「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「みどりの日」 改め

2007年04月29日 12時07分19秒 | Weblog
 
 本日4月29日は、今年から「昭和の日」になりましたが、去年までは「みどりの日」でした。
 毎年思い出す「みどりの日」。
 1年前の記事にも書きました。
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/33192503.html

 ところで、「みどりの日」は今年からは5月4日になったそうです。
 4月29日か5月4日か、σ(・_・;) はどちらの日に思い出にふければいいのか、分からなくなってしまったではないか。
 


(個人的には、昭和から平成になった時、昭和の天皇誕生日4月29日を、「みどりの日」と命名するのに違和感があり、
 「昭和記念日」にでもすればいいのにと思っていました。

 昭和天皇の戦争責任を取り沙汰する勢力のため、「昭和の日」が見送られたのだといいますが。

 これでやっと “元のさやに納まった”という感じがしますね。)
 

「クィーン」 (3)

2007年04月27日 23時01分42秒 | 映画
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47104421.html からの続き)

 それにしても、まだ存命中の皇室と首相の ノンフィクション映画を作ってしまうとは、

 イギリス映画の 懐の深さなのでしょうか。

 監督のスティーブン・フリアーズは 王室周辺の人達に 徹底的に取材したそうです。

 女王の寝床や、ラフな服装で 四輪駆動を飛ばすシーンを撮ったり、

 日本ではあり得ないことですね。

 また、ブレア首相の家が 普通のサラリーマン家庭のような、

 雑然とした日常風景だったのも 興味をそそられます。

 エリザベス女王は この映画を観ていないそうですが、

 主演のヘレン・ミレンを 宮中に歓待したといいます。

 
 ダイアナ元妃は今も 世界中の人の 心の中に生きており、

 彼女の持つ魅力は 際立ったものがありました。

 それは 彼女がボーダーだったためでも あるのではないかと思います。

 ボーダーの人は 人に依存し、人の愛情がないと生きていけない。

 幼いときから 周囲の関心や愛情を得る術を 無意識に身に付けているのです。

 そのため、ボーダーの人は 魅力的な人が多いといいます。

 心子もまた そうだったでしょう。

 一方で、ボーダーであるが故の 激しい感情の嵐。

 ダイアナも人知れず、チャールズ皇太子の不倫などに対する、

 狂おしい感情の爆発に 苛まれていたといいます。

 ダイアナの不安定な心情が、王室との関係に 悪影響を及ぼしたでしょうか? 

 できれば、そういうことに由来する ダイアナと王室のあつれきも、

 見せて欲しかったと思いました。

 そのようなシーンがあったほうが、女王とダイアナの間の

 嫁姑の確執も 具体的に理解できたでしょうし、

 ボーダーとしての片鱗も 知ることができたでしょう。

 この映画は それが主眼ではありませんが、ダイアナ元妃を通じて

 ボーダーの理解が 広がればいいのだが、とも思う次第です。
 

「クィーン」 (2)

2007年04月26日 20時10分43秒 | 映画
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47081789.html からの続き)

 女王とダイアナ元妃の間の確執も 取り沙汰されます。

「ダイアナは生きていても、死んでも厄介」

 それが王室の本音でした。

 一人の人間として 生きるダイアナと、伝統を重んじる王室。

 ぶつかることがあったであろうことも 想像されます。

 エリザベス女王は20代で即位し、その時から50年以上、

 常に国民のことを第一に考え、自分のことは 二の次にして生きてきたのです。

 自分の感情を 表に出すことはありませんでした。

 けれどもマスコミは ダイアナの味方でした。

 女王は王室として、マスコミに惑わされず 威厳を保っているのが

 英国人であると信じていますが、

 ブレアは マスコミが世論を動かすと知っています。

 ブレアは国民の雰囲気を察知し、声明を出すよう 女王に助言するのです。

 そこには 首相自身の評価を高めるための 計算もありましたが、

 新しい世代の宰相として 女王と国民との 橋渡しになる強い使命感でした。

 英国クィーンとしての尊厳を 持ち続けながらも、

 国民の激しい怒りを目の当たりにし、女王は葛藤したのです。

 国民なくして 王室もあり得ません。

 それは胸に迫る 切実な苦悩でした。

 格式高いクィーンの 人間らしい生々しい感情を、ヘレン・ミレンが繊細に演じています。

 ブレアは女王の隠された苦しみを理解し、その高潔な心を絶賛します。

 親子ほど年の違う エリザベス女王とブレアですが、

 どこか母と息子のような 感情でも繋がっていたようです。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47132749.html
 


「クィーン」 (1)

2007年04月25日 21時19分44秒 | 映画
 
 ボーダーだったと言われている ダイアナ元妃が、

 衝撃的な事故死を遂げて 今年は10年目。

 この映画は ダイアナ元妃の突然の死から 1週間の間の、

 王室とエリザベス女王の葛藤を 描いた作品です。

 主演のヘレン・ミレンは 見事にエリザベス女王になりきった名演で、

 アカデミー主演助演賞を受賞し 話題になりました。

 本当に女王そっくりで、細かい立ち居振る舞いから 存在そのものが正に女王でした。

 もう一人 重要な役割を果たすのが、ブレア首相役の マイケル・シーンです。

 イギリスでは ダイアナ元妃が急逝する10ヶ月前に、

 トニー・ブレアが 最年少の首相として就任していました。

 
 ダイアナ元妃の逝去は、イギリス国民始め世界中の人に 大きなショックを与えました。

 けれどもこの時すでに 元妃はチャールズ皇太子と離婚しており、

 民間人であるということで、また 元妃の生家の希望もあって、

 エリザベス女王は ダイアナの死に一切関与しない という選択をしました。

 それはイギリス王室の 長年の習わしだったのです。

 しかし現代のイギリス国民は、ダイアナ元妃に 絶大な親愛の情を抱いていました。

 バッキンガム宮殿の門前には 人々が供える花束が 次から次へと届けられ、

 テニスコート一面ほどの広さが 埋めつくされます。

 王室が一言の声明さえ出さないので、国民の不信は募っていきます。 

 折しも王室一家は スコットランドに滞在中で ロンドンへ戻らず、

 国民は批判を高めていったのです。

 ダイアナを死に追いやったのも マスコミの最たる存在 「パパラッチ」でしたが、

 女王への非難を 大々的に報じたのもマスコミでした。

 およそ日本では 考えられない光景です。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47104421.html
 

「無意識の彷徨」 (12)

2007年04月24日 20時10分23秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47026933.html からの続き)
 

○警察署・留置場

  ベッドに座って考え込んでいるような裕
  司。
  突然、留置場の格子の扉に鍵が差し込ま
  れる音が響く。
  はっと我に返る裕司。
看守「(扉を開けて)面接だ」
  おずおずと立ち上がる裕司。
  裕司が外に出て看守が扉を閉めたとき、
  裕司のズボンの裾が鉄格子の壊れた金具
  に引っ掛かる。
  看守は気づかずつかつか前へ進む。
  裕司は足が動かない。
看守「(立ち止まり振り返る)どうした?
 早く来い!」
  裕司は急き立てられて異様なほど動転す
  る。
看守「何してるんだ?(仁王立ちで威圧的
 に)」
  裕司、必死に足を抜こうとするが抜けな
  い。
  混乱をきたす裕司。
看守「もたもたするな! 早く来ないか!」
  看守、ずんずんと裕司の方へ迫り寄って
  くる。
  我を失って恐怖にかられる裕司。
  向かってくる看守が手に持った鍵が鉄格
  子に当たり、カンカンという金属音が響
  く。
  裕司、時間の感覚がなくなり、看守の動
  きと声がスローモーションのように感じ
  られる。

○フラッシュバック

  カンカンという警報機の音。
  踏切で点滅する赤い光。

○留置場

  裕司の恐怖の表情。
  看守の黒い大きな影が裕司に覆いかぶさ
  る。

○フラッシュバック

  黒い鉄の固まりのような電車。
  けたたましく警笛を鳴らし、轟音を立て
  て迫ってくる。
  手を差し伸べる則子。
  則子の姿があっと言う間に小さくなって
  消滅する。

○留置場

裕司「あああ~~~………!!(頭を抱えてう
  ずくまる)」

○フラッシュバック

  9才の裕司。
  踏切の脇の草むらから線路の方を見てい
  る。
  額から血が流れている(現在の傷痕の場
  所)。
  遮断機が降り警報機が鳴っている。
  線路にブーツの踵を挟まれて動けない則
  子。
  電車が警笛を鳴らしながら飛び込んでく
  る。
  恐怖に引きつる則子の表情。
  無表情の裕司の顔。
  則子と電車が交錯する。
  画面一杯に飛び広がる血飛沫の色。
  フェイドアウト---。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46975546.html
 

「無意識の彷徨」 (11)

2007年04月23日 21時25分45秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46997596.html からの続き)
 

○同・捜査一課

  なつみと友辺・田所、テーブルを挟んで
  座っている。
田所「(煙草をくわえて)困るんだよねぇ、
 勝手なことばっかりされちゃ」
友辺「(なつみに)必要なのは事件当時の記
 憶なんだ。初動が肝心なんだよ。子供のと
 きのことばかり調べてて捜査が遅れては…
 …」
なつみ「彼は恐らく子供のころ、何か強いシ
 ョックを受けるような体験をしたのではな
 いかと思います。彼がなぜ記憶をなくすよ
 うになってしまったのか、その原因を突き
 止めなければ本当の解決にはならないと思
 うんです」
田所「うちらの仕事はね、ホシを吐かせるこ
 となんだ。奴の口を割らせることもできな
 いってんじゃ、心理屋さんよ、あんたの腕
 も怪しいもんだな」
  友辺、ムッとするのを抑える。
なつみ「真実を知るには、彼の心の奥を理解
 しようとする姿勢が基本です。信頼関係が
 必要なんです」
田所「かッ! くちばしが黄色くなってるぜ。
 捜査のトーシローが口を挟むんじゃない
 !」
なつみ「(カチンとくる)でも、例えば事件
 当時の彼の精神状態が正常でなかったと分
 かれば、刑事責任は問えない可能性だって
 あるんですよ!」
田所「そのときはそのときだ! 何をやらか
 したのかって事実が先だろう!?」
なつみ「彼が無意識に行なった事実だけを突
 きつけて、後は放り出すなんてことをした
 ら、彼の心がどんなずたずたにされるか分
 かりますか!?」
田所「ここは警察だ! 心理屋は言われたこ
 とだけやってりゃいいんだよ!」
友辺「田所さん……!」
なつみ「………!!(憤慨)」

○街景/夕方

  走る電車--遠景。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47053023.html
 

「無意識の彷徨」 (10)

2007年04月22日 20時12分09秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46975546.html からの続き)

 
○警察署・留置場/夜

  目覚める裕司。
  震える息を吐く。
  手で顔を覆う裕司。
  

○同・心理課

  裕司,なつみ,友辺。
なつみ「お母さんの顔が見えない……?」
裕司「(不安そうに)……同じ夢を、何度も
 見るんです……」
なつみ「お母さんとの間に何か特別なことが
 ありましたか?」
裕司「(考えて)……分かりません……」
なつみ「どんなお母さんだった?」
裕司「(言いにくそうに)……あまり、覚え
 てないんです……」
なつみ「そう……好きだったとか嫌いだった
 とかは?」
裕司「………それも、よく……」
友辺「………(不思議な思い)」
裕司「(恐る恐る)………母のこと、好きじ
 ゃなかったから、知らないうちに忘れよう
 としてるんでしょうか……?」
なつみ「そうとは言えないけど……お母さん
 とのことで何か漠然とした印象っていうか、
 心に引っ掛かっているような感じはないで
 すか?」
裕司「………何だか、母のことを置いていっ
 たような……見捨てたような、そんな感じ
 が……(辛そうに)」
なつみ「見捨てたような感じ……」
友部「………(怪訝)」
裕司「(急に顔を手で覆って)……自分の母
 親のことを覚えてないなんて、僕は異常じ
 ゃないんですか……!?」
なつみ「(包容するように)人の心の働きに
 はね、必ずそれが必要だったっていう理由
 があるの。それをゆっくり見ていきましょ
 う」
裕司「……僕が異常な理由をですか……?
 どうでもいい……! 僕は病気なんでしょ
 う!? だから人を傷つけても分からないん
 です……!!(自虐的)」
なつみ「裕司くん……(共感に努める)」
裕司「(取り乱して)……僕は異常なんだ、
 病気なんだ……!! うう……!!(泣き伏
 す)」
なつみ「………(心痛)」

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/47026933.html
 

「無意識の彷徨」 (9)

2007年04月21日 21時59分39秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46947072.html からの続き)

  
○街景

  友辺の車が走っている。
 

○車の中

  運転している友辺。
  助手席になつみ。
友辺「尋常じゃないな、あの驚き方は」
なつみ「過去に何か、ああいう音に関わるシ
 ョッキングな体験があったのかもしれない。
 光が印象に残ってるっていうのも気になる
 し」
友辺「俺も子供のとき、古くなった牛乳をカ
 ルピスと間違えて飲んでピーゴロんなって
 さぁ、それからカルピス飲めなくなったな
 (笑)」
なつみ「彼は母子家庭だったね。子供に一番
 大きく影響するのはふつう親との関係だけ
 ど……」
友辺「その母親も西脇が9才のときに亡くな
 って、今の伯父夫婦に引き取られた。でも
 夫婦の話では、西脇は母親の死のことを覚
 えてないそうなんだ」
なつみ「9才で……不自然ね」
友辺「それ以前の母親の記憶もあまりないら
 しい」
なつみ「ふーん、母親との関係に何か問題が
 あったのかな」
友辺「(思いを馳せるように)……自分の過
 去の一部を覚えてないなんて、どんな感じ
 なんだろうね?」
なつみ「………(思案)」
  車は踏切に差しかかり停車する。
  カンカンと警報機が鳴り遮断機が降りる。
  警報機が赤く点滅する。
  電車が音をたてて滑り込んでくる。
 

○闇

  点滅する赤い光(前のシーンから続い
  て)。
  カンカンという音が被さる。
  後ろ姿の則子が漂うような感じで歩いて
  いる。
裕司の声「………お母さん……」
  ゆっくりと振り向く則子。
  顔がぼやけて誰だか分からない。
裕司の声「お母さん……?」
  点滅する光と音。
  則子は何かを求めるようにこちらへ手を
  差し伸べる。
  則子の体が遠ざかっていく。
  苦悶しているように見える。
  光と音が大きくなる。
  則子、懸命に求めるがどんどん遠ざかり、
  電車の轟音にかき消されるようにふっと
  消えてしまう。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46997596.html
 

「無意識の彷徨」 (8)

2007年04月20日 19時10分43秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46929659.html からの続き)
 

○警察署・心理課

  なつみが裕司の面接をしている。
  友辺も同席している。
なつみ「(笑み)いいですよ……もう少し前
 の記憶に戻ってみましょうか。
 (友辺に)あれを」
  友辺、紙袋の中から裕司が着ていたTシ
  ャツを出す。
  目を背ける裕司。
なつみ「辛いでしょうけど、見てもらえます
 か。何か思い出すことは?」
裕司「(表情を歪め、自分の記憶と戦う)…
 ……血……赤い血……」
なつみ「………(じっと見守る)」

○インサート

  血を流して倒れている被害者(顔はよく
  見えない)。

○心理課

裕司「……血が出てる……(ゆっくりと記憶
 を呼び起こし)人が、殴られて……」
  友辺、被害者の写真を出して裕司に示す。
友辺「この人か?」
  恐る恐る写真を見つめる裕司。
裕司「………(顔をしかめる)」

○インサート

  拳を食らい鼻血が吹き出る被害者。

○心理課

裕司「(辛そうに)……そうかもしれません
 ……」
なつみ「あなたが殴った?」
裕司「……何かをした、気はします……でも、
 他にも人がいたような……」
友辺「西脇、しっかり思い出すんだ。肝心な
 ところなんだぞ!」
なつみ「(友辺を制して)友辺さん、無理強
 いしないで。あくまで彼のペースでやるの
 が大事なの」
友辺「………(憮然)」
なつみ「(裕司に)大丈夫、うまくいってま
 すよ」
裕司「………(心ここにあらずという感じ
 で)」
なつみ「裕司くん?」
裕司「……え……?(我に返る)」
なつみ「大丈夫?」
裕司「あ……分かりません……ぼうっとして
 て……」
なつみ「今も気持ちがどこかへ行きかけたの
 かしら?」
裕司「………(困惑)」
  友辺、机の上の煙草を取ろうとしてうっ
  かり金属製の灰皿を床に落とす。
  カンカンと音をたてて、灰皿か床に跳ね
  返る。
裕司『はッ!?……(異常に反応して身をすく
 める)』
友辺「?……(訝る)」
  体を硬直させる裕司。
なつみ「どうしたの?」
裕司「(青ざめて)……き、嫌いなんです…
 …こういう音……」
なつみ・友辺「?………」

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46975546.html
 

「無意識の彷徨」 (7)

2007年04月19日 23時21分02秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46897458.html からの続き)
 

○警察署・心理課

  なつみ、裕司の書類を読んでいる。
なつみ・『伯父夫婦の話では、過去にも2回
 意識をなくして記憶を失ったことがある…
 …時間が経つと元の記憶は戻るけど、無意
 識の間の記憶はないまま、か……(ペンを
 噛む)』
  ドアをノックする音。
なつみ「どうぞ」
  友辺が裕司を連れて入ってくる。
友辺「西脇裕司だ」
  不安そうな裕司、ぺこりと会釈する。
なつみ「(立ち上がり笑顔で)こんにちわ、
 麻生なつみです。心理課の仕事をしていま
 す」
裕司「………(なつみを見る)」
友辺「取り調べじゃない、安心しろ。優しい
 お姉さんだ」
  優しく微笑むなつみ。

   × × × × ×
  
  なつみと友辺、テーブルを挟んで裕司と
  向かい合って座っている。
裕司「………(緊張している様子)」
なつみ「(優しく)自分が誰か、分かります
 か?」
裕司「………(なつみを信用できるかどうか
 顔色を窺う)」
  なつみ、裕司を受け入れる態度。
裕司「(おもむろに)……僕は……西脇、裕
 司です……」
友辺「え!? 思い出したのか?」
裕司「……伯父と伯母に話を聞いて、自分の
 こと、少し思い出しました……」
なつみ「そう、よかった(笑む)記憶が戻り
 はじめたんですね」
友辺「(気負って)事件のとき何をしたか分
 かるか?」
なつみ「友辺さん、あせらないで」
友辺「ん……」
なつみ「(和やかな雰囲気で裕司に)ここの
 留置場で気がついたんですね? その前の
 ことで何か頭に浮かぶことはありますか?
 どんな小さいことでもいいから話してみて
 くれます?」
裕司「………」
なつみ「つじつまが合わなくても、意味が分
 からなくてもいいんですよ」
裕司「(しばらく考え込んで)………光……
 光が、見えたような……」
なつみ「光?」
裕司「(少しずつ思い出そうとしながら)…
 …急に目の前がまぶしくなって……赤い光
 が、ぴかぴか点滅して……」
なつみ「刑事さんに捕まったときですね?
 パトカーのライト。そのときどんな気持ち
 がしたか、覚えてますか?」
友辺「………(見入っている)」
裕司「……何だか、とても恐かった気がしま
 す……わけが分からなくなって……無我夢
 中で……」
なつみ「(頷き)それで暴れたのかしら?
 どうしてそこにいたのかは分かりますか
 ?」
裕司「(ゆっくり思い出しながら)……どこ
 かから、逃げてきたみたいな……誰かを、
 置いて……」
なつみ「誰かを置いて? 何か悪いことをし
 たっていう感じがする?」
  友辺、身を乗り出して裕司の答を期待す
  る。
裕司「………そんな、感じもします……でも、
 恐かった……」
なつみ「逃げだしたい、忘れたいことがあっ
 たのかな?」
裕司「(一生懸命思い出そうと)……何かが
 あったことは分かるんです……でも、それ
 が何だったのかが思い出せなくて……(は
 がゆい)」
  友辺、残念そうに舌打ちする。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46947072.html
 

「無意識の彷徨」 (6)

2007年04月18日 19時36分42秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46766123.html からの続き)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46929659.html  

○同・捜査一課

  電話している友辺。
友辺「……ええ、西脇裕司です……確かにお
 宅の同居人ですか?……いや、落ち着いて
 ください、保護されてるんです……そうで
 すか……ええ、ご足労ですがお出でいただ
 きたいんです、はい……」
 

○同・面会所

  透明の衝立を挟んで、裕司と和信(伯
  父)・俊子(伯母)が向き合っている。
和信「裕司、伯父さんだぞ(裕司に顔を近づ
 ける)」
俊子「伯母さんよ、分かる?(心配そうに見
 つめる)」
裕司「(辛そうに目を伏せる)……すみませ
 ん、分からないんです……」
俊子「……仕方ない、あんたのせいじゃない
 よ、裕司は病気なんだから……」
裕司「……病気……?(不安)」
和信「……とうとう警察のお世話になるなん
 て……悪いことはしてないんだろうな?
 お前を信じてるぞ」
裕司「(うなだれて)……覚えてません……
 でも、目撃者の人が言うのなら、何かした
 のかも……」
和信「(頭を抱えため息をつく)どうしてこ
 んなことが何度も……」
裕司「“何度も”……? 今までにも記憶喪
 失になったことがあるんですか……?(当
 惑)」
俊子「……大丈夫よ、また元に戻るわ(明る
 く振る舞ってごまかす)」
裕司「教えてください、どうして僕はこんな
 ことに……!?」
和信「裕司、落ち着いて……!」
裕司「僕は一体誰なんです……!? 親は来て
 くれないんですか!?……」
和信・俊子「裕司……(困惑)」
裕司「……自分のことが分からないなんて…
 …!(手で顔を覆う)」
 

○街景・夜
 

○警察署・留置場

  膝を抱えて座っている裕司。
  格子窓から月を見つめている。
裕司「………」

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46929659.html
 


NHKに BPDの人が出演 (4)

2007年04月17日 20時22分58秒 | ボーダーに関して
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46842440.html からの続き)

 解離性同一性障害の人の ドキュメント番組は、

 映像処理で 本人の顔を隠すことによって、

 かろうじてプライバシーを 守ることができるでしょう。

 他の人格が出てきても それは本人ではないので、

 本人の人格を 貶めることにはなりませんし、

 プライバシーの侵害も 免れると思います。

 しかしボーダーの人の ドキュメントを作る場合、

 ボーダーの症状である 理不尽な感情の 爆発のシーンを撮影することは、

 その人の最もプライベートな面を あからさまにすることになります。

 そこが ボーダーのドキュメントを撮るときの 一番難しい点ではないかと思います。

(コンビンサー( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/43069391.html )の番組や

 引きこもりの少年を 私塾に入れる番組で、

 家族が掴み合いの格闘する 修羅場のシーンもあったので、

 決して できないことはないと思いますが。)

 本人の顔を隠したとしても、自分や家族が 我を失って泣きわめいているところや、

 後になったら死ぬほど後悔し 自己嫌悪するような

 理不尽な怒りや 悪口雑言を吐いている様子を 人前で見せるのは、

 非常に辛いことではないでしょうか? 

 見境をなくした 自分自身の姿なので。

 映像化を実現するには 当事者の人たちの 相当な協力が必要です。

 当事者の人が 我が身を削ってでも ボーダーのことを知ってもらいたい、

 理解してもらいたいという熱意が 不可欠です。

 そのような人が 出てきてくれれば良いのですが……。

 撮影する側にも これ以上にない慎重さと 格段の配慮が求められます。

 いつか そんな日が訪れることを 心待ちに望みたいものです。
 

NHKに BPDの人が出演 (3)

2007年04月16日 19時32分27秒 | ボーダーに関して
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46806811.html からの続き)

 たなかさんのように 回復しつつある人が

 スタジオ出演で 過去を語る形式のテレビ番組なら 撮影可能ですが、

 ボーダーの人をドキュメントで取り上げるのは 非常に難しいだろうと思います。

 以前 多重人格(解離性同一性障害)が話題になって、

 患者のドキュメント番組が いくつか放送されたことがありました。

 解離性同一性障害はショッキングで とても関心を集めますし、

 見るほうも 病気として割り切ることが まだできるでしょう。

 本人も 他の人格がやっていることの自覚がないので、

 病気で苦しんでいるのだろうということが 他人にも理解しやすいと思います。

 しかし ボーダーの人は言動の自覚があるし (コントロールできないとしても)、

 本人の性格の問題だと 思われてしまいがちです。

 そして ボーダーの人は 周りの人をも巻き込んで、

 怒らせ 傷つけてしまうという 難題があります

 周囲の人が “被害者” になってしまうため、

 “被害者” が “加害者” を理解するのは 非常に難しいという、

 不幸な状況に なってしまうのです。

( “被害” を受けた人の 傷や怒りが甚大なのは事実で、

 それもまた 充分にサポートしなければならない 重要な問題です。

 でも僕は、巻き込まれた人が ボーダーの人の内面を理解し、

 ボーダーの人の苦しみを 推し量ることによって、

 自分の感情を鎮め 傷を癒す手助けになると思っていますが、

 そのこと自体が 傷ついている最中の人には 理解されにくいことです。)

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46872007.html
 

NHKに BPDの人が出演 (2)

2007年04月15日 13時01分53秒 | ボーダーに関して
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46792528.html からの続き)

 それから たなかさんは病院へ通うようになり、

 たなかさんを変えた できごとがありました。

 たなかさんが 主治医に怒りをぶつけたとき、先生は

「自分のせいでこんなにしてしまって 悲しい……」

 と言ったそうです。

 たなかさんは この 「悲しい」 という言葉が理解できず、混乱しました。

 それまでのたなかさんは、「むかつく」 という言葉しか 知らなかったのです。

 なぜ先生が 「悲しい」 と言ったのか 訳が分からず、

 イライラし、頭が痛くて、しんどくて、だるくて……。

 自分は先生が好きなのに 「悲しい」 なんて言われて……。

 そのとき初めて たなかさんは 

「自分も悲しいんや」 「これが悲しいってことなんや」

 と分かったのだそうです。

「先生、ごめんなさい」

 たなかさんの口から出た 初めての言葉でした。

 それからたなかさんは、自分の中にも

 怒り以外の様々な感情が あることに気付いていくのです。

 嬉しい、寂しい、怖いなどの気持ちが あることを確かめ、

 心が軽くなっていったといいます。

 それまでは我が子にも 怒りをぶつけることで 関わりを持ってきましたが、

 真剣に謝り、関係がだんだん変わってきたそうです。

 そしてたなかさんは、長男の小学校の卒業式に

 初めてマスクを取って 出席したのです。

 現在たなかさんは できる範囲で 無理をせずに、

 人と関わる機会を 増やすようにしていっているということです。

 回復することを信じて……。

 
 この日の放送の内容は、「きらっといきる」 ホームページに載っています。

http://www.nhk.or.jp/kira/04program/04.html

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46842440.html
 

NHKに BPDの人が出演 (1)

2007年04月14日 21時51分27秒 | ボーダーに関して
 
 本日4月14日の NHK教育テレビ 「きらっといきる」 で、

 境界性パーソナリティ障害を 取り上げた番組をやっていました。

 「いつかマスクを取る日まで  ~境界性パーソナリティ障害・たなかみるさん~ 」

 というタイトルで、本人の たなかみるさん が出演していました。

(たなかさんは 人前で顔を見られると 緊張してしまうため、

 人前では必ずマスクをして 口を隠すと少し落ち着くそうです。)

 たなかさんは漫画家で、今は回復中ですが、

 今までのBPDとしての体験を マンガにして描いています。

 ボーダーを取り上げた番組や、ボーダーの人本人が TVに出ているのを見たのは

 僕は初めてでした。

(1年半ほど前に 教育テレビの朝の番組で ボーダーをやっていたと

 人から聞いたことがありますが、僕はそれは知りませんでした。)

 ボーダーも ようやくTVに登場するようになったか という感慨があります。

 ボーダーが一般の人にも知られ、理解されるようになる 第一歩になればと思います。

 
 今日 出演したたなかさんは スタジオでもマスク姿でした。

 たなかさんの心には ブラックホールのような暗闇があり、

 それは埋めようとしても 決して埋められないものでした。

 人がその中に入ってくることも、自分が人の中に入っていくことも

 怖くてできませんでした。

 人と関わりたいけれど それができない。

 以前のたなかさんは 何かというと相手に 怒りをぶつけていたといいます。

 田中さんにとって人間関係は 勝つか負けるかしかなく、

 怒るというやり方が 相手より優位に立つための 唯一の方法だったそうです。

 それは自分の恐れを 隠すためのものだったのでしょう。

 でも18才のときに、このブラックホールに平気で入ってくる 男性と知り合います。

 他の人は たなかさんが怒ると引いてしまうのに、

 この人は たなかさんと対等に渡り合ったのでした。

 後に結婚することになった 田中利幸さんです。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46806811.html