ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

そして父になる

2013-09-23 15:24:15 | さ行

まあ端正なお父さんで(笑)


「そして父になる」75点★★★★


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エリートサラリーマンの良多(福山雅治)は
妻みどり(尾野真千子)と6歳の息子・慶多(二宮慶多)と三人暮らし。

大手建設会社に勤め、高層マンションに住み
まさに“勝ち組”人生を送る良多に
ある日、信じられない事実が告げられる。

みどりが出産した病院で
子どもの取り違えがあったことがわかったのだ。

6年間育てた息子は、他人の子だったのか――!

驚き、病院にかけつけた二人は
取り違えの相手、
斎木(リリー・フランキー)と妻ゆかり(真木よう子)夫婦と対面することになる――。


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祝!第66回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞!

是枝裕和監督が
子どもの取り違えが発覚し、
「交換するのか?」「否か?」と悩む二組の家族を描きます。

その二組が
都会のエリートサラリーマンと町の電気屋さん、という
実に対照的な家庭で、

職業の違い、環境の違い、家族の雰囲気の違いなどが
「あるある」な繊細さで表現され
見応えがあります。

間違いなくよい映画ですが、
ただ
割と普通で、想像よりわかりやすぎた・・・というのは意地悪かな。

もっと複雑で、何枚もひだを持ちそうな話なのに、
あまり感情をさらすことなく、さらっとしてる。

そのへんが日本的なのかなあとか
フッと思った。

別の国だったら
もっと阿鼻叫喚ドラマになってるんじゃない?とか(苦笑)

そこが評価されたのかもしれないんですけどね。

それに病院側が最初に
「こういうケースでは100%、血のつながりを取って子を交換することになる」って言ってたけど、
うーん、ワシ的にはわからなかった。

血のつながりなんて関係ないじゃん?と、はなから思ってしまうのは

ここに描かれているように
男女の感覚の差なのだろうか。

出産経験ないのでわからないんですが、
この映画でも、真木よう子も、尾野真千子も
女性チームはみなそういう感じ。

対する男性チーム、特に“亭主関白”っぽい人ほど
血のつながりを重視しするのか・・・ということも
なんとなくですが、わかる気がして興味深かった。

まあなんのかんので
福山氏が端正すぎるのが、どうもワシにはピンとこなかったのかも(笑)

リリー・フランキーと真木よう子コンビが出てきて
ホッとしましたよホントに。

特に真木よう子さんはよかったなー。あのウィンク!

★9/24(木)から先行公開。9/28(土)から全国で公開。

「そして父になる」公式サイト

ちなみに。
おもしろいタイミングの一致ですが
同じ“子どもの取り違え”を扱ったフランス映画
「もうひとりの息子」
10/19に公開されます。

比較してみるの、いいかもしれません。
コメント (6)
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TRASHED -ゴミ地球の代償-

2013-09-21 23:34:04 | た行

ジェレミー・アイアンズを見て
久しぶりに「運命の逆転」を見たくなった(笑)


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「TRASHED -ゴミ地球の代償-」71点★★★★


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アカデミー賞俳優ジェレミー・アイアンズが
世界各地のゴミの現場を訪ねるドキュメンタリー。


「トラブゾン狂騒曲」「もったいない!」など
公開相次ぐ“ゴミ問題”ドキュメンタリーは
どれも個性的で、それぞれが大事な役割を果たしていますが

本作の特徴は
悲惨さを見せるだけでなく、

ゴミ問題に直結する「消費社会」を考え直し、
“サスティナビリティ(持続可能性)のある暮らし”を実践している人々などを
「スタイル」として魅力的に見せてるところ。

それって見た人の「行動」につなげる力を
持っていると思うんです。


実際、最初はね
スタイリッシュな映像のオープニング、
アカデミー俳優によるガイド……?
ちょっと洒落っ気を感じて、一瞬身構えたんですよ。

しかし。

見終わる頃には
「もうレジ袋はもらわない!」と強く決意してましたハイ。

まず映画が見せるのは
レバノンの美しい海にバカスカ棄てられるゴミや
中国やインドネシアの惨状・・・・・などなど。

加えて
プラスチックゴミを燃やしたり、海に捨てることで生まれる
ダイオキシンの恐ろしさなども、まんべんなく伝え、
かつ
焼却システムが発達している日本も取材してるので
身近に感じると思います。

「日本はゴミ、ちゃんと燃やしてるからいいじゃん?」と思うけど
いやいや、果たしてそれで大丈夫なのか?とか。
本当に勉強になるわあ。


特に衝撃的なのは、
ゴミが海を汚染している現状を知ったこと。

死んだシャチやイルカの体からでる有毒物質は「産業廃棄物と同じレベル」、
つまりゴミと同じになってしまっている!という事実に涙しました……。

動物たち、本当に、すいません!


出来ることを、少しでも、と
マジで思った。

で、いま、レジ袋はどうしたかというと・・・
極力、もらってません!(弱っ・・・苦笑)

でも9/24発売の「週刊朝日」、「ツウの一見」で取材した
海洋ゴミ問題の専門家・兼廣春之教授もおっしゃってました。

ひとりの力は弱くても
集まれば大きいんです!


★9/28(土)からシネマライズほか全国順次公開。

「TRASHED -ゴミ地球の代償-」公式サイト
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もったいない!

2013-09-20 21:15:35 | ま行

今年公開が相次ぐ
“ゴミ問題”ドキュメンタリ-のひとつ。

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「もったいない!」 70点★★★★


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ゴミ問題のなかでも
“食糧廃棄”にスポットを当てたドイツのドキュメンタリー。

ウィーン、アメリカ、パリ、日本の
さまざまな食品廃棄の現場を取材しています。


「新しい日付の商品が入れば、誰も古いのは買わないよ」と
フランスのスーパーで捨てられる大量の食品。

調理から数時間で
パックのまんま棄てられてしまう
日本のスーパーのお弁当やお総菜。

「まっすぐじゃないと、出荷できない」と
棄てられてしまうドイツのキュウリ・・・。

特にEUでは
食糧廃棄物を家畜肥料にすることが禁止され
より「食料のゴミ化」が進んでいる、とも知りました。


取材のなかで、どの国でも皆一様に
「もったいない」「心が痛む」と、罪悪感を持っているのが
興味深い点だった。

でも
一般の家庭が、どこまでそう思ってるかは、謎。

ウィーンの家庭ゴミなんて
カビも生えていないような未開封のパンの袋詰めや
ジャガイモの袋詰めなんかが
ドサドサ棄てられているし。

日本の「もったいない」思想と
少し差があるのかもしれない。


しかし、この問題が難しいのは
食べ物を棄てるのはよくない、とわかっていても
やっぱり
スーパーで傷のついたリンゴは買わないし
つい、賞味期限の新しいものを選んでしまう心理。

ワシも間違いなくそうしている・・・。

その行為が“無駄”を生んでいることを、
今一度意識するきっかけにはなる、とは感じます。

また
ゴミ箱から食材を探す活動をする若者たちや、
直売を始めた農家などなど
この世界で、少しずつでもいい方向へ向かわんとしている人々も紹介し、
希望がある点がよいと思う。

今日、これからスーパーに行ってどんな行動をとるか、が大事ですね。


★9/21(土)から公開。

「もったいない!」公式サイト
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世界一美しい本を作る男 -シュタイデルとの旅-

2013-09-18 21:40:49 | さ行

全ての“仕事人”に贈りたい。

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「世界一美しい本を作る男 -シュタイデルとの旅-」 73点★★★★


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世界的な写真家ロバート・フランク、
シャネルのカール・ラガーフェルドなど
世界中の一流写真家や一流アーティスト支持され

「新規オーダーの予約は数年先まで満杯」(!)という
ドイツの小さな印刷会社を率いる
ゲルハルト・シュタイデル氏のドキュメンタリーです。

監督は「エル・ブリの秘密」(11年)のドイツ出身
ゲレオン・ヴェチェル氏で

なるほど
徹底した客観視線で、仕事現場の内部に入り込む技には
共通するものがあります。

シュタイデル社の特徴は
ずばり“本の全てに関わり、唯一無二の本を作る”こと。

自社でデザイン&編集し、
紙やインク選びから、印刷、製本、果ては営業まで
全てを手がけるんです。

そのすべてをやるシュタイデル氏は
マジで鬼スゴイ人。

印刷の全てを熟知する職人でありつつ、すぐれた美術眼の持ち主であり、
かつ優秀なディレクターであり

編集者として優柔不断な写真家に辛抱強く接し、
コンセプト自体を左右する重要なアイデアを出したりもする。

「美」に対する決断力と瞬時の判断力、
経験に裏打ちされた的確なアドバイスは最強で

見ていると
超一流といわれる人々が、みんな彼を頼るはずだ・・・と納得します。

反面、
世界的なアーティストも、どこか優柔不断なところを持ち合わせており
信頼できる“誰か”の「断定」「断言」を求めてるんだなあ・・・と、
感じいりました。

60歳を越えても、世界中を飛び回り、
持てる力全てを仕事に注ぐ、

シュタイデル氏の姿は
まさに“仕事人”の鏡のよう。

どんな業種の人が見ても、
その精神性にきっと勇気づけられると思います。

必見!

★9/21(土)からシアター イメージフォーラムほか全国順次公開。

「世界一美しい本を作る男 -シュタイデルとの旅-」公式サイト


今週発売中の『週刊朝日』9/27号(壇密さんの表紙です。笑)
おなじみ「ツウの一見」で
ブックディレクターの幅允孝さんに
本作について、お話を伺っています。

シュタイデル氏の仕事の「本当にスゴイところ」、さらに
「紙の本の意味」についての
深いお話になっていると思います。

ぜひ、合わせてご一読を
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怪盗グルーのミニオン危機一発

2013-09-17 23:45:02 | か行

近所のスーパーに行くたびに、
バナナ売り場にこの音楽がかかってて、
まんまとやられました(笑)


「怪盗グルーのミニオン危機一発」3D版68点★★★☆


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月を盗んで名声を手に入れた
怪盗グルー(声・スティーヴ・カレル)は

孤児だった3姉妹を娘として迎え、
いたずら好きな黄色い軍団ミニオンたちと
平和に暮らしていた。

しかし
そんな彼の腕を見込んだある組織が
彼に仕事を依頼しようとして――?!

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日本でもヒットした
アニメ―ション「怪盗グルーの月泥棒」(2010年)の続編。
って、すいません、これ未見なんですが

本作も全米で「トイ・ストーリー3」を抜いて
歴代No.1のヒット記録を樹立中・・・だそうです。


ヒットの要因は
お話しっかり&かつ、わかりやすい!ところでしょうか。

怪盗グルーはお人好しの心優しきキャラで
その手下である黄色いミニオンたちは
まあ賑やかで、かつぷるんぷるんの質感が気持ちよく(笑)

ミニオンたちは言葉でなく
アクションで喜怒哀楽や、ぼけ突っ込みを表現するので

身体言語が豊富で、幼稚園生でも楽しめそう。

世界観にもどきつくないパステルトーンのカラフルさがあり
ショッピングモールかファミレス、のイメージ。
安心で優しく、子ども連れにマジでぴったりと思います。

話はちゃんとしてるし
子どもたちのしぐさや振る舞いの描きかたも上手なんで、

親子で見たら
親もキュンとしそうですわ。

たまには、こういうのもいいすね。

「バナナ~~♪」

★9/21(土)から全国で公開。

「怪盗グルーのミニオン危機一発」公式サイト
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