栄光イレブン会

栄光学園11期卒業生の親睦・連絡・活動記録

ブログ開設:2011年8月23日

Smartプロジェクト(その22)(Suzuki_Taketo)

2019年01月05日 | 鈴木(武)・関口・高野

   Smartプロジェクト(その22)

債務のリストラクチャリング:

 PLDTはニューヨークのNYSEに上場するフィリピン唯一の会社です。買収の直後から株主である金融機関や年金基金等に対してIRを行って株価の維持を行う必要がありました。IRではPLDTの経営者としてSmartを買収した事で、PLDTグループの経営の改善、即ち如何に合理化して、利益を向上していくかを説明する必要がありました。

質疑も厳しいもので、職員数の合理化計画や利益率等数字で答える必要があります。 IRでは香港・アムステルダム・ロンドン・NY等を回りますが、1日2カ国、世界一周5日のペースで年1回、なかなかハードなものでした。

 いずれにせよPLDTは種々のリストラが必要でした。NTTとの関係を維持する上でも、先ずはPiltel等の不良資産、またこれを構成した債務の整理が最初の課題でした。Piltelの固定網は政権との摩擦もあったそうで、敷設義務に関する査察が特に厳しかったそうで、設備を急速に展開する必要があった様です。日本商社(複数)によるターンキー契約でしたが、既に引取りが終了したにも関わらず、殆ど稼動して居らず、支払いもしていない状況となっていました。

 最大の貸し手になってしまった日本商社には、バブル崩壊で整理すべき不良資産が山積みで、その経営上も不良資産をそのままにしてはおけないとの認識を共有した上で、同社の債権をPiltelの株に切替え、さらにPLDTも含めて別途のオプションを加える案による膝詰めの交渉を行いました。幸い、NTT法人営業本部で流通サービス営業部長をしていた関係で、多くの商社の幹部と顔見知りであった関係もあり、非常に率直に議論を進めることが出来、合意に至ることが出来ました。

 PLDT自体の債務としては殆どの通信設備を独シーメンスから調達していた関係でKFW(ドイツ輸銀,)に最大の債務が有りました。当初、この借り換えは順調に進むものと思っていましたが、日本資本が入った事で、ドイツからの今後の調達が見込めなくなるとの考え方も有ったのかもしれません、KFWが借り換えに難色を示しました。

 財務担当アドバイザーのCris. Young氏のKFWとの交渉の末、借り換えの条件として日本政府ないしNTTの債務保証があればこれを認めると言う所まで妥協を得られました。しかしながら、持ち株傘下で発足したNTTComと幾度か交渉を重ねましたが、債務保証はした事もないし、今後もする事も無いとして頑としてこれに応じてくれませんでした。NTTファイナンスにも相談しましたが、NTTが債務保証に応じた事実は有ると教えてもらいましたが支援は頂けませんでした。

 この様子を見ていたNTTCom藤本(仮名)副社長からJBICを紹介頂きました。 NTTの一部、特に銀行出身の方はNTTがJBICに資金面で依頼するなど有り得ないとの意見もありましたが、我々にとっては最後の望みとなっていました。JBICは既に運用実績が有り、利益もあげているSmart/PLDTに好意的ですが、当然収支元の何等かの保証を求めます。

 何度かの打ち合わせの後、『NTTはPLDTを戦略的パートナーとして出資、経営参加している』の趣旨を差し入れて、保証の代わりとし、資金提供(100億円)を得る事が出来ました。 JBICは日本政府であり、ここからのコミットを得たとのKFWの認識を得て、KFWに借り換えに応じて貰う事が出来ました。この状況でデフォルトの危機からどん底の株価の回復と、更なる債券の買い替えを促すため、IRを実施して財務の問題は解決と思っていました。

 ところが、この段階(2001年9月11日)でアメリカ同時多発テロ事件が発生し、NYでのIRを中断せざるを得ない状況となりました。あとから教えられたのですが、金融界の雑誌には『NYSEに上場している会社の中で最も影響を受けた会社はPLDTだ』との記事も出たくらいで、経営者の焦燥も味いましたが、再度財務担当Cris Young氏の才覚でオランダのABMアムロ銀行の短期融資でデフォルトの危機を乗り切ることが出来ました。

  (その23に続く)

 

 

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