「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

本心とは 逆の反応をする

2009年10月29日 21時24分48秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 愛情や関心が欲しいのに、 背を向けたり攻撃したりする 逆説的な反応は、

 愛情飢餓や 見捨てられ状態の中で 身に付けやすいものです。

 愛情に飢えている子供は、

 わざと大人を困らせたり、 影で悪いことをしたりします。

 こういう 「情緒障害」 の 子供の行動パターンは、

 境界性パーソナリティ障害の人の パラドキシカルな行動と、

 明らかに連続性を持っています。

 これらは わざとやるというよりも、 せっぱつまって そうしてしまうのです。

 それに対する理解なしに、 BPDにうまく 対処することはできません。

 最も重要なのは、 表面の行動に 反応せずに、

 その根底にあるものを くみ取ることです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 言うまでもなく 心子にも強烈に見られました。

 愛情が得られない悲しさが、 怒りと化して 襲いかかってきます。

 悲しみに直面する辛さより、 怒っているほうが 対処しやすいからでしょう。

 心子が 僕を非難してくるとき、 心子の中の愛情飢餓が そうさせているのだと、

 僕はいつも 言い聞かせていました。

 けれども、 どんなときでも それができるとは限りませんでした。

 心子の症状が深刻化し、 頻繁に解離が起こって 子供の人格に戻ったり、

 記憶をなくしたり、 自殺行動を繰り返していたときのこと。

 丸3日間 心子の乱調に付き添い、

 病院でも騒ぎを起こして 右往左往させられ、 心子の保険証がなくなりました。

 拾われて 悪用されるのを防ぐため、

 区役所その他を 奔走しなければなりませんでした。

 そんな中で心子は、 何でもない僕の一言で、

 露骨に軽蔑した目を 僕に向けました。

 トラブルが重なって 余裕をなくしていた僕は、

 つい小腹が立って、 「何、 その目?」 と 口をついてしまいました。

 心子が怒るのは 悲しいからだ、 愛情を欲しているからだという

 基本を忘れていたのです。

 それを心しておかなければと、 自戒した次第です。