「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

意図的なコミュニケーション (5)

2014年06月29日 20時32分37秒 | 「BPDファミリーガイド」より
 
(前の記事からの続き)

《防衛的にならない》

 防衛的反応は、 「あなたの感情は間違っている」  というメッセージを伝えます。

 人は激怒すると、 別の見方ができるか 冷静に考えることができません。

 自己防衛を試みても、 火に油を注ぐだけです。

 当人が望むことは、 話を聞いてもらうことです。

 もちろん、 反論せずに耳を傾けるのは、 傷つくことを意味します。

 怒り, 批判, 批難を、 受け入れるべきだということではありません。

 BPDの人には、

 問題を抱えていることを認め、 病気を管理していく 責任があります。

 BPDの人は 脳の障害を持っているのだということを、 心底認めることができれば、

 皆さんはダメージを受けることなく、 言葉を素通りさせることができるでしょう。

《遅らせる, 気持ちをそらす, 緊張を和らげる, DEAR》

 「責める」 ような表現は 避けてください。

責めるような表現 : あなたが喧嘩を始めたのよ

中立的な表現 : 私たちは喧嘩になったのよね

責めるような表現 : 君が叫び続けたから、 僕はその場を離れたんだ

中立的な表現 : 喧嘩がエスカレートしたから、 僕は離れる必要があったんだ

責めるような表現 : 君がこうしたんじゃないか

中立的な表現 : こんなことが起こったんだ

責めるような表現 : あなたが怒鳴ったのよ

中立的な表現 : 大きな声だったわね

(次の記事に続く)

〔「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」(星和書店)
 〈ランディ・クリーガー著/監訳:遊佐安一郎〉より〕
 

意図的なコミュニケーション (4)

2014年06月28日 21時22分12秒 | 「BPDファミリーガイド」より
 
(前の記事からの続き)

o 認めていることを 言葉以外の方法で伝える

 コミュニケーションにおいて、 言葉で伝えられるものは わずか7%です。

 残りは、 声の調子 (38%) と 表情 (55%) で伝えています。

 言葉と身体言語が 矛盾している場合、

 聞き手は、 言語ではなく、 非言語のほうを信じるのです。

 そしてBPDの人は、 非言語的コミュニケーションに 信じられないほど敏感です。

 以下は、 共感的に認めることと 傾聴のために、

 すべきことと すべきでないことです。

するべきこと:

・ アイコンタクトを用います。

  優しい, しっかりとした, 関心を伝える目で 見てください。

・ 表情をリラックスさせてください。

  目が笑っていない 偽りの笑顔はいけません。

・ 腕は組まないで。

・ 首をわずかにかしげます。

・ 聞いていることを示すために、 ゆっくりと頷いてください。

・ 身体をリラックスさせてください。

・ 座っている場合は、 関心を示すために 上体を少しだけ 前に傾けてください。

・ 近づいてください。 ただし近づきすぎてもいけません。

・ 話すときは、 1秒待ってから話してください。

・ BPDの人が楽になるよう、 はっきり分からないように、

  相手と同じ姿勢をとってください。

・ 接触は 究極の非言語的な結びつきです。

  どのように触れるかは、 相手との関係性と状況次第です。

すべきではないこと:

・ 歯を食いしばる

・ 睨む, 目を背ける

・ 目を閉じる

・ 顔をしかめる, 眉をひそめる

・ あくびをする

・ そわそわする

・ 身体を緊張させる

・ 後ろにもたれかかる

・ 時計や出口を見る

・ 貧乏ゆすりをする

・ テレビを観る, 他のことを始める

(次の記事に続く)

〔「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」(星和書店)
 〈ランディ・クリーガー著/監訳:遊佐安一郎〉より〕
 

意図的なコミュニケーション (3)

2014年06月27日 20時55分07秒 | 「BPDファミリーガイド」より
 
(前の記事からの続き)

o 認めていることを言葉で伝える

 優しく、 穏やかで、 相手を理解するよう、 丁寧にしてください。

・ 言葉による励ましを用いましょう:

 「へえ」 「そう」 「すごいね」など、

  相手の話に耳を傾けていることを 表します。

・ 相手の感情を 鏡のように返しましょう:

 「悲しいね」 「恐ろしいね」 「素晴らしいね」 「大変だったろうね」

・ 関心を持っていることを 示しましょう:

 「私も幸福に思うわ」 「僕も寂しく感じるよ」 「僕も幸福な気分だよ」

・ 激しい感情を強調しましょう:

 「え~、 そんな!」 「そんなことがあったなんて!」

 承認的な質問は、 解決策を見つける手助けに 重要です。

 皆さんが相手の問題を 解決する必要はありません。

 彼らが 自分自身の感情と願望を探求し、 解決策に導く手助けができます。

 以下のような表現が提案されます。

・ 以前このようなことがあったとき、 どうしたの?  どう感じた? 

・ どのような選択肢がある?  それぞれどんな気持ちになる? 

・ 話を聞こうか?  どうしたら君の力になれる? 

・ 直感的に、 どう感じる? 

・ 情報を得る場や、 電話できる相手はいる? 

・ 別の見方ができる? 

・ 過去に思い付いた解決策が、 うまくいくのでは? 

・ 友だちに同じことが起こったら、 どう言ってあげる? 

 具体的に説明してくれるよう 頼んでください。

 ただし、 厳しく尋問してはいけません。

 相手を理解しようという 嘘偽りのない気持ちが、 承認に繋がるのです。

 真に重要な、 BPDの人の感情的な弱さに 呼びかけることになるからです。

 「明確化のための質問」 は、

 スプリッティング - 羞恥心 - 恐れの螺旋をくぐり抜け、

 重要な問題を明らかにするのに 役立ちます。

 いくつかの例を紹介します。

・ 「私が怒っていると言ったけど、 どのことを示していたの?」

・ 「君の気分がよくなるために、 できることはある?」

  「争いを少なくするために、 何をしたらいいと思う?」

・ 「あなたの思いの強さを なかなか理解できないの。

   別の言い方で説明してくれる?  もっとよく理解したいの」

・ 「何があなたにそう思わせたの?」  「どういったことを僕はしたんだろう?」 

(次の記事に続く)

〔「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」(星和書店)
 〈ランディ・クリーガー著/監訳:遊佐安一郎〉より〕
 

意図的なコミュニケーション (2)

2014年06月26日 20時23分30秒 | 「BPDファミリーガイド」より
 
(前の記事からの続き)

o 共感

 共感は同情とは異なります。

 例えば 同情は、 事故現場に車で通りかかったとき、

 壊れた車のドライバーに  「頑張って」 と声をかけ、

 ドライブを続ける人に似ています。

 共感は、 当人の身になって、 相手の立場に 自分自身を置くことです。

 例えば、 車から降り、 事故にあったドライバーの 肩を抱き、

 「こんなことになって大変だね」 と 言ってあげる人です。

o 積極的傾聴

 私たちは大抵、 話を聞いているとき、 他の考えが 頭を出たり入ったりします。

 どう返答しようかと 考えることが多いのです。

 過去の争いに話が触れると、 言い返せる機会を伺います。

 私たちは 同意できないことを取り除き、

 自分の考えに合うものに 焦点を合わせます。

 言われていることの 微妙なニュアンスを 聞き逃してしまいます。

 これが 欲求不満や誤解を 引き起こしてしまうのです。

 積極的傾聴は、

 「私は全神経を集中させて 耳を傾けます」  というメッセージを伝えます。

 判断, 意見は 一時保留しましょう。

 相手の言葉, 声の調子, 表情, 身振り手振り, 感じていることに

 焦点を合わせてください。

 同意できない場合でも、 顔をしかめたくなる衝動を 抑えてください。

 BPDの人の、 表に出ている感情だけでなく、

 内奥にある感情にも 目を向けてください。

 途中で口をはさむのは 厳禁です。

 身の安全が問題の場合や、 混乱して説明が必要でない限り、 話をしないでください。

 アドバイス, 慰め, 励ましは、 相手の話の 邪魔をするだけではありません。

 共感的に認めるのに欠かせないこと --

 相手の言葉が 本人にとって何を意味するのか -- を、 見失ってしまいます。

(次の記事に続く)

〔「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」(星和書店)
 〈ランディ・クリーガー著/監訳:遊佐安一郎〉より〕
 

意図的なコミュニケーション (1)

2014年06月25日 21時25分56秒 | 「BPDファミリーガイド」より
 
 私たちは 事態を悪化させるつもりでなくても、

 怒りをあらわにし、 自己防衛します。

 自分が正しく、 間違っているのは相手だと 分からせようとします。

 しかし、 たとえ望み通りになっても、 二人の関係の代償は 高くなってしまいます。

 BPDの人のほうが より代償は高く、

 スプリッティング - 羞恥心 - 恐れの螺旋の 引き金となります。

 意図的なコミュニケーションは、

 言葉で勝つアプローチに代わる、 素晴らしい方法です。

  「この人を落ち着かせよう」 「彼らの協力を得よう」 などの意図を持ちましょう。

 以下のような理由で 役に立ちます。

・ 何が目標か分かると、 目標に達する可能性が 高くなります。

・ 目標に到達しなくても、 正しい方向に向かっています。

・ 状況をコントロールできている 気持ちになります。

・ 状況を悪化させることが 少なくなります。

《聞いたことを認める》

 共感的に認めることは、 最も強力なコミュニケーション・テクニックです。

 「承認」 という表現に似ています。

 共感, 傾聴スキル, 認めることを 融合させたものです。

 共感的に認めることには、 2つのステップがあります。

ステップ1:

 質問したり、 何を言おうか考えたりせずに、

 100% 相手に積極的に耳を傾けます。

ステップ2:

 BPDの人の 考え方を感情から引き離します。

 思考に必ずしも同意せずに、 感情を認めたことを 本人に伝えます。

 共感的に認めることは、 思考への同意を必要としません。

 共感的な承認は、 どれほど多くても 多すぎることはありません。

 色々な方法で、 何度も伝えてください。

 共感的に認めることの 3つの要素は、 共感, 傾聴, 認めることです。

(次の記事に続く)

〔「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」(星和書店)
 〈ランディ・クリーガー著/監訳:遊佐安一郎〉より〕
 

コミュニケーションの準備 (2)

2014年06月23日 20時29分12秒 | 「BPDファミリーガイド」より
 
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o 激怒

 最も厄介な問題のひとつは、 破壊的な激怒です。

 不適切な怒りが、 突拍子もなく、 頻繁に現れると、 恐ろしいものです。

 BPDの人の怒りを 1から10までのスケールで 評価してください。

 1から5までは、 落ち着けることができるでしょう。

 6以上で、 治療を受けていないと、 鎮めることができないかもしれません。

 6以上の場合は、 彼らの思考と感情は歪んでおり、 言うことは筋が通りません。

 彼らが何を言っても、 耳を傾けないでください。

 彼らは 状況を理解することも、 結果を考えることも不可能なのです。

 やり取りを 一時的に中断させてください。

 怒りが続けば、 その場を立ち去ってください。

 議論したり、 捨てぜりふを言うのはやめましょう。

 以下の言葉のいくつかを 繰り返してください。

 「あとで話すことにしよう。 落ち着いたときにね。

 僕は君の話に 耳を傾けたいんだ。

 でも今そうするのは、 あまりに大変なんだ」

 「気を静めるために、 少し時間をください。

 あとでなら話ができるから」

 自分自身に 以下のように言ってください。

 「このことを個人的に受け止めない。

 これは ボーダー・ライオンが話しているのだから」

 「ここに留まって言い争ったら、 事態はますます エスカレートしてしまう。

 僕も、 二人の関係も傷ついてしまう」

 「本人には、 今すべてを理解できないけれど、 私にはできる。

 今は楽ではないとしても、 続ければきっと 楽にできるようになる」

〔「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」(星和書店)
 〈ランディ・クリーガー著/監訳:遊佐安一郎〉より〕
 

コミュニケーションの準備 (1)

2014年06月22日 22時03分50秒 | 「BPDファミリーガイド」より
 
《呼吸》

 切羽詰まると、 ストレス反応は、 心身に混乱を引き起こします。

 深呼吸をすると 落ち着いて、 考える余裕ができます。

 胸ではなくお腹で、 ゆっくりと深く呼吸してください。

  「呼吸の部屋」 を作ってもいいでしょう。

 安全で、 力づけてくれる、 想像上の場所です。

《安全第一》

 BPDの人とのコミュニケーションの 第一ルールは、

 いつなら安全かを知ることです。

 注意事項は、 激怒/言葉の暴力, 身体的暴力, 自殺の脅しです。

o 身体的虐待と自殺

 虐待する男性の約3割, 女性の約5割が BPDを持っています。

 身の安全を守ることが 必要です。

 助けを求めてください。

 自殺の危険性が 差し迫った場合には、

 救急車を呼ぶか、 病院に連れていってください。

 家族は躊躇して、 問題に取り組まないことがあります。

 BPD本人も、 「余計なお節介」 をやめるよう 言い張ることがあります。

 家族は、 本人が落ち着いているときに、 自殺の話に取り組むと、

 かえって問題を引き起こしてしまうのではないか と恐れます。

 しかし、 事前に質問することで、 困難を避けることができるのです。

 BPDの人は 感情を言葉にするのが苦手で、 破壊的な行動化をする傾向にあります。

 従って、 隠し立てをしないで、 質問して問題に取り組むか、

 セラピストに相談することによって、

 行動ではなく言葉で、 感情に対処できるようになるのです。

(次の記事に続く)

〔「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」(星和書店)
 〈ランディ・クリーガー著/監訳:遊佐安一郎〉より〕
 

基礎を築く (2)

2014年06月21日 20時55分44秒 | 「BPDファミリーガイド」より
 
(前の記事からの続き)

《「権限」 を見直しましょう》

 ある人が権限を持つと、

 その人からの批判が 私たちを傷つける可能性は 高くなります。

 その権限がどこから来ているのか 検討する必要があります。

 私たちの家族は、  「人間関係による権限」 を持っています。

 彼らに権限を与えているのは、 私たちです。

 私たちが彼らを愛し、 尊重し、 彼らを喜ばせたいと思うからです。

 権限を見直すために、 自分自身に問うてみましょう。

・ その権限は どこから来ているのでしょうか? 

  皆さんか与えない限り、 相手が持つことはありません。

・ BPDの人は、

  皆さんの性格や資質を断定する 専門的な知識を持っているでしょうか?

・ 皆さんは、 喜びそうにない人を喜ばせようとしていませんか? 

  歪んだ認識の障害を持つ人に、 皆さんの価値を決めさせるのは 道理に合いません。

・ より高い権限を求めてください。

  BPDの人の意見が正しいか、 他の人に尋ねてみましょう。

  皆さんが酷く傷ついている場合は、 セラピーも必要です。

・ BPDの人と話すときは、 次のように考えましょう。

  「彼女がこのように話すのは、 彼女が怯えているからだ」

  「彼女は 知能指数は高いかもしれないが、 感情的知性は低い」

  皆さんの心の声に 権限を与えてください。

・ 彼らの子供のような姿を イメージしてみましょう。

  彼らは、 見捨てられた、 虐待された子供,

  または怒っている 衝動的な子供を 演じているのではないでしょうか。

〔「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」(星和書店)
 〈ランディ・クリーガー著/監訳:遊佐安一郎〉より〕
 

BPDの限界を補う -- 基礎を築く (1)

2014年06月19日 21時30分33秒 | 「BPDファミリーガイド」より
 
 家族とのコミュニケーションを向上させる方法は、  3つのグループに分けられます。

(1) 基礎を築く

(2) コミュニケーションの準備

(3) 意図的なコミュニケーション

 高機能, 低機能のBPD、 両方に適したテクニックもあれば、

 どちらか一方のテクニックもあります。

 ただし、 BPDを完全に克服できるものではありません。

 テクニックを使いこなせるようになるには、 時間も必要です。

 まずは友人と練習してみてください。

○ 基礎を築きましょう

《協力的な雰囲気を作りましょう》

 誰が正しいかということよりも、 人間関係そのもののほうが重要です。

 双方が満足できる解決策を 見いだす上で不可欠です。

 BPDの人が間違っていることを 納得させようとすると、

 スプリッティング - 羞恥心 - 恐れの螺旋の 引き金を引いてしまいます。

 代わりに、 その関係自体を擁護すれば、

 各自がその関係性に満足する 可能性が高くなるでしょう。

 双方がうまく折り合い、 チームとなり、

 支ええっていく方法を見つけたいと思います。

 最も求められるのは、 愛情と親密さです。

 一夜にしてできるものではありませんが、

 皆さんは、 BPDの人に見習ってほしい モデル役を務めているのです。

(次の記事に続く)

〔「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」(星和書店)
 〈ランディ・クリーガー著/監訳:遊佐安一郎〉より〕
 

BPDの人の コミュニケーションにおける欠陥 (2)

2014年06月17日 20時56分15秒 | 「BPDファミリーガイド」より
 
(前の記事からの続き)

○ 恐れが怒りとし解釈される

 BPDの人の中には (主に高機能のBPD)、

 恐れ (特に見捨てられる恐れ) を、 怖くて認められない人がいます。

 恐れは、 批難と過去の失敗を呼び起こし、

 さらに 羞恥心とスプリッティングを引き起します。

 怒りのほうが、 ずっと楽な逃げ道なのです。

○ 「何でもないこと」 をめぐる喧嘩

 non-BPDは、 些細なことで責め立てられるように感じ、

 何でもないと思われることで 全面的な言い争いが生じかねません。

 本当の問題は もっと深いところにあります。

 スプリッティング, 羞恥心, 承認されず価値がないと感じること,

 アイデンティティの欠如です。

 例えば、 コントロールの問題は、

 BPDの人が 自分をコントロールできないところから起きます。

 彼らは 自分が無力だと感じる変わりに、

 他者に対して 無意識に力を主張するのです。

 もうひとつの問題は、 羞恥心と、 アイデンティティの欠如の組み合わせです。

 BPDの人は 自分に良いイメージを持つことができず、

 他人が彼らに持っている (と彼らが考える)

 「全て悪い」 のイメージに 対抗できないのです。

 彼らは、 意見の違いを 個人的な侮辱として経験します。

 多くの争いの原因は、 BPDの人の感情が 事実が作ってしまうということです。

 彼らの感情が 事実の解釈に影響を与え、

 認知の歪みは 現実とかけ離れた推測をしてしまうのです。

 皆さんは はれものに触る日々のなかで、 ボロボロになっているかもしれません。

〔「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」(星和書店)
 〈ランディ・クリーガー著/監訳:遊佐安一郎〉より〕
 

パワーツール3: 理解されるように伝える

2014年06月16日 21時14分08秒 | 「BPDファミリーガイド」より
 
● BPDの人の コミュニケーションにおける欠陥 (1)

 コミュニケーションには、 次のようなスキルがあります。

・ 自分の思考と感情をチェックする

・ 他人の思考と感情を 正しく判断する

・ 相手の話に耳を傾ける

・ 相手に配慮し、 自分の当面の願望は脇にのける

・ 状況を総合的に捉え、 相手を好意的に解釈する

・ 人が自分と異なる意見でも、 脅かされていると感じない

・ 感情を発散させたいときでも、 冷静になる

 BPDの人は これらの多くがかけています。

 入ってくるメッセージと 出ていくメッセージの 両方が歪められるのです。

 単語や文章が、 順番が逆になったり、 裏返しになったり、

 文脈が失われたように聞こえます。

 BPDの人は、 攻撃性がなくても、

 未熟なコミュニケーション能力のために、 絆を築けないことがあります。

○ スプリッティング - 羞恥心 - 恐れの螺旋(らせん)

 BPDの人の情報処理は、 皆さんとは異なっています。

 脅威が迫ると、 激しい感情が 脳をハイジャックしてしまいます。

 羞恥心は、 何でもないところに ネガティブな考えをでっちあげ、

 敵意として曲解します。

 見捨てられ不安が 急激に迫ってきます。

 そして、 衝動的な攻撃性が 内外に爪を立てるのです。

 スプリッティング - 羞恥心 - 恐れの螺旋は、

 何の前触れもなく生じ、 皆さんを混乱の中に放り込んでしまいます。

 しかし 訓練と経験を積めば、 それが近づいてくるのを察知できるでしょう。

(次の記事に続く)

〔「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」(星和書店)
 〈ランディ・クリーガー著/監訳:遊佐安一郎〉より〕
 

行き詰まり感から抜け出す (2)

2014年06月12日 20時16分07秒 | 「BPDファミリーガイド」より
 
(前の記事からの続き)

○ 救助するのではなく、 援助しましょう

 自分がなってほしい姿を 望むのではなく、

 相手に責任感を持たせ、 自立を援助しましょう。

 悪い結果になるのを知りながら、 見ているのは辛いものです。

 しかし 批判も脅しも効果はありません。

 愛と勇気づけることが、 最も強い希望を与えてくれます。

 独り立ちしなければ、 強くなれません。

 間違った助けをするくらいなら、 助けないほうがましです。

 健全な援助には、 以下のメッセージが含まれます。

・ 私はここにいます。 あなたら必要とするなら。

・ 私はここにいます。 あなたがよくない選択をしても。

・ 私はここにいます。 しかし、 限界と境界線があります。

・ 私は、 あなたを勇気づけるために ここにいます。

・ 私は、 客観的に考えるのを援助するために ここにいます。

・ あなたの選択の結果は、 あなたの責任です。

・ 関係が歪んでしまったら、 別れる覚悟があります。

 次のような援助もあります。

・ 相手の言うことに耳を傾け、 気持ちに共感する。

・ 相手には解決する能力があると 信じていることを伝える。

  うまくできたことを誉める。

・ 「あなたにはどんな選択肢がある?」  と尋ねる。

・ 「私が何をすれば助けになる?」  と尋ねる。

・ 「~なことを考えたことがある?」  と尋ねる。

○ やる気を持ち続ける

 古い考え方に気付いたら、 次のメッセージを 自分に伝えてください。

・ 問題を解決できるのは彼女だけだ。

  僕にできるのは、 彼女を愛し、 援助することだけだ。

・ 彼の問題を解決することは、 私にはできない。

  私の仕事は、 私自身の面倒を見ること。

・ 障害がある人でも、 自分にできることをするよう、 期待されている。

〔「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」(星和書店)
 〈ランディ・クリーガー著/監訳:遊佐安一郎〉より〕
 

行き詰まり感から抜け出す (1)

2014年06月11日 20時10分45秒 | 「BPDファミリーガイド」より
 
○ 本当の自分に真摯に向き合う

 本当の自分は、 仕事や家庭, 社会での役割とは無関係です。

 遺伝的なものと、 信念, 経験, 意見などが混ざり合ったものです。

 自分の核となる 信念や態度を見直して、 以下の質問に答えてみてください。

・ その信念は、 しっかりとした根拠に基づいていますか? 

・ その信念によって、 皆さんは幸福, 健康, 安全を得られますか? 

・ その信念は、 必要なものを与えてくれますか? 

 自分が何を感じて、 物事にどのように反応するかに 注意を向けてください。

 考えや感情を 価値判断しないことです。

 身体が何を伝えようとしているかにも 耳を傾けてください。

 今の生き方は、 自分の価値観に沿っていますか? 

 それとも妥協の産物ですか? 

○ 自分で選ぶ

 生活のなかで どのように反応するかは、 自分が決めていることに気付いてください。

 皆さんには選択肢があります。

 「彼のせいで~」 「彼女が無理やり~」 などの台詞は、

 語彙の中からなくしましょう。

 「私は~しなければならない」 と言うよりは、

 「私は~することにする」 と言ってください。

○ 過去から学ぶ

 長い間 試してもうまくいかないなら、 それをやめてください。

 救助する人は、

 自分は尽くすだけ, 相手は搾取するだけの 人間関係を経験しており、

 健全なロマンチックな付き合いを 知らないかもしれません。

〔「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」(星和書店)
 〈ランディ・クリーガー著/監訳:遊佐安一郎〉より〕

(次の記事に続く)
 

救助欲求 (2)

2014年06月09日 20時45分15秒 | 「BPDファミリーガイド」より
 
(前の記事からの続き)

《救助することが non-BPDに与える影響》

 BPDの人の 歪んだ思考, 感情, 行動が、

 救助する人の 思考, 感情, 行動を 決定するようになります。

 救助者は、 

・ 操作されているように感じ、 相手を喜ばせようとするが、

  結局批難され、 幸福が絶望へと変わる。

・ 決断力に欠けるため、 状況によって心が揺れ動く。

・ 個人的な成長が遅れる。

《救助することが BPDの人に与える影響》

・ 行動がもたらす結末を学んでいない BPDの人は、

  建設的な行動が 達成感や誇りなどに繋がることに 気付かない。

・ あらゆることに関して 人任せになる。

・ 衝動性や、 困難に我慢できないなど、 BPDの特徴が強化される。

・ 他者に依存することで、 相手に腹を立てる。

・ non-BPDが怒ると、

  BPDの人は混乱し、 non-BPDのことを不当だと思う。

《ふたりの関係に 与える影響》

 相手がいないと 自分は不充分な人間だと 思うような関係は、

 絡み合ったものとなっています。

 依存者やイネイブラー 〔*注〕 は、

 お互いに、 また他人との間で、 双方が行き詰まっています。

〔*注: 相手を助けるつもりで、 実は回復を妨げる人〕

〔「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」(星和書店)
 〈ランディ・クリーガー著/監訳:遊佐安一郎〉より〕
 

救助欲求 (1)

2014年06月08日 22時17分41秒 | 「BPDファミリーガイド」より
 
 BPDの人を助ける人は、 前向きで、

 神から見捨てられたような相手を 失望させない、 唯一の存在になろうとします。

 少しの間だけ 改善させることができても、

 結局は惨めな状態に戻って、 道連れになってしまいます。

 救助する人たちというのは、 BPDの人を愛していて、

 不快で不当だと思っても、 より多くの 「救い」 の手を差しのべます。

 罪悪感, 恐れ, 無力感に支配されます。

 努力が実らないことに気付かず、 新しい方法を試みることもないのです。

《救助は なぜ効果的ではないのでしょう》

 救助する人は、 BPDの人の尻拭いをすることによって、

 無責任な行動を 認可/奨励してしまいます。

 BPDの人ができることを 代わりにやってあげることによって、

 彼らの依存を 認可/奨励しているのです。

《救助者の人物像》

 彼らは通常 思いやりがあって、 人の苦しみを和らげたいという 親切な人です。

 BPDの人は 好きな人を偶像視するので、

 救助者は 自分だけが愛されていることを 嬉しく思います。

 以下は 彼らに共通する特徴です。

・ 必要とされ、 犠牲になることで、 自尊心を手に入れる。

・ 人の問題を解決しようとする。

・ 「よい人」 でいることに 大変な価値を置き、 常に承認を求める。

・ 自尊心が低く、 自分の考えや要求を疑う。

・ 人の期待が妥当かどうかを考えず、 それに応えようと努力する。

・ 人の気持ちに 必要以上に責任を感じる。

・ 自分に非がないことでも 批判を受け止め、 衝突を避けるために何でもする。

・ 直感を頼りに 人間関係に飛び込む。

・ 純粋に頑張れば 人から愛されると信じている。

〔「境界性パーソナリティ障害ファミリーガイド」(星和書店)
 〈ランディ・クリーガー著/監訳:遊佐安一郎〉より〕