「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

治療の継続について (3)

2008年08月31日 20時47分25秒 | BPDの治療について
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55719268.html からの続き)

 患者の家族が、治療継続の妨げになる ケースもあります。

 境界性パーソナリティ障害の人の家族は、大きくふたつの タイプがあります。

 ひとつは 「無関心型」、もうひとつは 「過干渉型」 です。

 過干渉の場合、患者本人のことを 心から心配し、

 よりよい医療を求めて 努力しますが、残念ながら 見当違いの方向へ行ってしまい、

 かえって回復が 阻まれてしまうことがあります。

 ある症例では、家族が 患者の病気の原因を、

 親からのトラウマだと 信じてしまいました。

 けれども パーソナリティ障害の原因が 何であるか、

 その判断は簡単ではなく、個々のケースによって 異なります。

 人格が何によって 形成されるかは、とても難しい問題です。

 幼少時や思春期の トラウマが影響することは 考えられますし、

 そういう説もありますが、それは現在は 仮説の段階です。

 実際には 原因は親からのトラウマでない 場合も多いのです。

 育て方の問題だけで 境界性パーソナリティ障害に なることはありません。

 境界性パーソナリティ障害の人は、

 両親のせいで 自分はこうなったと 訴えることがよくあります。

 そのように 主張すること自体が、

 境界性パーソナリティ障害の 症状であるとも言えます。

 医師は それは分かっていますが、

 それが症状であると指摘しても 治療にプラスにならないので、あえて説明しません。

 それが家族には 曖昧に見え、不満を持ち、

 医師を次々と変えるということに なってしまいました。

 家族が患者のためにと 奔走するのは責められませんが、

 その心配が 的外れであるために、治療を続けられず、

 回復が見込めなくなって しまうこともあるのです。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55747572.html

〔 「境界性パーソナリティ障害 -- 患者・家族を支えた実例集」

   林公一 (保健同人社) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

治療の継続について (2)

2008年08月30日 21時07分37秒 | BPDの治療について
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55707667.html からの続き)

 境界性パーソナリティ障害の人が 治療を続けられない理由には、

 もうひとつの 境界性パーソナリティ障害の症状があります。

 それは 「見捨てられ不安」 です。

 対人関係の不安定さが 医師との間にも 生じてしまいます。

 人を信頼できない,ちょっとしたことで 見捨てられたとか

 突き放されたと 感じてしまうという、

 この病気の特徴が 治療の中断につながりやすい 宿命にあります。

 境界性パーソナリティ障害の人は、 「ワラにもすがる」 思いで 医師を頼ります。

 「どうせ この先生も 私を見捨てるに違いない」

 そういう気持ちが 根底にあることが多いのです。

 そして、この予測は的中します。

 いや、的中したと 思い込んでしまうのです。

 患者は医師に  「共感の言葉」 を求めますが、

 境界性パーソナリティ障害では 共感するだけでは 治療にならないので、

 医師はあえて そのようなことを言いません。

 患者は 「私を治す気が ないんじゃないか」 と感じて、

 不審に陥ってしまうのです。

 その根にあるのが 見捨てられ不安です。

 相手が自分に 手を差し伸べてくれないと感じ、

 不信感を抱いて 治療が続かなくなってしまいます。

 
 また、診察時間に対して 不満を抱くこともよくあります。

 保険診療の枠内で 治療をする限り、

 診療時間には制限がありますし、予約時間も目安に過ぎません。

 でも 境界性パーソナリティ障害の人は、

 自分の診察時間が遅れたり、延ばしてもらえないことに 不満を訴えます。

 人を頼ろうとする余り、客観的な判断が できなくなってしまうのです。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55731322.html

〔 「境界性パーソナリティ障害 -- 患者・家族を支えた実例集」

   林公一 (保健同人社) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

治療の継続について (1)

2008年08月29日 21時54分36秒 | BPDの治療について
 
 一般には、境界性パーソナリティ障害は 治りにくいと言われていますが、

 その大きな理由は 治療を続けられないためであり、

 治療を続ければ 回復するケースが はるかに多いことが 分かってきています。

 境界性パーソナリティ障害の治療で 最も必要なのは、

 「治療を続けること」 です。

 境界性パーソナリティ障害では、治療を中断するために 回復しない人が大部分です。

 「治療を続けない」 こと自体が、境界性パーソナリティ障害の 症状と言えるのです。

 治療を継続できないのは、 「めくるめく信頼と罵倒」 が原因です。

 相手に全幅の信頼を 寄せたかと思うと、打って変わって 最低の酷評をし、

 特には暴力を 振るうこともあります。

 これは特に、境界性パーソナリティ障害の人が 頼りたいと思っている人に対して、

 顕著に現れます。

 医師はその典型ですから、治療のあらゆる段階で、

 信頼していた医師への 失望や批判が必ず起きます。

 医師のわずかな言動で 途端に不安定になり、

 暴言や自傷行為にいたることが 不可避とも言えます。

 主治医を見限っては ドクターショッピングをする パターンになってしまい、

 これでは 回復が望めません。

 このようなことは、境界性パーソナリティ障害の治療の

 9割以上で 起きていると考えられます。

 主治医を決めたら、その治療を受け続けることが 何よりも重要です。

 次々に医師を変えると、それは 「治療を続けている」 ことにはならず、

 「断続的な受診を 繰り返している」 だけに 過ぎないのです。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55719268.html

〔 「境界性パーソナリティ障害 -- 患者・家族を支えた実例集」

   林公一 (保健同人社) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

境界性パーソナリティ障害の診断基準 (4)

2008年08月28日 21時30分03秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55685455.html からの続き)

 以上に挙げた 特徴のうち、ひとつやふたつだけなら 思い当たる人もいるでしょう。

 また一時的に、何かのトラブルや 挫折などがあったときには、

 誰でもいくつかが 当てはまるかもしれません。

 しかしそれらは 通常範囲の反応であって
(「ボーダーライン反応」 と呼ばれることもあります)、

 境界性パーソナリティ障害と 診断が付くには、

 以上の項目の5つ以上が 持続していることが必要条件です。

 心の病の多くは、レントゲンなどの検査で 確定することができません。

 そこで止むを得ず、症状の有無のチェックという 診断基準が用いられます。

 ただし その症状も、本当は 何かの症状が中心で、

 他の症状は そこから二次的に出てきていると 考えられるべきでしょう。

 つまり、ひとつひとつの症状は 独立した別個のものではなく、

 何らかの有機的な つながりがあるはずです。

 境界性パーソナリティ障害の中心症状は、

 「見捨てられ不安としがみつき」 である という考えが有力です。

 根本に 「見捨てられ不安としがみつき」 があって、

 その他に 診断項目のいくつかがある というのが本質的でしょう。

 境界性パーソナリティ障害の 行動パターンをイメージ化すると、次のようになります。

「いつも 人から見捨てられるのではないか という不安があり、

 ちょっとしたことで その不安が実現化するという 思いにとらわれてしまい、

 感情が不安定になる。

 自殺のそぶりをしたり キレたりすることで、見捨てられることから 脱しようとする。

 境界性パーソナリティ障害の人にとっては、それまでどんなに 信頼していた人でも、

 自分を見捨てるのではないかと 思った瞬間に、

 一気に価値が下がって 罵倒の対象となる。」

 そして 周囲からは見えにくいですが、

 本人の中では 空虚感やアイデンティティの障害に 常に悩んでいることが多いのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害 -- 患者・家族を支えた実例集」

   林公一 (保健同人社) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

境界性パーソナリティ障害の診断基準 (3)

2008年08月27日 22時20分24秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55671059.html からの続き)

○ 「うつろなこころ」

《慢性的な空虚》

 うつ病に見えることもあり、共通点もあります。

 けれども、性格の強い偏りである 境界性パーソナリティ障害と、

 脳内の化学物質の変調である うつ病とは、別のものと考えられています。

○ 「アイデンティティ障害」

《同一性障害.著名で持続的な 不安定な自己像、または自己感》

 自分の価値観や 目標が定まりにくく、

 例えば 志望する進路や職業が 突然変わるということがあります。

 アイデンティティ障害に 関連したこととして、あるときから突然に、

 親が不当な 育て方をしてきたとして、親を責めることがあります。

 また、アイデンティティ障害は、解離性同一性障害 (多重人格) や

 性同一性障害という形で 現れることもあります。

○ 「一過性“精神病”」

《一過性のストレス関連性の 妄想様観念、または 重篤な解離症状》

 周囲の人に対する 被害妄想が出ることもあります。

 多くは勘繰りに近いもので、

 人との繋がりを 強く求める裏返しとして 解釈できますが、

 ときには 統合失調症かと思われるような 妄想も見られます。

 ただし それはあくまでも一過性で、精神病ではありません。

○ 「対人操作性」

 これは DSM-Ⅳ-TRの診断基準には 入っていませんが、

 境界性パーソナリティ障害の 大きな特徴と言えます。

 場面や相手によって 巧みに言葉を使い分け、虚実も取り混ぜて、

 あたかも 自分が被害者であるような 印象を、いや確信を 持たせるものです。

 「対人操作性」 があまりにも巧妙なため、周囲は 操作されていることに気付かず、

 その集団がガタガタになって 初めて分かるということも 少なくありません。

〔 「境界性パーソナリティ障害 -- 患者・家族を支えた実例集」

   林公一 (保健同人社) より 〕

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55695997.html
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

境界性パーソナリティ障害の診断基準 (2)

2008年08月26日 20時39分31秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55659571.html からの続き)

○ 「めくるめく信頼と罵倒」

《理想化とこき下ろしとの 両極端を揺れ動くことによって 特徴づけられる、

 不安定で激しい人間関係》

 相手を無条件で 尊敬するかと思うと、

 手のひらを返したように 罵倒するということが繰り返されます。

 「対人評価の極端な変動」 と 言うこともできます。

 境界性パーソナリティ障害の人は 初対面の人に対して、

 1~2回会っただけで 全幅の尊敬を 抱いてしまうことがあります。

 その人を理想化し、そばにいてほしいという 強い欲求が生まれます。

 けれども 常にそばにいることなど できるはずがないので、

 境界性パーソナリティ障害の人は 見捨てられ不安が 急激に強くなってしまうのです。

 すると、それまでの理想化が 一気に崩れ落ちて、攻撃や罵倒という 言動になります。

○ 「ムードスイング」

《顕著な気分反応性による 感情不安定性

(通常は2~3時間持続し、2~3日以上 持続することはまれな、

 エピソード的に起こる 強い不快気分,いらだたしさ,または不安) 》

 「ムード」 は気分・感情、「スイング」 は揺れです。

 感情の変化を意味する 日常用語的な 「躁うつ」 と 区別するために、

 この言葉を使います。

 感情の不安定さは、境界性パーソナリティ障害の 大きな特徴です。

 躁うつ病と 間違われることもありますが、一番大きな違いは、

 気分が突然 変動しているように見えても、

 そのきっかけには 「見捨てられ不安」 があることです。

 もうひとつの違いは 持続時間です。

 躁うつ病の気分変動は、週あるいは 月の単位ですが、

 境界性パーソナリティ障害では 2~3時間から、長くても2~3日です。

○ 「キレる」

《不適切で激しい怒り、または 怒りの制御の困難

(しばしば癇癪を起こす,いつも怒っている,取っ組み合いの喧嘩を繰り返す) 》

 境界性パーソナリティ障害の 不安定な感情は、

 しばしば怒りの爆発という 形を取ります。

 家族など身近な人に 向けられることもあれば、

 執拗なクレーマーのような 形を取ることもあります。

〔 「境界性パーソナリティ障害 -- 患者・家族を支えた実例集」

   林公一 (保健同人社) より 〕

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55685455.html
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

境界性パーソナリティ障害の診断基準 (1)

2008年08月25日 22時02分38秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
 「境界性パーソナリティ障害 -- 患者・家族を支えた実例集」

 林公一 (保健同人社) 」 で、

 DSM-Ⅳ-TRの BPD診断基準を、簡易な言葉で言い換えて 説明しています。

 《  》 内に DSM-Ⅳ-TRの診断基準の 文言を記しながら、

 それを紹介します。
 

○ 「見捨てられ不安と しがみつき」

《現実に、または想像の中で、見捨てられることを避けようとする、

 なりふり構わない努力》

 「見捨てられ不安」 は、

 境界性パーソナリティ障害の 最も中心的な 症状と言えます。

 境界性パーソナリティ障害の 多くの症状は、

 この見捨てられ不安が 元になっていると考えられます。

 境界性パーソナリティ障害の人は、人との繋がりを 強く求めていますが、

 それが断たれることは、

 “誰もいない 広大な砂漠に、たった一人で 放り出されたような感覚”

 と表現されます。

 「しがみつき」 は、この不安から 逃れるための行動です。

○ 「自殺リピーター」

《自殺の行動,そぶり,脅し,または 自傷行為の繰り返し》

 境界性パーソナリティ障害の人は、

 リストカット,過量服薬など、あらゆる形で 自傷行為を繰り返します。

 「自殺リピーター」 は、

 境界性パーソナリティ障害の症状で 最も目立つものかもしれません。

 周囲の気を引くための 狂言自殺に見えることも 多いですが、

 自分を傷つけることで 落ち着いたり、生を実感するなど、

 自殺リピーターの心理は 複雑です。

 なお、自殺は 素振りに見えることが 大部分ですが、

 実際に命を落とすことも 10%くらいあります。

○ 「自己破壊的行為」

《自己を傷つける可能性のある 衝動性で、少なくとも ふたつの領域にわたるもの

(浪費,性行為,物質乱用,無謀な運転,むちゃ食い)》

 薬物依存,セックス依存など、やめずに続ければ 破滅に繋がりかねない行為を、

 どうしてもやめられないことです。

 アルコール依存,ギャンブル依存,過食,浪費(買い物依存),

 極めて危険なスポーツへの耽溺 などもあります。

〔 「境界性パーソナリティ障害 -- 患者・家族を支えた実例集」

   林公一 (保健同人社) より 〕

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55671059.html
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オリンピックの国家支援

2008年08月24日 17時41分51秒 | Weblog
 
 この2週間、オリンピック三昧の σ (^^;)でした。

 様々な悲喜劇と 感動を与えてくれましたが、

 全競技を終えて 閉会式を残すのみとなりましたね。

 先ほど フジテレビの 「報道2001」 に、

 フェンシングで銀メダルを勝ち取った 太田雄貴選手が出ていました。

 今まで誰も知らなかった 太田選手ですが、

 メダルを獲得した瞬間に 日本中が沸き立ち、フェンシングも注目されています。

 番組には 二宮清純や竹中平蔵らが出演し、

 国によるスポーツ援助の 問題を話していました。

 太田選手自身、海外遠征や合宿など 数百万の費用を、

 最近まで自腹で (お父さんが)  まかなっていたといいます。

 公費や企業からの 寄付などがなければ、選手は育ちません。

 ただ 旧ソ連や中国のように、国威発揚のために 個人を利用してはいけない。

 才能ある人を、国だけでなく “谷町” や民間企業など

 全体で支えるのが 理想的だと。

 旧ソ連は 国が強化しなくなった途端に、メダルが取れなくなりました。

 大切なのは、「強化」 ではなく 「普及」 です。

 一過性ではなく、底辺を広げることによって、

 持続的に トップアスリートも育ってきます。

 また、スポーツは やりたい人がやるものであって、

 体育 (教育) とは別だという 指摘もありました。

 オリンピックは 文部科学省の管轄になっているが、

 スポーツ省のようなものの 必要性を述べていました。

 さらに、パラリンピックは 厚生労働省の管轄だというのです。

 同じスポーツなのに このような “差別” あると。

 このことは 僕も初めて知り、驚きました。

 
 金メダル大国ではなく、スポーツ大国になることが 必要でしょう。

 スポーツが豊かで、誰もが スポーツに親しむことができる 環境作りです。

 そしてオリンピックは 国のためではなく、選手が自分のためにやって、

 それを見て 国民が喜び、元気や希望を与えられる。

 それが 望ましい姿ですね。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ダークナイト」

2008年08月23日 21時20分07秒 | 映画
 
 「バットマン」 シリーズ最新作です。

 「Dark Night」 かと思ったら、

 「Dark Knight」 (暗黒の騎士) でした。

 アクションとCGも 見応え充分で、一筋縄ではいかない ストーリー運びです。

 ただ 無類の正義漢である 検事のデントが、

 ジョーカーの手にかかって 悪に転落してしまうのは、

 心理的にも物理的にも 無理がありましたが。

 バットマンの葛藤も描かれて、アクション映画としては 上出来だったと思います。

 特筆すべきは 何といっても、

 異彩を放っている ジョーカー (ヒース・レジャー) の存在です。

 バットマン (クリスチャン・ベール) も 決して真昼のヒーローではなく、

 闇のにおいを漂わせていますが、ジョーカーは出色です。

 前作のジョーカーを演じた ジャック・ニコルソンは、

 陽気な異常者 という面持ちでしたが、

 ヒース・レジャーのジョーカーは、

 どこか陰があり、偏執的で、ユーモラスでもある モンスターを体現していました。

 メイクは相当崩れ、活舌もおかしく、

 ヒース・レジャーの役作りは 周到に練り込まれたものだろうと 想像されます。

 役者魂に脱帽です。

 そして、この映画の撮影後、ヒースが急死したというのは、

 何とも ショッキングなできごとです。

 死因は公表されていませんが、睡眠薬の多量摂取か とも言われています。

 非常に繊細な 青年だったといいますが、

 享年28才という あまりに惜しい 才能の損失でした。

 同性愛者の “純愛” を描いた 「ブロークンバック・マウンテン」

(http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/34019511.html#34019511) でも、

 心を揺さぶる 演技を見せたのが とても印象的です。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ハンコック」

2008年08月22日 21時14分02秒 | 映画
 
 スーパーマン並の 超絶的なパワーを持ち、

 ロサンジェルスの犯罪を 解決するハンコック (ウィル・スミス)。

 ところが彼は ロス中の嫌われ者で、クズ呼ばわりされています。

 犯罪者を捕まえる時、必要以上に ビルや道路などをぶっ壊し、

 交通事故を巻き起こしても お構いなし。

 いつも飲んだくれて、暴言を吐いては ひんしゅくを買っているのです。

 アンチヒーローどころか、全く “新しい” タイプの スーパーマンです。

 肉体は超人でも、脳細胞は人並み以下 ということなのですね。

(だから 記憶喪失にもなるのかと、妙に納得してしまいました。)

 PR会社のレイは ハンコックに命を救われて、

 ハンコックが人々から好かれるように イメージチェンジを図ります。

 初めは渋っている ハンコックですが、次第に 言動をわきまえていきます。

 このまま 良いヒーローになってしまったら 話にならない、と思っていると、

 レイの妻メアリー (シャーリーズ・セロン) の 秘密が明らかになる所から、

 ストーリーは二転三転し、予想もできない 展開になっていきます。

(前半と後半が 別の話になってしまっている、という印象はありますが。)

 ラストには 感動をそそるシーンも 用意されています。

 今までになかった アクション娯楽作品で楽しめました。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「シティ・オブ・ゴッド」, 「シティ・オブ・メン」

2008年08月21日 23時50分00秒 | 映画
 
 1960年代、国際的な観光地である リオデジャネイロ。

 高級ホテルが立ち並ぶ 美しい海岸から わずか数百メートルの丘には、

 ファヴェーラと呼ばれる 貧民街があります。

 ギャングが横行し、ブラジル人であっても 近づかず、

 隔絶された 裏社会になっています。

 しかし ブラジル人特有の活発さと、サンバのリズムに乗った スラム街は、

 世界一陽気な地獄 と言われるのです。

 登場するのは 少年や青年たち。

 文字も読めない彼らが 強盗を働き、銃を乱射し、麻薬を売買し、

 抗争が繰り広げられます。

 快活な笑顔と 容赦ない残酷さ、そのギャップに 付いていけないほどでした。

 「シティ・オブ・ゴッド」 は、2002年の フェルナンド・メイレレス監督作品。

 衝撃的なバイオレンスで、カンヌを震撼させたといいます。

 鮮烈な映像と 絶妙なリズム,緻密な構成,ユーモアを交えた語り口で、

 観る者を引き付けてくれます。

 メイレレスの手腕は、2005年の 「ナイロビの蜂」 へと 結実していきます。

(「ナイロビの蜂」 http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/35889275.html )

 「シティ・オブ・メン」 は2007年、メイレレスが制作に回り、

 監督は メイレレスのパートナーである パウロ・モレッリが務めました。

 同じくファヴェーラを舞台した 全く別の話ですが、

 「シティ・オブ・ゴッド」 の 暴力的描写に加えて、

 友情や親子の情を テーマに描いています。

 ブラジルの知られざる一面を 見せてくれた、刺激的な映画でした。

 でも 黒人のスラム街を 舞台にした作品では、

 2006年 アカデミー賞 外国語映画賞を受賞した

 南アフリカの 「ツォツィ」 (ギャヴィン・フッド監督・脚本) のほうが、

 僕は 遥かに感動的でした。

(「ツォツィ」 http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/46674911.html)

 暴力の中で 育てられた子供は、暴力しか 生きる方法を知らず、

 人の愛情を知ったとき、初めて自分も 愛することができる。

 そのテーマが ボーダーにも通じ、特に僕には 響くものがあるのですね。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パーソナリティ障害の自己治癒援助 (3)

2008年08月19日 21時54分17秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55569804.html からの続き)

 2冊目は、「境界を乗り越える -- 

 境界性パーソナリティ障害からの 回復プログラム」 (パクストン) です。

 これはシンプルな 自己学習プログラムです。

 毎日検討される 項目を記します。

○自分を大切にすること

・自傷行為をしないか

・自殺や自傷のことを 考えないか

○対人関係で 境界を構築すること

・対人関係での問題がないか

・人が去るのを 引き止めないか,見捨てられる恐怖がないか

○同一性を保つこと

・穏やかな中庸を わきまえた活動をするか

・自分の感覚が保持できるか

○回復力

・気分が穏やかで 安定しており、怒りをコントロールできるか

・生活の質を高める 対処法の訓練をする
 

 以上の中で 問題があるものに対して、対策を講じることが 課題です。

 「自分を大切にすること」 に問題があれば、

 自傷行為の要因の中から 自分に当てはまるものを選び、

 それに対処したり、周囲の援助を求めたりします。

 「境界を構築すること」 では、対人関係で 境界を明確にしながら、

 周りの人と関わって、親密さを確認したり、見捨てられる不安に 対応したりします。

 「同一性を保つこと」 では、

 自分をコントロールできる力があると 信じることが重要です。

 自分や人を信じないことの デメリットが指摘され、それを乗り越えるために、

 自分のありのままを 受け入れること,また 他者への信頼が 必要だと説かれます。

 さらに、悪いイメージを消す訓練や、安全な場所をイメージする 訓練をします。

 それらは、「周囲に潜む (と妄想される) 短剣から

 自分を守る 魔法のマントのイメージ」 だといいます。

 「回復力」 では、強い感情への 対処法が紹介されています。

 以上 これらの課題に対して、どのように対応したかを記す

 「境界を乗り越える日誌」 を 毎日を付けることが 勧められています。

〔 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パーソナリティ障害の自己治癒援助 (2)

2008年08月18日 21時08分02秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55557192.html からの続き)

 「怒れるこころ -- 境界性障害と嗜癖性障害の 克服のために」 に

 記されている、回復のための技法です。

○心を安らげる,自助技能を使う

・リラックスする (ゆっくりと深く呼吸する などの呼吸法)

・ストレスを 葛藤なしに客観視 (視覚化) する

・ストレスに勝つ 自分をイメージする

・実行して実績を上げる

○自分を肯定する,自己嫌悪から逃れる

 次のようなスローガンを唱える (自分で スローガンを作ってもよい)

・私は 自分の生き方を 咎められることはない

・私は 自分を変える責任がある

・私は 自分の内面の苦しみに 触れることができると 気分がよくなる

・自分は善良だ,きっとうまくいく

○コントロールの決意

・もう危険なことをしない と決意する

○技能の強化

・上記の技能を 繰り返して強化する

○自分と他者に 公平であること

・自分と他者を 公平に扱う

・自分を大切にする

・他者の依頼をうまく断って 自分を守る練習をする

○回復への決意

・自分は絶対あきらめない と決心する
 

 対人関係の技法は、次のことが 取り上げられています。

・自分と他者に 公平であること

・対人関係をコントロールされる 恐怖に着目する

・対人関係における 行動,感情,要望の三つを 統合して表明する

 また、ライフスタイルの修復も 勧められています。

・経済状態の改善

・運転免許の取得

・体の健康の保持

・友人や愛している人との 関係改善

・職業で成果を挙げること

・指導者,サポートしてくれる人を 集める

(続く)

〔 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

パーソナリティ障害の自己治癒援助 (1)

2008年08月17日 21時41分05秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) で、

 自己治癒を援助する 本を紹介しています。

 BPDの治療に 最も強い影響力を持つのは、

 患者本人であるという性質から 生まれてきたものだと述べています。

 そのうち2冊を ここに紹介してみます。

(あくまでも 参考のためのものです。

 ここに書く 簡単な抜粋だけをもとに、個人で学習を実施することは、

 効果がないだけなら まだしも、逆効果になっても 責任が持てませんので。)
 

 1冊目は、「怒れるこころ -- 境界性障害と嗜癖性障害の 克服のために」

 (サントロ,コーエン) です。

 この本は、BPDの原因は 生育過程の問題だとしています。

 子供の発達を妨げる 養育環境で、感情的な苦痛が繰り返され、

 成長後に 否定的な考え方や 不適切な行動が 生じるとされます。

 BPDの病理は、子供のときの外傷体験 (トラウマ) に、

 生まれつきの弱さが 加わったものだとしています。

 そこから回復するために、

 自己嫌悪の原因である トラウマを思い起こすことが 求められています。

 トラウマを否認していると 自己欺瞞に陥ってしまうので、

 辛くても 真実を受け入れることの 必要性が説かれます。

 次に、トラウマが 自分にどのような影響を 及ぼしてきたか、

 そして そのときの体験に どれだけ自分が捕らわれてきたかを 吟味します。

 影響の大きさが 認識されて初めて、そこから自由になり、回復に向かい、

 周囲とも 折り合っていけるといいます。

 そうすると、自分を傷つけた人たちは、悪い人ではなく、

 むしろ 自分と同じような被害者だと 考えられるようになっていきます。

 これらを学習するための、以下のような 技法を挙げています。

(続く)

〔 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPDの人の身体接触欲求 (2)

2008年08月16日 21時27分16秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55533836.html からの続き)

 BPD患者が 治療の場面で 身体接触欲求を訴えたとき、

 治療者はそれに 直接応える代わりに、

 その欲求の背後にある 辛い気持ちを癒す 手伝いをすることが求められるでしょう。

 患者が 内面の空虚感を埋め合わせるために この欲求が出てくるとすれば、

 他の有意義な方法で 埋め合わせを探していくのです。

 例えば 治療のなかで、身体接触欲求の代わりに

 「自分は何者か、何ができるか」 などの 同一性の葛藤が出てくれば、

 自分のイメージや位置づけ,他者の意味などを 検討していきます。

 自分のペースを 取り戻せるようになれば、徐々に安定していき、

 身体接触欲求も訴えなくなって、社会的に自立していくこともできます。

 治療者が 患者の身体接触欲求に応えて、

 手を握ったり 母親のように抱いたりすることは、

 治療的な意味がある一方、多くの異論もあります。

 身体接触によって 患者は一時的に満足し、その快感におぼれるため、

 病因を探って改善することが 妨げられるといいます。

 このようなジレンマは、重症の患者の場合 特に問題になります。

 欲求を制止すると、人間的な暖かさなど 必要な要素が失われてしまうので、

 治療の制限設定はかえって 治療を妨害することもあります。

 従って、制限を設定することと 欲求を満たすことの バランスが必要です。

 そのジレンマを乗り越えるために、共感などの 感情的な対応も重視されます。

 子供のレベルになっている 患者に対して、

 理性的な解釈をする前に 感情的な受容をします。

 患者の現実感の乏しさや 孤独感を認め、共感することによって、

 内的世界の欠損に対応する きっかけがつかめます。

 そうして その先の、理性的な交流に 引き継いでいきます。

 患者と治療者との 現実味ある関わりを育んで、

 患者が 「対象を発見して、自己を見いだす」 ことを 実現していくのです。

〔 「パーソナリティ障害とむきあう」 林直樹 (日本評論社) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする