玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

命知らずの本好き

2007年09月15日 | 日記
 地震後の混乱でご無沙汰しておりました。地震被害の状況を追うのに一杯でした。中越沖地震についてはいろいろ書いておかなければならないことがたくさんあるのですが、おいおい書いていくつもりです。

 今回の地震では、相当に危険な状態の建物の中から、さまざまなものが救い出されつつある。公仁会中央ライフセンター内に文学と美術のライブラリーをつくろうというプロジェクトに協力して、安藤食料品店の奥まで侵入して、大量の本を救い出した。
 奥のつきあたりに、半ば倒壊した土蔵があり、土壁は雨水を含んで重くなっているし、階段などは二階からぶら下がった状態で危険きわまりない。さすがに、そこに入る勇気はなかった。
 しかし、本好きの友人は平気で中に入って本を救い出してくる。「南方熊楠全集」もあれば、「内田百〓全集」もある。土蔵の奥には「菅江真澄全集」などという、読書家垂涎の貴重な全集が秘蔵されていた。「死んでもいいんですか」と聞いたら、「覚悟はできている」ときた。こんな命知らずの本好きもいるのだ。
 でも、人のことは言えない。四谷の小谷家の二階もすごかった。階段はグラグラしていて、二階に上がると床が時々揺れるのだった。だが、本を救い出している間は、恐怖というものを忘れてしまうのだ。ただし、この時は建築学者の“これ以上倒れることはない”という保証をもらっていたが……。
 中央ライフセンターの二階には、約二万五千冊の本が集められた。二人の友人の膨大な蔵書で、小さな図書館ができる。ごきょうだいの方も、「こんな形で本が活かされるならうれしい」と喜んでくださった。
 個人的にも大変うれしいことがある。二人の友人の蔵書の傾向には自分に近いものがあるから、“一生、本を買わないで済む”かも知れないのだ。
 何とか早く整理して、本好きの方々に公開したいと考えている。

越後タイムス9月4日「週末点描」より)


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ゴーヤで省エネ | トップ | 私も被災者だ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日記」カテゴリの最新記事