今日はまたグレン・グールドが遺したベートーヴェン「ピアノ・ソナタ」の録音から最後の3つのソナター「第30番」・「第31番」・「第32番」が聴きたくなった。この録音はデビュー盤バッハの「ゴルトベルク変奏曲」(1955年録音)に続く1956年6月のモノラル録音で彼の初のベートーヴェン録音でもあった。(写真)「ゴルトベルク変奏曲」のようにステレオ再録音はしなかったものの実に彼らしいユニークな解釈のベートーヴェンである。その後彼は断続的にベートーヴェンのソナタ録音を行ったが全集録音には至らなかった。最も彼自身にその意思もなかったようである。
しかしこのベートーヴェンの後期最後の3つのソナタ録音は独自の自在なテンポ設定といい従来のベートーヴェン演奏の常道から外れた演奏スタイルが注目され彼の名声をより高めたアルバムだったことを思い起こす1枚だった。賛否両論ある彼のベートーヴェンだが私は特に最後の「第32番」が好きである。