動く絵画をみているような、いや
精緻なスモールワールド(ドールハウス)をのぞいてる感覚になりました。
美しい!
「ホモ・サピエンスの涙」73点★★★
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街を見下ろすベンチに座る中年男女。
会話もなく、ただ時間が流れるなか
女性がぽつりと言う。
「もう9月ね」――。
がらんとしたレストランで
新聞に夢中な男。
そのグラスにウェイターがワインを注ぐが
どんどん溢れてテーブルに広がっていく――。
どこにでもありそうな風景で、でも見たことのない
美しく不思議で、プッとおかしい
そんなシーンがどこまでも続いていく――。
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「愛おしき隣人」(07年)や「さよなら、人類」(14年)で知られ
世界中の著名監督にリスペクトされている
スウェーデンの奇才ロイ・アンダーソン監督の
5年ぶりの新作です。
1シーン1カットで描かれる
ショートショートが33編。
これまでに増してよりいっそう完璧なシーンの切り取り方が美しく
どれも動く絵画を見ているような、
いや、精巧なミニチュアのドールハウスをのぞいているような感覚になりながら
そこで起こる、人間の営みを見るおもしろさがあり
見入ってしまいます。
これらは
1シーンのぞいて(軍隊の行進シーンです)
すべてセットで撮影され、
かつ背景などもほぼCGではなく、模型で作られているそう。
シャガールの絵画にインスパイアされたという
空中を浮遊する男女の眼下にある荒廃した町とか、全部模型なんですって!
ウェス・アンダーソン的な固執と
クラクラを感じますが(笑)
監督の世界を表現するには、それが最適なんだそうです。
そんな世界観のもとで
「男の人を見た」「ある父親と母親を見た」と、一人の女性の問わず語りで
なんでもないけど、ほかでは見たこともない
ある1シーンが切り取られていく。
ウェイターが盛大にワインをこぼしたり、
神父がワインをこっそりラッパ飲みしたり。
ヒトラーが登場したり。
時代も登場する人もまちまちですが
プッと笑うおかしみがあり、深みもある。
すごく好きなんだけど
とにかくリズムがゆっくりしていて、フッと暴力的な眠気に襲われることもあるので(笑)
ワシ、これできれば
1シーンごとに額縁のように展示していただいて
美術館でみたいとも思ってしまう(笑)
それほどにアート、ってことです。
それに興味深いことに、
監督の描く世界は、どこかがらんとして、人と人との間に距離があるんですね。
このディスタンスな感じ。
コロナ禍の世界を予見したかのようでもあって
違和感とともに、不思議になじんでしまうのです。
すべてを予見し、見下ろしているかのような視線の主=監督は
どんだけ神にして超絶な完璧主義者か?!と思ってしまうのですが
おなじみ「AERA」の「いま観るシネマ」で
ロイ・アンダーソン監督(77)にオンラインでインタビューさせていただきましたところ
これがびっくり!
まあるい笑顔で、なんともやさしく話してくださる方で
お話するだけで癒やされてしまったのでしたw
詳細はぜひページをご覧いただければと思います!
★11/20(金)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。