毎日が観光

カメラを持って街を歩けば、自分の街だって観光旅行。毎日が観光です。

ビール賛

2010年06月11日 20時36分58秒 | らくがき


 渋谷川沿いに熱帯植物園ができた。ワクワクして出掛け、楽しみ、外に出ると、そこは渋谷と恵比寿の中間ぐらい。ちょっと恵比寿に寄っていこうとブラブラ歩く。
 すると途中、一軒の店の前で素晴らしいふくらはぎをした女の子を見かけた。蠱惑的な曲線とすらっとした直線、両方を持ち合わせた素敵なふくらはぎ。その美しいシルエットには筋肉の持つ緊張感が漂い、あ、もしかしたら、この子は自転車乗りなのかもしれない、と思った。
 ふと足元を見ると、そこにはベネズエラのエンジェルフォールを小ぶりにした感じのハイヒール。なんだ、このヒールのせいか、と思ったものの、そのヒールの絶壁感は圧倒的で、あまりにもそのヒールが急なのでつま先はもう地面に届くことを諦め、地上2~3cmあたりを浮上していた。
 すごい、天使のようだ。
 その奇跡を目の当たりにしてぼくは彼女に話しかけたくてたまらなくなった。しかし彼女は20歳そこそこ。「なに、このおっさん」「キモッ」などと、どこぞのハイパーメディアクリエイターに対する罵声を浴びないとも限らない。
 「いや、違うんだ。けっしてきみがどうこうってことじゃなくて、ぼくの興味があるのは、きみのハイヒールなんだ」
 好転しねえ、驚くほど状況好転しねえ。いや、むしろその言い訳によって、ぼくはキモいおじさんから、ヘンタイのおじさんへと華麗なる変身を遂げてしまいそうだ。
 そして彼女は眼球の重さと同じくらいの脳を持ち、道を歩けば横になって歩道を塞ぎ、笑い声がでかければでかいほど人として正しいと勘違いした男を数人呼び、「この変態、あたしのヒールをなめようとしてるの」とあることないこと言われ、「ち、違う」みたいなことを叫ぶぼくを縛り上げ、「変態」と彫られた焼印をじう、と。イルナミティみたいに、じう、と。肉の焼ける音と匂いがあたりに漂う中、ぼくは気を失う。
 もちろん、そういうことはぼくの趣味ではないので、彼女に話しかけることもなく、恵比寿に向かう。じゃ、なんだ、ぼくは女の子の足をチラ見した、ただのおっさんか。
 そんな自己嫌悪を癒すために、ぼくは今日もビールを飲む。1杯のビールには、上記のようなものがすべて含まれ、だからビールは苦くて美味しいのだ。
コメント (4)
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