「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「しょうがいしゃ」 の表記について (3)

2016年02月29日 19時59分30秒 | ボーダーに関して
 
(前の記事からの続き)
 
 「しょうがいしゃ」 の表記について、
 
 まず 「障碍者」 は、 前々日の記事に記した通り 適切だと考えません。
 
  「障がい者」 「しょうがい者」 は、
 
 漢字と仮名の交ぜ書きに 日本語として少々抵抗を感じますし、
 
 言葉の意味が 曖昧になるということもあります。
 
 「害」 を平仮名にするのは、
 
 問題を覆い隠すだけだという 意見もあります  (当事者の中にも)。
 
 このように、 なかなか適切な言葉がありません。
 
 今は差し当たり  「障がい者」 あたりが 無難なのかとも感じますが、
 
  「統合失調症」 「認知症」 のように、
 
 新たな言葉が作られるのが いいのかもしれません。
 
 最近は、 「チャレンジド」 という呼称も 唱えられています。
 
 障害に負けずポジティブに生きる人 という意味合いで、
 
 アメリカなどで広まっているそうです。
 
 しかし、 挑戦して生きるのは 健常者でも誰でもいるわけですから、
 
 この言葉は 「障害を持つ人」 という 元の範疇からずれてしまうと思います。
 
 下手をすると、 健常者はチャレンジしないという、
 
 逆差別的な表現になってしまう 恐れもあるのではないでしょうか。
 
 また、 社会的な障壁に 障害者だけが取り組んでいくという 印象が強く、
 
 社会全体で取り組んでいかなければならないという 社会モデルにも反するとして、
 
 否定する意見もあります。
 
 他には、  「要支援者」 も提案されているようです。
 
 でもこれは現在、
 
 介護の世界で 高齢者を対象とした言葉として 定着しているでしょう。
 
 また 助けを必要とする人という、 弱者のイメージを 与えてしまうことにもなるし、
 
 支援が必要でない障害者もいます。
 
 とても難しい問題ですが、 何か相応しい言葉が 考えられるといいですね。
 
 果たして皆さんはいかがでしょうか? 
 

「しょうがいしゃ」 の表記について (2)

2016年02月28日 20時09分19秒 | ボーダーに関して
 
(前の記事からの続き)
 
  「障害者」 を どういう表記にすべきか、 僕自身は現時点で 答が出ていません。
 
 僕は 発表した自分の作品の中で、 障害者という言葉を 使うことがなかったため、
 
 ある程度以上 深く考える時間を費やさずに、
 
 今まで個人的に  「障害者」 という書き方を してきてしまっていました。
 
 それは 安易さを反省しなければならないと思います。
 
  「精神障害」 「気分障害」 などという表記自体は 問題ありません。
 
  「障害者」 という言葉は、
 
  「障害を持つ人」 という意味で、  「障害を与える人」 ではないので、
 
 言葉の成り立ちからして、
 
 僕は 「障害者」 でも構わないのではないか と考えていました。
 
 もし、 人に対して 「害」 を当てるのは好ましくない
 
 というだけの理由だとしたら、
 
  「被害者」 という表記も 不適切ということになってしまいます。
 
  「被害者」 は  「被害を受けた人」 という意味で、
 
  「被害を与える人」 という意味ではないため、 問題はないのだと思います。
 
 なお、 障害は 個人の中にある (医学モデル) のではなく、
 
 社会の側がそれを受け入れない 障壁を作っている (社会モデル) のであり、
 
 それを是正していかなければならない という考え方からも、
 
  「障害者 = persons with disabilities」 を
 
 肯定する障害者団体もあります。
 
 従って  「障害者」 でもいいのではないかと 考えるわけですが、
 
 現実に多くの当事者の方たちが、  「障害者」 という言葉に
 
 不快感などを感じるのであれば、 これは考慮しなければなりません。
 
(次の記事に続く)
 

「しょうがいしゃ」 の表記について (1)

2016年02月27日 11時43分22秒 | ボーダーに関して
 
(前の記事からの続き)
 
 ネット上では、 「しょうがい」 の表記について、
 
 本来 「障碍(礙)」 と書かれていたが、
 
 戦後、 当用漢字の 「害」 が 当て字として書かれた、
 
 という記述も幾つかありました。
 
 しかし、
 
 《障がい者制度改革推進会議  「『障害』の表記に関する検討結果について」》
 
 の記述のほうが 信憑性があると思います。
 
 以下に要約します。
 
 《 「障碍(礙)」 は元々仏教用語で、
 
 明治に至るまで  「しょうげ」 と読まれ、
 
 平安時代からは  「悪魔、 怨霊などが邪魔すること」 という意味で使われていた。
 
  「障害」 は 遅くとも江戸時代には用例がある。
 
 明治に入ると  「障碍(礙)」 を 「しょうがい」 と 読む例が現れる。
 
 混乱を避けるためもあって、
 
  「しょうげ=障碍(礙)」 と 「しょうがい=障害」 を 書き分けるようになり、
 
 大正期になると 「しょうがい」 は、
 
  「障碍(礙)」 よりも  「障害」 のほうが一般的になる。
 
 戦後、 当用漢字に 「碍」 が含まれなかったため、
 
  「障碍」 の表記がほとんど消え、
 
  「しょうがいしゃ」 も 「障害者」 とされることとなった。
 
 (人を対象とした  「障害者」 という概念が確立されたのは 戦後)
 
  「碍」 を常用漢字にするように という意見もあるが、
 
  「障碍」 と表記しても 根本的解決にはならない。
 
 仏教語の語源の問題もあり、  「障碍」 は不適切という 議論が起こりうる。》
 
  「障碍者」 と表記すべきという 意見も多いですが、
 
 必ずしも適切ではないようです。
 
 僕自身は、  「障碍者」 は 多くの人が読めない文字なので、 賛成していません。
 
 不特定多数の人々に 物を伝える立場からすると、
 
 読めなくては そもそも伝えることができませんから。
 
 もし  「碍」 を常用漢字にするとしても、
 
 少なくとも当面は この字は使えませんし、 将来常用漢字になったとしても、
 
 その教育を受けていない世代の人は 読みがたいでしょう。
 
(次の記事に続く)
 

「精神障碍者」

2016年02月26日 19時47分05秒 | ボーダーに関して
 
(前の記事からの続き)
 
 この講師の方は、
 
  「精神障害者」 を 「精神障碍者」 という 表記をしていました。
 
  「害」 という字は、
 
  「害悪」 「害虫」 など マイナスのイメージがあるとして、
 
  「障碍者」 「障がい者」 「しょうがい者」 などの 表記をする人がいるのを、
 
 僕は 30年ほど前に知りました。
 
  「害」 は 「損なう。 悪くする」 などの意味で、
 
  「障害者」 という言葉は 他人を害するなどの印象を 与える恐れがあるため、
 
 人間について  「害」 の字を当てるのは 相応しくないという趣旨です。
 
 一方 「碍」 は  「さまたげる」 など比較的中立な意味で、
 
 差別的な意味合いを避けるために、 講師の方は 「障碍者」 を使っていたわけです。
 
 しかし そういう意識があるのであれば、
 
 何故 「パーソナリティ障害」 に対しても
 
  「人格障害」 という表現を 改めようとしないのか、 理解しにくいことです。
 
  「障碍者」 という、
 
 決して一般的ではない用語を 使う配慮までしているにも拘らず。
 
 精神看護学の世界では、
 
 パーソナリティ障害の情報が 古いままなのだと思えてなりません。
 
 現状が認識され、  「パーソナリティ障害」 に修正されると信じたいです。
 
 
 現在、 良し悪しは別にして、
 
  「障害者」 が数の上で 多数派なのが実状ではあります。
 
 どの表記にすべきかは 様々な議論があって、 定説はありません。
 
 最近は  「障がい者」 とする自治体なども 増えてきているようですが、
 
 法令などでは  「障害者」 としなければならないそうです。
 
 今後 議論が重ねられていくことを期待します。
 
(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/65059355.html
 

精神看護学で 「人格障害」 (2)

2016年02月24日 21時23分36秒 | ボーダーに関して
 
 精神看護学の世界では、
 
  「人格障害」 が 「パーソナリティ障害」 になる 移行期だと言われましたが、
 
 下記のように、 すでに移行済みです。
 
2003年: DSM-Ⅳ新訂版の日本語訳
 
 (「分裂病」 を 「統合失調症」 としたのと同時)
 
2005年: WHOのICD-10の日本語版
 
2007年: 精神医学ハンドブック
 
2008年: 日本精神神経学会, 新聞報道
 
2010年: 厚生労働省
 
 出版物でも、 大体この10年の間に 発刊されたものは、
 
 ほとんど全て  「パーソナリティ障害」 になっています。
 
  (「人格障害」 になっている 数少ない書物の中の一冊が、
 
 なるほど精神看護学の本でした。
 
 その他には、 かなり偏った パーソナリティ障害の体験談で、
 
 評判のよくない本 (2冊) などがあります。)
 
 今どき 「人格障害」 という言い方をする 病院には行かないほうがいい
 
 と言っていた人もおり、 僕もそう思いますが いかがでしょう。
 
 ところが 講座に同席していた 他の受講生の人たちも、
 
  「人格障害」 は差別的表現で 改めてほしいという僕の訴えに、
 
 なかなか首肯してもらえませんでした。
 
 中には、 精神障がい者に接する仕事をしていながら、
 
  「パーソナリティ障害」 よりも 「人格障害」 のほうが 分かりやすい
 
 と言う人までいたほどです。
 
 人の痛みや人権などに 配慮があるはずの人たちの 講座だっただけに、
 
 差別的表現に対する鈍感さに がっかりしてしまいました。
 
 最後には何となく 僕のことを認めてくれたようなものの、
 
 結構ショックを受けた 出来事でした。
 
 但し、 もし僕と講師の方の 立場が逆だったら、 つまり、
 
 講師の方が  「パーソナリティ障害」 という言葉を使い、
 
 受講生の僕が  「人格障害でもいい」 と言ったしたら、
 
 他の受講生の人たちは 講師の言うことを信じて、
 
 僕を差別表現をする奴だと 思うことでしょう。
 
 そのように 影響力のある立場の人だからこそ、
 
 正しい認識で 的確な言葉を広めてほしいのです。
 
(続く)
 

精神看護学で 「人格障害」 (1)

2016年02月23日 21時01分19秒 | ボーダーに関して
 
 先日受講した 精神障害のとある講座の中で、 パーソナリティ障害の話がありました。
 
 精神看護学の講師で 人間的にはとてもいい方だったのですが、
 
  「人格障害」 という言葉を使っていました。
 
 今は 「パーソナリティ障害」 になっていると 僕が伝えると、
 
 それは小耳に挟んだことがあるが、
 
 精神看護学の現場では  「人格障害」 が使われていると言われました。
 
  「人格障害」 は 人格に障害があるという 誤解・ 偏見を招くことを訴えても、
 
 それはその通りなのだけれど、
 
 現在はまだ  「パーソナリティ障害」 という言葉に変わる 移行期で、
 
  「人格障害」 が使われていることを 分かってほしいと言うのです。
 
 精神看護学の講師であれば、
 
 精神障害への偏見を 率先して是正しなければならない 立場だと思うのですが、
 
  「人格障害」 は もはや時代錯誤という現実を
 
 なかなか分かってもらえませんでした。
 
 患者さんの痛みを 誰よりも理解し、 人権を尊重しなければならないはずなのに、
 
 どうして精神看護の世界で 人格障害という言葉が使われているのか、
 
 不思議でなりません。
 
 看護教育の現場で、 若い学生の人たちに この言葉が教えられて、
 
 パーソナリティ障害は 何か人格に問題があるというような 目で見る看護師が、
 
 もし育っていくとしたら、 本当に居たたまれません。
 
 パーソナリティ障害の代表とも言える BPDは、
 
 ただでさえ 甚だしい誤解や偏見にさらされ、
 
 当事者や家族の人たちは この上なく苦しんでいます。
 
 BPDは 最も苦しい精神障害だとも 言われていますが、
 
 それに更に追い打ちをかけるような 表現がなされるのは、
 
 身を切られるような気持ちです。
 
 精神看護という、 患者のことを第一に支える 看護師を教育する場でこそ、
 
 是が非でもイニシアチブを取って
 
  「人格障害」 という言葉を 改めていってほしいと、
 
 提出するレポートで 再度切望するつもりです。
 
 (繰り返しますが、 講師の方は人間的には素晴らしく、
 
 僕のことも評価してくださっていました。)
 
(続く)
 

監訳者あとがき

2016年02月12日 20時36分11秒 | 「BPDをもつ人と良い関係を築くコツ」
 
 臨床の場では BPの周りの人々が、 感情的に消耗して相談に来ます。

 様々な方法で努力しても 事態が好転せず、 万策つきた疲弊状態で 訪れるのです。
 
  「相手が病気なのか、自分が悪いのか分からない」 「どう関わればいいのか」 と、
 
 正に暗闇の中 手探りでもがいているのです。
 
 BPDの成因は、  「感情的脆弱性」 と 「自己無効化」 が影響している
 
  「生物社会論」 です。
 
 生物学的な感情調整不全の素因と、
 
 感情的な応答を 「認めてもらえない」 (非承認的な) 環境という 誘因が、
 
 相互に作用しあうというものです。
 
 従って、  「認めること」 (有効化や根本的受容) が、
 
 二人の関係を穏やかにする 重要かつ必須の条件になります。
 
  「BPの行動には 同意できなくても、 そこに至る感情や思考は 理解できる」
 
 という姿勢です。
 
 BPは、 悲痛な感情を避けるため 次々と衝動的な 逃避行動をとる一方、
 
 喪失を繰り返す 悲哀の感情を、 自らシャットダウンしてしまいます。
 
 BPの不可解な行動が、  「病的な症状」 としてではなく、
 
  「BPがどう感じ、 どう体験しているか」 として理解し、
 
 それを受容することで、 間接的に BPの行動が変化してくるのです。
 
 社会全体が 「承認的」 になることが、
 
 BPの苦しみを 和らげるだけでなく、
 
 BPとの破壊的な人間関係から 解放してくれるかもしれません。
 
                                  〈荒井秀樹〉
 
〔「境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ」
 (星和書店) 〈シャーリ・Y・マニング著〉 より〕
 [星和書店の許可のうえ掲載]
 

BPが利用できる治療法 (2)

2016年02月11日 20時12分35秒 | 「BPDをもつ人と良い関係を築くコツ」
 
○ 転移焦点化精神療法 (TFP)
 
 BPDは 生物学的脆弱性と環境に由来するとします。
 
 環境とは、 BPが 自分を他人と区別したり、 社会的合図を読み取ったりできず、
 
  「未成熟なメカニズム」 を 作ってしまう環境です。
 
  「未成熟なメカニズム」 には 次のものがあります。
 
・ 万能のコントロール感
 
  (自分が他人によって 過度にコントロールされていると考えるので、
 
  他人を過度にコントロールする)
 
・ スプリッティング ( 「良い」 と 「悪い」 を 統合する能力の欠如)
 
・ 投影 (自分自身の好ましくない性質を 他の人に押しつける)
 
 これらは 非機能的行動, パラノイア, 対人関係での恐怖という
 
 結果になってしまいます。
 
 未解決のままの ネガティブで強力な感情が、
 
 BPの経験を 他人の経験から 切り離すことを妨げます。
 
 非機能的行動を変えるために、 セラピストとの転移関係を 媒介として用います。
 
 
 以上の療法の中で、 弁証法的行動療法が最も効果がありますが、
 
 他の療法も 開発と研究が進んでいます。
 
 BPDの専門家が見つからなければ、 認知行動療法のセラピストをお勧めします。
 
 最も良いのは、 あなたとBPの両方が サポートと治療を探し、 見つけることです。
 
 BPDは 今では治療可能とされています。
 
 道のりは長いですが、 希望があるのです。
 
〔「境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ」
 (星和書店) 〈シャーリ・Y・マニング著〉 より〕
 [星和書店の許可のうえ掲載]
 

BPが利用できる治療法 (1)

2016年02月10日 20時58分10秒 | 「BPDをもつ人と良い関係を築くコツ」
 
○ 弁証法的行動療法 (DBT)
 
 弁証法的行動療法は、 自殺行動の50%以上を減少させています。
 
 生きるに値する 人生を送ることが、 自殺傾向を減らします。
 
 弁証法的行動療法は、 感情を調整し、 現実をあるがままに経験し、
 
 壊れた人間関係を修復し、 新しい人間関係を創造し、
 
 自分自身の人生の 目的達成に役立つように援助します。
 
 苦悩耐性スキル, 感情調整スキル, マインドフルネス・ スキル,
 
 対人関係スキルによって行ないます。
 
 1年 (または6ヶ月) の契約で行なわれ、
 
 毎週 個人セラピーと グループ技能訓練を受けます。
 
 診療時間外でも 電話連絡することを許可しています。
 
○ メンタライゼーション・ セラピー (MBT)
 
 グループと個人での心理療法を 交互に行なう、 2年間のグループプログラムです。
 
 自分と他人の感情, 思考, 欲求を理解し、
 
 感情と欲求がどのように 自分と人の行為に 影響を与えるか理解し、
 
 それらから距離を置く 能力を養います。
 
 相手の行動を説明できるものを 考えることによって、
 
 不快な出来事から 自分自身を切り離すのです。
 
○ スキーマ焦点療法 (SFT)
 
 認知療法, 行動療法, 対象関係療法, マインドフルネス瞑想を統合したものです。
 
 スキーマとは、 より深いレベルにある 認知構造です。
 
 BPの問題は、 子供時代に発達して 生涯進化する、
 
 問題のあるスキーマに 由来するとします。
 
 非機能的行動をやめさせるには、 有害な子供時代のスキーマを 変えることです。
 
  「治療的再養育法」 を用いて、 クライアントとセラピストの関係,
 
 セラピー外での生活, クライアントの子供時代を扱います。
 
 少なくとも週1回のセッションが 3年必要とされます。
 
〔「境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ」
 (星和書店) 〈シャーリ・Y・マニング著〉 より〕
 [星和書店の許可のうえ掲載]
 

治療とサポートを受ける

2016年02月09日 19時59分20秒 | 「BPDをもつ人と良い関係を築くコツ」
 
 BP (BPDの人) にも、 BPを支える家族にも サポートが必要です。
 
 破壊的な結果を減らす 振る舞い方を学ぶために、 セラピーを受けましょう。
 
 BPも家族も、 できる限りの最善を尽くしながら、 やっとの思いで進んでいます。
 
 激してしまう瞬間に、
 
 BPもあなた自身も、 最善を尽くしていると 思い出すことが大切です。

 これは感情調整に 本当に役立ちます。
 
○ サポートを与えてくれる資源
 
 BPに治療を強要しないように。
 
 強要されて受けるのでは、 セラピーは効果を発揮しません。
 
 BPが治療に行かなければ、 あなたが行くのです。
 
 多くの弁証法的行動療法は、
 
  「友人と家族」 グループのプログラムを 提供しています。
 
 感情調整, 苦悩の許容, 対人関係スキル, マインドフルネスの
 
 技能を教えてくれます。
 
 アメリカには、 家族のための支援団体があります。
 
 マインドフルネスのセンターも 国中にあります。
 
 セラピストを見つける場合には、 必ずBPDを扱った 経験のある人にしてください。
 
 次のようなセラピストは注意しましょう。
 
 BPを価値判断する, BPや育てた人を非難する,
 
 BPとの関係を終わらせることを勧める。
 
 ウェブ上には、 BPDとBPD治療に関する 誤った情報が沢山存在します。
 
 資格や経験のないセラピストの 餌食になってしまうと、 取り返しがつきません。
 
〔「境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ」
 (星和書店) 〈シャーリ・Y・マニング著〉 より〕
 [星和書店の許可のうえ掲載]
 

入院の良し悪し

2016年02月08日 20時17分52秒 | 「BPDをもつ人と良い関係を築くコツ」
 
 入院は、 退院できなくなるほどに BPを悪化させます。
 
 外来治療は入院に比べて 自殺の増加に繋がっていません。
 
 入院は 自殺を減らす効果が ないことが示されています。
 
 弁証法的行動療法が 自殺行動を減らすのに有効なのは、
 
 入院せずに済むから という仮説があります。
 
 自殺傾向のある人にとって 一番リスクが高いのは、 病院から退院した直後であり、
 
 入院が自殺行動を 解決することはないということです。
 
 入院を促すのは次のようなときです。
 
1. BPの自殺行動が続いており、 身体的・ 精神的に混乱していて、
 
   BPが自分は死なないと 言えなくなっているとき。
 
   短期の入院 (1~5日) が勧められ、 入院の目的は、
 
   睡眠をとらせ、 不安を減らし、 致死的な手段から遠ざけることです。
 
   自分自身で対処しようとしないでください。
 
2. あなたが限界にきていて、 BPが急性の自殺傾向にあるとき。
 
   自殺危機は 数日から数週間続きます。
 
   あなたにも休息が必要なのです。
 
 短期の入院は、 BPの危機を終わりにする 方法を与えてくれます。
 
  「止むことのない危機」 にあるとき、
 
 非効果的な決断は 更なる衝動的行動に繋がります。
 
 短期入院はその行動を終わらせ、 やり直しの機会を提供します。
 
 感情と行動のサイクルから 脱することができます。
 
〔「境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ」
 (星和書店) 〈シャーリ・Y・マニング著〉 より〕
 [星和書店の許可のうえ掲載]
 

自殺行動への対応

2016年02月07日 19時40分19秒 | 「BPDをもつ人と良い関係を築くコツ」
 
○ BPが 自殺を計画していると伝えたとき
 
 BPが自殺の計画を伝えたら、 すぐにその人のセラピストに 連絡してください。
 
 BPがセラピストを選ぶときには、
 
 時間外の電話に対応してくれる セラピストを見つけるよう勧め、
 
 自殺危機のときには BPがセラピストに電話をして、 指示してもらい、
 
 あなたにも確認の電話をするよう 助言してください。
 
 BPにセラピストがいなければ、 救急病院か119に電話してください。
 
○ 自殺行為への反応の仕方
 
 BPがすでに 自殺に繋がることをしてしまったら、
 
 何をしたかを知らなければなりません。
 
 薬を飲んだのなら、 薬の名前や数量、 どのくらい前に飲んだのか。
 
 身体を切ったのなら、 どこをどのくらい切ったのかなど、 具体的に聞きましょう。
 
 BPが危険な状態でないなら、 その人のセラピストに電話させてください。
 
 自分では何もできないなら、 救急隊に通報しましょう。
 
 BPが意識を保っていられるように、 話し続けてください。
 
 
○ あなた自身を助けること
 
 BPが自殺傾向があれば、 だれもストレスが大きくなります。
 
 次のようなときに、 BPを助けることをよしとします。
 
1. あなた自身の限界の範囲内だと はっきり分かっているとき
 
2. あなたが燃えつきていないとき
 
3. BPにとって最善であるとき
 
4. 他の選択肢がないとき -- 何かしないと 悲劇が生じる可能性が高いとき
 
〔「境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ」
 (星和書店) 〈シャーリ・Y・マニング著〉 より〕
 [星和書店の許可のうえ掲載]
 

BPに自殺傾向がある場合

2016年02月06日 21時17分00秒 | 「BPDをもつ人と良い関係を築くコツ」
 
 自殺傾向には、 慢性的なものと急性のものがあります。
 
 慢性的な場合、 自殺思考から安堵感を得ており、 多数回の自殺企図をします。
 
 急性の自殺傾向は、 圧倒的なストレスへの反応で、 リスクが高くなります。
 
 慢性的な自殺傾向にある人は、 急性の自殺傾向が 出る可能性があります。
 
 慢性的な自殺傾向に 非承認的になるのは、 効果的ではありません。
 
○ 意味と希望を促進する
 
 人間関係や有意義な活動を 失ったり、 手に入れられなかった人が 自殺を図ります。
 
 BPが自殺に繋がらない 生活を創造できるように、 力を貸すのが最善策です。
 
 BPが希望を持っていなくても、 その人への希望を持つことは 有効です。
 
  「そのうちいいことがある」 と 言う代わりに、
 
  「あなたが希望を持てないのは分かる。 私があなたへの希望を持ってもいい?」
 
 と言いましょう。
 
 痛みと絶望感を承認し、 希望に満ちた言葉を述べましょう。
 
○ その人を失った場合の 衝撃を伝達する
 
 自殺傾向にある人は、 自分はいないほうがいいのだと 思い込んでいます。
 
 BPDの人に子供がいるなら、
 
 親が自殺すると 子供が自殺する危険が高くなる と伝えるのは有効です。
 
 自殺があなたにとって 何を意味するかを話すのが、 役に立つでしょう。
 
 婉曲的でなく 明白な言葉 (自殺,死など) を使います。
 
 けれども BPが極度に怒っていたら、 やめてください。
 
 いかに怒っているかを示すために、 自殺するかもしれないからです。
 
〔「境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ」
 (星和書店) 〈シャーリ・Y・マニング著〉 より〕
 [星和書店の許可のうえ掲載]
 

自傷行為と自殺行動 (4)

2016年02月04日 20時25分10秒 | 「BPDをもつ人と良い関係を築くコツ」
 
※ 自殺行動の潜在的な強化子
 
 知らず知らずにしかねない、 自殺行動を強化すること:
 
・ BPとより頻繁に、 長時間話をする
 
・ より優しくする
 
・ 通常はしない 償いや謝罪をする
 
・ 自殺企図のあとに 病院を訪ねる
 
・ 自殺行動の直後に、 BPが欲していることをする
 
 (援助を増やす, BPに要求していたことを撤回する)
 
・ 思春期の青年なら、 時間や注目を与えなくなることを 強化的と思うかもしれない
 
 自殺行動を強化しうる他のこと:
 
・ その行動から感情的, 生理的安堵感を得る
 
・ 病院へ行き、 ストレス要因からの休息を得る
 
・ 生活で要求されることが 圧倒的に感じるとき、 それをせずに生活できる
 
 (仕事を休む, 家族などの面倒を見なくてすむ)
 
〔「境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ」
 (星和書店) 〈シャーリ・Y・マニング著〉 より〕
 [星和書店の許可のうえ掲載]
 

自傷行為と自殺行動 (3)

2016年02月03日 21時25分34秒 | 「BPDをもつ人と良い関係を築くコツ」
 
○ 問題解決としての自殺
 
 自殺行動と非自殺的自傷行為は、 不適切な問題解決方法です。
 
 自殺傾向があることは 根本的な問題ではありません。
 
 それは問題解決方法のひとつなのです。
 
 苦しみを終わらせるか、 そこから逃げたいのです。
 
 自殺行動が、 BPの解決策として ひとたび行動レパートリーに入ってしまうと、
 
 それは選択肢に残ってしまいます。
 
 自殺の代わりに使える 他の行動 (あるいは問題の解決策) を 
 
 身に付けることが必要です。
 
 しかしながら、 解決策としての自殺が 完全になくならないと理解しておくべきです。
 
 慢性的に自殺傾向がある人は、
 
 (事故や病気で) 死ぬという 想像上のシナリオを与えられると、
 
 生理的覚醒度 (つまり感情的覚醒度) が低減しました。
 
 この現象が、 負の強化と呼ばれるものです。
 
 自殺行動が 不快な感情や状況を 除去するのです。
 
○ 苦痛の表現としての自殺
 
 時として、 自殺傾向があるBPの 周りの人たちは、 BPの苦痛をつかめません。
 
 BPは、 苦痛を他人に伝える能力がなく、
 
 自殺行動は 苦痛を他人に示す働きをするのです。
 
 自殺行動は 他者からの注目によって 結果的に強化されるかもしれず、
 
 注目を引き出すかもしれません。
 
 これはBPが  「注目を求めている」 という意味ではありません。
 
 BPの脳が無意識に、 自殺行動と人の注目を 関連づけてしまうのです。
 
 自殺行動が注目を求めるものだ と考えると、 あなたは懲罰的になるかもしれません。
 
 BPに対して 非承認的な結果になってしまうでしょう。
 
〔「境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ」
 (星和書店) 〈シャーリ・Y・マニング著〉 より〕
 [星和書店の許可のうえ掲載]