小さい頃から 頑張り屋さんで、 親を困らせることもなく、
勉強も良くできる子が、 ある時期から 急に不安定になり、
生活が乱れてくることがあります。
高校までは優等生でも、 大学に入ると 優秀な人ばかりで、
味わったことのない挫折で 自信をなくしたり、 虚しさにとらわれたりします。
失恋によって 自分がコントロールできなくなり、
自傷行為を 起こすこともあります。
両親に 昔の不満を述べ、 幼い頃のことまで持ち出して 親を困らせます。
親にとっては 寝耳に水ですが、 本人はずっと 我慢していたのだというのです。
そのようなケースからも 分かるように、
境界性パーソナリティ障害は 元々ある 「性格」 の 障害ではありません。
境界性パーソナリティ障害に対する 誤解のひとつは、
「困った性格」 だと 見なすことです。
実際には そういう 「性格」 の持ち主というより、
あるきっかけから、 そういう状態に 「なる」 のです。
特定の性格の人が なるというより、 様々な性格、
時には 全く正反対の性格の人も 境界性パーソナリティ障害になります。
多様なタイプの人が、 あるきっかけから 共通する状態を示します。
いくつかの契機が 引き金になって、 急に 或いは徐々に、
「発症」 する 病的状態なのです。
どんな性格の人でも、 悪い条件が揃うと、
境界性パーソナリティ障害の 状態になり得ます。
逆に言えば、 回復していくと 境界性パーソナリティ障害の 症状は消えていき、
本来の性格に戻っていきます。
以前と全く同じに 戻るのではなく、
試練を経験することによって 成長し、 成熟した姿になっていくのです。
〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕