栄光イレブン会

栄光学園11期卒業生の親睦・連絡・活動記録

ブログ開設:2011年8月23日

「話せばわかる。」ほんとに?  (Miyata_Yoshiaki)

2012年11月06日 | 宮坂(研)・宮田・三輪

 最近は囲碁に熱中するあまり、他のことは手につかない状況です。ブログ投稿を気楽に引き受けたのですが、なかなか着手できないでおりました。しかし、時間がどんどん経ちますので、中国と関係した時代に得た知識を基に、尖閣諸島に関する話題をやや独断的に届けることにいたしました。 

 領土問題は、話し合いで解決困難な国際問題の一つです。過去の領土問題は大方武力により国境線が確定しております。武力で実効支配され、泣き寝入りする場合も武力解決の範疇に入るでしょう。

  さて、尖閣問題ですが、中国の失地回復政策と海洋権益確保政策に絡んで、中国は核心的利益と位置づけております。尖閣諸島は中国の第一列島線(1920年を達成目標とする中国海軍の制海権確保境界)内にあるため、付近の海洋資源の存在と相まって、中国の領有権主張は強烈です。この背景には、ウイグル、チベット、南沙での成功経験があります。領土問題では、「寸を譲れば尺をとられる」という外交常識があります。中国の失地回復政策は清朝時代の最大版図を回復しようとするもので、朝貢国はこの版図内と見なしています。清朝時代、琉球王国は薩摩藩の支配下にありましたが、中国貿易を行うため朝貢をしておりましたので、中国は沖縄の主権は中国に属すると考えております。従って、尖閣領有を中国に譲ることは、沖縄の島を次に狙われる可能性を高くすることに他なりません。この観点から、日本は尖閣諸島の領有権を絶対に譲ってはならないのです。

  尖閣諸島の問題を外交で解決すべきとの識者の意見をよく耳にします。「話せばわかる」というわけですが、外交は常に軍事力を背景に行われるものです。交渉の舞台で武力行使をするぞと脅すことは少ないでしょうが、暗黙の了解として武力行使が背景にあるのです。尖閣問題でも、中国は軍事力の行使を示唆しております。南沙問題では、漁民が領有権を主張したい島にまず上陸し、漁民の保護を目的に中国海軍が進出し、構築物を建設して実効支配の実をあげておりました。尖閣諸島で中国海軍が出てくれば、海上自衛隊の出番となり、海上自衛隊は中国海軍を撃退できるでしょうが、忘れてはならいのが海上自衛隊の活動範囲が領海に限られることです。すなわち、局地戦での勝利はあっても中国海軍を屈服させることはできないのです。ここに日米安全保障条約、言い換えれば米軍の反撃能力の重要性が浮かび上がるのです。まさか、中国が対米衝突のリスクを冒してまで軍事力を行使するとは思えないからです。

   脇道にそれますが、日本の識者は品格ある国家が好きらしいのです。「国家の品格」(内容からいうと「日本人の品格」とすべきでしょう)というベストセラーがありましたが、外交には品格は不要です。国際世論を味方につけるため相応の理論武装は必要ですが、国益の追求はえげつないのが世界の常識です。国家は「善良な市民」と考えるより「やくざ」と考える方が分かりやすいのです。この点、多くの識者が誤解しているようです。まさに平和ぼけの具体例だと思います。 

 尖閣問題を考える上で、中国人の道徳観が日本や欧米のそれと異なりますので紹介いたします。高校で論語を勉強させられましたが、教えられた解釈は普遍的な道徳観であったように記憶しております。ところが、中国における論語(儒教)は身内(血縁に限定されません)への道徳なのです。これは大変驚きで、外の人間は騙しても罪と感じないのです。むしろ騙される方が悪いと考えるようです。客家と呼ばれる人たちの結束の強さは、このような道徳観の裏返しだとも考えられます。また、中国が白樺ガス田の共同開発を了解ながらも、単独で開発を継続し、操業を開始したのもうなずけます。さらに、棚上げした尖閣問題でも、近海の測量を行い、国連に海図を添えて領海申請したのも、この道徳観のなせる技かと思います。ただし、中国人が全員悪人と主張しているわけではありません。くれぐれも誤解のないようにお願いいたします。

  尖閣問題は日本か中国かが領有権を主張しなくなるまで続くと考えるのが妥当です。日本は尖閣諸島を実効支配しているのですから相当に強い立場にあります。この例は韓による竹島の実効支配に見ることができます。しかし、日本の法体系は外交問題の武力解決を前提としておりませんので、きわめて脆弱といわざるを得ません。たとえば中国が日本に宣戦布告した場合、日本には対応すべがないのが現状です。中国政府に示威活動を諦めさせるためには、尖閣諸島の実効支配を強化することが重要です。必要な施設を作り、警察官や海上保安官等の必要期間を常駐させる必要があります。中国は当然反発するでしょうが、これを恐れて「土下座外交」と揶揄されるようではいけません。中国の反発は日本にとっての好機なのです。

  理由は、このような日本の行動が中国政府の弱点を間接的に突くことになるからです。ところで、中国政府の弱点は、①中国人民の経済格差に対する不満、②人民解放軍の発言力の増大、③国際世論の中国批判、にあるといわれます。中国政府が反発し、反日デモを組織すれば、中国人民の不満に火をつけ反政府デモに発展する可能性があります。また、人民解放軍からは強硬発言が続くことになり、中国政府はこの沈静化に苦労することになるでしょう。これらは、中国の過剰な反日教育に起因しますので、その結果に責任をとらされるのは中国政府なのです。

  中国政府の対抗策として子供じみた嫌がらせがあります。経済的な対日制裁は、短期的に日本に打撃を与えますが、中国も返り血を浴びることになりますので、いずれ継続を諦めるでしょう。レアアースの対日禁輸の例でもわかるように、このような経済制裁は世界の中国評価を落とすことになります。また、中華思想(中国は世界の中心でその頂点にあるとする思想)と正史史観(自己の正当性を都合の悪い事実を隠匿してまで主張する歴史観)に基づき、中国政府は高圧的で独善的な領有権の正当性を主張するでしょう。このような主張に対しては国際法等の国際基準に照らした反論が必要でしょう。同時に世界世論を味方につけるため意見広告等の広報を強化することが重要でしょう。

  「話せばわかる」、「問答無用」。1932年の5・15事件の犬養毅首相と海軍青年将校との有名な会話ですが、今は日本政府と中国政府の尖閣諸島を巡るやりとりの構図となっております。この問題に関しては「話せばわかる」という幻想を捨てることが肝要です。また、日本が攻撃しなければあいても攻撃せず、平和が保たれるという幻想を捨てることも重要です。前述の脆弱性を改善するため、海上警備と安全保障上の法体系を整備・強化し、いかなる侵略にも対応可能な体制を整えるのが急務です。日本が普通の国家になる、これが日本の方針であってほしいと思います。

  最後に、中国とは是々非々の関係を築く必要があります。対立するところは臆することなく対立し、それ以外では友好的な関係を模索することに尽きるのではないでしょうか

                          2012/10/19 

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 奥山 巌です。

宮田君の場所を借りて、尖閣諸島に関して学生時代の友人が送ってきましたユーチューブの動画を掲載させて頂きます。

分かり易い英語(in English)で、
尖閣諸島の帰属について、証拠に基づき明確に述べています。
国際的にも、国内に向けても、極めて参考になると思われます。

是非、下記URLへアクセス下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=sK0dPy8L4OU

別の記事です。
http://youtu.be/taqsm7L9Q1I

 

 

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1 コメント

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領土問題とGive&Takeの件 (Mieko Ota)
2012-11-11 00:17:18
奥山様が私のツイッターを訪問して下さった様なので、門外漢ながら~領土問題は、元勤務先で「北方領土」に関しロシア人要人を迎え要請され、困った事がありますが、趣味の映画や大統領について話したのを覚えています。趣味と言えば、父もかつて囲碁を好み、母の友人が藤沢秀行名誉棋聖の妹さんだった事で書を頂き、私の初個展にも活用させて頂きました。ご子息とツイッターで再会、何事も①相思相愛②相性と述べられていました。私は①タイミング②ギブ&テイクだと思うのですが、貴学園の方がヘルプをされたから、相手側からお礼をされたので、無銭飲食というのは余り考えられません。国際外交でも、同じような事が言えるのかと、乱文ながら。
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