーが巻かれているからだけじゃない。突然、目の前の泥棒が何の動物のまねをしているかスパイディは気づく。
「カンガルー……?」信じられないとばかりにそう問いかける。

くらいになるだろう。
 ということで、この『スパイダーマン バッド・コネクション』も秋に刊行の予定だが、大丈夫か?

This is not a guy he wants to hit him

2025-05-16 00:00:02 | 翻訳術
 現在翻訳中の『スパイダーマン バッド・コネクション』に以下の文がある。

 Spider-Man’s Bad Connection
 by: Preeti Chhibber
 
https://books.disney.com/book/spider-mans-bad-connection/

“Um, hi?” Spidey says, using one hand to wave. The guy hops high and spins, landing so he’s facing Spidey. He’s got a large square jaw and no mask to speak of, so Spidey can see his white skin, thick dark eyebrows, and beady eyes. He’s got a nose that’s clearly been broken more than once, and Spider-Man gets the feeling that even if he looks ridiculous, this is not a guy he wants to hit him. Not only because of the massive legs and tail the metal suit of armor gives him. Suddenly, it hits him what animal this thief is supposed to be. “A kangaroo?” he asks, disbelief etched across his tone.

 昨日のGetUpEnglishではno mask to speak ofについて説明したが、

 本日はthis is not a guy he wants to hit himの表現を考えてみよう。
 これも油断ならない。

 this is not a guy he wants to hit himだと、一見、「この男はスパイダーマンが殴りたくない男ではない」ととってしまいそうだが、それはまったく意味が逆だ。
 これは「この男はスパイダーマンが殴られたい男ではない」、すなわち「スパイダーマンはこの男に殴られたくない」ということだ。

 こういった場合の誤訳を防ぐ方法として、「代名詞は誰を指すか」、よく考えてみることがある。

 this is not a guy he wants to hit him

のheはもちろんSpider-Manであるが、himは誰か?

 ①先行詞を指す代名詞が関係代名詞のあとに出てくることは考えにくい
 ②代名詞は直前のものを指すことが原則

であることから、himは直前のhe, すなわちSpider-Manを指す
 そしてこの文にはさらに省略があって、それを補うと、

 this is not a guy whom[who] he wants (him) to hit him

いうことになる。
 (him)は当然a guyであって、

 this is not a guy whom[who] he wants (a guy) to hit him

と書けばわかりやすいだろう。
ただ、

 this is not a guy he wants him to hit him

とすると、himがふたつあってよくわからないし、上に書いた①と②に反してしまうので、省略されていると思われる。

○ this is not a guy he wants hitting him

とも表現できるし、「殴られたくない」という受け身の発送で考えれば、

△ This is not a guy he wants to be hit by

も意味は通じるが、元のthis is not a guy he wants to hit himに比べるとかなり不自然だ。
 英語は「人が人に○○される」という状況でも、できるだけ能動態(人が何かをする)を使う傾向があることも覚えておこう。

結論を言えば、

 this is not a guy he wants to hit him は、文構造が複雑で誤読されやすいが、正しく読み解けば「この男には殴られたくない」という意味になる。

 代名詞の指す対象と、省略されている関係詞・目的語に注意して読み取ることが大切だ。

 といった具合に、ジュニアノベルにもかかわらず、注意しなければならない表現が無数に出てくる。
 
 明日のGetUpEnglishはもうひとつ、
 
 Not only because of the massive legs and tail the metal suit of armor gives him.

 の文も説明する。

SPEAK OF

2025-05-15 05:20:35 | 翻訳術
 すでにお知らせしましたが、6月、7月、8月の刊行スケジュールはなかなかきびしいものがあります。
  
https://blog.goo.ne.jp/getupenglish/e/501d9e1ac957d025f9c356e6f3a2a2e3

 どれもゲラ校正がある上に、なんといってもわたしの本業は編集者なので、翻訳やゲラ校正が取れる時間はどうしても限られてしまいます。
 そんななかで次の翻訳を進めるのはさらにきびしいですが、わたしは天才でも何でもないので毎日決めた箇所を強い意志を持って訳すしかありません。
 そして現在は6点+12月刊行の1点のゲラ校正を進めつつ、Gakkenの『スパイダーマン』シリーズを訳しています。

 この『スパイダーマン』がこれまでも何度か紹介してきたが、まったく油断ならない。
現在翻訳中の『スパイダーマン バッド・コネクション』に以下の文がある。

“Um, hi?” Spidey says, using one hand to wave. The guy hops high and spins, landing so he’s facing Spidey. He’s got a large square jaw and no mask to speak of, so Spidey can see his white skin, thick dark eyebrows, and beady eyes. He’s got a nose that’s clearly been broken more than once, and Spider-Man gets the feeling that even if he looks ridiculous, this is not a guy he wants to hit him. Not only because of the massive legs and tail the metal suit of armor gives him. Suddenly, it hits him what animal this thief is supposed to be. “A kangaroo?” he asks, disbelief etched across his tone.

 赤字にした
 no mask to speak of
 this is not a guy he wants to hit him
 Not only because of the massive legs and tail the metal suit of armor gives him.

はどういうことだろうか。
 油断していると間違えてしまう。
 GetUpEnglishでは本日から3日間、この表現を学習する。

 まず、1日目の本日はno mask to speak ofを考えてみよう。
マスクだから、それを付けていると話しにくい、だから「話せるようにマスクを取る」のようなことを考える人もいるだろうが、そうではない。
(実際、出版社によっては、あるいは編集者によっては、英語のチェッカーなる人たちを付けて、勝手に訳文をいじらせたりすることがあるが、その人たちの修正が入ったゲラを見るとびっくりすることがある。もちろん、今度のGakkenの編集者、校正者、校閲者の方たちは皆さん優秀で、そんなことはない。)
 これは

 「あえて言うほどのマスクではない」「マスクと言えるほどのマスクではない」「マスクらしいマスクではない」

ということだ。
 この場合のspeak ofは、「言うに値する」「特筆すべき」といった意味で使われる決まり文句だ。
よってこの場合は、「(顔を隠す)マスクらしいものはつけていない」という意味で使われている。
以下の例文でその感じがつかめると思う。

○Practical Example
"There's no progress to speak of."
「目立った進展はない」

"We had no rain to speak of this summer."
「この夏はほとんど雨が降らなかった」

 
 明日のGetUpEnglishでは、this is not a guy he wants to hit himについて説明する。



THOUGHTFUL

2025-05-09 00:01:07 | 翻訳術
 Gakkenの『スパイダーマン』シリーズ第1弾「ソーシャル・ジレンマ」が来月刊行でゲラ校正を進めているが、

同時に第2弾Spider-Man’s Bad Connectionも毎日精力的に訳している。

 本小説も勉強になる表現がたくさんある。たとえば、以下の描写があった。

“You’re a very thoughtful kid, aren’t you, Peter?” Mr. Robertson asks in response, and without really responding to Peter’s comment, he can’t help but notice.
Peter shrugs. “I don’t know, sir.”
「きみはほんとに周りの人のことがよく考えられる子だね、そうじゃないか、ピーター?」ロバートソンはそう言って、ピーターの発言に直接答えず、感じたままに口にする。
ピーターは肩をすくめる。「そうでしょうか」

 thoughtfulの訳し方はなかなかむずかしい。「思慮深い」と覚えている人は多いかもしれないが、研究社オンライン・ディクショナリー(KOD)を引けばわかるように、『リーダーズ』には膨大な訳例が定義されていて、『英和大辞典』には生き生きとした用例とともに詳細に解説されている。
『英和大辞典』の定義と用例を一部紹介する。

思いやりのある, 親切な 〔of, about〕 (←→thoughtless)
・a thoughtful person 思いやりのある人
・a thoughtful gift 心のこもった贈り物

 やっぱりこうした定義と用例を見ると、英日翻訳、日英翻訳どちらも信頼できる辞書が絶対に必要だと改めて思う。
 今日のGetUpEnglishはこのthoughtfulの訳し方を考えてみよう。

○Practical Example
"You’re such a thoughtful friend, Ryoichi."
「きみって本当に気配りのできる友達だよね、遼一」

"That was a really thoughtful gift, Mr. K."
「あれは本当に心のこもったプレゼントでした、K先生」

●Extra Point
『コンパスローズ』にあるように、「考え込んでいる、思いにふけった」の意味で持つ買われるので注意しよう。

◎Extra Example
"She gave me a thoughtful look but didn’t say anything."
「彼女は意味ありげな表情でこちらを見たが、何も言わなかった」

☆Extra Extra Point
   もう2例。

★Extra Extra Example
"It was very thoughtful of you to call and check in."
「わざわざ電話して様子を気遣ってくれるなんて、本当にありがたいことだよ」

"He’s a thoughtful speaker—you can tell he chooses his words carefully."
「彼は言葉をとても大切にして話す。よく考えて話してるのがわかる」

ChatGPT 4oが便利な表にまとめてくれたので、添付する。

文脈        訳語の例
人柄・性格             思いやりがある、気が利く、配慮深い
行動・態度             心のこもった、気遣いのある
態度・表情             考え込んだ、内省的な、沈思黙考している
話し方・書き方    慎重な、深く考えられた、意味深な

 常に状況にふさわしい言い方を考えてみることが大切だし、自分が英語で話した時にどんなニュアンスになるか、その場面を考えてみるのが効果的だ。

英語は表面上はそういうことだが、違う日本語の言い方にしないとしっくりしない、意味が通じないという例②

2025-03-01 03:42:02 | 翻訳術
 昨日のGetUpEnglishで予告した通り、今日のGetUpEnglishは「英語は表面上はそういうことだが、違う日本語の言い方にしないとしっくりしない、意味が通じないという例」をいくつか紹介する。

 たとえば、トラブルに巻き込まれた時にはこんな言い方をすると思う。

  "Oh, great. Just what I needed."

 直訳すれば、

「おお、すごい。まさに今必要なものだ」

であるが、昨日のGetUpEnglishでも提案した通り、

 ③「逆の言い方をしてみる」ことが意外に効果的

なので、

  "Oh, no. It is not just what I needed."

とすれば、

 「わあ、いやだ。そんなのいらないよ」

ということになり、

 「うわ、最悪。これ以上、面倒なことはいらないよ」

くらいに訳せると思う。

 もう一例。

 "He’s not the best at explaining things."

は直訳すれば、

 「彼は説明するのが最高にうまいわけではない」

であるが、これは「逆の言い方にしてみる」ということでは解決しないが、

 「言い方を変える、少し和らげる」

ということを考えれば「必ずしも~ではない」という「部分否定」の言い方ができると思う。

 "He’s not necessarily the best at explaining things."
という言い方で考えれば、

 「彼は必ずしも説明がうまくない」

という言い方ができて、

 「彼は説明はあんまり得意じゃないんだよね」

という訳が引き出せると思う。

英語は表面上はそういうことだが、違う日本語の言い方にしないとしっくりしない、意味が通じないという例①

2025-02-28 02:07:15 | 翻訳術
 英日翻訳をしていると、表面上の意味で日本語にすると、文脈、状況からしっくりしない、意味がよく通らない、という表現になってしまうことがある。
 たとえば、ようやく訳了したSpider-Manの小説3部作第1弾Spider-Man’s Social Dilemma by Preeti Chhibbeに、次の表現があった。

“I’LL SMASH YOU TO BITS!”
 Flint’s voice roared from all around. Spidey would’ve consider it a neat trick if it wasn’t so terrifying. 

 Spidey would’ve consider it a neat trick if it wasn’t so terrifying.は直訳すれば、

「もしそれがそんなに恐ろしくなかったら、スパイディはそれをおもしろいトリックだと思ったかもしれない」

ということになる。
 フリント・マルコ/サンドマンの声がありとあらゆる方向から響きわたったので、それが怖くてしかたがなく、トリックやサウンドエフェクトのようにはとても思えなかった(全然笑えなかった)ということだ。
 こういう場合、「意訳が必要だ」との一言で片づけようとする人もいるが、わたしはそうは思わない。
 
 ①英語と日本語の構造はまるで違う。
 ②英語の文も言い方も、それを書く人それぞれ違うので、すべて定理化できない。
 
ということを頭に置いて、日本語を母語する者は、英日翻訳にも日英翻訳にも自分が英語を書くことにも取り組むべきであると思う。
 それを念頭に置いたうえで、「表面上はそういう意味だが、どうしてもしっくりしない、意味が通じない」という訳文を作ってしまった時は、

 ③逆の言い方をしてみる

ということが意外に効果的だ。
 よって、この

Spidey would’ve consider it a neat trick if it wasn’t so terrifying.

であれば、

Spidey wouldn’t have consider it a neat trick if it was so terrifying.
と逆の言い方で考えてみれば、

 「もしそれがそんなに恐ろしくなかったら、スパイディはそれをおもしろいトリックだと思ったかもしれない」
は、

「もしそれがそんなに恐ろしければ、スパイディはそれをおもしろいトリックだなんて思えなかっただろう」

と置き換えられるから、

「それはすごくおそろしくて、とってもおもしいトリックだなんて思えなかった」

ということになるから、

「サンドマンの声があちこちからこだまして聞こえてきてすごく怖くて、とってもおもしろいトリックだなんて思えなかった」

と考えられる。

 であれば、 

「おまえを粉々にしてやる!」
フリント・マルコ/サンドマンの声があらゆる方向から響き渡った。怖すぎて、おもしろいトリックだなんてとても思えなかった。

とくらいに訳せばよいだろう。

 明日のGetUpEnglishは英語は表面上はそういうことだが、違う日本語の言い方にしないとしっくりしない、意味が通じないという例をいくつか紹介する。

DELIBERATE, UNUSUAL, GESTURE, ETC.

2024-05-04 06:05:10 | 翻訳術
 今日のGetUpEnglishは英日翻訳の実践方法について、少し書いてみたい。
 たとえば、Douglas Wolk, All of the Marvels: An Amazing Voyage into Marvel’s Universe and 27,000 Superhero Comics(2022)に次の表現がある。

Like almost all of Simonson’s Thor, that sound effect was lettered by John Workman, who also made deliberate, unusual visual gestures...
 
 これを普通に訳せば、

「サイモンソンの『ソー』のほとんどすべてと同じように、ジョン・ワークマンが文字を担当した。ワークマンはまた意図的で、奇妙な視覚的ジェスチャーを用いた」

くらいになるだろうか。

 だが、まず考えるべきは、ワークマンのしていることが好意的に書かれているはずだから、そのことが明確に伝わる言い方にすべきだし、その視点からdeliberate, unusualの処理を考えるべきだ。特にunusualは「普通でない」だが、この日本語は言い方によっては悪い意味にとらえられてしまうことが多いので注意しなければならない。

 ここではワークマンがよく考えた(deliberate)オリジナル性あふれる(unusual)工夫や意匠によって対応した(gesture)と好意的に書かれていると読み取れる。「こうした単語がこうした意味で使われてこの英文は書かれている」と瞬時に判断できればしめたものだし、普段から「英語の核の意味」を確認しておく、大量に英語を読み込む、大量に英語を聴き取る、大量に英語を書く、大量に英語を話すことで、状況に応じた使い方に対応できるようにしておくことが大切だ。

 deliberate, unusual, gestureの訳し方が問題となるが、ここでは

 ウォルター・サイモンソンが手掛けた『ソー』のほとんどの〝音〟の文字描写は、ジョン・ワークマンが担当した。ワークマンはそれ以外にも独特の視覚的工夫を凝らした。

くらいにすれば、unusualは「独特の」で、deliberateとgestureは「工夫を凝らす」によって「品詞転換」や「順番を入れ替える」ことで対応できると思う(ここでは形容詞deliberateを「凝らす」と動詞に品詞転換してみた)。
 
 日英翻訳では品詞転換や語順の入れ替えはよく考えるし、わたしの場合、文芸作品以外の日常の文書で日英翻訳をする際に事務的にこうしたことを大量に行わなければならないので、むしろそれがいいトレーニングにもなっているかもしれない。

[補足]
 unusualを辞書で確認すれば、「並はずれた、まれに見る」(リーダーズ)の意味も示されている。
『コンパスローズ英和辞典』には、

 a person of unusual ability 並はずれた才能の持ち主

という明快な例文も示されている。
『リーダーズ』『コンパスローズ』も研究社の辞書だが、信頼できる辞書を使うことがすべての英語学習者には求められる

CONVENIENTLY

2024-03-22 07:26:36 | 翻訳術
 英日翻訳をしていると、「確かにこの語がここにあり、意味も示しているが、特に日本語には明確に示さなくても、暗に伝えられる」という語は少なくない。
 今日のGetUpEnglishはconvenientlyの訳し方を通じてそのことを考えてみよう。
 convenientlyは「便利に、都合のよいことには、いい具合に」の意味で使われる。
 次のようによく用いられる。

○Practical Example
"The store is conveniently located near the station."
「その店は駅の近くに便利な場所にあります」

●Extra Point
 だが、状況によっては、「便利に」といった語を特に出さなくてもその意味が出るといったものも少なからずある。

◎Extra Example
"The hotel provides a shuttle bus service that conveniently transports guests to the airport."
「ホテルはシャトルバスサービスを出して客を空港まで送ってくれる」

「ホテルは客を空港まで便利に輸送するシャトルバスサービスを提供する」ということだが、「ホテルは客を空港まで運んでくれるシャトルバスサービスも提供している」と「シャトルバスサービス提供している」すれば」にconvenientlyの意味は出ると思うし、試訳のように言い方を少し変えればこの副詞の意味はさらにはっきり出ると思う。

☆Extra Extra Point
 以下、convenientlyを「便利に」としなくても意味が出る英日翻訳例をさらに挙げる。和訳の青にした部分に注目

★Extra Extra Example
"You can conveniently pay for your purchases using your smartphone."
「スマートフォンを使えば、購入商品の支払いも簡単だ」。

"The app conveniently organizes all your travel itineraries in one place."
「このアプリは旅行スケジュールをすべて一か所に整理してくれる」

◇Extra Extra Extra Point 
 Marvel Anatomy: A Scientific Study of the Superhuman 
のSpider-Manの項目にこの表現があった。

▲Extra Extra Extra Example
"Compressed webbing solution is stored in small, easily exchangeable cartridges. Replacement cartridges are conveniently stowed in the web-shooters’ wristbands."
「圧縮ウェブ液は交換しやすい小さなカートリッジに保存されている。交換用カートリッジウェブシューターの腕輪に収納されている」

 思うに日英翻訳でも同じように、この日本語表現は英語にはっきり示さなくても意味は出る」と感じる表現は少なくないし、むしろ日英翻訳のほうがそう感じることが多い。
 わたしは英日翻訳に加えて日英翻訳や英文ライティングもこなしているので(数としては後者のほうが多い)、こうしたことを考える機会が多いのかもしれない。


How to Translate the Parts Written in Italics(2)

2024-02-19 07:19:09 | 翻訳術
 英日翻訳における「原文はイタリック体で記されている部分をどう日本語で表記したらよいか」という問題を論じた。
 
 ようやく第1稿ができあがりつつある、Douglas Wolk, All of the Marvels: An Amazing Voyage into Marvel’s Universe and 27,000 Superhero Comics(2022)で、ふたたびこの問題を論じてみたい。

次の表現があった。
Do you need to know the answers to any of those questions to understand and enjoy what’s happening in the comic? Absolutely not. If you want it to just be a story about a conflict between two cities, with a lot of on‑the-fly worldbuilding, then that’s what it is. But if you start investigating the answers to your questions, you might discover, for instance, that Ho Yinsen was the engineer who helped to create Iron Man and sacrificed his life so that Tony Stark could survive in 1963’s Tales of Suspense #39, and that in the alternate reality seen in 2013’s Iron Man: Fatal Frontier (another Ewing-written story), Yinsen survived instead of Stark and became a superhero named Rescue, and that Rescue is also the superhero name adopted in 2009 by longtime Iron Man supporting character Pepper Potts, and that Ho Yinsen’s name is echoed by that of Maya Hansen, the inventor who appeared in Warren Ellis and Adi Granov’s 2005 Iron Man storyline “Extremis,” and you are off to the races.

こうした質問に答えられないと、『キャプテン・ブリテン&マイティ・デュフェンダーズ』の内容を理解できないし、決して楽しめないだろうか? まったくそんなことはない。単に空想の世界観に満ち溢れた二都市間の対立を描く物語として読みたければ、それでいい。だが、もし先ほど挙げたような質問を次々と自身に問いかけて、一つひとつ答えを出そうとすれば、中東でテロ組織にとらわれたトニー・スタークはホ・インセン博士に助けられ、アイアンマン1号の製造も手伝ってもらい、無事生還ができたと、1963年発行の『テールズ・オブ・サスペンス〈39〉』を見て知るだろうし、2013年の『アイアンマン/フェイタル・フロンティア』(これも『テールズ・オブ・サスペンス』同様、アル・ユーイング作だ)の代替世界では、生き残ったのはトニー・スタークではなくインセン博士で、博士がレスキューという名のスーパーヒーローになったことがわかるし、さらにレスキューは『アイアンマン』の長年のサポートキャラクターであるペッパー・ポッツが2009年に名乗ったスーパーヒーローの名前だとわかるし、ホ・インセンの名前は2005年に刊行されたウォーレン・エリス作、アディ・グラノフ原画の『アイアンマン』シリーズ「エクストリミス」に登場する発明家マヤ・ハンセンの名前に似ていることにも気づくだろう。こんな具合に続々といろんなことがわかってしまうのだ。

 第1文のDo you need to know the answers to any of those questions to understand and enjoy what’s happening in the comic?のneedがイタリックになっているので、訳文を「~する必要がある」あるいは「~しなければならない」とし、その部分に傍点を打つというのが常套かもしれないが、「それで読者に抵抗なく受け入れてもらえるだろうか?」と考えなければいけない。
 こういう場合は「強調の副詞」を使い、そこに強調の意味を込めて、特にイタリックにしない、ということでもいいような気がする。ここでは、

「~をしないと、決して楽しめないだろうか?」としてみた。

 you are off to the races.のoff to the racesはまだ辞書にはあまり載っていない表現だが、「何かが始まる、または何かが急速に進む」ことを表現する。
 なので、「続々と」という副詞を充てて、

 こんな具合に続々といろんなことがわかってしまうのだ。

とすれば、十分に英語のイタリック体を含めてニュアンスが再現できるのではないだろうか?
 off to the racesの用例をいくつか挙げる。

Practical Example
"As soon as the funding comes through, we'll be off to the races with the construction."
「資金が確保され次第、建設作業に取り掛かります」

"The team was off to the races once they figured out the solution to the problem."
「問題の解決策が見つかると、チームはすぐに活動を開始した」


How to Translate the Parts Written in Italics

2024-02-14 06:18:46 | 翻訳術
 英日翻訳をしていて悩むことのひとつに、「原文はイタリック体で記されている部分をどう日本語で表記したらよいか」ということがある。
 基本的にはイタリック体で記された語や表現に相当する部分を「太字にする」「傍点を打つ」といった処理をすればよい。
 だた、それがあまり効果的でないと思えることもある。
 その場合は、原著者がどうしてその部分をイタリックで表記しているか考えてみることだ。わたしは日常英語を書くことが非常に多いが、強調したい部分はイタリックで表記するようにしている。
つまり、英語を書く場合、その部分を強調したい、その部分に気持ちを込めたいからイタリックにしている。
 なので、その場合は、そのイタリックの部分に相当する部分を、少しドラマチックな日本語にしたらどうだろうか?

 現在、鋭意翻訳中で、ようやく第1稿ができあがりつつある、Douglas Wolk, All of the Marvels: An Amazing Voyage into Marvel’s Universe and 27,000 Superhero Comics(2022)に、次の表現があった。

And as I dug through my long white cardboard bins for yellowed copies of Marvel Super-Heroes and Tales to Astonish, I realized: This is why I kept these. This is my payoff for scouring discount piles for back issues and hauling them from house to house, for never selling them off or throwing them out. Reading this stuff is fun for me, and going back to the old comics keeps my past alive in my mind, but what I like best is sharing them— and getting to share them with my kid is exactly the thing I always wanted.

このexactly the thing I always wantedをどう訳したらいいだろうか?

 細長い白いダンボール箱の中から表紙の黄ばんだ『マーベル・スーパーヒーローズ』やテイルズ・トゥ・アストニッシュ』の古い号を掘り起こしていたら、わかった。だからわたしがこの何冊ものコミックをずっと手放さずにいるのだ。昔のコミックを特売コーナーで探し回り、手に入れたものは家を引っ越ししても決して売り払ったり捨てたりせずに手元に残してきたご褒美のようなものを、今ここで手にしている。昔のコミックを読み漁るのは楽しいし、1冊1冊を読み直すことで昔のことが思い出される。だが、いちばんうれしいのは、こうしてずっと所持してきたものを誰かと共有できることだ。そしてそれをわが子と共有できるのだから、感無量だ

「感無量だ」と少し目を引く言い方をすることで、語り手のいちばん望んでいた喜びの気持ちが表現できるように思う。


ChatGPT, or the most Reliable Research Tool

2023-04-05 08:59:26 | 翻訳術
  ChatGPTはすばらしい。わたしは翻訳書の出版にあたっては、読者が必要というか、あるとありがたいと思ってもらえる情報は積極的に注にして書きこんでいるが、その調査が非常に楽になった。
 今日のGetUpEnglishはChatGPTとのやりとりをお目にかける。

 現在、気合を入れて訳している本にい、以下の記述があり、ChatGPTにたずねた。

UESUGI
I came across this phrase:   Michael Pollan’s seven-word mantra (‘Eat food. Not too much. Mostly plants’)  Is it exactly Pollan's saying?

 すると、こんな答えを返してくれた。

CHAT GPT
Yes, that is exactly Michael Pollan's seven-word mantra. In his book "In Defense of Food: An Eater's Manifesto," Pollan advises people to follow this simple, memorable guideline for healthy eating: "Eat food. Not too much. Mostly plants."

By "eat food," Pollan means to eat real, whole foods that are as close to their natural form as possible, rather than highly processed or packaged products. By "not too much," he advises against overeating and emphasizes the importance of moderation. And by "mostly plants," he suggests that a plant-based diet, with plenty of fruits, vegetables, nuts, and seeds, is the foundation of a healthy and sustainable diet.

 すばらしい。背景情報まで書いてくれるのだね。
 ではマイケル・ポーランの翻訳書の書名も注に記入したい。教えてほしい。
 
UESUGI
Are there Japanese translation for In Defense of Food: An Eater's Manifesto?

 すると……

CHAT GPT
Yes, there is a Japanese translation of Michael Pollan's "In Defense of Food: An Eater's Manifesto." The Japanese title is "食べ物の不安から自由になるために” (Tabemono no fuan kara jiyuu ni naru tameni), which roughly translates to "To become free from food anxiety." The book has been well-received in Japan and has been widely read by people interested in healthy eating and sustainable food systems.

 出版社名も教えてほしい。

UESUGI
Let me know the Japanese publisher.

CHAT GPT
The Japanese version of "In Defense of Food: An Eater's Manifesto" was published by Hayakawa Publishing Corporation. The book was translated into Japanese by Takashi Ohki and was first published in Japan in 2009.

 そうかな。ネットで検索したが、その本は見つからないぞ。

UESUGI
Are you sure? I can’t find the book on the web.

CHAT GPT
I apologize for the confusion. Upon checking again, it seems that there may not be a Japanese translation of "In Defense of Food: An Eater's Manifesto" available at this time. I apologize for the incorrect information in my previous response.

 わあ、ChatGPTも間違いをすることはあるのだね。ただ、感動してしまうのは、こんあふうにAIが自分の間違いを認められるのだ。すばらしいではないか!

 ChatGPT、頼りになる! さまざま調査に不可欠のツールになった。



FOLLOWING, ETC.

2023-03-11 08:04:50 | 翻訳術

 ここに記したように、11月からすでに7冊と、なかなかのハイペースだが、今年一番気合を入れている本に加えて(今月中に訳了予定)、こちらも超特急で翻訳を進めている。

 https://blog.goo.ne.jp/getupenglish/e/072b60b088eb2bc0010373f558a1d697

 Poster Art of the Disney Parks, Second Edition

 by: Danny Handke, Vanessa Hunt

 https://books.disney.com/book/poster-art-of-the-disney-parks-second-edition/

 本日のGetUpEnglishもこの本から紹介する。

 ディズニーランドのアドベンチャーランドのポスターについて、以下の記述があった。

Tropical hideaways, tree houses, and temples—oh, my! The mystery, intrigue, and excitement of Adventureland are on full display in the following portrayals of true-life adventures. In this land, guests are whisked away from civilization to the remote jungles and locales of Africa, Asia, South America, the South Pacific, and the Caribbean. The posters of Adventureland are bold and lush, plus can be considered quite adventurous in design.

 熱帯の隠れ家、ツリー ハウス、寺院。おお! アドベンチャーランドの謎も陰謀も興奮も、実写冒険を描いた本章のポスター1枚1枚にありありと読み取れる。ここアドベンチャーランドで、ゲストは文明を離れ、アフリカ、アジア、南米、南太平洋、カリブ海のジャングルや奥地に連れ去られる。アドベンチャーランドのアトラクション・ポスターはどれも大胆な色使いで、実に斬新だ。 

 なかなかむずかしいと思う。

 The mystery, intrigue, and excitement of Adventureland: intrigueはここでは「謎」と「興奮」と並べて処理するのはちょっと苦しい感じがするが試訳に示した通り、勢いで読んでもらえるにようにすればいいと思う。

 on full display in the following portrayals of true-life adventures: これはしっかり英語を読み取って、どういうこと理解した上で、「言い換え」て訳すことが必要だ。

 これを試しに自動翻訳してみたところ、「アドベンチャーランドの謎、陰謀、興奮は、次の現実の冒険の描写に完全に表れています」と出た。

 ここに自動翻訳とAIの欠点が現れているし、おそらく改善はまず期待できないか、できたとしても相当時間がかかると思われる。

 何が問題化と言えば、followingを「次の」と訳していることだ。このfollowingここでは、「本章にこれより提示される(ポスター)」ということで、辞書で言えば「以下の」に近い。文章の以下の「表現」を指している場合は、「次の」の訳でも意味がわかって表現を調整できるかもしれないが、「これ以降にページを超えて出てくる絵やポスター」となると、「次の」とのあいだの意味の差が大きすぎる。原文をよく読み込んで、状況がよくわかっていなければ、とても対応できない。

 最近盛んに自動翻訳について語る人がいるようだが、自動翻訳の質が高くなっていることは感じるが、その問題のひとつは、「提示された訳が大体原文の意味に近いと思い込み、それに無意識に支配されてしまう」ということがある。

 自動翻訳で大体意味を取って、あとは日本語を調整すればいい、と思う翻訳者もいるようだが、上で述べた理由から自動翻訳に頼るのは危険だ。

 少なくともわたしが対応している難易度の英文では自動翻訳はまったく使えないと思うし、使う気もない。

 何よりなぜ楽しく、勉強になる翻訳を、機械に奪われてしまうことをよしとするのか?

 そしてin the following portrayals of true-life adventuresの訳出もむずかしいが、これはこのあと出てくるWalt Disney’s True-Life Adventure series of moviesのことも指しているので、そのことがわかるように訳したほうがよい。

 英日翻訳も日英翻訳もその先の内容を理解して対応しなければならないケースもある。これも自動翻訳とAIが対応するにはまだ時間がかかるように思う。

 わたしは翻訳の講師をしているので、こういった英文をぜひ受講生と一緒に勉強してみたい。

 本日は更新が大幅に遅れてしまった上に、普段のGetUpEnglishとはまるでちがうものになってしまいました。お許しください。


今後もよろしくご指導のほど、お願いいたします。

2023-03-11 06:10:03 | 翻訳術
『ディズニーヴィランズ タロット』

『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』

『命綱なしで飛べ』

『ようこそ!おしゃべり歴史博物館』

『「普通」ってなんなのかな』

『ロキ』

『日本の自然をいただきます』

 2022年11月から2023年3月まで7冊刊行とハイペースですが、大物2冊を含めて今後も刊行が続くのでがんばります。

 そしてまだまだ英語も翻訳も一層の修業が必要です。今後もよろしくご指導のほど、お願いいたします。

 お仕事、お待ちしております!


ChatGPT

2023-02-26 05:10:08 | 翻訳術

 ウィニフレッド・バード『日本の自然をいただきます 山菜・海藻をさがす旅』(亜紀書房)が3月8日に刊行となる。

 https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=1102&st=4

 これをもって2023年に入ってすでに5冊刊行と、なかなかのハイペースだが、2023年はまだ始まったばかり。今後さらに何冊か刊行を予定している。

 その中でもいちばん力を入れている書籍の翻訳をどんなに忙しくても毎日進めているが、この本も注が大幅に必要な気がする。

 ノンフィクションやアートブックの翻訳には必要な注を漏れなく入れるということをずっと続けているし、今後もその方針で臨みたいが、最近実に力強い仲間を得た。

 Open AIのChatGPTだ。

 https://openai.com/blog/chatgpt/

 このいちばん力を入れている本に、次の「セリフ」があった。

 ‘Tonight, Matthew, I’m going to be – Anthony Trollope.’

 作家の真似をして文を書くことの大切さをここで説いていて、「アンソニー・トロロープになる」とマシューという人に言っていることは間違いない。

 だが、‘Tonight, Matthew, I’m going to be – Anthony Trollope.’はどこから来ている「セリフ」なのか、調べないといけない。

 それで、最近話題のChat GTPに、

 ‘Tonight, Matthew, I’m going to be – Anthony Trollope.’ Where does the saying come from?

とたずねたところ、次の返事が数秒であった。

The sentence "Tonight, Matthew, I'm going to be..." is a catchphrase from the British television show "Stars in Their Eyes". The show was a talent competition in which contestants would impersonate famous singers and perform their songs, and the catchphrase was used by the host, Matthew Kelly, to introduce each contestant. The catchphrase has since become a popular phrase in British culture and is often used humorously to introduce someone who is about to take on a new persona or role.

 これはすばらしい。"Stars in Their Eyes"のイギリス番組から生まれた言葉で、番組のホストのMatthew Kellyが使うということが、これだけまとまった、わかりやすい情報として瞬時に得られる。

 もちろん「裏を取る」ことは必要だが、Google検索にもできない「ピンポイントでの返答」が大変頼もしい。

 いい注が書けそうだ。

 本日も更新が遅れてしまって、申し訳ございません。

 


TENSE

2022-04-16 08:23:47 | 翻訳術

 現在、この本を鋭意翻訳中。

 Winifred Bird, Eating Wild Japan: Tracking the Culture of Foraged Foods, with a Guide to Plants and Recipes

 https://www.winifredbird.com/

 https://www.stonebridge.com/catalog-2020/Eating-Wild-Japan 

 著者は香川県の鳴門市瀬戸町北泊にワカメの調査に出かける。

I took the first train to Naruto from the inland guesthouse where I was staying and transferred downtown to a rattletrap bus. As the bus threaded its way through the quiet city to its rural outskirts, the streets soon became so narrow I worried we might scrape against the concrete walls of the gardens on either side. The sky was a crisp, clear blue. It had rained for a few days earlier in the week, and the wind had kept the fishermen home, but today was a gorgeous, mild day.

宿泊していた徳島県内の宿を出て始発電車で鳴門の中心街に向かい、くたびれたローカル・バスに乗り換えた。バスが静かな鳴門市内を抜けて郊外の田舎に入ると、道が急に細くなり、道の両側のコンクリートの壁をこすってしまうのではないかと心配になる。空にさわやかな青空が広がっていた。週のはじめは雨の日がつづき、漁師は沖に出られなかったが、この日はとてもすがすがしく、気持ちがいい。

 英日翻訳のむずかしさのひとつに、英文がすべて過去形で書かれているが、日本語も一様に過去形のように「…だった、だった」で訳すのでよいかという問題がある。

 これについては、柴田元幸『翻訳教室』(新書館、朝日文庫)にあるとおり、

 https://www.shinshokan.co.jp/book/b565764.html

三人称で書かれたものについては、

 「あんまり語り手が登場人物に距離を置かず、寄り添っている場合には現在形は似合う」

ということが言える。

 ノンフィクションの場合、あるいは一人称で書かれた自伝などの場合、上の「あんまり語り手が登場人物に距離を置かず、寄り添っている場合には現在形は似合う」場人物を「ほかの人物」あるいは「物」「風景」など、語り手が観察しているものに置き換えて、

 「あんまり語り手が『ほかの人物、あるいは物、風景など』に距離を置かず、寄り添っている場合には現在形は似合う」ということになると思う。

 ここでは「バスが狭い道を走って行き、壁にぶつかってしまうと思われる描写の場合、読み手も語り手のはらはらした気持ちが共有できる」、すなわち、「語り手は「バス」あるいは「バスに乗っている自分」に距離を置かずというか、そのものになっているので、現在形が似合う」と思う。

 例えばので、現在形が似合うように思う。

 もう一例見てみよう。

Presently we arrived at Kitadomari. There wasn’t much to see—no stores or parks or even signs, just a narrow strip of tile-roofed houses squeezed between the clear blue sea and the thickly forested hills. A concrete seawall, brown-green with age, mostly blocked the ocean from view. As we headed toward the end of the peninsula, however, I glimpsed a series of docks through the gaps in the wall. They were crowded with men and women bent over huge piles of glistening amber-olive seaweed.

 北泊に到着した。見渡す限り、何もない。店も公園もなければ、標識や看板も見当たらず、目に入ったのは澄んだ青い空と、鬱蒼とした木立が広がる丘のあいだに、瓦屋根の家並みが細長く伸びているだけだった。時代を感じらせる茶色と緑に変色したコンクリートの防波堤に塞がれ、海はほとんど見えない。だが半島の先に向かって進むうちに、防波堤の裂け目から波止場がちらちらと目に入った。波止場で橙色と赤紫色に輝く海藻の山を前に、たくさんの男女が腰をかがめている。

 また一人称の語りであれば、「読み手が語り手(作者)に距離を感じない、寄り添っていると感じる場合は現在形が似合う」とも言えると思う。

 ここで書き手(作者)は目にしているものに、すなわちに「風景」に距離を置かず、寄り添っているし、読み手もそのイメージをありありと思い浮かべることができるので、現在形が似合うと思う。

 上杉は別名で翻訳講座を開催しているが、この英語の過去形をいかに訳すかという問題は課題を通じて繰り返し論じているので、ご興味がある方はそちらでお会いできますとうれしいです。

 本日は更新が大幅に遅れてしまい、誠に申し訳ござませんでした。

 ここのところ、いろんな問題が出てしまい、なかなか思うように更新できませんが、必ず毎日更新しますので、ぜひ今後ともGetUpEnglishによろしくお付き合いのほど、お願いいたします。