「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

感情的, 物理的な 距離を置くこと

2012年01月30日 19時34分53秒 | 「愛した人がBPDだった場合のアドバイス
 
 距離を置くというのは、

 ノン・ボーダーラインの人にとって 生やさしいことではありません。

 比較的取り組みやすい、 物理的な距離を置くことから 始めるといいでしょう。

 パートナーが 見捨てられることを恐れていれば、

 段階的に進めていく必要があります。

 別の部屋へ行く, 出かける、 何でもよいのです、

 皆さん自身のための 時間を持ってください。

 パートナーのためにではなく、 皆さんの気持ちを 落ち着かせるための時間です。

 さらに進んで、 数日間家を空けるのもいいでしょう。

 もし 自分や他人を傷つける 気持ちに駆られていたら、

 精神科の診察を受けてください。

 その際、 ボーダーの人に対して、

 「あなたから離れる 時間が必要なの」

 と正直に言うよりも、 悪意のない嘘を ついたほうがいい場合もあります。

 お子さんがいる場合は、 言うまでもなく 安全と安心を確保しなければなりません。

 お子さんに 消極的な行動が見られたら、 彼らにも休息が必要です。

 自分なりのペースがつかめれば、

 パートナーとの関係を 考える余裕が生まれるはずです。

 その関係が及ぼしてきた影響を 振り返ることもできるでしょう。

〔 「愛した人が BPDだった場合のアドバイス」
   星和書店 (ランディ・クリーガー) 〕 より
 

あなたは ひとりぼっちではありません

2012年01月29日 19時14分32秒 | 「愛した人がBPDだった場合のアドバイス
 
 ノン・ボーダーラインの人と 一口に言っても、 立場は一様ではないでしょう。

 しかし本質的には、 皆さん 同じようなことを経験しています。

 皆さんは、 「感情が事実を作り上げる」 「否認」 「分裂」 「合理化」

「鬼ごっこ、 お前が鬼だ」 「全てお前のせいだ」 という ゲームのなかで、

知らないうちに ボーダーの人の相手をしてるのです。

 「ようこそオズへ」 〔*注〕 では、

 新しいメンバーからのメールは、 たいてい 次のような書き出しで始まります。

 「私と同じ経験をしてきた人が こんなにも沢山いるなんて 信じられません」

〔*注: ランディ・クリーガー氏が運営する、

 ノン・ボーダーラインのための ネット上のサポートグループ。〕

 皆さんのパートナーは  「ボーダーラインのめがね」 で、

 全てのものを歪めていているのです。

 それでも皆さんは、 罪悪感, 悲しみ, 空虚感に駆られているかもしれません。

 済んだことで 自分を責めているのではないでしょうか。

 皆さんは、 パートナーと間で 抱いていた夢を失ってしまったのです。

 愛情は失われていませんが、 信頼は消えてしまいました。

 でもこれは、 皆さんの力では どうしようもないことだったのです。

 ボーダーの人との生活は、

 希望や自己イメージに必要なものを 無理やり奪ってしまいます。

 私たちにも感染し、 引きずり下ろそうとします。

 けれどもその一方で、

 自分の中の忍耐力, 思いやり, 優しさ, 品性を感じさせてくれるでしょう。

 ノン・ボーダーラインの人は、 人に何かを与えられる 素晴らしい人たちです。

 恋愛関係で責任を背負い込み、 一方的に与えてばかり という人が多いのです。

 しかし皆さんが パートナーの障害に深く関わるほど、

 彼らを救うのは難しくなります。

 皆さん自身の感情を検討し、 選択肢を見極め、

 自分の感情を ボーダーの人の感情から 引き離すことが必要です。

 物理的, 感情的に距離を置き、

 「呑み込まれてしまわないこと」 が重要なのです。

〔 「愛した人が BPDだった場合のアドバイス」
   星和書店 (ランディ・クリーガー) 〕 より
 

パートナーを 「変える」 には (2)

2012年01月28日 18時20分59秒 | 「愛した人がBPDだった場合のアドバイス
 
(前の記事からの続き)

・ ボーダーの人が障害を抱えていることを 納得させようとする。

  ところが彼らは、 病気なのはあなただと思っている。

・ 関係に何も求めなくなる。

  話をすることをやめる。

・ 素晴らしいパートナー関係を築いている, 全て順調だと

  人から思われるようにする。

・ 悪い関係でも 何もないよりはマシと、 呪文のように唱える。

・ 相手がわめけば、 こちらも怒鳴る。

  相手が叩けば張り倒す。

・ ボーダーの人ほど 自分を愛してくれる人はいないと 思い込む。

  彼らが何をしても 責任はない。

  彼らを変えられるのは 自分しかいないと思っている。

・ ボーダーの人が 激しく怒り狂っても、 それに甘んじるしかないと考える。

  こちらがどんな気持ちでも、 相手の話をじっと聞く。

  その場を離れたら  「見捨てられた」 といって責められ、

  ますます酷くなると考える。

・ BPDについてよく知らない 専門家を信じて、 助けを求める。

・ 周りの人が どんなに心配しても、 無視をする。

・ ボーダーの人のニーズが、 自分や子供のニーズより 重要であると信じている。

・ 自分は犠牲者であり、 自分には 何の支配権もないと考える。

・ 今まで挙げた方法を 試してみようとする。

  しかし本当のリスクを 冒したりはしない。

〔 「愛した人が BPDだった場合のアドバイス」
   星和書店 (ランディ・クリーガー) 〕 より
 

 因みに僕は、

 「ボーダーの人が 激しく怒り狂っても、 それに甘んじるしかないと

 考え」ていました。

 「受容」 が 何より大切なことだと思っていました。

 当時は  「境界設定」 という情報が、 まだまだ希少でした。
 

パートナーを 「変える」 には (1)

2012年01月27日 18時51分24秒 | 「愛した人がBPDだった場合のアドバイス
 
 ボーダーのパートナーを  「変えよう」 として、 人はあらゆることをします。

 でも結局、 気付くことになるのです。

 ボーダーの人の 行動と思考を変えられるのは、

 ボーダーの人自身だけだということを。

 以下に挙げる方法の いくつかを、 経験したことがありますか? 

 この演習は 自分を叱るためではありません。

 無意識に行なっていることを、 意識的な決断に変えることが 目的です。

 以下に挙げるようなことを、 あなたは続けていきたいですか? 

 実際に うまくいったことがありましたか? 

 うまくいかないのに、 何故それを繰り返すのですか? 

 うまくいったとして、 ボーダーの人を変えたのは 本当にあなたですか? 
 

 実際に どのようなことが行なわれているか、 例を挙げましょう。

・ ボーダーの人の言動を、 全て論理的に 説明しようとする。

  それを繰り返す。

・ ボーダーの人の感情的理由を 全て説明しようとする。

・ 100回目になって やっと警告する。

  しかし実行はしない。

・ 自分の生活は 一切省みず、 ボーダーの人を治せば、

  自分も幸せになると信じている。

・ いつか奇跡が起こることを 待っている。

・ 適切な方法が見つかれば、

  “異質な人物” の行動を 変えられると言い聞かせる。

・ 受け入れがたい行動は 無視する。

  こんなことは事実ではないと 納得する。

・ ボーダーの人が幸せになるまで、 自分を変え続ける。

・ 関係に終止符を打つ。

  でも、 相手に変わるからと言われて 元の鞘に納まってしまう。

  それを何年間も繰り返す。

(次の記事に続く)

〔 「愛した人が BPDだった場合のアドバイス」
   星和書店 (ランディ・クリーガー) 〕 より
 

「ゾーン」 にいる人のために (2)

2012年01月26日 19時34分06秒 | 「愛した人がBPDだった場合のアドバイス
 
(前の記事からの続き)

 自分の不幸に 見て見ぬふりをしていませんか? 

 夫婦生活のなかで揉み消したものを 明らかにするためには、

 自分の結婚生活が 通常どのようなものであるか、

 原点に戻って 考えることが鍵となります。

・ 普段から疲労, 不安, 緊張を感じていますか? 

  不幸が無意識のうちに そのような形で表れているのかもしれません。

・ パートナーのそばにいるとき、

  興奮や胃痛, みぞおちの虚無感, 苛々, 震えなどを感じませんか?

・ 孤独や虚しさを感じますか? 

  パートナーを避けるために 自宅から離れていませんか? 

・ 信頼を裏切られるようなことをされても、 軽く水に流していませんか? 

  それは 親密さに飢えているからではありませんか? 

・ 現実の怒り, つらさ, 孤独を、 夢のなかで 発散させていませんか? 
 

 自分の感情を 全て理解してるとは限りませんが、

 それらの感情を 健康な形で 解放させることが必要です。

 何かのきっかけで 当たり散らすことはやめましょう。

 パートナーに、 意地の悪い、 強烈な手紙を 書いてはどうでしょう? 

 相手を最も傷つけることを 書いてください。

 ただし 投函するのはやめましょう。

 スポーツや、 競争心を煽るゲームを してみるのもいいでしょう。

 信頼している友人がいるなら、 パートナーの役をしてもらい、

 思いっきり怒鳴らせてもらってはどうでしょう? 

 気持ちのいいお風呂や、 アロマ, 音楽, 深呼吸などをし、

 ゆっくりくつろいでください。

〔 「愛した人が BPDだった場合のアドバイス」
   星和書店 (ランディ・クリーガー) 〕 より
 

「ゾーン」 にいる人のために (1)

2012年01月25日 20時09分52秒 | 「愛した人がBPDだった場合のアドバイス
 
 感情のジェットコースターに 乗っているような気分ですか? 

 もしそうなら、

 あなたは  「ボーダーラインゾーン」 にいるのかもしれません。

 次の項目を 声に出して読み、 それをどのように感じるかによって、

 自分のゾーンを確認してください。
 

・ 私には 良いところが一杯ある。

・ 私は個性的で、 私のような人間は世界中にいない。

・ 私は多くの人に 良い影響を与えている。

・ 多くの人が 私を愛してくれている。

・ 私は完璧ではない。

  でも完璧な人など どこにもいない。

・ 無条件に愛されたいと 望んでもいいと思う。

・ 困難な状況の中でも、 最善を尽くしてきた。

  失敗したかもしれないが、 努力に免じて 自分を許してあげたい。

・ 私にも 健康で幸せになる 権利がある。

・ 全ての人が 私を愛してくれるとは限らない。

  でも 私を無礼に扱う権利は 誰にもない。

・ 私には 程々の良心と頭しかない。

  でも人は 私を好きでいてくれる。
 

 これらの言葉に どう反応したでしょうか? 

1. その通りだと 信じることができますか? 

  信じられないという人は、 もう一度読み直してください。

2. 読むと泣けてしまうという人は、

  自分がどれほどの 感情的重荷を背負ってきたのか、

  気付いていないかもしれません。

3. 何も感じられなかったという人は、

  感覚を麻痺させて 自分を守ろうとしているかもしれません。

4. その通りだと思いながら、 さほど心に 響くものがないとしたら、

  パートナーとの関係から 感情的に距離を置いているのでしょう。

  いくらか健全な自己評価を持つ ノン・ ボーダーラインの人が、

  早い時期に 関係から退く場合などに、 しばしば見られることです。

(次の記事に続く)

〔 「愛した人が BPDだった場合のアドバイス」
   星和書店 (ランディ・クリーガー) 〕 より
 

ようこそオズ (ボーダーラインゾーン) へ

2012年01月24日 20時19分25秒 | 「愛した人がBPDだった場合のアドバイス
 
 ランディ・ クリーガー氏は 著書の中で、

 ボーダーの人のパートナーや 家族, 周りの人たちのことを、

 「ノン・ ボーダーライン (non-BPD)」 と 表現しています。

 ボーダーの人から 何らかの影響を受けている人のことで、

 その人自身が ボーダーであるかどうかは関係がありません。

 クリーガー氏の著書での キーワードです。

 クリーガー氏は インターネット上で1995年、

 ノン・ ボーダーラインの人の サポートグループを結成しました。

 98年に改名し、

 「ようこそオズへ」 (WTO: Welcome To OZ) といいます。

 「魔法使いオズ」 から 取ったものです。

 主人公のドロシーは、

 オズの世界と 現実の世界という、 ふたつの世界を生きています。

 ノン・ ボーダーラインの人も、

 ボーダーラインの世界である  「オズゾーン」と、 通常の世界にいます。

 オズゾーンは、 怒り, 分裂, 意味不明な世界です。

 また、 物語の中のライオンは、 勇気がないと思っていました。

 ノン・ ボーダーラインの人も、

 ボーダーの人を前に ビクビクしながら過ごしています。

 しかし、 自分の中にある勇気を 見つける必要があります。

 かかしは、 頭の中が空っぽだと 思っていました。

 ノン・ ボーダーラインの中にも、

 破壊的な関係から抜け出せない 愚か者だと思う人がいます。

 でも 長年虐待されてきて、 自分の素敵なところが 見えなくなっているだけです。

 ブリキ男には、 心というものがありませんでした。

 ノン・ ボーダーラインの人も、

 感じないことが対処法に なっていることがあります。

 けれども、 よいことも悪いことも、

 もう一度感じることが、 回復のために重要です。

 ドロシーたちは 魔法使いに会う旅をしましたが、

 結局、 力や勇気などは 自分自身の中にあったのだ ということが分かります。

 ノン・ ボーダーラインの人も、

 自分の中に元々ある 素晴らしいものを取り戻していくことが 大切なのです。

〔 「愛した人が BPDだった場合のアドバイス」
   星和書店 (ランディ・クリーガー) 〕 より
 

「愛した人が BPDだった場合のアドバイス」 -序-

2012年01月23日 20時44分46秒 | 「愛した人がBPDだった場合のアドバイス
 
 本書は、  「境界性人格障害=BPD」 の著者 R.クリーガー(共著)が記した、

 ボーダーのパートナーの人に対する 実践的なアドバイスです。

 恋愛, 結婚, 友人など、

 自らの意志によって 選択した関係は、 より複雑な問題を 引き起こします。

 第一に、 自ら選択したほうが、 そうでない場合より、

 遥かに深い結びつきを 期待します。

 第二に、 選択した背景には その人自身の 個人的歴史と背景が窺えます。

 例えば、 ボーダーの人を 続けて選ぶ人が 往々にしているのです。

 第三に、 選択の自由と責任、 および法的義務が存在します。

 例えば、 離婚, 子供, お金などの問題です。

 さらに難しいテーマは、 怒りや見捨てられ感を抱く ボーダーの人が、

 パートナーに対して 与えかねないダメージについてです。

 このテーマは  “悪いボーダーライン” という 先入観を与えかねません。

 しかし、 ボーダーの人の 感情の激しさを自覚し、 心の準備を持てば、

 ダメージを減らす 可能性があるのです。

 それには勇気が必要です。

 ボーダーの人は  「自分には助けが必要だ」 と 言う勇気、

 パートナーには  「ノー」 と 断る勇気です。

 パートナーの人は、 次のような段階を経験していきます。

1. 混乱の段階

 ボーダーの診断を 受ける前、 ボーダーの人の言動が 理解できず苦しみます。

2. 外へ向かう段階

 自分自身の感情を認め、 それに対処します。

 ボーダーの人に 行動の責任を持たせ、

 ボーダーの人を コントロールすることを諦めることです。

3. 内へ向かう段階

 二人の関係に対して 自分が果たした役割を、 より深く理解することです。

 自己批判ではなく、 洞察と自己発見です。

4. 決断の段階

 自分自身の価値観, 信念, 期待, 思い込みなどを

 はっきり理解する必要があります。

5. 解消の段階

 決定を実行に移し、 人生を歩んでいきます。

 (本書は、 ボーダーの人の中でも 特に、

 高機能, 批判的であり、 自覚のない人について 説明しています。)

〔 「愛した人が BPDだった場合のアドバイス」
   星和書店 (ランディ・クリーガー) 〕 より
 

「BPD家族会」 のスタッフに

2012年01月21日 20時03分04秒 | 「BPD家族会」
 
 実は昨年末、 僕が参加している  「BPD家族会」 の代表交替に伴い、

 家族会のスタッフの 一員になりました。

 それまでは 代表と副代表 (共にカウンセラー) が 主になってやっていましたが、

 副代表が代表となり、 その他に 会の参加者の中から

 4人ほどがスタッフに選ばれたのです。

 BPDのために 役に立つことをしたいと 願っていたので、 待望の役回りです。

 主な仕事は 会場の予約と、 家族会のHPの記事です。

 今のところ 会場予約の仕事で、 時間的にもかなり骨を折っています。

 元代表が会社名で登録していた 会場が使えなくなったため、

 新しい会場に利用登録しましたが、

 そこは予約が抽選なので 部屋を確保できるとは限らないのです。

 新代表と相談しながら、 他の会場を探したりもし、

 元の会場に 個人で登録 (利用制限あり) したり、 苦労してます。

 でも 会のお役に立てるのは、 嬉しいことです。

 ところで、 新しい会場は、 心子とも来たことがある所です。

 初めて知り合った直後、 別のグループの忘年会が この会場であり、

 彼女も参加したいと 言ってきたのです。

 (また、 会場の隣の公園は、 心子と初めて 口づけを重ねた場所でした。)

 そんな想い出の会場ですが、 家族会には 新しい参加者も増えており、

 このような場を求めている人は 沢山いるのだと思います。

 BPDの家族を抱え、 訳も分からず、 どうしていいか途方に暮れ、

 他に行く所もなく、 救いを求めて来るのです。

 こういう会の存在の 必要性を物語っています。

 これから 会が育っていき、 家族の人たちの支えになり、

 活動が社会に浸透していけばと 願いながら、 頑張っていきたいと思っています。
 

若貴の優勝決定戦は ガチンコ? 

2012年01月19日 19時21分56秒 | Weblog
 
 以前ブログに、

 16年前の 若貴の優勝決定戦は八百長だったのか、 という記事を書きました。

http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/35613848.html

 先日、 そのことについて

 元若乃花の花田勝と、 元女将さんの藤田紀子が TVで告白していました。

 花田勝いわく、  「あれはガチンコです」

 しかし、 「16年経って初めて 正直に言いますけど、

 当たった瞬間に、 相手は体に力が入ってないなと 分かりました」

 と言っていました。

 ふたりとも 体に力が入っていませんでしたが、 プロなので闘わなければならず、

 「あれが精一杯の 仕事だったと思ってます」 と。

 若乃花も双子山部屋も 八百長は大嫌いなので、 ずっとそれで闘ってきたと言います。

 「双子山親方からは、 土俵では相手を殺すつもりでいけ と言われてました。

 でも、 いざ 目の前に弟がいたら、 殺せますか? 

 私はできないです」

 貴乃花は 勝負に対して貪欲なので、

 兄に勝たせてあげよう という気持ちはないと 女将さんは話します。

 場所後、 あの一番について 二人で話したことは、 一切ないそうです。

 その後、 若貴の不仲が取り沙汰されますが、

 その原因は あの一番にもあったようです。

 そして女将さんは、 貴乃花は若乃花に対してよりも、

 親方に対して 不信感を抱いてしまったのが 始まりのような気がすると、

 言葉を選びながら語りました。

 親方は勝負師だったが、  「親心」 が出てしまった、

 けれども それを許さないのが、 貴乃花だったと。

 優勝決定戦の前夜、 女将さんは 二人の部屋を それぞれ訪れて、

 明日は存分に闘うように と伝えました。

 ところが、 親方も二人の部屋を 訪ねていたようです。

 「親方は、 何かをやれ という言葉ではないけれど、

 心情的に、  『分かるかな……』 というような

 言い方をしたんではないのかな……、 と想像するんです」

 それを貴乃花が 敏感に感じてしまったのではないかと。

 真実は今となっては、 貴乃花のみぞ知るところです。

〔 朝日テレビより 〕
 

面接委員 出直し後押し (2) -- 矯正の現場 (15)

2012年01月18日 18時52分45秒 | 罪,裁き,償い
 
(前の記事からの続き)

 刑務官を退官後、 篤志面接委員を務めてきたHさん (68) は、

 数年前に面接した 10人の受刑者のことが 忘れられません。

 10人は全員、 刑務作業を拒否し、 独房から出てきません。

 「作業拒否で 仮釈放がなくなっても構わない。

 どうせ出所しても 仕事はない。

 犯罪する以外に ないじゃないか」

 作業拒否で 懲罰を受けた受刑者は 年々増加しているといいます。

 ボランティアで 受刑者の更生を手助けする 篤志面接委員は、 現在約1800人。

 60才以上の人が 7割以上を占めます。

 リタイアした人でないと 平日の活動は難しく、

 若い受刑者に見合った年齢の 面接委員の確保は進みません。

 Kさんは、

 「今後も受刑者の思いを 素直に受け止め、 共感していきたい」 と 語りますが、

 「反省が深まらない 受刑者が増えている」 とも 感じています。

 「立ち直りたいという 出所者の思いに 手を貸す人が、 社会の中で少ない」

 とも思います。

 「このままでは 再犯が繰り返され、

 いずれ刑務所は 立ち行かなくなるのではないか」

 そんな気がしてならない と言います。

〔 読売新聞より 〕
 

11年目の祥月命日

2012年01月17日 19時19分38秒 | 心子、もろもろ
 
 東日本大震災を経て 初めての1・ 17、 阪神淡路大震災から17年。

 東北と阪神が 絆を結ぶ日ですが、 心子の 11年目の祥月命日でもあります。

 最近は 毎月の月命日のとき、

 心子に似た花屋さんが 出勤している曜日に合わせて、 お墓に参っているのですが、

 今日は忌日なので 曜日を合わせずに行きました。

 1年前の10周年の日は、 ちょうどこの花屋の 経営が変わって、

 新しい店員さんと 顔を合わせました。

 その時の店員さんがいるといいな などと思いながら、

 花屋の外に並んでいる 花を見ていました。

 すると 店の中から店員さんが、  「こんにちわ」 と 声をかけて出てきました。

 見れば 心子に似た 店員さんではありませんか。

 「明けましておめでとうございます。

 今年もよろしくお願いします。

 今年初めてですね」

 と 向こうから言ってくれました。

 僕も挨拶をして、

 「今日は いない日じゃないんですか?」

 と聞くと、 辞めた店員さんがいる関係で、

 出勤日が多くなり、 曜日も変わったというのです。

 もし 今までの曜日に 合わせて来ていたら、 逆に会えませんでした。

 幸いなことで、 心子が取りもってくれたのかもしれません。

 色とりどりの鉢植えの中から、 ふたつを選んで買うと、

 「行ってらっしゃい」

 と見送ってくれました。

 甘いものが好きな心子に、 かりんとうも買っていきました。

 お墓には、 2ヶ月前に亡くなったばかりの 心子のお母さんの墓碑銘もあります。

 今年の正月は、 心子たちは40数年ぶりに

 家族一同そろって 過ごせたのではないでしょうか。

 湯気の上がる 暖かい食卓を囲んで、 楽しい団欒を持てたことを 祈っています。
 

面接委員 出直し後押し (1) -- 矯正の現場 (14)

2012年01月15日 20時04分21秒 | 罪,裁き,償い
 
 教誨師 (きょうかいし) であり、 篤志面接委員でもある、

 住職のKさん (69才) は、

ある刑務所で 所内限定の音楽トーク番組を、 月1回放送しています。

 「故郷」 「恩師」 「涙」 ……。

 毎月テーマを決め、

 受刑者が 200字以内の短文とリクエスト曲を、 ペンネームで書いて出します。

 Kさんは めぼしい文を紹介しながら、 曲を流します。

 「その気持ちを 立ち直る力に変えましょう」

 と、受刑者に語りかけます。

 ある夜の放送は、  「母の思い出」 がテーマでした。

 数日後、 傷害事件で 3度目の服役中の受刑者が、

 面接を申し込んできて、 涙ながらに語りました。

 「失明したあとも 食事を作ってくれた 母のことを、 誰かに聞いてほしくなった。

 母を裏切り、 葬儀にも出られなかった私が、

 今さら反省しても 遅いでしょうか?」

 「今の気持ちを忘れなければ、 出直すことは いつでもできるんだよ」

 半年後、 この受刑者は 仮出所が認められました。

 「番組が始まると、 けんかや言い争いもやみ、 所内は静かになった。

 『よし、 頑張るぞ』 と 前向きになれた」 と、 ある服役男性は振り返ります。

 この男性は 出所から20年後、 たまたま Kさんの寺の番号を知り、

 電話をかけました。

 男性は ヤクザから足を洗い、 福祉の仕事に携わっていると  報告しました。

 「そうか、 そうか」

 Kさんの 懐かしい声が喜んでくれました。

(次の記事に続く)

〔 読売新聞より 〕
 

面会・ 手紙 支える家族 -- 矯正の現場 (13)

2012年01月14日 22時14分14秒 | 罪,裁き,償い
 
 70才代の女性の息子は、 強盗殺人罪で無期懲役となり、 10年が過ぎました。

 女性は毎月、 新幹線で5時間かけて上京し、 息子に面会を続けています。

 息子は 日々の刑務作業の話などをしますが、

 事件や被害者遺族の話は ほとんど出ません。

 毎年 被害者の命日に、 女性は 遠方の遺族宅を訪ね、

 その時の様子を 息子に手紙で知らせています。
 

 強盗傷害で懲役10年の刑に 服した男性は、

 数ヶ月に一度の 母親の手紙を励みにしていました。

 老いた母は、東北地方で畑を営み、面会には来られません。

 〈家に必ず帰ってきてください。 待っています。〉

 刑務所の規則で、 読み終えた手紙は 刑務所に預けなければならなかったため、

 手紙の文章を一字一字、 ノートに書き写しました。

 辛いときは ノートを手に取り、

 「ここで踏ん張らなければいけない」  という気持ちになるといいます。

 母親はその後、 胃がんで亡くなりました。

 「それまでは、 ただ早く出たいと 思うだけでした。

 お袋を失ってからは、 真人間になって 社会復帰し、 墓に参ろうと誓いました」

 男性は 母親が送ってくれたお金で、 電気技術の本を買って勉強し、

 仮釈放後、 電気工の仕事に就きました。
 

 親族らとの 面会や手紙のやり取りは、 06年から 従来の2倍の

 「月2回の面会、 月4通の手紙の発信」 が 保障されました。

 矯正に支障がないと認められれば、 友人や恋人との 面会も許され、

 受け取った手紙も一定量まで 手許に保管できるようになりました。

 家族らの支えを より強くして、 社会復帰への環境を整え、

 更生の意欲を高める 目的だといいます。

 冒頭の無期懲役囚の母親は、

 息子から初めて  「遺族に お詫びの手紙を書きたい」 と 言われました。

 遺族は  「お母さんに免じて 受け取りましょう」 と伝え、

 息子はすぐ 封書を送りました。

 女性は、  「自分が息子を支えるのは、 遺族にとっては許しがたいのではないか」

 と 後ろめたさを感じています。

 一方で こうも考えます。

 「せめて 私が面会に行けるうちは、

 息子に 償いの気持ちと 出所への希望を 失わせないようにしたい」

〔 読売新聞より 〕
 

被害者の苦悩と向き合う (2) -- 矯正の現場 (12)

2012年01月13日 21時13分46秒 | 罪,裁き,償い
 
(前の記事からの続き)

 各地の少年院で、 少年に 被害者の心情を考えさせる 取り組みが広がっています。

 犯罪被害者を講師に招いて 体験談を語ってもらうほか、

 被害者の手記を読ませて 感想文を書かせたり、

 被害者の立場に立って、 加害者である自分あての 手紙を書かせたりするのです。

 多くの少年は、 何とかしないと 今後の人生もだめになると 焦っています。

 被害者の視点は、

 心の底にある 更生したいという気持ちに気付く きっかけになりやすいといいます。

 少年らによるリンチで、 15歳の長男の命を奪われた T子さん (55) は、

 少年院を訪ねて 被害者遺族の気持ちを伝えています。

 我が子を失った悲しみ、 同じ思いをする人を 増やしたくないという思い。

 聞いていて 涙を流す少年もいます。

 長男は生前、 非行に走った時期もあったが 立ち直った、 ということも必ず明かし、

 「あなたたちもやり直せる」 と 語りかけます。

 Tさんに、 少年院から 少年たちの手紙が届きました。

 〈自分の事件の被害者も、 Tさんと同じ思いなのかなと 思いました〉

 〈何とか再犯しないよう 頑張りたい〉

 Tさんは、  「この子たちは更生できるかもしれない」 と 感じます。

 加害者の元少年は、

 「社会に出た後も、 被害者の気持ちを ずっと考えていくのが、

 僕の責任だと思っています」 と 話しました。

 その言葉を聞いた 被害者の妻は言いました。

 「すごく嬉しいです。

 でも、 少年院を出てからが 本番だと思っています。

 だから、 今はまだ 私の心は動きません」

〔読売新聞より〕