毎日が観光

カメラを持って街を歩けば、自分の街だって観光旅行。毎日が観光です。

LEE 45倍

2010年07月04日 22時00分11秒 | 観光
 ぼくは基本的にインスタント食品を食べません。
 裸足で大地を踏みしめて、大きな木をぎゅーっと抱きしめたら、自然からエネルギーをもらっちゃって癒されちゃう、ああ、あたし、きなりのワンピ着たあたし、今、ロハスでスローなの、無添加よ、無添加、太陽の匂いがぎゅっと詰まったトマトをエコバッグ持参でお買い物して、ソトコト読んで、スローフードが一番よね、という頭の狂ったような思想、ある種危険思想じゃね?、それ、みたいな、電通と木楽舎に完全にはめられてね?、みたいな考えがあってのことではありません(と言いつつ、木楽舎の「縄文聖地巡礼」買っちゃったよ、読んじゃったよ、だって、しょうがないでしょ、縄文だもの、中沢新一だもの、多摩美術大学芸術人類学研究所友の会会員という名の中沢新一ファンクラブ所属だもの、わたしってば)。
 なぜインスタント食品を食べないか、答えは簡単、料理が好きだから。一日三食という習慣は、ぼくにとっては、一日三回ご飯を食べるというより、一日三回しか料理できないんだという落胆を意味する。
 そんなわけで料理がしたくてインスタントは使わないのだけれど、ふとスーパーの店頭で目を奪われたのが、これ。


 アフリカン唐辛子、というなんだかスゴそうだけど、いったいぜんたい君は誰なんだい?というスパイス付きの×45カレー。
 実は暑い夏に辛くて全身から汗を吹き出させるのが大好き。もともと辛いものも好きだったし。高校時代高田馬場のボルツでどれだけ辛いもの食えるか競い合った、あの青春の日々が懐かしい。人の味覚ってある程度一定幅があって、甘いモノが好きな人は辛いものに対する耐性が低く、辛いものが好きな人は甘いモノが苦手だったりする(この甘い「モノ」と辛い「もの」、この違い分けに細かなこだわりを感じていただけたら幸いです)。
 ぼくは甘いモノが苦手、というより食べられない。すき焼きですら頭痛がしてしまう。甘いモノはいいの。あえて食べようとしないから。でもね、これ食べないとあんた夕飯なしだよ的なすき焼きは育ち盛りの人間にとってはある種最終兵器。究極の選択。頭痛か空腹か選べってことでしょ。すき焼きを前にして試される10代後半。ある種のお母さんテロ。
 もうね、そんなことが走馬灯のようにいっぱい浮かぶわけですよ(お母さんテロはね、きっと文化系男子なら一度はこうむったことがあるはずだから、いつかまた)、このレトルトカレーを前に。スーパーの前でなにやら佇むわけですよ、生き別れた妹と再会したみたいな風情で。そして手に取り、レジへ。その45倍という挑戦的な文字は、ピンポイントでぼくを刺激するためとみたね、ぼくのために企画されたわけだね、とある種のアイドルに対する思い入れのような危ない目をして温め、ご飯をよそり、いや、それじゃあまりにもつまらない、週イチは「カナリア」のゆでスタを食べていた自分を思い出せ。ま、そんなたいした話じゃないんだけど、とりあえず、ゆで卵の輪切りを載せましょう。



 これに左の添付アフリカン唐辛子をかけて食します。
 うわああ、体中の毛穴が広がります。あのね、あのね、メガネかけてられないの。額から汗がどんどん出るので、メガネがあるといちいちふいてらんないの。辛いというか、なんだろ、痛い、それも理不尽に壁に叩きつけられるような感じ。なんで、なんでこんなめに合わないとならないの、ぼく、なに悪いことしました? で、そのくせ、このカレーのいけないとこは旨いのよ。なんっていうか、ヒモにすると最悪な感じの性格。ほら、辛いだけなら拒否できるじゃん。でも、そこに旨みがあるから別れられないわけよ(って、俺はどんだけ女性目線なんだよ)。で、汗ふきふき体ベトベトになりながら、食べ続け、でも、最後の一口がもう入らない。口の中痛いし、胃は、これ以上そんなもん入れられるなら辞表叩きつけます的な風情で真っ赤になって怒ってるし。
 いや、まあまあ、主任、そんな風にいきりたたないで、と中間管理職っぽく振る舞いながらも、その一口を見たくないのか、どこか焦点の定まらない遠い目でカレーの向こうを見ているわたし。
 脳内にロッキーのテーマが鳴り響き、最後の一口をすくうぼく。口に入るカレー&ご飯。ついに完食。
 で、その感動のフィナーレで気づいたわけ。ぼくの身体の中の誰も幸せになってない。
コメント (2)
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