ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

光りの墓

2016-03-27 19:16:39 | は行

アピチャッポン・イヤーの今年、
「世紀の光」に続いて公開。


映画「光りの墓」68点★★★☆


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タイ東北部の村にある病院に
足の悪い女性ジェン(ジェンジラー・ポンパット・ワイドナー)がやってくる。

この病院では
原因不明の“眠り病”にかかった兵士たちが
延々と眠りについていた。

ジェンは一人の兵士
イット(バンロップ・ロームノーイ)の世話をするようになる。

そんなある日、
イットがふいに目覚めて――。

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「世紀の光」にも登場した
足の悪い女性ジェンが主人公。

病院で眠り続ける兵士たちが登場し、
彼らや死者と交信できる女性が登場し、

まあいつもどおり(笑)
不思議な感覚の映画です。


ただ
この「眠り続ける兵士」は
実際にニュースとして報道された出来事で
監督はそこから物語を発想したそう。
ほへえ。不思議なことって現実にあるんですねえ。

兵士たちに蔓延する「病」というモチーフは
「世紀の光」にも共通していて
監督のタイの政治状況に対する思いや
警鐘が込められているのだろうと推察します。

まあそこを
「兵士たちが眠り続けるのは、病院の下にかつての王の墓があり、
彼らがその魂を吸って今も戦っているからだ」とか解説させちゃう
その感性が監督たるゆえんですけどね。

そも
アピチャッポン監督の映画って
そのもの自体が有機的というか、触れる感じがするというか
しかも触るとしっとり、苔のような感じ?とか
思えるんですよねえ。


で、常に目に見えない「存在」が写っている。

この映画にも「それ」はあるんですが
人工的でカラフルな光の使いかたによって
それがちょっと「ほかの人でも考えつきそうな」感じに可視化されている気がして
惜しかったな。

個人的には
「世紀の光」のほうが
よりストレートで、やわらかい手触りで、好みですが
見比べてみると、おもしろいと思います。


★3/26(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「光りの墓」公式サイト

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