栄光イレブン会

栄光学園11期卒業生の親睦・連絡・活動記録

ブログ開設:2011年8月23日

きよちゃんのエッセイ (188)”チョコレート”(Okubo_Kiyokuni)

2024年10月04日 | 大久保(清)

 チョコレート 

チョコレート屋さんが我が家の前にオープンした。名前は『レオ二ダス』 ベルギー王室ご用達の有名ブランドである。照明を浴びた陳列台の上でキラキラ輝くチョコレートの群れを眺めているうちに、なぜか、半世紀前に訪れたブリュッセルの街並みが、ふわっと、まぶたの裏に浮かび上がってきた。 

まだだ駆け出しの港湾技術者であったころ、アフリカの港湾調査に向かう途中、ベルギーに一泊したことがあった。当時は。なんの疑問も抱かずに、アフリカとの乗り継ぎ便が豊富ゆえ、ブリュッセルをベースとする「サベナ航空」を利用した、と思いこんでいたのだが、今、振り返ってみると、畑違いのダムの専門家である副社長が団長を引き受けてくれた際、おそらく、アフリカまで若造のおもりをして、なにか楽しみでも見つけないと、やっていけないわ~、との想いから、かねて気になっていたブリュッセルにある「ワーテルローの古戦場」の見学を思いついたのではないだろうか。副社長は、陸軍士官学校の卒業である。

リベリアの現場では専門が違うゆえ、180センチの上背を丸めるようにして、かしこまって、ただ、うなずいてばかりいたのだが、ワーテルローにやって来るや顔つきが変わった。生き返ったように目が輝き、胸を張り、背筋がまっすぐに伸びている。

1815年、ウエリントン公の率いるイギリス、オランダ連合軍にナポレオン軍が大敗した現場と言われる、目の前に広がるなだらかな丘陵地を見わたしていた副社長は、刻々変わる両軍の陣容が再現された見学者用の模型パラマの前に立つと、まるでナポレオンになったような鋭い眼差しで、観てごらん、ここで、新たに参戦してきたプロイセン軍と衝突したのだ、と、指を突き出しながら解説を始めた。

ワーテルローでの講義も終了し、当番兵の役目からも解放された男は安堵感に浸りつつ、あの「小便小僧」の像の前で何度も立ち止まり挨拶をしながら、映画のような街並みを映画の主人公になった気分で歩いていた。「森永や明治」の板チョコしか知らない田舎者にとって、気品のある姿で、魅惑的な香りに包まれた「生チョコ」はとても美味しかったのだが、やがて、紙袋の中で溶けはじめた。一粒ずつ取り出しては必死に口に運び入れていくうちにベトベトになってしまった

指先をただひたすら舐め続けていた・・・、その感触までも、住宅街に現れたチョコレート屋さんが蘇らせてくれたようだ。ブリュッセルと青葉台、この偶然の出会いに感謝。

コメント
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