ぼくたちはよくドライブに出かけた。
でもドライブに出かけると彼女はたびたび苦情を言った。
なぜ、横にいるわたしを見ないのだ、と。
だって、ぼくは運転してるんだよ、前を見なきゃ。
それにしても前を見すぎだ、と。。
今になればわかる。免許を取ったばかりで緊張しているぼくと彼女の父親とでは運転の作法も違ったのだろう。
ええい。
彼女はかけ声を出した。
なんだと思って見たら、彼女がフロントガラスに顔を突き出してる。
ほら、ご覧なさい。フロントガラスに鼻油つけちゃったわよ。
さあ、信号で止まったときくらいこっち見なかったら、なめくじの這い跡みたいにこの跡が延々続くわよ。海に着く前にフロントガラス、べたべたよ。
威勢よく言い放つ彼女に疑問を感じる。「いったい、きみは何者くんだ?」
ベタツキ万歳。