民俗断想

民俗学を中心に、学校教育や社会問題について論評します。

諏訪大社上社里びき

2016-05-05 18:00:18 | 民俗学

  

5月3日、上社の里びきがありました。次は7年後。生きているのか、自分が動けるのかわかりません。30年ばかり前に建て御柱を見学しただけで見てありませんが、今回はそんな思いで見に行きました。川越をして御柱屋敷に安置していた、本宮・前宮、それぞれ4本ずつの御柱の里びきです。最初の難所は、御柱屋敷を出て国道を直角に曲がるところです。狭い十字路の上に信号機があります。御柱は徐々に向きを90度かえていきました。道は御柱のひきことラッパ隊、見物客でごったがえしています。人力のみで皆が力を合わせて綱を引き、音頭を取り、柱のバランスをとる。見ている方もハラハラします。驚いたことに一本の柱をひく集団の最後尾には、道路を掃き清めごみを拾う係りの人々までいます。

私は本宮の4本は前宮前を通り過ぎて、本宮までの途中までが今日のコースですが、前宮の4本はお宮までひくのが今日のコースです。前宮の次の難所は前宮前を曲がって、石の鳥居をくぐって参道まで引き込む場面でした。鳥居の中を通すのは角のように張り出したメドデコはひっかかりそうで、またそこに乗っている人がケガをしそうで、御柱にのっているリーダーからの鋭い声がスピーカーから流れてきます。そんなに狭くない参道ですが、綱についたヒキコや一緒に歩く氏子の人々で埋め尽くされました。もし御柱がバランスを崩したりしたら、大変な事故になってしまいます。鳥居を入った御柱はしばらく休み、短いメドデコに差し替えられます。急な参道は狭く道路わきに灯篭などがあるので、短くするのです。そして、階段の上に敷いた板の上を、御柱は一気に上っていきました。それは何とも感動的な姿でした。

たかが太い木の柱を人間がひくだけの単純な祭りなのに、その場に居合わすと心が躍りハラハラし、演者(祭りの当事者)と心が一つになったような感動を覚えました。子どもから老人、本当に足元がおぼつかなような老人までが、御柱と一緒に歩いているのです。御柱にすがって歩いているかのようです。本当に地域住民の一体感を感じました。人々を生まれ故郷につなぎとめる強烈な磁力です。今日木やりを唄っていた小学生が、次回は立派な若者として祭りを支えるでしょう。すごい祭りです。こいつは途絶えそうもありません。