おこがましくもこの小柄な天才を
ギュッ、としたくなってしまった。
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「トルーマン・カポーティ 真実のテープ」73点★★★★
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「ティファニーで朝食を」「冷血」などで知られる
20世紀を代表する文豪、トルーマン・カポーティ。
フィリップ・シーモア・ホフマンの
「カポーティ」(06年)っていう作品もありましたが
背が低く、独特な声、そしてゲイ。
コンプレックスになりそうな要素を多く持ちながらも
そんなことを物ともせず
文壇の寵児となり、社交界を牛耳った。
いっぽうで辛辣な物言いで
「一度会ったら二度と会いたくない」――などとも言われた彼が
実際、どんな人物だったのか?――を
追ったドキュメンタリーです。
彼の伝記をまとめたジョージ・プリンプトンのテープをもとに
オバマ元大統領の秘書という異色の経歴を持つ監督が、
さらにさまざまな証言者にインタビューし
実に手際よく、うまくまとめられています。
カポーティの原動力にもなった幼少期の複雑な家庭環境、
そして19歳で美少年キャラとしてデビューしたころ
(ほんとうに可愛らしい!)
その後、
「ティファニーで朝食を」の成功、そして
CBS会長や鉄道王などホンモノのセレブである夫人たちとの
パーティー三昧のキラキラライフ――
このへんの彼は、間違いなく絶頂期にあるんだろうけど
どう見ても空虚に見えて仕方ない。
特に1968年、プラザホテルのボールルームで
世界中のセレブ540人を招待して開かれたという
伝説のパーティーシーンを
とてつもなく、むなしく感じてしまったのですが
そしたらですね
出席者の一人だったキャンディス・バーゲンが、
その後のインタビューですごくいいことを言ってるんですよ。
「ベトナム戦争中だったし『罪の意識を持つべきだ』という空気はあった」
――ああ、良識ある人は、やっぱりいたのだ!って。
で、その後、カポーティは
社交界の内幕を暴露する本を書き始め――と
そこからもまあ、いろいろあるので
ぜひ、映画をご覧いただきたいですが
波瀾万丈の人生!なのはたしかなのですが
それよりも
その生い立ちや、彼の養女の存在、ふとした優しさを知る証言に
知らなかった文豪の素顔がすごく自然に立ち現れてくるのが
とてもよかったんですよね。
最後には不思議なほどに
切なくやさしい気持ちが残るのでありました。
そして今回はオバマ元大統領秘書にして
あのバイデン氏の素顔も知る
イーブス・バーノー監督(40)にインタビューをしております。
近々、AERA.dotのオリジナル記事として掲載されると思いますので
こちらもお楽しみに~
★11/6(金)からBunkamura ル・シネマほか全国で公開。