予想以上に何も起こらない(笑)
「モリのいる場所」70点★★★★
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昭和49年(1974)、夏の朝。
有名画家となった94歳の熊谷守一=モリ(山﨑努)は、
妻(樹木希林)と姪(池谷のぶえ)と朝ごはんを食べている。
食後、「いってきます」と出かけるモリ。
行き先は、草木が生い茂る自宅の庭だ。
モリは日がな一日、そこで虫や石を観察し、絵を描いているのだ。
そのころ
熊谷家には画商や、モリに書をもらおうとする人々など
さまざまな来客が訪れていた――。
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猫の絵で知られる画家・熊谷守一(山﨑努)と
妻(樹木希林)のある一日を
「キツツキと雨」「横道世之介」などの沖田修一監督が描いた作品。
これが予想以上に何も起こらなく
しかし、実はいろいろ起こってるという(笑)。
熊谷守一という人はたしかに絵では知っていたけれど、
その人となりは知らなかった。
有名画家になっても、名声にも金銭にも無縁で
東京・池袋の自宅とその庭をすべての世界とし、
そこに生きる草花や虫たちに子どものように目を輝かせ、
周りにいる猫たちを絵に描いたんだなと、改めて知っておもしろかったです。
さらに絵画展を鑑賞して、その歴史を知ると
彼がその悟りともいえるスタイルに到達した道のりがわかって、さらに興味が。
(※展覧会は現在、愛知美術館で開催中(~6/17まで)
さらに東京には豊島区立「熊谷守一美術館」もあります)
映画でも
94歳にして、土や光にまでも無心に生き生きと反応する
その純真さが
観ているこちらをも、無心にしてくれるんですねえ。
指で触るとパッと飛ぶ
あの小さい緑色の虫、懐かしいなあ!とか。
そんな熊谷氏を
その作品や生き方を敬愛し「僕のアイドル」とする
山﨑努氏が見事に演じていますが
さぞかし、この純真さを表現するのは難しかったのでは、と思う。
そんなモリと妻(樹木希林)の、老老夫婦のやりとりや、間合いが
しみじみとしみてくる。
画家を知ると、そこに秘められた、過去もあったりしてね。
終盤のちょっと意外な展開には驚いたけど、
周辺の人々とのとぼけたユーモアと、味わいは
まさにこれ、沖田節!という感じでした。
★5/19(土)からシネスイッチ銀座、ユーロスペースほかで公開。
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