巨匠カール・ベーム(Karl Böhm/1894~1981)のベートーヴェン「交響曲第9番」のコンサート・ライヴ録音は意外に少なく以前に彼が「ベルリン・ドイツ・オペラ」と初来日(1963年)した際の「日生劇場」におけるライヴがCD化されたことがあったが(現在、廃盤)それ以外のライヴ録音は正規盤では見当たらない。今日紹介する「FMエア・チェック」は最晩年のベームが「1980年ブレゲンツ音楽祭」開幕コンサートの貴重なライヴである。このコンサートは7月18日、この年に新設された「ブレゲンツ祝祭劇場」で行われた。管弦楽はウィーン交響楽団、独唱陣はソプラノ=ピラール・ローレンガー、アルト=ハンナ・シュバルツ、テノール=ホルスト・ラウベンタール、バリトン=ペーター・ウィンベルガー、バックの合唱はウィーン楽友協会合唱団であった。コンサートの模様はヨーロッパでは同時生中継放送がされたようだが日本ではその年の大晦日にNHKFMで放送された。演奏スタイルは全楽章を通じゆったりと遅いテンポをとり全曲約75分の堂々としたベームの指揮ぶりは聴き応え充分である。このコンサートの約4ヶ月後の11月に通算で4回目のスタジオ録音となる録音をウィーン・フィルと行ったベームであったがこの「ブレゲンツ音楽祭」の演奏解釈もほぼそれに近い。最後の録音となったウィーン・フィルと独唱陣は異なるがこのコンサート・ライヴの各パートの独唱も素晴らしくバックの合唱も美しく響いた「第九」である。