旧右近権左衛門邸(北前船主の館)

2009-03-25 20:53:02 | 富山・福井



















 空と海が混じり合い、境目の無くなった青を見渡すこの洋館は、北前船主・右近家の離れとして昭和10(1935)年に建てられたものです。 和風の本宅が建つ後側、山肌の中腹にあり、下から見上げると山小屋のようにも見えた建物は、1階がスパニッシュで2階がシャレー風の組み合わせ。 内部に目をやれば玄関や暖炉のグリル、床や壁にちりばめられたタイルには濃密な意匠が施され、階段室のステンドグラスには右近家の店印である一膳箸をマストに掲げた南蛮船の図柄も刻まれています。 一説にはヴォーリズの設計とも云われる(実際には大林組の設計・施工で確定的)建物は勿論素晴らしいのですが、この建物で一番強く印象に残ったのは窓の外に広がる日本海の海の色。 長く続いた北前舟の時代は明治に入り翳りを見せ始め、いち早く近代船主へと脱皮した右近家は、この洋館が完成した頃には既に海上船舶保険業などに転身し成功を収めていたと云います。 それでもなお切っても切れない海との関係を、この窓越しでの対話という形で無意識の中で続けていたような気がしました。  福井県南越前町河野2-15  08年07月中旬

 ※参考  『日本の洋館  明治編Ⅰ』  2002
      『近代化遺産探訪』  2007