「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

過去の人物の影響が 断ち切れない

2009年10月28日 22時47分35秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 投影性同一視によって、

 過去の人物との関係を、 目の前の 人物との関係と 混同してしまいます。

 例えば、 亡き父親に 憧れを抱いていた女性では、

 年上でタイプの男性に、 理想の父親像を 投影しやすくなります。

 逆に、 父親に反発や葛藤を 抱えている人では、

 年上の男性に対して 試したり挑戦的になったりします。

 その人の過去の 対人関係の歴史によって、

 現在の対人関係の パターンが左右されます。

 これは、  「パラタクシス的 (並列的) な影武者」 と呼ばれます。

 ボーダーの人は 目の前の人を 相手にしながら、

 並行して 過去の人物を 相手にしているのです。

 治療では、 過去の親子・ 対人関係に逆上り、

 整理することによって、 過去の亡霊の支配から 解放することが必要です。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 心子は、 父親に異性としての愛情を 抱いていたといいます。

 幼い心子にとって 父親は、

 完全無欠な 男性の理想像だったのではないでしょうか。

 父親は心子に 完璧を求めました。

 心子はそれに応えるべく、 懸命に いい子になったのです。

 そして父親は 心子が10才の時に 他界。

 父親と一緒に死ぬと 約束していた心子は、

 魂の脱け殻のように なったといいます。

 以来、 心子は 好きな男性に対して パーフェクトを求め、

 それが得られなくては 怒りや絶望に 苛まれるようになったのでしょう。

 まして、 命を共にすると 誓っていた間柄。

 恋愛だけでなく、 「死の影武者」 でもある 父親の像は、

 実に錯綜した因縁に 心子を巻き込むことになったのです。
 
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