まず、冒頭にぶっ飛ぶと思います(笑)
「おらおらでひとりいぐも」70点★★★☆
*********************************
75歳の桃子さん(田中裕子)は
夫に先立たれ、一人暮らし。
毎朝、寝床から出て、朝ご飯を食べ、
TVに独り言を言い、病院に行けば長時間待たされ、
図書館で趣味の本を読み、黙々と勉強する。
そんな毎日の繰り返しのなかで
桃子さんの「心の声」が
目の前に現れて――?!
*********************************
「キツツキと雨」(12年。これ名作!)「モリのいる場所」(18年)などで知られる
沖田修一監督が
芥川賞受賞の同名小説を映画化。
夫に先立たれた75歳・桃子さんの
日常を描くもの――と思うと
冒頭にぶっ飛ぶと思います。
え?宇宙の神秘?NHKスペシャル?みたいにはじまるから(笑)
中身も、基本は桃子さんの毎日なのですが
そこに原作にもある
桃子さんの心の声を、擬人化し(濱田岳×青木崇高×宮藤官九郎の3氏が担当)
さらに回想シーンとして、
蒼井優さん演じる若き日の桃子さんの場面がはさまる、という。
かなりファンタジー色がつよく
「モリのいる場所」の、あのラストの不思議さをずっと見ている感じもあり
ワシとしては
たとえフツー過ぎても、桃子さん(=田中裕子さん)の毎日を追うだけでもよかったかな、と思いましたが
そこは好みでしょうね。
だって桃子さんのフツーの日々を見ているだけで
十分、満足で楽しいんだもの。
沖田映画は、いつもながら美術がしっかりしていて
決してオシャレだったりしない
フツーの郊外の一市民の暮らしぶり、
家の細々した小道具を見ているだけで、なんとも心ほぐれるし
飯島奈美さんによるフツーの目玉焼きやお弁当も
めっちゃくちゃおいしそう。
そんななかで、一人生きる桃子さんをみていると
一日、一日を
淡々と積み重ねていくことの滋養を
しみじみと感じるのです。
自分もこんなふうに、一人でもきちんと生きたい
(部屋も片付けて!)と思うし、
離れて暮らす老親たちのことも考える。
特に、「息子と思ってください!」的に車のセールスをする青年との
やりとりにね
ほのぼのしてるんだけど、
ちょぴっと心がキシッときしんだのでした。
――今日も、親に電話しとくか。
★11/6(金)から全国で公開。