「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

薬による嚥下障害 -- 胃ろうを考える (2)

2011年11月30日 20時48分32秒 | 介護帳
 
 療養目的で転院してきた 86才の女性は、

 CT画像では 脳梗塞の痕跡もなく、 認知症も軽いのに、

 口から食べられないでいました。

 しかし担当医は、 女性が飲んでいる 薬のリストを見て、

 薬による嚥下障害だろうと 見当がついたのです。

 女性は 数年前うつ病と診断され、 精神安定剤など 8種類の薬を処方されました。

 それから食が細くなり、 誤嚥性肺炎を起こして入院。

 嚥下訓練をしましたが、 口から充分食べられず、 医師の勧めで胃ろうにしました。

 しかし状況は改善せず、 転院時は無表情で ほぼ寝たきり状態に。

 転院先の病院では、 8種類の薬を、 別の抗うつ剤1種類だけにしたところ、

 1週間もしないうちに 女性の意識がはっきりし、 会話も戻ってきました。

 胃ろうを使わず 食べられるようになり、

 食べたいものを 要求するようにまでなったのです。

 高齢になると 肝臓や腎臓の働きが衰え、 薬の成分が分解できず、

 そのせいで 嚥下の筋肉が鈍って、 のみ込みが悪くなることが 少なくありません。

 高齢者の嚥下障害の原因を 真剣に探す病院は少なく、

 不必要な胃ろうにしているケースが 多いと思われます。

 認知症の人の調査により、 薬の影響で

 歩行障害や活動の低下、 尿失禁などが起きていることが 明らかになりました。

 眠りがちで 食事も取れなかった人が、 薬の中止で 改善する例があるのです。

 呑み込みづらい原因が何なのか、 確かめることが必要です。

〔 読売新聞 「医療ルネッサンス」 より 〕
 

家で看取れなかった -- 胃ろうを考える (1)

2011年11月29日 22時33分11秒 | 介護帳
 
 「胃ろうにしたため、 母親を家に 連れて帰れなかった」

 A子さんは、 そう後悔し続けています。

 母親は脳梗塞を発症後、 次第に 口から食べられなくなりました。

 医師は 胃ろうにするべきと勧め、

 胃ろうの利点を説明する ビデオを見せられただけでした。

 A子さんはしたくないと思いましたが、 弟はその場でお願いしたのです。

 医師は  「胃ろうにしなければ退院」  という雰囲気で、

 断ることはできませんでした。

 「胃ろうにしないと 施設に戻れない」

 「食べられなくなったら胃ろう」

 そのように軽く考えている 医師がいるようです。

 しかし胃ろうは、 作るのは簡単でも、

 患者や家族の人生に 大きな影響を及ぼします。

 A子さんは、 自宅での胃ろうの処置に 不安があり、

 やむなく母親を 特養に入所させました。

 母親は 胃ろうのチューブを 外すことが相次ぎ、

 結局 自宅に戻れないまま 亡くなりました。

 胃ろうにしなければ、 もっと早く亡くなったでしょうが、

 本人の苦痛はなく、 家で看取れたかもしれません。

 A子さんは、 自分は食べられなくなっても 胃ろうはしないと言っています。

〔 読売新聞 「医療ルネッサンス」 より 〕
 

レビー小体型認知症のケア

2011年11月28日 19時38分53秒 | 介護帳
 
 認知症と言えば  「記憶障害」 という印象ですが、

 「幻視」 が特徴の 「レビー小体型認知症」 は、

 認知症の2割を占めるとも 言われています。

 主な症状は 次のようなものです。

① 幻視 : 実在しない人や動物、 虫などが見える

② レム睡眠行動障害:

  レム睡眠 (身体が休んでいるが 脳は活動している) の最中に

  叫んだり暴れたりする

③ パーキンソン症状 : 体がこわばり、 歩幅が狭まる

 その他、 頭がぼんやりしたり はっきりしたり、

 認知能力の変動が大きい などの特徴があります。

 診断は、 問診にあわせ、 脳血流や心臓の 画像検査も行いますが、

 医師の認識も まだ不充分で、 誤診も多いといいます。

 患者には どう接するべきでしょう。

 幻視は 暗い所などで見えやすく、 多くは 部屋を明るくすると消えます。

 頭ごなしに 幻視を否定すると、

 理解されない苦痛から うつ傾向を強める人もいます。

 幻視が妄想につながり、 混乱を深めることもあります。

 幻視を恐がる場合は、

 何が見えるのか よく会話をするうちに 消えることも少なくありません。

 追い払うような演技が 有効なこともあります。

 恐がっていない場合は、 幻に近づかせると、 大抵は 本人の意識から消えます。

 病気の症状で 幻視が見えていることを、 周りが 繰り返し説明することで、

 本人が幻覚と認識して 安心することもあります。

 レム睡眠行動障害は、 短時間なら 見守るだけで構いませんが、

 長く続くなら 起こすのもいいでしょう。

 ただ、 身体を揺さぶるのは 混乱させる恐れがあります。

 また、 薬を安易に使うと 症状を悪化させる危険があるので、 注意が必要です。

〔 読売新聞より 〕
 

認知症フォーラム 「あきらめない」

2011年11月27日 20時01分19秒 | 介護帳
 
 認知症と誤診されやすいものに、 うつ病と 「軽い意識障害」 があります。

 うつ病の人は 受け答えが遅くなるので、

 「こちらの言っていることが分からない」 と 誤って判断してしまいます。

 日付や 今いる場所などを尋ねると、

 認知症の人は答えられませんが、 うつ病の人は ゆっくり聞けば答えてくれます。

 「軽い意識障害」 は  「ぼうっとしている」 と見えやますが、

 肝臓や腎臓, 甲状腺など 身体に問題がある時に 起きやすいものです。

 薬の影響で そういう状態になることもあります。

 興奮して攻撃的になっただけで、 安易に投薬されるケースも 多いようです。

 でも実は 接する側に問題があって、

 腹を立てただけということも 少なくありません。

 原因を突き止めれば、 薬がなくても治まることがあります。
 

 この10年で認知症医療は 大きく変わったと言われます。

 MRIやSPECT (脳血流を調べる) などの 診断技術の進歩もあります。

 薬も 昨年までは1種類だけでしたが、 今年から新たに 3種類が出ました。

 漢方の抑肝散 (よくかくさん) も 不安や興奮を押さえる 効果があります。

 認知症の人には 穏やかな生活環境が必要ですが、 何かを伝えようとしているとき、

 「やめて」 とか 「あとでね」 と軽んじられると、

 不安や孤独を強くしてしまいます。

 じっくり話を聞くなど、 正面から向き合う 姿勢が必要です。

 歩き回る人は、 5~10分でも 一緒に外に出かけると 落ち着くでしょう。

 認知症の人にとって、 自分が役に立たないという状況は、

 大きな心の苦しみ, 悲しみになります。

 家事の手伝いなど、 何か携われるものを 見つけることが大切です。

 できないことに目が向きがちですが、 できることに目を向けましょう。

 認知症の人の心の痛みに 耳を澄まし、 目を凝らすのが、 共感への第一歩です。

 地域住民の支え会いも大切で、

 趣味のグループやお茶会などの 活動を広げることが プラスになるでしょう。

〔 読売新聞より 〕
 

湯の話

2011年11月22日 19時33分02秒 | Weblog
 
 以前、 結構な銭湯の記事を書きました。

http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/62141217.html

 ここは 有名人もよく来るようです。

 先日も 森本レオ, 榊原郁恵, 勝俣たちが、

 一緒に来た時の 写真が貼ってありました。

 銭湯の主人やおかみさんと 並んだ写真も。

 その他にも、 オードリー, オリエンタルラジオ, ケンドーコバヤシ,

 地井武男, 毒蝮三太夫、 などの写真とサイン色紙が 飾ってあります。

 やはり 人気の湯殿なのでしょう。

 裸の有名人と たまたま同じお湯に 入れたらいいですね。  (^^;)


 この前、 銭湯へ行った帰り、 深夜の商店街の シャッターの前で、

 ストリートライブをしている 若い女性がいました。

 非常に張りのある声で、 離れた所からでも 耳に入ってきます。

 近づいて聴くと、 切々と 気持ちのこもった歌い方で、 一気に引き込まれました。

 オリジナルであろう楽曲も 素晴らしく感じられました。

 僕は音楽は素人ですが、 プロでも通用する人ではないかと 思えてしまいました。

 こんな所から 未来の有名歌手が 生まれたら喜ばしいですね。

 そしてこの人も、 ここの銭湯に入って、

 写真と色紙を 残していったりして。  (^- ^)


 この銭湯は、 熱い気泡風呂と水風呂があり、

 冷温浴ができると 前の記事に書きました。

 でも  σ(・_・;)  血圧が高めだと指摘され、 ドクターに聞いてみると、

 水風呂は元より、 温度の変化があるのは 良くないそうです。

 それで今は 熱い湯船と水風呂は控え、

 ぬるめで気持ちのいい ミルク風呂に主に入ってます。

 一番近い銭湯には、 ぬるい露天風呂があります。

 時には お湯に浸かりながら 満月を眺めなることもでき、

 これもなかなか 乙なもんです。  (^^)
 

新しい介護施設 (2)

2011年11月20日 18時36分45秒 | 介護帳
 
(前の記事からの続き)

 新しいショートステイの仕事は、 まだゆっくりと 少しずつ教えてもらっています。

 ショートステイでは 日々、 入所される方と 退所される方が数人おられ、

 送迎や入退室の対応があります。

 就寝時と起床時のお世話などが、 今までいたデイサービスと 違うところですね。

 前のデイサービスは、 利用者さんの人数が まだ非常に少なくて、

 一人一人と接して 全員を把握していることができましたが、

 今度の所は 1日15人くらいで、 数日ごとに顔ぶれも変わります。

 僕がまだ 利用者さんを覚えていないこともありますし、

 皆さんと接することはできていません。

 前の所では、 利用者さんと一緒に

 買い物に行ったり 昼食を作ったりするのが特徴で、

 日常的な作業が リハビリになるという考えでした。

 でもショートステイでは、

 利用者さんは 数日間お招きするお客さん という立場なので、

 調理や食器洗いなどを 利用者さんにしてもらうことは 余りないということです。

 (食事は厨房で 調理師の人が作ります。)

 レクリエーションなども、

 デイサービスでは 利用者さんが来ている間、 何かを提供するのがサービスです。

 それに対して ショートステイは、 ご家族の用事や休息のために、

 利用者さんをその間 お預かりするのが第一の目的です。

 朝から晩まで レクリエーションなどをしているわけではなく、

 利用者さんは 食堂でただ座っていたり、

 居室で一人で 過ごしている時間もあります。

 今の所は まだオープンしたばかりなので、

 これからサービスを 充実させていくということです。

 利用者さんに キッチンの仕事をしてもらうことなども あるそうです。

 僕も、だんだんやっていこうと思っています。
 

新しい介護施設 (1)

2011年11月19日 23時04分14秒 | 介護帳
 
 介護の新しい会社に 入社しました。

 グループホーム, デイサービス, ショートステイ, 訪問介護が併設されている

 多機能施設です。

 その中の ショートステイに決まりました。

 8月にオープンしたばかりの 新しい施設で、 とてもきれいな所です。

 たまたま家のすぐ近くで、 自転車で5分。

 これは非常に助かります。

 昨今 注目されている小規模多機能型施設 〔*注〕 は、

 通い (デイサービス) や 泊まり (ショートステイ), 訪問介護などを、

 利用者さんのニーズに応じて、 同じ事業所・ スタッフが 提供する所ですが、

 ここはちょっと違います。

〔*注: http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/62032567.html 参照〕

 グループホーム, デイサービス, ショートステイ, 訪問介護が

 個別に運営されており、 スタッフも それぞれの部署に配属されています。

 ショートステイの定員は20人  (1日の利用者さんは15人くらい),

 グループホームは2ユニットで 計18人、 デイサービスは12人。

 いずれも認知症対応です。

 従業員6000人の 大きな会社で、 全国に事業所があり、

 さらに大きな 介護企業グループのひとつです。

 研修なども しっかりしていると思います。

 前は同族経営の会社で 酷い目に遭ったので、

 今回は コンプライアンスなども信頼できる規模の 会社を探していました。

 そして 各事業所は小規模で 定員が少なく、

 一人一人の利用者さんと 日常生活での関わりが 持てるような所を。

 条件を絞って じっくり探していたので、 随分時間がかかりましたが、

 やっと決めることができました。

 (全ての希望条件を 満たす所は無理ですが。)

 昨日から現場で 勤務が始まりました。

(次の記事に続く)
 

弁証法的行動療法の内容 (4)

2011年11月15日 23時39分01秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

3. 電話カウンセリング

 セッションの合間に 患者が助けを必要なときは、

 治療者が電話, メール, その他の方法で対応します。

 自殺の危機を減らす, 新しいスキルを 応用するのを助ける,

 治療者と患者の間の 問題を解決するためです。

4. セラピスト・ コンサルテーション

 患者を扱う治療者にも ストレスがかかるので、 治療者のための治療も必要です。

 治療者同士で 週に1回ミーティングを行ない、

 弁証法的行動療法の 様々な問題について語ります。
 

 弁証法的行動療法は、 科学的な 複数の臨床試験によって、

 他の治療法より 効果があることが証明されています。

 自殺企図や自傷行為, 怒りの問題, 薬物使用や摂食障害,

 うつ状態や絶望的な気持ちが、 従来の治療より 軽減することが分かっています。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕
 

弁証法的行動療法の内容 (3)

2011年11月14日 20時28分37秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

○ 対人関係を有効に保つスキル

・ 人間関係について 目標とすることを忘れない

・ 受け身にも攻撃的にもなりすぎず、 効果的に人に頼みごとをし、 頼まれ事を断る

・ 人の気持ちを承認し、 人には 正直に誠実に公平に接する

○ 情動制御スキル

・ 感情を効果的にコントロールする

・ 自分の感情を観察したり、 受け入れる

・ 感情を変動 (増加または減少) させる

・ 生活の中の 楽しいことを増やし、 自分を大切にし、

  身体と心の 要求を満たすことで、 感情にあまり 左右されないようにする

○ 苦悩に絶えるスキル

 困難な状況を切り抜けるまでは、

 自分の感情に耐えなければならない という場合があります。

・ 状況を さらに悪化させることなく、 困難な状況や感情を切り抜ける

・ 辛い体験から 気をそらす

  今の瞬間をもっとよく、 楽しくすることで、 危機を乗り切る

・ 現実を ありのままに受け入れる

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 

 詳細は下記の記事もご参照ください。

対人関係
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55275093.html

情動制御(調節)スキル
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55287176.html

苦痛耐性スキル
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55287176.html
 

弁証法的行動療法の内容 (2)

2011年11月13日 19時39分03秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

2. スキル・ トレーニング

 人生を改善し、 目標を達成するのに必要な スキルを学びます。

 スキル・ トレーニングでは、 数人の患者グループを 治療者が指導します。

 前回出された 「宿題」 の復習をし、 次に 新しいスキルを学びます。

 弁証法的行動療法のスキルには、 マインドフルネスのスキル,

 対人関係を有効に保つスキル, 情動制御スキル, 苦痛に耐えるスキルがあります。

○ マインドフルネスのスキル

 「マインドフルネス」 というのは、 意識をはっきり持ち、

 その瞬間瞬間に 何が起きているかに 集中している状態、

 または  「今ある現実に対する 意識を絶えさせない」 状態です。

・ 判断を下すことなく、 今という瞬間に 意識を集中する

・ 今ここで 起こっている知覚 (視覚, 聴覚, 臭覚, 触覚) に気付く

・ 今起こっていることの  「事実のみ」 を描写する

・ 今自分がしていることに 完全に打ちこむ

・ 一度に ひとつのことだけに集中して、 うまくいくやり方だけを使う

(次の記事に続く)

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕
 

 マインドフルネスの詳細については、下記の記事もご参照ください。

http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55263849.html
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/45269689.html
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/45393819.html
 

弁証法的行動療法の内容 (1)

2011年11月12日 19時37分28秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

 弁証法的行動療法には 5つの目標があります。

1. 生きる価値のある人生に向けて 努力する意欲を起こす

   自傷行為や自殺企図などをやめる

2. 目標を達するための スキルを学ぶ

3. 前進と改善を促す 治療環境を作る

   患者が 自分の環境を模索する

4. 治療者が 患者を助ける意欲と スキルを維持する

5. 治療で学んだことを 現実の世界で使えるようにする

 これらの目標を達成するため、 4つの構成要素があります。

1. 個人療法

2. スキル・ トレーニング

3. 電話カウンセリング

4. セラピスト・ コンサルテーション
 

1. 個人療法

 通常週一回、 約1時間行なわれ、 日々の生活の問題に 対処するのを助けます。

 ダイアリーカードという用紙に、

 毎日どう感じているか (惨めか、 気分がよいかなど)、

 自傷行為や自殺企図したい 気持ちになったか、 実際にそれを行なったか、

 薬をきちんと飲んでいるか、 などを記入します。

 ダイアリーカードをもとに、 治療者と一緒に、

 「治療の優先順位」 を決めて、 何に集中すべきかを考えます。

 大抵は、 命を脅かすような行動を コントロールすることから始めます。

 治療の大前提は、 死んでしまった人は 助けられないということです。

 次に、 患者と治療者の  「治療妨害行為」 について話し合います。

 セッションに遅れる, 話をきちんと聞かない, 大事なことを忘れる、

 などがあります。

 患者が生活を送る 妨げとなるものについても 話し合います。

 薬物やアルコール, うつ, 失業, ホームレスの状態、 などです。

 患者が問題を解決し、意欲を維持し、望ましい人生に向かうのを助けます。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 

弁証法的行動療法における 受け入れ、 変化

2011年11月11日 20時44分33秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

○ 承認

 弁証法的行動療法では、 患者が治療者から 理解されていると感じられるように、

 「承認」 をします。

 患者がこう思ったと言ったら、 本当にそう思っているのだと 治療者は認め、

 心から関心を持って 理解していることを、 患者に伝えるのです。

○ 受け入れ

 患者が、 自分自身, 世の中, 自分の感情, 他の人を 受け入れられるために、

 治療者は  「マインドフルネス (気付き)」 などの スキルを教えます。

 受け入れるということは、

 賛同したり好きになることではなく、 服従することでもありません。

 何かを変えようと もがくのをやめて、 それを今の状態のままに しておくことです。

 過去を変えられないように、 どんなに頑張っても 気持ちを変えられないことがあり、

 それを変えようとすれば 余計苦しくなるだけです。

 それを無理に変えることをやめ、

 少なくとも今のところは、 あるがままの状態に しておくことなのです。

 もちろん、 実際に変えられることを 変えてはいけないということではありません。

 動揺したときに 自分を落ち着かせる方法や、

 対人関係や色々な問題を 解決する方法を見つけることはできます。

○ 変化

 弁証法的行動療法は 問題を解決する治療法でもあります。

 自殺願望のあるBPDの人は、 当然何か 変えなければいけないことがあるはずです。

 変化を伴わない受け入れも、 受け入れを伴わない変化も、 助けにはなりません。

 弁証法とは、 受け入れと変化の バランスを取ることです。

 正反対の事柄を ひとつにまとめて、 解決に導くものを求めていくことです。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 

弁証法的行動療法の成り立ち (2)

2011年11月10日 23時02分54秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

 「生物社会的理論」 の 環境的な要因には、  「非承認的環境」 があります。

 BPDの人は 自分の感情とどう付き合えばよいのか、 学べない環境で育っています。

 感じたことを 間違っていると言われたり、

 感情的になると 罰を与えられたり、 無視されたりします。

 抱いた感情を 拒否されたり怒られたりすると、

 自分の感情を恐れるようになるでしょう。

 家族の中で 自分だけが違うと感じて 育つだけで、 非承認になる場合もあります。

 自分はやっかい者、 部外者と感じてしまうのです。

 生物社会的理論では、 感情の脆弱性と非承認的環境の 両方がそろって、

 初めてBPDを引き起こすのです。

 またこの理論では、 感情の脆弱性も非承認的環境も 悪いわけではないとしています。

 感情的である人は、 情熱的で、 人の痛みをよく理解し、 繊細です。

 それが悪いことなど 何もありません。

 同時に、 あまり感情的でない人が、

 非常に感情的な子供との 接し方が分からないとしても、

 その人を責めるべきではありません。

 親や周りの人は、 どうすればよいか分からないだけで、

 傷つけたり動揺させたり しようとしているわけではないのです。

 非承認的環境と 感情的な子供との間で、 悪循環が起きているかのようです。

 このようなことが、 感情が脆弱な人に 繰り返し起こると、

 感情をコントロールするのが困難になり、

 自分の感情に耐えられないと 感じるようになります。

 そして 自分の感情から逃れるために、

 自傷行為や自殺企図を するようになってしまうのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 

弁証法的行動療法の成り立ち (1)

2011年11月09日 21時04分37秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
 弁証法的行動療法は、 ワシントン大学のマーシャ・ リネハンによって、

 自殺願望のある女性に 効果がある治療法として、

 1970年代~80年代前半に 開発されたものです。

 生きていたいと思えるような 人生を築く、 手助けをする治療です。

 自殺願望を抱えている状態は、 真っ暗な部屋の中で 出口が見えないようなものです。

 ただ、 ひとつのドアだけが うっすらと見えています。

 これが  「自殺のドア」です。

 自殺のドアの前にいると、 他のドアが見えなくなってしまうのです。

 問題は、 自殺のドアの向こうに 何があるか分からないということです。

 今よりも酷い世界が あるかもしれず、 これはかなり危険な賭けです。

 弁証法的行動療法は このドア以外のドアを探し、

 生きる価値のある人生を 見つけていくことです。
 

 弁証法的行動療法は  「生物社会的理論」 に基づいています。

 BPDは 生物的な要因 (生まれつきの感情の脆弱性) と、

 社会的・ 環境的な要因によって 引き起こされるという理論です。

 感情の脆弱性には、 次の3つがあります。

・ 感情が敏感

 他の人が感じないような 出来事にも反応してしまう。

 人がわずかに 不快な表情を見せただけで、

 自分が批判されていると感じ、 傷ついてしまう。

・ 感情が激しい

 物事に対して 非常に強く反応する。

・ 感情が元に戻るのに 時間がかかる

 感情的に反応すると なかなか落ち着かない

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 

境界性パーソナリティ障害の治療法

2011年11月08日 21時09分42秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
 治療を受ける前には、 徹底した心理アセスメントを受けて、

 正しく診断してもらうことが 非常に重要です。

 自己診断はよくありません。

 本やネットで 色々な症状や障害について 読んでいると、

 実際にはないのに、 その症状が 自分や他人にあると

 思い始めてしまうこともあるからです。

 このような現象は、 病気について勉強する 医学生にもよく見られ、

 「医学生シンドローム」 と 呼ばれているほどです。

 境界性パーソナリティ障害の治療法には、 次のようなものがあります。

○ 認知行動療法 (CBT)

 感情, 思考, 行動をコントロールするための スキルを学びます。

 問題を起こす 自分のパターンを見極め、 それらを変える努力をします。

○ 弁証法的行動療法 (DBT)

 認知行動療法に加えて、

 自分自身や 自分の人生, 他者を 受け入れる方法を学習します。

 (後述)

○ 精神力動精神療法

 様々な行動の理由, 行動パターンが どう始まったのかを 理解するのを助けます。

 育った環境に 重点を置き、

 親や周りの人との経験が、 現在の行動に どう影響しているかを探ります。

 個人療法, 集団療法, 薬物療法もあります。

 積極的に問題を解決したいなら、 認知行動療法や弁証法的行動療法、

 自分と同じような問題を 抱えている人の 話を聞きたいなら、

 集団療法がよいでしょう。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕