ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

Mr.ホームズ 名探偵最後の事件

2016-03-17 23:54:28 | ま行

これは・・・予想以上に深かった。


「Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」77点★★★★


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数々の難事件を解決した
名探偵シャーロック・ホームズ(イアン・マッケラン)も
御年93歳。

人里離れた田舎の家で
養蜂を趣味としながらひっそり暮らしている。

だが彼にはある未解決事件があった。

その事件を記録すべく、自身の記憶と格闘するホームズは
住み込みの家政婦(ローラ・リニー)の
幼い息子ロジャー(マイロ・パーカー)に
優れた推理能力があることに気づく――。


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これはいろんな意味で予想外でした。

まずガッツリのミステリーではなくて
すっごく渋い。

ホームズが暮らすイギリスの田舎の風景が
ものすごく美しい。

しかも
「老い」がテーマ。

そう、どちらかというと、しっとり&じっくり味わう系の
趣きある作品でした。


イアン・マッケランが93歳(!)のホームズ役で
彼が30年前の
過去の未解決事件を振り返る――という流れ。

当時の回想シーンが挟まり、
ミステリー要素ももちろんあるんですが

そこに老人ゆえの記憶の混乱を
うまーく編み込んでいるんですねえ。

老いを自覚し、なんとかそれに抗おうとするホームズが
見ていて切ないんです。


現在76歳のイアン・マッケランも相当に化けていて
ベッドの脇にポツンと立つ、パジャマ姿の彼が
ものすっごく小さく、老人に見える瞬間に
心臓「ドキッ」としました(苦笑)



でも老境の哀しさばかりじゃない。

ホームズの新たな助手となる
聡明なロジャー少年の存在感が
希望の光のように映画を照らしてくれています。

それにこうして見ると、
シャーロック・ホームズのおもしろさって
「問い」に即、「それはね」と
明快な答えが返ってくる爽快さだなあと思いました。


日本に行っていた、というエピソードも嬉しくて
そこに登場する
真田広之氏の流ちょうな英語と演技も見ごたえあり。
彼にはジェームズ・アイヴォリー監督の
「最終目的地」で感服したもんなあ。

おなじみ『週刊朝日』「ツウの一見」で
日本シャーロック・ホームズ・クラブ設立者で作家・翻訳家の
東山あかねさんにお話を伺いましたが

この映画はまさに
ホームズを主人公にほかの人が書いた
「パスティーシュ」の傑作だそう。

出てくる事件は全てオリジナルですが
老齢のホームズが暮らす田舎の描写や
養蜂をやっている、という設定は元のコナン・ドイルの原作にあるそうです。

ああ、図書館でたっぷり借りて、どっぷり読んだ子ども時代が懐かしい。
もう一回、読みたくなりました。


★3/18(土)からTOHOシネマズ・シャンテほか全国順次公開。

「Mr.ホームズ 名探偵最後の事件」公式サイト
コメント
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