民俗断想

民俗学を中心に、学校教育や社会問題について論評します。

角川ソフィア文庫版『本屋風情』読了

2019-01-17 10:45:35 | 民俗学

ようやく体が元に戻った感じなので、図書館へでかけ、たまたま文庫版が出て新刊書として購入された岡茂雄著『本屋風情』を借りてきました。岡茂雄は松本生まれで、民族学者岡正雄の兄です。軍人をやめて編集者、書店主となり初期民族学・民俗学関係の雑誌を創刊した人です。この書名、本屋風情とはいかにも自虐的なものですが、あるとき柳田國男が「本屋風情が‥‥」と口にした言葉を、ある面逆手にとって名付けたものだといいます。本屋風情が、などと口にするとは、いかにも高級官僚たる柳田の本性を表しているように思います。

内容は、南方熊楠にかかわるエピソードが多いのですが、柳田についての裏話もいくつかあります。熊楠は奇人変人とは読んだことがありますが、ここに書かれたほどに、本当にすごいとは思いませんでした。また、柳田が岡の企画した講座を別の出版社に売り込んで出そうとした話など、弟子の研究者では書けない内容です。柳田という人も、こんなにひどいことをする人なのだとわかります。それでも岡は柳田を尊敬していますから、岡という人もスケールの大きな人だったんですね。

先に体が元に戻ったと書きましたが、実は戻っていません。風邪の後遺症による嗅覚障害になりまして、治療していますが、未だ臭いを感じません。かぐわしい香りとともに、うまい酒を飲みたいものです。