玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

ジュンク堂へ

2008年10月24日 | 日記
 新潟へ行ったついでに、新潟駅南口のジュンク堂書店を覗いてきた。売場面積千五百坪、約百万冊の蔵書を誇る超大型書店である。一階は一般書、地階に専門書が取り揃えてある。ちょっと異様な風景だったのは“座り読み”のコーナーで、ここでは“立ち読み”はダメでも、“座り読み”はOKなのである。
 大型書店を久し振りに訪れたので、今どんな本が出ているのか、背表紙だけでも見ておこうと思った。意外だったのは、個人全集のたぐいが再版されて、ちゃんと揃っていることだった。『中原中也全集』は高校生の時に買った唯一の全集だったが、それが四十年を経ても装幀こそ違え、今も健在であったことだった。
 他にも『芥川龍之介全集』もあれば、『村上春樹全作品』もあった。最も意外だったのは『石上玄一郎全集』があったことだった。石上玄一郎は、いわゆる戦後派作家で、その代表作「自殺案内者」で知られる。学生時代に「自殺案内者」を読み、全三巻の全集を古本屋で手に入れ、今も大切にしている。こんなマイナーな作家の全集が今も出版されていることに驚きを感じた。
 そういう意味では、地方の書店を覗いても、今どんな本が出版されているのかほとんど分からない状況の中で、大型書店の存在は大きい。百万冊もあるのだから、行ってみれば、読みたい本は必ずあるということなのだ。
 一方、地方の小規模書店の現実は厳しい。柏崎市内でも、いわゆる“まちなか書店”は、すべて姿を消した。インターネットによる書籍販売の影響も大きい。パソコン上で本を注文すれば、翌日には配送されてくるのだから。
 しかし、それでいいのだろうか。本を手に取ってみなければ、それが買うべきものか、買うべからざるものか分からないこともある。柏崎に住んでいる者にとっては、そんな大事な判断をすることができないということなのだ。
 長岡市の「書林長岡」が閉店した。「書林長岡」は個性的な品揃えの書店でよく利用していたのだが、時代の流れには逆らえなかった。生き残るのは、超大型書店とインターネット書店だけになってしまうのだろうか。

越後タイムス10月17日「週末点描」より)


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