ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

モリのいる場所

2018-05-18 23:44:44 | ま行

 

予想以上に何も起こらない(笑)

 

「モリのいる場所」70点★★★★

 

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昭和49年(1974)、夏の朝。

 

有名画家となった94歳の熊谷守一=モリ(山﨑努)は、

妻(樹木希林)と姪(池谷のぶえ)と朝ごはんを食べている。

 

食後、「いってきます」と出かけるモリ。

行き先は、草木が生い茂る自宅の庭だ。

 

モリは日がな一日、そこで虫や石を観察し、絵を描いているのだ。

 

そのころ

熊谷家には画商や、モリに書をもらおうとする人々など

さまざまな来客が訪れていた――。

 

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猫の絵で知られる画家・熊谷守一(山﨑努)と

妻(樹木希林)のある一日を

「キツツキと雨」「横道世之介」などの沖田修一監督が描いた作品。

 

これが予想以上に何も起こらなく

しかし、実はいろいろ起こってるという(笑)。

 

熊谷守一という人はたしかに絵では知っていたけれど、

その人となりは知らなかった。

 

有名画家になっても、名声にも金銭にも無縁で

東京・池袋の自宅とその庭をすべての世界とし、

そこに生きる草花や虫たちに子どものように目を輝かせ、

周りにいる猫たちを絵に描いたんだなと、改めて知っておもしろかったです。

 

さらに絵画展を鑑賞して、その歴史を知ると

彼がその悟りともいえるスタイルに到達した道のりがわかって、さらに興味が。

(※展覧会は現在、愛知美術館で開催中(~6/17まで)

 さらに東京には豊島区立「熊谷守一美術館」もあります)

 

映画でも

94歳にして、土や光にまでも無心に生き生きと反応する

その純真さが

観ているこちらをも、無心にしてくれるんですねえ。

 

指で触るとパッと飛ぶ

あの小さい緑色の虫、懐かしいなあ!とか。

 

 

そんな熊谷氏を

その作品や生き方を敬愛し「僕のアイドル」とする

山﨑努氏が見事に演じていますが

さぞかし、この純真さを表現するのは難しかったのでは、と思う。

 

 

そんなモリと妻(樹木希林)の、老老夫婦のやりとりや、間合いが

しみじみとしみてくる。

画家を知ると、そこに秘められた、過去もあったりしてね。

 

終盤のちょっと意外な展開には驚いたけど、

周辺の人々とのとぼけたユーモアと、味わいは

まさにこれ、沖田節!という感じでした。

 

★5/19(土)からシネスイッチ銀座、ユーロスペースほかで公開。

「モリのいる場所」公式サイト


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