「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

自分が何者であるか わからない

2009年10月15日 19時35分50秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

⑧ 自分が何者であるか わからない

 生きることの違和感や、 居場所のなさを 感じています。

 最も根源的な アイデンティティの障害は、 親や出自によるものです。

 養父母や義父母が いる場合や、 片親の場合、

 自分は どの親の子なのかという 問題を抱えやすくなります。

 青年期には、 進路選択や 性的なアイデンティティ,

 存在論的なアイデンティティの 問題もあります。

 自分は愛される価値がない, 何のために生まれてきたのか 分からないという、

 より本源的で 深刻な苦悩に 脅かされてしまうのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 心子は父親に 異性としての愛情を 抱いていたと言います。

 元々 父親は、 いつ発作が起こるかわからない 心臓の病を抱えており、

 心子は 父と一緒に死ぬという 約束をしていました。

( それは 客観的な事実ではなく、 心子の中の 主観的事実でしたが、

 心子にとっては 紛れもない真実でした。)

 心子は 父を支えるため、

 明るくて頑張り屋の もう一人の自分を 無意識に作り出したのです。

 心子は 父と死ぬために生きているようなもので、

 本当の自分が 何だか分からなくなってしまいました。

 父は 心子が10才のとき 急逝しました。

 が、 心子は死ねませんでした。

 父との誓いを破ったという トラウマが、 心子から 生きる意味を奪い、

 自分は 生きていてはいけないという、 死の呪縛となったのだと 思われます。

(次の記事に続く)